北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

護衛艦FRAM近代化改修と艦隊維持【07】護衛艦の長い生涯と実施される検査・修理・改造の類型

2017-01-07 21:45:22 | 先端軍事テクノロジー
■FRAMとライフサイクルコスト
 護衛艦FRAM近代化改修と艦隊維持、能力を一新できるFRAMを何故すべての護衛艦に施さないのかという多くの方の疑問へ、今回は護衛艦の長い生涯と検査と修理や改造の類型からライフサイクルコストというものを軸に考えてみましょう。

 護衛艦の近代化改修、FRAMについて、これは艦船修理に累計されるのですが、艦船修理と云っても、修理、検査、改造、に三類型されます。この中で修理は既存設計を変更することなく元の性能を回復する、と定義され、一方、改造は既存の設計を変更する工事、というもの、くらま貨物船カリナスター衝突事故の、くらま修理は前者に含まれるものです。

 検査について、細部を視てゆきますと定期検査と年次検査に区分されています、定期検査が艦船で4年に一度と潜水艦で3年に一度、年次検査として会計年度ごとに一回が実施されます。蒸気タービン艦とガスタービン艦では定期検査の間隔が蒸気タービン艦の方が短期間で実施されており、定期検査に伴う入渠期間が就役期間全体で長いという特色もある。

 改造、これは特別改造と改造に分かれています、特別改造の定義は主要性能を変更するための改造と位置づけられ、具体的には復元性や運動性と潜行能力や武器艤装の変更とされ、FRAMはこの特別改造に当たる事が分かるでしょう。一方、改造には、上記以外の改造工事も含まれています、改造工事が実施される場合、期間中には検査が省略されるとのこと。

 修理についてですが、特別修理として定期検査の時期に合わせ予め計画し実施する工事、年次修理として年次検査の時期に合わせ予め計画し実施する工事、臨時修理として必要に応じその都度実施する修理、延命修理として老朽の度合いを相当規模回復するために実施する大規模修理、と四類型されます。近年特に予算が組まれるのは延命修理の予算です。

 この他に応急修理という特別区分があり、これは保安上緊急を要する状況に対して応急的に実施する修理です。就役直後の最新鋭艦では、定期検査が基本となりますが、徐々に運用期間が長くなれば、電子機器の換装を特別改造に至らない範囲内の特別修理として実施され、更に運用期間が長くなれば延命修理の頻度が大きくなり、ここで費用対効果が絡む。

 護衛艦のライフサイクルコストを計算しますと、就役後年数を重ねると共に修理改造費として計上される費用に、徐々に延命修理費用が含まれるため、最新鋭艦の方が老朽艦よりも運用費用を低減させることが可能です、また、副次的に運用人件費も徐々に先任海曹の層が厚くなりますので、増大し、結果的に新造艦の方が安価な部分も増えてくるわけです。

 FRAM,特別改造ですが、艤装を改め器材を強化する場合、船体の補強工事などが必要になります。勿論、電子機器の新補度合いは確実に更新機材の方が軽量化しますので、上部構造物の電装品換装は復元性を強化しますが、逆に船体部の電装品交換は復元性を低下させることに繋がりかねません、この為設計は慎重に行う必要があり準備期間も長くなります。

 装備を一新するという事は、教育も一新する必要がありまして、ヘリコプター搭載護衛艦はるな型のFRAM改修では、データリンクシステム教育10か月、短SAMシステム教育10週間、三次元レーダー教育8週間、電子戦教育8週間、対潜戦闘システム教育8週間、FRAM工事中にも公試に先んじてこれだけの教育が必要でした、ここに安易にFRAM工事を多くの艦艇に施せない事由が見て取れるでしょう。

北大路機関:はるな くらま
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