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装輪装甲車(改)防衛装備庁納入!統合機動防衛力整備期する96式装輪装甲車後継装備の誕生

2017-01-17 21:41:03 | 先端軍事テクノロジー
■平成30年度制式化目指す
 装輪装甲車(改)が防衛装備庁へ納入されました、今後は評価試験が行われ、来年度平成30年度に18式装輪装甲車として、制式化を目指します。

 防衛装備庁は1月10日、小松製作所より装輪装甲車(改)の納入を受けました。“装輪装甲車(改)は、陸上自衛隊の現有96式装輪装甲車の後継として、国際平和協力活動、島しょ部侵攻対処等に伴う各種脅威に対応するため、防護力の向上を図った装輪装甲車(改)を開発しました”と発表しています。標準型と通信支援型及び施設支援型が開発されています。

 この装備は平成26年度防衛予算において開発が盛り込まれた装輪装甲車(改)の試作型に当たり、防衛装備庁では平成30年度、つまり来年度までに各種試験を完了し18式装輪装甲車として制式化が見込まれています。現在防衛装備庁では12.7mm重機関銃などを搭載する遠隔操作銃搭RWSが開発中で、限定的乗車戦闘能力を持つ新装甲車となるのでしょう。

 装輪装甲車(改)全長は約8.4mで全幅約2.5mと全高約2.9mで乗員定数は11名で重量約20t、従来型の96式装輪装甲車が全長6.84mで全幅2.48mと全高1.85mで乗員定数は12名で重量約14.5t、装輪装甲車(改)と96式装輪装甲車を比較しますと二回り大きく、全高などは実に1m以上高くなっていまして、より大型の89式装甲戦闘車と比較しても40cm程高い。

 高い車高の意味する点は何か。自衛隊では従来、専守防衛政策を堅持し自国国土を戦場として着上陸を迎え撃つ観点から、戦闘車両は車高を最小限度として被発見性を最小限とする設計が採られたものの、島嶼部防衛では6800の島々全てに部隊を配置できず、国際平和維持活動対応も含め、地雷脅威へ対応すべく車高増加を代償として車体底部をV字形状とし、防御能力を高めた為でしょう。

 96式装輪装甲車は中央即応集団中央即応連隊に北部方面隊全ての普通科連隊へ装甲中隊が置かれている他、施設大隊や通信大隊へ配備、全国の戦車大隊本部や後方支援連隊整備大隊戦車直接支援小隊等へ389両が配備されていますが、統合機動防衛力整備に伴い全国の方面隊へ装甲中隊3個を持つ即応機動連隊を新編する事となっており、現状では装甲車の数が足りません。

 82式指揮通信車も232両が量産されましたが、この後継も必要となりました。この連隊本部や特科中隊へ配備される指揮官通信用装甲車の老朽化が進んでおり、装輪装甲車(改)はこの二車種の後継として621両と増強される即応機動連隊所要の150両程度を含めた770両が量産されるものと考えられます。標準型と通信支援型及び施設支援型はモジュールを積み替える事で生産が可能のようです。

 小松製作所が主契約企業となり開発されました装輪装甲車(改)は、既に運用が開始されていますNBC偵察車と車体部分を共通化させていまして、NBC偵察車の諸元を視ますと全長は8.0mで全幅2.5mと全高3.2mで重量20t、車体規模がほぼ同程度であると共に車高を抑えています。車体部分の共通性は車輪など足回りからも形状共通性が確認できましょう。

NBC偵察車とともに装輪装甲車(改)は96式装輪装甲車と82式指揮通信車を担い、陸上自衛隊の装甲車体系を大きく転換させるものとなるかもしれません。96式装輪装甲車は通信中継装置や地雷原処理装置を搭載し運用してていましたが車体規模の限界から派生型開発に限界があり、制式化から20年以上を経て、改めて大型の新型装甲車両を開発したかたち。

 三菱重工では16式機動戦闘車の車体部分を流用し、現在、耐爆車両MRAPを試作中であると共に、機動戦闘車の高度な車体制御技術を利用し、近接戦闘車を検討中です。これは89式装甲戦闘車と87式偵察警戒車、及び87式自走高射機関砲の後継車両を目指すもので、200両が生産される16式機動戦闘車車体部分との共通化により取得費用低減を目指すもの。

 装輪装甲車(改)と16式機動戦闘車派生型ですが、何故車体部分を共通化しないのか、という素朴な疑問が湧くかもしれません。しかし、理由は簡単で装輪装甲車(改)は懸架装置等駆動部分と足回りが大口径機関砲等の強烈な反動へ対応する設計よりも、取得費用の低減を期した設計を採っている為、反動面から車体部分が共通化出来ないという理由があります。

 自衛隊ではよく似た車両ながら車体部分を共通化しなかった事例として、73式装甲車と73式牽引車がありまして、これがそのまま、89式装甲戦闘車派生型と73式牽引車派生型となります。89式装甲戦闘車、生産数が当初計画の350両よりも大幅に縮小されましたが、派生型として99式自走榴弾砲が開発され、車体部分を可能な範囲ですが共通化しています。

 73式牽引車は155mmカノン砲等の牽引用として開発されましたが、5tトラック派生の中砲牽引車で牽引可能なFH-70へ火砲換装と共に役目を終え、しかし、汎用性に優れ製造費用も安かった事から、76式対砲レーダ装置、87式砲側弾薬車、92式地雷原処理車、96式自走迫撃砲、99式弾薬車、施設作業車、等派生型が開発、高級版と廉価版を区分しました。

 近接戦闘車は、装輪装甲車として16式機動戦闘車の車体部分を応用し開発される方針で、新開発の40mmCTA機関砲乃至50mmCTA機関砲を搭載し、装甲戦闘車型として後部を人員室とするもの、そして後部人員区画を転用し電子光学複合監視装置を搭載する伸縮式マストを搭載した偵察警戒車型が検討され、更にレーダー等を搭載する自走高射機関砲型も。

 89式装甲戦闘車は防衛計画の大綱に示される機甲師団所要として最低でも6個中隊分90両の所要数があると共に、87式偵察警戒車も全国の偵察隊所要として90両が必要です、更に自走高射機関砲は機甲師団所要等40両は必要であり、16式機動戦闘車は200両が生産されることから派生型と併せ420両となり、大量生産の量産効果等が期待できるでしょう。

 87式自走高射機関砲後継は、元々150両が生産予定であった87式自走高射機関砲を置き換えると共に、近年は機関砲の瞬発交戦能力や近接信管破片効果が小型無人機やステルス機への対処能力が再評価され、93式近距離地対空誘導弾の後継へ機関砲の採用可能性があり、スウェーデンのCV-90のような装甲戦闘車転用自走高射機関砲開発の可能性があります。

 ただ、近接戦闘車の開発計画は構成要素の研究がひと段落した時点で一旦棚上げとなっています。中断したままではありますが、偵察警戒車は現在、軽装甲機動車改良型の軽偵察車研究等が為されていますが、高射火器や装甲戦闘車後継所要がありますので、現在のところ喫緊の課題である即応機動連隊所要の装甲車を優先すると共に、16式機動戦闘車量産の進展と共に開発再開が行われるのでしょう。

北大路機関:はるな くらま
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