■FRAM,諸外国の事例
護衛艦FRAM近代化改修について、わが国事例を中心に概略を示してきましたが、此処で諸外国の事例を視てみる事としましょう。
はるな型ヘリコプター搭載護衛艦は、しらね型ヘリコプター搭載護衛艦とFRAM工事を行う事で同等のシステム艦へ改修する事により、航空中枢艦から護衛隊群旗艦という、任務の発展へ対応する事が出来ました、はるな、は1986年3月31日に三菱造船長崎造船所に入り1987年6月23日に公試へ、2年間の工事により8年の艦齢延長にもつながりました。
FRAMの膨大な費用と期間は、任務変更という能力必要水準の大幅な転換に際して実施する際に費用対効果の面で改修せずとの選択肢を超えられるのかもしれません、こうした面から各国の近代化改修、大規模な改修の実例を視てゆきますと、単純に能力が陳腐化した事からFRAM工事を行うのではなく、水上戦闘艦が設計当時想定しない任務付与がある。
オーストラリア海軍は、アンザック級フリゲイトへ艦隊防空能力を持つCEAFAR 多目的レーダーの改修事業を2017年までに完了する方針です、アンザック、アランタ、ウォーラムンガ、スチュアート、パラマッタ、バララート、トゥーンバ、パース、全てに対し、上部構造物中央部に巨大なCEAFAR 多目的レーダーの塔型マスト追加工事が行われています。
アンザック級フリゲイトは主任務が排他的経済水域の哨戒任務とされていたため、元々艦隊防空任務等は想定されていませんでした、しかし、オーストラリア海軍を取り巻く安全保障環境が中国海軍の急激な海洋進出という不確定要素、最大の交易地域である東南アジア東アジア地域、南シナ海を通る為、任務と任務範囲の拡大が見込まれた為の改修です。
カナダ海軍はイロコイ級ヘリコプター駆逐艦をミサイル駆逐艦へ改造しています、シーキング対潜ヘリコプターを搭載し、その設計思想は護衛艦はるな建造に際しても参考となる点があったようですが、一方でカナダ海軍が担当する北大西洋航路へ1980年代に入りソ連のTu-22M超音速ミサイル爆撃機による脅威が顕在化すると、防空能力が求められます。
イロコイ級ミサイル駆逐艦への改修において5インチ単装砲とシースパロー短SAM発射機を撤去し、新たに29基分のMk41VLSを搭載、艦砲は小型の3インチ単装砲を搭載しました、シーキングヘリコプター2機の搭載能力は維持、種別のみDDHからDDGへと転換され、イロコイ、ヒューロン、アサバスカン、アルゴンキン、新しい任務へ対応しました。
アメリカ海軍のスプルーアンス級駆逐艦もFRAM工事により能力を大きく向上させた一例で、満載排水量8040tの大型艦は就役当時、非常に軽武装であったことがソ連駆逐艦のミサイル重装備に対し不利であると批判されましたが、ABL搭載改修としてトマホークミサイル運用能力を獲得、対地攻撃能力が重視される沿海域作戦増大やフロムザシー戦略への転換を想定し、61基のMk41VLSを搭載、強力な巡航ミサイル母艦へ発展しています。
水上戦闘艦の近代化改修は費用と時間を要するのですが、任務が大きく転換する場合、航空中枢艦からシステム中枢艦へ、哨戒任務から艦隊戦闘任務へ、ヘリコプター駆逐艦から艦隊防空任務へ、シーレーン防衛から対地攻撃任務へ、本来は新造しなければ任務へ対応できない状況へ、新造以外で対応するための施策に、時間と費用を掛けてのFRAM改修という選択肢が示されるのでしょう。
北大路機関:はるな くらま
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
護衛艦FRAM近代化改修について、わが国事例を中心に概略を示してきましたが、此処で諸外国の事例を視てみる事としましょう。
はるな型ヘリコプター搭載護衛艦は、しらね型ヘリコプター搭載護衛艦とFRAM工事を行う事で同等のシステム艦へ改修する事により、航空中枢艦から護衛隊群旗艦という、任務の発展へ対応する事が出来ました、はるな、は1986年3月31日に三菱造船長崎造船所に入り1987年6月23日に公試へ、2年間の工事により8年の艦齢延長にもつながりました。
FRAMの膨大な費用と期間は、任務変更という能力必要水準の大幅な転換に際して実施する際に費用対効果の面で改修せずとの選択肢を超えられるのかもしれません、こうした面から各国の近代化改修、大規模な改修の実例を視てゆきますと、単純に能力が陳腐化した事からFRAM工事を行うのではなく、水上戦闘艦が設計当時想定しない任務付与がある。
オーストラリア海軍は、アンザック級フリゲイトへ艦隊防空能力を持つCEAFAR 多目的レーダーの改修事業を2017年までに完了する方針です、アンザック、アランタ、ウォーラムンガ、スチュアート、パラマッタ、バララート、トゥーンバ、パース、全てに対し、上部構造物中央部に巨大なCEAFAR 多目的レーダーの塔型マスト追加工事が行われています。
アンザック級フリゲイトは主任務が排他的経済水域の哨戒任務とされていたため、元々艦隊防空任務等は想定されていませんでした、しかし、オーストラリア海軍を取り巻く安全保障環境が中国海軍の急激な海洋進出という不確定要素、最大の交易地域である東南アジア東アジア地域、南シナ海を通る為、任務と任務範囲の拡大が見込まれた為の改修です。
カナダ海軍はイロコイ級ヘリコプター駆逐艦をミサイル駆逐艦へ改造しています、シーキング対潜ヘリコプターを搭載し、その設計思想は護衛艦はるな建造に際しても参考となる点があったようですが、一方でカナダ海軍が担当する北大西洋航路へ1980年代に入りソ連のTu-22M超音速ミサイル爆撃機による脅威が顕在化すると、防空能力が求められます。
イロコイ級ミサイル駆逐艦への改修において5インチ単装砲とシースパロー短SAM発射機を撤去し、新たに29基分のMk41VLSを搭載、艦砲は小型の3インチ単装砲を搭載しました、シーキングヘリコプター2機の搭載能力は維持、種別のみDDHからDDGへと転換され、イロコイ、ヒューロン、アサバスカン、アルゴンキン、新しい任務へ対応しました。
アメリカ海軍のスプルーアンス級駆逐艦もFRAM工事により能力を大きく向上させた一例で、満載排水量8040tの大型艦は就役当時、非常に軽武装であったことがソ連駆逐艦のミサイル重装備に対し不利であると批判されましたが、ABL搭載改修としてトマホークミサイル運用能力を獲得、対地攻撃能力が重視される沿海域作戦増大やフロムザシー戦略への転換を想定し、61基のMk41VLSを搭載、強力な巡航ミサイル母艦へ発展しています。
水上戦闘艦の近代化改修は費用と時間を要するのですが、任務が大きく転換する場合、航空中枢艦からシステム中枢艦へ、哨戒任務から艦隊戦闘任務へ、ヘリコプター駆逐艦から艦隊防空任務へ、シーレーン防衛から対地攻撃任務へ、本来は新造しなければ任務へ対応できない状況へ、新造以外で対応するための施策に、時間と費用を掛けてのFRAM改修という選択肢が示されるのでしょう。
北大路機関:はるな くらま
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