■航空連絡分遣隊が必要
航空機からの情報収集は迅速かつ五感に依拠した情報を得られ、防衛警備任務から災害派遣まで欠かす事が出来ません。
山陰地方での記録的豪雪による道路寸断、大量の自動車路上立往生と孤立集落、鳥取県の豪雪被害へ鳥取県知事からの要請に基づき、山陰山陽を警備管区とする第13旅団が災害派遣されましたが、防府から第13飛行隊の悪天候下での中国山地越は困難であったようで、災害派遣と航空偵察、改めて認識させられるのは日本海側の航空部隊に関する現状です。
防衛省は航空自衛隊美保基地へ中部方面航空隊第3飛行隊を新編し、長年の課題であった日本海側の航空部隊配置を実現させることとなりましたが、これは鳥取県や島根県など日本海側自治体にも防災上の課題から実現が求められていたものです。しかし、第13旅団管区の中国山地に隔てられました地形のほかにも、航空部隊過疎地は数えれば意外と多い。
例えば第10師団管区の日本海側、第4師団管区の長崎県島嶼部、第8師団管区の鹿児島県島嶼部、航空機の航続距離を考えれば決して不可能な距離ではないのですが、連絡任務や情報収集には警備隊区の長として航空機があるに越したことは無く、自衛隊にはもう少し分遣隊のようなかたちでのヘリコプター配置というものはあっていいのではないか、と。
具体的には、観測ヘリコプターほどの能力は持たずとも連絡ヘリコプターとして各駐屯地へ臨時発着施設を配置し、分遣隊を送り対応できる程度のものです。この種の任務は無人ヘリコプターにより対応することが望ましいのですが、自衛隊での悪天候下での航空部隊運用では性能面は勿論の事、無人機にはまだまだ運用を制約する条件は多い事は確かです。
航空法などの法整備、災害時に飛行させ無人ヘリコプターが被災地へ墜落することにより生じる二次被害の可能性など、まだまだ考えなければならない部分は多いのですが、遠隔地へ観測ヘリコプターではなく連絡ヘリコプターを1機2機配置し、適宜運用する、いわば都道府県の防災ヘリコプターのような位置づけの航空機、必要ではないかと考えます。
無人ヘリコプター、例えば現在の遠隔操縦しステムのような確実な自己完結能力を持つシステムでは規模が大きすぎるとともに、この器材は例えば大規模な電子戦状況下での衛星通信に頼らない自律運用、例えばウクライナ内戦における大規模な電子攻撃に代表される切迫状態へ自己完結能力を以て対応できる利点がありますが、災害時では必要ありません。
しかし、自衛隊の任務は国土の防衛が第一であり、しかも災害派遣は警察消防にも大隊が出来る部分はあるものの、防衛という任務は国内のほかの期間、警察や消防では代替が利きません、このため、防衛に必要な器材がもつ汎用性をもって災害派遣に充てるべきで、例えば有事の際に用途がなくなるような器材は導入しては、本末転倒というべきでしょう。
MQ-8、海上自衛隊が導入するMQ-8のような航空機であれば、独立して運用が可能で、かつ最小限度の輸送能力、医薬品や血清の空輸なども可能ですが、負傷者搬送等多用途任務には原型機TH-55と比較しても能力は不十分です。また、MQ-8は地上管制器材の費用が高く、しかも整備は当然必要、まだまだ器材だけを独立して配備することは出来ません。
後方用航空機という選択肢はどうか、アメリカ陸軍では州兵部隊へ汎用器材としてUH-72,我が国のBK-117と共通部分を持つ航空機を採用していますが、日本へUH-72やBK-117を配備する方式はどうでしょうか。この点国内に生産基盤があり、一つの選択肢としてあり得そうですが、性能が中途半端で、第一線用航空機とはなり得ない点に留意が必要です。
アメリカ軍も海外派遣へUH-72を投入することは余程の事態、例えば大惨事世界大戦のような状況でない限り想定していないようです、即ち後方器材という位置づけとなりますが、日本は専守防衛を国是としており、後方という概念が有事の際には限りなく薄れる為、後方専用器材を多数配備することは前方資材の予算を蚕食しかねない懸念があります。
そこで、用途として連絡ヘリコプターに合致するのは、救急ヘリコプターです。自衛隊ではこの種の装備の配備が後回しとされてきました、災害時の連絡ヘリコプターとして、多用途ヘリコプターほど多数を輸送できず、また観測ヘリコプターのような専用観測器材は持たないものの、連絡任務や第一線救急任務を担うとともに副次的に多用途性を持つもの。
副次的な多用途性とは具体的には連絡幹部の輸送支援や被災地付近の飛行、という任務を持たせる。方面航空隊に方面航空連絡飛行隊をおき、分遣隊の形で、例えば方面通信群から各駐屯地へ基地通信分遣隊を送るように、分遣隊を置きローテーションで駐屯地のグラウンドや演習場廠舎地区等に格納庫とヘリパットを配置し、警備隊区司令の掌握下に置く。
航空部隊から離隔している駐屯地へ、航空分遣隊を配置し、有事の際には航空救急輸送と連絡任務、平時には多用途ヘリコプターよりもきめ細かな支援運用を行う、という施策は考えられないでしょうか、災害派遣はもちろん、防衛出動でも各種航空機動員され不足する状況で、救急搬送への後方搬送や国民保護任務への連絡幹部輸送、多少は用途がある筈です。
北大路機関:はるな くらま
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
