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京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

中国海軍、沖縄県西方東シナ海において大規模演習 艦艇100隻及び航空機数十機参加

2016-08-02 22:55:25 | 国際・政治
■沖縄県西方海域での脅威
 中国海軍は1日、沖縄県西方の東シナ海において大規模な演習を展開中です。

 海上自衛隊を中心に警戒態勢がとられているようですが、中国軍機関紙解放軍報が発表したところによれば、東シナ海1万6000平方キロメートルを訓練海域として指定し、中国海軍東海艦隊及び北海艦隊と南海艦隊の3艦隊に所属する100隻の艦艇や戦闘機数十機が参加が参加する大規模な演習となっており、実弾演習や艦隊間の対抗訓練などを実施しているとのこと。

 今回の演習規模、100隻の艦艇や戦闘機数十機が参加、というものですが、海上自衛隊が実施する海上自衛隊演習では大型水上戦闘艦の参加規模が25隻、アメリカ海軍の駆逐艦などが10隻、そして航空機60機が参加、というものです。自衛隊統合演習でようやく艦艇60隻と航空機400機、という規模になる為、中国海軍の参加艦艇の詳細が不明である為、明確な情報は分析途上であるものの、これは小規模な演習ではありません。

 先月にも中国海軍は南シナ海の西沙諸島近海において、100隻の艦艇や航空機数十機が参加する大規模演習を実施しています。この演習も中国海軍東海艦隊及び北海艦隊と南海艦隊の3艦隊が合同しての実施であったようですが、これは先月ハーグでの国際仲裁裁判への軍事力による恫喝という側面を含んだもので、中国による海洋閉塞化の危険が指摘される中、そうした懸念は杞憂との中国政府の発言とは対照的に、中国海事局は軍事演習を実施するとして5日から11日の期間に南シナ海の一部海域を船舶の進入を禁止し、周辺国の懸念が現実のものとなったことを示しました。

 今回の演習は、中国海軍によれば定期的な演習と発表されています。確かに毎年我が国が防衛予算概算要求を画定する時期に中国海軍が実施する海軍演習と時期的には重なりますが、規模が大きく、海洋自由原則を国際公序とする各国の協調へ軍事力により罅を差し込む行動と受けらざるをえません。一方、中国政府は南シナ海問題と東シナ海における我が国島嶼部への軍事恫喝は別問題であるとの立場を強調し、中国に軍事圧力を突き付けられる諸国間の協調を阻止する試みを展開していますが、今回の中国海軍の行動はこれらの問題領域を中国政府自身が包括化してしまったといえるでしょう。

 一方、南シナ海における中国海軍の人工島建設による海洋閉塞化に対しては、米海軍による航行の自由作戦、継続との方針が米軍のマークリチャードソン海軍作戦部長から示されました。中国の南シナ海不法占拠、東シナ海では中国による他国領土の不法占拠という間隙を海上自衛隊が完全に封じた為、生じなかった状況が南シナ海では現出、中国の南シナ海全域の軍事力による閉塞化という危機へ、中国が主張する不法占拠海域を、かつて、リビアが行った不法行為と同じ中国の行動に対し、アメリカ海軍はレーガン大統領がリビアへ下した決断と同じ手法で継続しています。

 ただ、航行の自由作戦ですが、相手が敵対行為を実施した場合に、例えば冷戦時代に黒海へ進出した米海軍の巡洋艦へ体当たりで阻止を試みたソ連海軍のような行動を行われた場合の対応策、中国が完全に無視し、普通に不法占拠し構築した人工島へ事前集積品を増強している状況へ打つ手がなく、相手の兵力増強を完了した点を待って、相手が万全の準備と共に次の段階へ転換した場合への対処体制は不明確、充分な対応を行っているとは必ずしも言えません。

 中国の強硬姿勢ですが、一つの背景には、アメリカ政府が大統領選挙に伴う西太平洋地域からの大幅な米軍撤退の可能性が共和党候補より示唆されている事から、軍事圧力を強化すればアメリカ軍の影響を西太平洋全域から排除できる可能性を読み取り、こうした軍事演習を繰り返す事で揺さぶりを掛けているとの視点、もう一つは、現在実施中のリムパック環太平洋合同演習への対抗演習を実施している可能性も考えられるでしょう。

 我が国としては、領域警備及び防衛の観点から警戒監視を強化する以外には選択肢はありませんが、中国の海洋政策、特に南シナ海回帰において実施されている軍事力による海洋閉塞化という施策は、海洋航行自由原則により通商の自由を国家の運営における基本理念としている観点から脅威以外何物でもなく、また、中国は軍事力により一旦奪取した他国領土は絶対に外交交渉では返還する姿勢を示しません。こうした観点から、冷静な対応を継続する必要があるでしょう。

北大路機関:はるな くらま
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