北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

【初春討論】いま自主防衛力を問う:中篇・・・沖縄防衛を自衛隊が担い在沖米軍を北海道へ移転

2017-01-04 20:41:44 | 北大路機関特別企画
■沖縄米軍基地問題の解決法
 自衛隊を増強し、九州からの緊急展開能力と沖縄の防衛警備力を強化した上で、自衛隊との緊急展開に関する日米共同体制を構築し、その上で米軍の北海道移転を図るとの提案を今回提示してみる事としました。

 年末に入り、我が国最大の米軍用地である沖縄北部訓練場の半分が日本側へ返還されました。これまで記事に示してきましたが、日本の米軍用地の大半が沖縄県に集まる最大の理由は北部訓練場にあり、ここを自衛隊管理演習場として転換すれば、数字の上で沖縄負担は革新的に縮小する。ただ、沖縄県庁は今回の施策を歓迎している訳ではないようです。

 政府が提示する沖縄基地負担軽減に対し、当方が提示するのは全国基地負担共有、というものです。実際問題として沖縄返還は沖縄県民の本土復帰要求と我が国の一体となった沖縄返還要求の日米交渉で実現したものです。その上で本土復帰時に自衛隊駐留へ否定的な意見はありましたが沖縄県で自衛隊の努力と民生支援に協力関係が理解を増進しました、そこで米軍の位置づけを自衛隊へ置き換えるとの視点を。

 自主防衛力の一つの方法論として前回提示しました第2ヘリコプター団の目達原新編案、西部方面即応集団新編案、第15旅団の師団規模改編提案、というものを提示しましたが、その上で在日米軍を全て置き換え、自衛隊のみで本土防衛と周辺事態対処能力を自己完結させるという一挙に踏み込んだ提案ではなく、在沖米海兵隊の移転、特に北海道等への抜本的な移転という施策、検討余地はないでしょうか。

 在日米軍在沖海兵隊のポテンシャルは第2ヘリコプター団と西部方面即応集団に南西師団新編により解決し、その上で海兵隊を抜本的に沖縄から移転するというもの。具体的には広島県の在日米陸軍の様に沖縄を実動部隊ではなく事前集積と弾薬集積等の拠点として、第一線部隊を北海道等へ転地してしまう、という施策です。単純な撤退論ではありません。

 北海道へ米軍を受け入れ自衛隊駐屯地に迎える、北海道には帯広第5師団の第5旅団への縮小、真駒内第11師団の第11旅団への縮小、駐屯地には若干の余裕があります。勿論、米海兵隊へ警備管区を任せ災害派遣などに専任させる事は指揮系統上全くあり得ませんので、日米共同施設となりますが、例えば富士地区の海兵隊キャンプ富士と滝ヶ原駐屯地のように並列して駐屯する事は現実的に可能です。

 北海道には第5偵察隊の別海駐屯地、北部方面対舟艇対戦車隊の倶知安駐屯地等、駐屯部隊規模の小さな駐屯地があり、地元自治体の反対により閉鎖を免れた駐屯地も少なくありません。第11旅団管区と第5旅団管区を中心に演習場環境等を考慮し、規模に余裕ある駐屯地、美幌、別海、釧路、鹿追、滝川、美唄、倶知安、受け入れの余地はあるでしょう。

 在沖米軍最大の第3海兵師団は、司令部大隊、第3海兵連隊、第4海兵連隊、第12海兵砲兵連隊、第3偵察大隊、戦闘強襲大隊、より成り、第3海兵連隊以外は日本に駐屯しています。第31海兵遠征群は緊急展開部隊で海兵大隊と海兵航空部隊に兵站大隊を組み合わせた部隊です。海兵航空部隊等は、この二つの部隊の空中機動を担当する部隊でもあります。

 普天間飛行場機能を丘珠駐屯地飛行場地区や別海駐屯地計根別飛行場へ移管、第1海兵航空団を岩国航空基地から三沢基地へ移駐させ、佐世保基地の強襲揚陸艦ボノムリシャール等第76任務部隊を横須賀基地へ移駐、逆に空母航空団の厚木航空基地から岩国航空基地移転に合わせ、空母ロナルドレーガンを横須賀から佐世保へ移転する施策も考えられます、支援設備なども移転する必要が生じますが、不可能ではない。

 在日米軍そのものを自衛隊で置き換える案はある種非常な政治決断を必要とするものですが、自衛隊を増強した上で沖縄県において住民との摩擦を繰り返す海兵隊を駐屯地容積と演習場環境に余裕ある北海道へ移転し、基地問題そのものの解決を図る、この選択肢について。自衛隊で在沖米軍を置き換えるには純増措置が必要ですが解決できれば道は開ける。

 第2ヘリコプター団の目達原新編案、西部方面即応集団新編案、第15旅団の師団規模改編提案、その上で在沖米軍の第3海兵師団と第31海兵遠征群を北海道の第5師団旅団化と第11師団旅団化により余裕のある駐屯地へ移転する。沖縄防衛力は自衛隊の増強により置き換えられ、冷戦時代にソ連軍を対岸に睨み構えていた時代ほど21世紀の北海道は最前線ではない為、米軍移転も周辺情勢を刺激しません。

 一方、偏見かもしれませんが在沖米軍はカウンターパートナーとなる自衛隊の規模が小さく、あくまでローテーション展開任務を受ける海兵個々人の認識として、日本の防衛に対する偏った認識を醸成している可能性があります、北海道であれば2個師団2個旅団に特科団と高射特科団等々、海兵師団と海兵遠征群とを受け入れ共存する事は可能と考えます。

 日米同盟の片務性という誤解の払拭との視点からも、北海道を背景に海兵隊のLAV-25軽装甲車が陸上自衛隊の96式装輪装甲車と並んで整備し演習、海兵隊のM-777榴弾砲と陸上自衛隊の99式自走榴弾砲が射場待機位置で並んで順番を待ち、海兵隊のAAV-7水陸両用強襲車両が陸上自衛隊の90式戦車と並び野戦機動を訓練する、個人装備から重装備まで運用と戦術までを学ぶことが出来ますので、その意味は大きいでしょう。

 勿論、防衛計画の大綱に西部方面即応集団などありませんし、南西師団等の編成は純粋な増勢措置となります。航空機材の取得だけで3000億円規模の事業となり、人員も少なくとも7000名の増員、これ以上引き抜く人員は自衛隊に残っていませんし、減らす事が出来る装備品もとうの昔に払底、現状防衛力さえ破綻しかけている為、防衛費増額は不可避です。

 ただ、独立国である以上、自国は独力で防衛する事が望ましいですし、冷戦時代に日本が高度経済成長の恩恵を享受する以前の貧しい時代に北海道へ4個師団を置いたのですから、この程度の防衛力強化は現在の日本の経済力からは不可能とは言切れません。予算がない、を言い訳として遅滞させるのではなく周辺情勢変化と脅威増大を素直に受け入れるべきだ。

 専守防衛を国是とする我が国に在って、冷戦時代、最前線が北海道にあると共にアジア地域での戦力投射任務が求められた時代には在沖米軍の策源地としての沖縄の意味は大きかったわけですが、南西諸島への脅威が顕在化した今日、最前線は沖縄であり、この中で専守防衛を維持するには、相応の施策と沖縄の理解を増進すべく、全国負担共有は必要です。

北大路機関:はるな くらま
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コメント (2)
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