■ロシア海軍ウダロイ級駆逐艦
舞鶴基地へ現在、ロシア海軍ウダロイ級駆逐艦アドミラルトリブツが寄港中です、そこで今回から【日曜特集】としまして2012年の駆逐艦アドミラルパンテレーエフ舞鶴寄港の様子を紹介することとしましょう。
アドミラルパンテレーエフはウダロイ級駆逐艦の12番艦として1991年に就役しました。ロシア海軍では同型艦アドミラルトリブツ、アドミラルヴィノグラドフ、マルシャルシャポシニコフ、と共に太平洋艦隊へ配備、艦隊の主力として近代化改修も行われています。
ウダロイ級は満載排水量8500t、全長163.5m、全幅19.3m、中々の大型艦です。AK-100艦砲にSS-N-14/RPK-3対潜ミサイル、RBU-6000対潜ロケット12連発射機、533mm 4連装長魚雷発射機、AK-630CIWS、針鼠の如く兵装がレゾルブ5システムにより運用される。
舞鶴を親善訪問へ入港したアドミラルパンテレーエフ、鋭い船体にはあらゆる武装が余すところなく全体へ配備されており、巨大な対潜ミサイルシステムが恰も大型対艦ミサイルの如く前を睨む様子、武装重視の旧ソ連艦を瞬時に悟らせる威厳ある艦容を見せつけます。
一言でいえば重武装、ウダロイ級を含めた旧ソ連艦艇全般への印象ですが、大型の対潜機材を搭載し、東西冷戦の東側諸国を率いるソ連海軍の広大な任務、大西洋と太平洋での本型に求められた対潜任務に当るとなれば大型化は必然的なものであったのかもしれません。
しかし、大型で重武装過積載という印象をもたらすウダロイ級ですが、設計思想は概ね妥当で中途半端な外洋設計を排して高性能ソナーと戦闘指揮システムを搭載、長距離対潜打撃力と2機のヘリコプターを運用する能力をシステム化した上での外見という視点が要る。
また、詳細は後述しますが、大型艦であった点、また設計者がそこまで長期視点を有したかは別としてガスタービン艦として高い整備性を有した故のウダロイ級は、続く新装備を受け入れる設計余裕を持ち、ソ連崩壊後の長期運用にも対応出来た点は特筆に値します。
ロシア海軍ではウダロイ級は北方艦隊へヴィツェアドミラルクラコフ、マルシャルワシレフスキー、セヴェロモルスク、アドミラルハルラモフが配備中でして、対水上打撃力改良型に当たるウダロイⅡ型駆逐艦アドミラルチャバネンコが加えて北方艦隊で運用中という。
ウダロイ級駆逐艦はソ連海軍が1155型大型対潜艦として建造した水上戦闘艦で1980年より14隻が建造されました。大型対潜艦と呼称される通りウダロイ級は対潜戦闘に重点を置いた艦隊駆逐艦で、12隻が前期型、2隻が後期型として建造、両者著しく形状が違います。
ソブレメンヌイ級ミサイル駆逐艦同時期に20隻建造されていましてソブレメンヌイ級も1980年に一番艦が竣工していまして、こちらは艦隊防空システム“シチル”を搭載した艦隊防空艦として運用、西側のターターシステムと似た性能を持ち中国へも輸出されました。
ウダロイ級駆逐艦とソブレメンヌイ級ミサイル駆逐艦ですが、冷戦後の世界においては潜水艦脅威の減退と共に艦隊防空艦が優遇される各国建造趨勢が観られましたが、ソ連を継承したロシア海軍ではソブレメンヌイ級ではなくウダロイ級が維持されることとなります。
ロシア海軍がウダロイ級を重視した背景には、本級の使い易さという特性から維持されたといえます。こういいますのも、ソブレメンヌイ級は蒸気タービン艦であったのに対し、ウダロイ級はガスタービン推進方式を採用、整備性が高かったという点が大きいでしょう。
旧ソ連が建造した水上戦闘艦ではありますが、ソ連崩壊後の深刻な経済危機の長期化により後継艦を建造する事が出来ず、北方艦隊と太平洋艦隊に黒海艦隊やカスピ小艦隊等を構成する全ての艦艇老朽化へ代替艦を建造出来ず、20世紀一杯、老朽化に任せてきました。