航空機からの情報収集は迅速かつ五感に依拠した情報を得られ、防衛警備任務から災害派遣まで欠かす事が出来ません。
山陰地方での記録的豪雪による道路寸断、大量の自動車路上立往生と孤立集落、鳥取県の豪雪被害へ鳥取県知事からの要請に基づき、山陰山陽を警備管区とする第13旅団が災害派遣されましたが、防府から第13飛行隊の悪天候下での中国山地越は困難であったようで、災害派遣と航空偵察、改めて認識させられるのは日本海側の航空部隊に関する現状です。
防衛省は航空自衛隊美保基地へ中部方面航空隊第3飛行隊を新編し、長年の課題であった日本海側の航空部隊配置を実現させることとなりましたが、これは鳥取県や島根県など日本海側自治体にも防災上の課題から実現が求められていたものです。しかし、第13旅団管区の中国山地に隔てられました地形のほかにも、航空部隊過疎地は数えれば意外と多い。
例えば第10師団管区の日本海側、第4師団管区の長崎県島嶼部、第8師団管区の鹿児島県島嶼部、航空機の航続距離を考えれば決して不可能な距離ではないのですが、連絡任務や情報収集には警備隊区の長として航空機があるに越したことは無く、自衛隊にはもう少し分遣隊のようなかたちでのヘリコプター配置というものはあっていいのではないか、と。
具体的には、観測ヘリコプターほどの能力は持たずとも連絡ヘリコプターとして各駐屯地へ臨時発着施設を配置し、分遣隊を送り対応できる程度のものです。この種の任務は無人ヘリコプターにより対応することが望ましいのですが、自衛隊での悪天候下での航空部隊運用では性能面は勿論の事、無人機にはまだまだ運用を制約する条件は多い事は確かです。
航空法などの法整備、災害時に飛行させ無人ヘリコプターが被災地へ墜落することにより生じる二次被害の可能性など、まだまだ考えなければならない部分は多いのですが、遠隔地へ観測ヘリコプターではなく連絡ヘリコプターを1機2機配置し、適宜運用する、いわば都道府県の防災ヘリコプターのような位置づけの航空機、必要ではないかと考えます。
無人ヘリコプター、例えば現在の遠隔操縦しステムのような確実な自己完結能力を持つシステムでは規模が大きすぎるとともに、この器材は例えば大規模な電子戦状況下での衛星通信に頼らない自律運用、例えばウクライナ内戦における大規模な電子攻撃に代表される切迫状態へ自己完結能力を以て対応できる利点がありますが、災害時では必要ありません。
しかし、自衛隊の任務は国土の防衛が第一であり、しかも災害派遣は警察消防にも大隊が出来る部分はあるものの、防衛という任務は国内のほかの期間、警察や消防では代替が利きません、このため、防衛に必要な器材がもつ汎用性をもって災害派遣に充てるべきで、例えば有事の際に用途がなくなるような器材は導入しては、本末転倒というべきでしょう。
MQ-8、海上自衛隊が導入するMQ-8のような航空機であれば、独立して運用が可能で、かつ最小限度の輸送能力、医薬品や血清の空輸なども可能ですが、負傷者搬送等多用途任務には原型機TH-55と比較しても能力は不十分です。また、MQ-8は地上管制器材の費用が高く、しかも整備は当然必要、まだまだ器材だけを独立して配備することは出来ません。
後方用航空機という選択肢はどうか、アメリカ陸軍では州兵部隊へ汎用器材としてUH-72,我が国のBK-117と共通部分を持つ航空機を採用していますが、日本へUH-72やBK-117を配備する方式はどうでしょうか。この点国内に生産基盤があり、一つの選択肢としてあり得そうですが、性能が中途半端で、第一線用航空機とはなり得ない点に留意が必要です。
アメリカ軍も海外派遣へUH-72を投入することは余程の事態、例えば大惨事世界大戦のような状況でない限り想定していないようです、即ち後方器材という位置づけとなりますが、日本は専守防衛を国是としており、後方という概念が有事の際には限りなく薄れる為、後方専用器材を多数配備することは前方資材の予算を蚕食しかねない懸念があります。
そこで、用途として連絡ヘリコプターに合致するのは、救急ヘリコプターです。自衛隊ではこの種の装備の配備が後回しとされてきました、災害時の連絡ヘリコプターとして、多用途ヘリコプターほど多数を輸送できず、また観測ヘリコプターのような専用観測器材は持たないものの、連絡任務や第一線救急任務を担うとともに副次的に多用途性を持つもの。
副次的な多用途性とは具体的には連絡幹部の輸送支援や被災地付近の飛行、という任務を持たせる。方面航空隊に方面航空連絡飛行隊をおき、分遣隊の形で、例えば方面通信群から各駐屯地へ基地通信分遣隊を送るように、分遣隊を置きローテーションで駐屯地のグラウンドや演習場廠舎地区等に格納庫とヘリパットを配置し、警備隊区司令の掌握下に置く。
航空部隊から離隔している駐屯地へ、航空分遣隊を配置し、有事の際には航空救急輸送と連絡任務、平時には多用途ヘリコプターよりもきめ細かな支援運用を行う、という施策は考えられないでしょうか、災害派遣はもちろん、防衛出動でも各種航空機動員され不足する状況で、救急搬送への後方搬送や国民保護任務への連絡幹部輸送、多少は用途がある筈です。
北大路機関:はるな くらま
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