北大路機関

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【くらま】日本DDH物語 《第五四回》護衛艦しらね型構想,未成の6000t型ミサイル護衛艦

2019-03-02 20:12:35 | 先端軍事テクノロジー
■戦後日本の巡洋艦建造計画
 しらね型ヘリコプター搭載護衛艦へ至る幾つかの検討の中にミサイル巡洋艦というべき試案もありました。

 6000t型ミサイル護衛艦、検討に終わった護衛艦ですが海上自衛隊は8300t型ヘリコプター巡洋艦を検討当時、やはり大型化したミサイル護衛艦を検討しています。6000t型ミサイル護衛艦は3500t型ミサイル護衛艦として建造された護衛艦たちかぜ型を改良したもの、と考えられますが、当時米海軍ではベルナップ級ミサイル巡洋艦の整備が行われています。

 たちかぜ型護衛艦ではMk13ミサイル発射機を後部甲板に配置していますが、6000t型ミサイル護衛艦構想ではこちらを前後に二基配置する構想だったとも、Mk10連装発射装置を採用するつもりだったともいわれます。もっとも、はるな型護衛艦の設計当時には全通飛行甲板案や前後に艦砲を搭載、艦砲を一門とする案など検討期には闊達な議論があります。

 あまつかぜ建造当時、海上自衛隊は連装発射装置の搭載を念頭に設計を行っていましたが、最後はMk13単装発射装置に落ち着きます。実はターターミサイルは初期にミサイル本体と発射装置に万全の信頼には一考の余地があり、連装発射装置が開発、アメリカ海軍初の量産ミサイル駆逐艦、チャールズアダムス級も初期艦は連装発射装置を採用していました。

 チャールズアダムス級ミサイル駆逐艦は横須賀基地へも配備されており、海上自衛隊部内でも新護衛艦あまつかぜ配備は連装発射装置という認識が、ミサイル関連の担当では単装発射装置は認識されていたのですが、全体に周知されていたとは言い難く、廉価版と誤解されたものでした。確かに、一見したならば連装発射装置の方が勇ましく強力にみえる。

 実際には単装発射装置でも4秒で一発が射撃可能で、ミサイルを誘導するSPGイルミネータは一基一発しか誘導できませんので、過度な連射機能を備えますと誘導不能となりかねません。ミサイルが長射程化しますと、誘導時間がかわり、発射装置の連装化も現実的な選択肢となるのですが、搭載出来る対空レーダーや三次元レーダーも高度化を迫られます。

 ベルナップ級ミサイル巡洋艦、海上自衛隊は護衛艦たちかぜ型に先行するアメリカ海軍ミサイル巡洋艦を認識したのでしょうか。ベルナップ級のMk10連装発射装置は元々RIM-2Fテリアミサイルを搭載する念頭として設計されています、こちらは射程70km、巡洋艦ですので強力なMk76ミサイル射撃装置をイルミネータとして誘導に用いることが可能です。

 ターターシステム艦ですが、電子計算処理能力は余裕を確保していましたので、慣性誘導で次々と発射したミサイルを順次誘導する多目標対処能力も有していました。テリアは早い時期にスタンダードERへと転換します、こちらは海上自衛隊の運用したSM-1よりも射程が長く現在のSM-2にあたり、射程は70kmとテリアと同程度の射程を有していました。

 6000t型ミサイル護衛艦には当初二基の単装発射装置を前後に搭載する案があったはいけいには、ミサイルに関して前方の経空脅威には前方の発射装置を、後方からの脅威にたいしては後方の発射装置を、という艦砲の延長線上のような認識があったともいわれます。ロケットモーターの特性上確実な間違いとは言い切れませんが、正解ともいいきれません。

 7200t型護衛艦としてイージス艦こんごう型が建造され、護衛隊群に2隻のミサイル護衛艦が揃ったのは1994年の護衛艦きりしま就役、あまつかぜ、たちあぜ、あさかぜ、さわかざ、はたかぜ、しまかぜ、こんごう、きりしま、と時間を要しました。しかし、この事業を進める背景には、艦隊防空がシーレーン防衛に必要となるという脅威の変化が影響しました。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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