しかし、今世紀に入り石油価格高騰などを受け国内油田を再開発すると共にソ連崩壊後の分離独立戦争がひと段落し、代替艦建造に遅まきながら着手すると共に、ソ連時代の老朽艦艇の近代化改修及び延命改修、現役復帰に着手する予算面での余裕が出てきた構図です。
新型艦は、1990年代にネムストラムシイ級フリゲイトを3隻のみ建造しましたが、これもソ連時代に設計されたフリゲイトで当初はクリヴァクⅡ型フリゲイトやクリヴァクⅢ型フリゲイトの代替へ40隻程度が必要とされていたものを10年かけて3隻のみ建造したもの。
設計が陳腐化するのではというくらいの不活性な建造速度ですが、昨年より順次完成したアドミラルフロータソヴィエツコヴォソユーザゴルシコフ級フリゲイトは満載排水量4300tと護衛艦はつゆき型等同程度ながらステルス性含め洗練された艦として完成します。
アドミラルフロータソヴィエツコヴォソユーザゴルシコフ級フリゲイトが優れた設計を採用できた背景にはインド海軍への艦艇輸出と艦艇共同設計という、いわば場数を踏み技術者の継承が可能であったとの天恵ともいえる極めて良好な印ロ防衛協力関係がありました。
インド海軍は中国海軍のインド洋進出や、ミャンマーのベンガル湾島嶼部での中国海軍基地建設や、インドと長年敵対関係にあるパキスタンへ高度軍事技術提供や核開発協力疑惑等、対立を煽る行動に対し警戒感を強めており、ロシアへ最新技術提供を要請したかたち。
近年我が国との防衛協力を進めるインド海軍は、度々横須賀基地や佐世保基地へ艦隊を親善訪問させていますが、ロシア艦をそのまま改良した従来型の艦艇に加えステルス性の優れた艦艇を寄港させました、これら設計に当たった技術陣が旧ソ連最高の人材たちです。
アドミラルパンテレーエフ、舞鶴基地北吸桟橋から眺めただけでも極めて強力な装備が主役されている点が垣間見えます、背負い式の艦砲は、護衛艦しらね型、舞鶴では、はるな停泊で見慣れているつもりですが、ミサイルにロケットとレーダーで満載状態そのもの。
巨大な対潜ミサイルシステムの装甲発射機はもちろん水上戦闘艦へ533mm魚雷を装備する点だけでも重厚な武装を示しますが、驚かされるのは一部兵装へ垂直発射装置VLSを採用し、外見では見えない部分にもミサイルを満載している点、順次紹介してゆきましょう。
AK-100単装砲は、100mm砲で背負い式に搭載され、はるな型ヘリコプター搭載護衛艦や、しらね型ヘリコプター搭載護衛艦を思い出させる非常に美しい艦容を構成していますが、近くで見ますと非常に小型であることに驚かされます、100mmと127mmの違い故です。
AK-100単装砲は射程21km、毎分60発を投射可能な両用砲で、ソ連海軍では従来の76mm艦砲後継として、130mm砲と76mm砲の中間を担う装備として完成しました。マウント重量は34t。尚、自衛隊の54口径127mm砲は58t、127mm砲35t、76mm砲は8tです。
ソ連海軍ではソブレメンヌイ級ミサイル駆逐艦へAK-130連装130mm艦砲を開発し運用しています、100mm単装砲と130mm連装砲を比較しますとマウント重量は49tでして倍増していますが、しかし単装砲と連装砲で砲身も倍増していて、発射速度も倍となっている。
2門搭載するならば、艦砲はいっそのこと130mm連装砲一門としたほうが合理的に見えますが、100mm砲弾の重量は16.6kgで、130mm砲弾の重量が33.4kg、100mm砲二門の投射能力は毎分最大1660kgで、しかし130mm連装砲の場合は毎分最大1169kgといい、投射力では100mmに分があるもよう。
北大路機関:はるな くらま
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舞鶴基地へ現在、ロシア海軍ウダロイ級駆逐艦アドミラルトリブツが寄港中です、そこで今回から【日曜特集】としまして2012年の駆逐艦アドミラルパンテレーエフ舞鶴寄港の様子を紹介することとしましょう。
アドミラルパンテレーエフはウダロイ級駆逐艦の12番艦として1991年に就役しました。ロシア海軍では同型艦アドミラルトリブツ、アドミラルヴィノグラドフ、マルシャルシャポシニコフ、と共に太平洋艦隊へ配備、艦隊の主力として近代化改修も行われています。
ウダロイ級は満載排水量8500t、全長163.5m、全幅19.3m、中々の大型艦です。AK-100艦砲にSS-N-14/RPK-3対潜ミサイル、RBU-6000対潜ロケット12連発射機、533mm 4連装長魚雷発射機、AK-630CIWS、針鼠の如く兵装がレゾルブ5システムにより運用される。
舞鶴を親善訪問へ入港したアドミラルパンテレーエフ、鋭い船体にはあらゆる武装が余すところなく全体へ配備されており、巨大な対潜ミサイルシステムが恰も大型対艦ミサイルの如く前を睨む様子、武装重視の旧ソ連艦を瞬時に悟らせる威厳ある艦容を見せつけます。
一言でいえば重武装、ウダロイ級を含めた旧ソ連艦艇全般への印象ですが、大型の対潜機材を搭載し、東西冷戦の東側諸国を率いるソ連海軍の広大な任務、大西洋と太平洋での本型に求められた対潜任務に当るとなれば大型化は必然的なものであったのかもしれません。
しかし、大型で重武装過積載という印象をもたらすウダロイ級ですが、設計思想は概ね妥当で中途半端な外洋設計を排して高性能ソナーと戦闘指揮システムを搭載、長距離対潜打撃力と2機のヘリコプターを運用する能力をシステム化した上での外見という視点が要る。
また、詳細は後述しますが、大型艦であった点、また設計者がそこまで長期視点を有したかは別としてガスタービン艦として高い整備性を有した故のウダロイ級は、続く新装備を受け入れる設計余裕を持ち、ソ連崩壊後の長期運用にも対応出来た点は特筆に値します。
ロシア海軍ではウダロイ級は北方艦隊へヴィツェアドミラルクラコフ、マルシャルワシレフスキー、セヴェロモルスク、アドミラルハルラモフが配備中でして、対水上打撃力改良型に当たるウダロイⅡ型駆逐艦アドミラルチャバネンコが加えて北方艦隊で運用中という。
ウダロイ級駆逐艦はソ連海軍が1155型大型対潜艦として建造した水上戦闘艦で1980年より14隻が建造されました。大型対潜艦と呼称される通りウダロイ級は対潜戦闘に重点を置いた艦隊駆逐艦で、12隻が前期型、2隻が後期型として建造、両者著しく形状が違います。
ソブレメンヌイ級ミサイル駆逐艦同時期に20隻建造されていましてソブレメンヌイ級も1980年に一番艦が竣工していまして、こちらは艦隊防空システム“シチル”を搭載した艦隊防空艦として運用、西側のターターシステムと似た性能を持ち中国へも輸出されました。
ウダロイ級駆逐艦とソブレメンヌイ級ミサイル駆逐艦ですが、冷戦後の世界においては潜水艦脅威の減退と共に艦隊防空艦が優遇される各国建造趨勢が観られましたが、ソ連を継承したロシア海軍ではソブレメンヌイ級ではなくウダロイ級が維持されることとなります。
ロシア海軍がウダロイ級を重視した背景には、本級の使い易さという特性から維持されたといえます。こういいますのも、ソブレメンヌイ級は蒸気タービン艦であったのに対し、ウダロイ級はガスタービン推進方式を採用、整備性が高かったという点が大きいでしょう。
旧ソ連が建造した水上戦闘艦ではありますが、ソ連崩壊後の深刻な経済危機の長期化により後継艦を建造する事が出来ず、北方艦隊と太平洋艦隊に黒海艦隊やカスピ小艦隊等を構成する全ての艦艇老朽化へ代替艦を建造出来ず、20世紀一杯、老朽化に任せてきました。
しかし、今世紀に入り石油価格高騰などを受け国内油田を再開発すると共にソ連崩壊後の分離独立戦争がひと段落し、代替艦建造に遅まきながら着手すると共に、ソ連時代の老朽艦艇の近代化改修及び延命改修、現役復帰に着手する予算面での余裕が出てきた構図です。
新型艦は、1990年代にネムストラムシイ級フリゲイトを3隻のみ建造しましたが、これもソ連時代に設計されたフリゲイトで当初はクリヴァクⅡ型フリゲイトやクリヴァクⅢ型フリゲイトの代替へ40隻程度が必要とされていたものを10年かけて3隻のみ建造したもの。
設計が陳腐化するのではというくらいの不活性な建造速度ですが、昨年より順次完成したアドミラルフロータソヴィエツコヴォソユーザゴルシコフ級フリゲイトは満載排水量4300tと護衛艦はつゆき型等同程度ながらステルス性含め洗練された艦として完成します。
アドミラルフロータソヴィエツコヴォソユーザゴルシコフ級フリゲイトが優れた設計を採用できた背景にはインド海軍への艦艇輸出と艦艇共同設計という、いわば場数を踏み技術者の継承が可能であったとの天恵ともいえる極めて良好な印ロ防衛協力関係がありました。
インド海軍は中国海軍のインド洋進出や、ミャンマーのベンガル湾島嶼部での中国海軍基地建設や、インドと長年敵対関係にあるパキスタンへ高度軍事技術提供や核開発協力疑惑等、対立を煽る行動に対し警戒感を強めており、ロシアへ最新技術提供を要請したかたち。
近年我が国との防衛協力を進めるインド海軍は、度々横須賀基地や佐世保基地へ艦隊を親善訪問させていますが、ロシア艦をそのまま改良した従来型の艦艇に加えステルス性の優れた艦艇を寄港させました、これら設計に当たった技術陣が旧ソ連最高の人材たちです。
アドミラルパンテレーエフ、舞鶴基地北吸桟橋から眺めただけでも極めて強力な装備が主役されている点が垣間見えます、背負い式の艦砲は、護衛艦しらね型、舞鶴では、はるな停泊で見慣れているつもりですが、ミサイルにロケットとレーダーで満載状態そのもの。
巨大な対潜ミサイルシステムの装甲発射機はもちろん水上戦闘艦へ533mm魚雷を装備する点だけでも重厚な武装を示しますが、驚かされるのは一部兵装へ垂直発射装置VLSを採用し、外見では見えない部分にもミサイルを満載している点、順次紹介してゆきましょう。
AK-100単装砲は、100mm砲で背負い式に搭載され、はるな型ヘリコプター搭載護衛艦や、しらね型ヘリコプター搭載護衛艦を思い出させる非常に美しい艦容を構成していますが、近くで見ますと非常に小型であることに驚かされます、100mmと127mmの違い故です。
AK-100単装砲は射程21km、毎分60発を投射可能な両用砲で、ソ連海軍では従来の76mm艦砲後継として、130mm砲と76mm砲の中間を担う装備として完成しました。マウント重量は34t。尚、自衛隊の54口径127mm砲は58t、127mm砲35t、76mm砲は8tです。
ソ連海軍ではソブレメンヌイ級ミサイル駆逐艦へAK-130連装130mm艦砲を開発し運用しています、100mm単装砲と130mm連装砲を比較しますとマウント重量は49tでして倍増していますが、しかし単装砲と連装砲で砲身も倍増していて、発射速度も倍となっている。
2門搭載するならば、艦砲はいっそのこと130mm連装砲一門としたほうが合理的に見えますが、100mm砲弾の重量は16.6kgで、130mm砲弾の重量が33.4kg、100mm砲二門の投射能力は毎分最大1660kgで、しかし130mm連装砲の場合は毎分最大1169kgといい、投射力では100mmに分があるもよう。
北大路機関:はるな くらま
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