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ストライクウィッチーズ(第12回文化庁メディア芸術祭審査委員会推薦)大津地本,広報起用

2019-03-04 20:04:15 | 映画
■自衛隊広報とアニメーション
 ストライクウィッチーズはアニメーションと劇場版も公開された作品です。大津地本の募集広報アニメーションコラボポスターが何故か問題になっています、この話題を。

 ストライクウィッチーズの日本人キャラクターを起用した大津地方協力本部ポスター、京都新聞によればその内容に批判が集まっています。実に的外れな内容ですが、キャラクターの服装の内容が問題であるという。実のところ本作は“パンツじゃないから恥ずかしくないもん”という放映当時の公式設定もあり、実に11年遅れの批判と云わざるを得ません。

 大津地方協力本部が起用したストライクウィッチーズとは。この世界とよく似た、しかし魔力という概念が存在する1939年、突如異世界からの武力攻撃を受けた人類は戦車や火砲という通常兵器では対抗できない敵へ魔法で対抗するべく世界が結集した、という作品です。2020年に第三期が放映予定といい、大津地本は話題性含めコラボを組んだのでしょう。

 広報は平時の実戦である、とはとある広報幹部のお言葉。少子高齢化により人材確保が日本全体で困難となっている中、安定志向の価値観もあり特に数年間で退官を迎える任期制自衛官の確保は相当な困難となっており、志願年齢制限の延長等で対応を試みていますが、体力と電子装備やプログラミング等の新技術に対応する若者の志願減少は大きな問題、ここに今風の広報を試みたかたち。

 文部科学省の文化庁2008年推薦アニメにストライクウィッチーズが選ばれている事は、京都新聞文化部ならば把握しているはずです。第12回文化庁メディア芸術祭においてストライクウィッチーズは審査委員会推薦作品として選ばれており、同年は応募作品346本の中から、本作に加え、劇場版空の境界、スカイ-クロラ、みなみけ、等などが選ばれています。

 中二病でも恋がしたい!等の滋賀県を舞台としたアニメーション作品とのコラボレーションを大津地本は重視するべきだ、とか、戦車部隊と中部方面隊管内最大の演習場を受け入れる湖北に留意し戦車が搭乗するガールズ&パンツァーとのコラボ等、大津海軍航空隊以外あまり関係のないストライクウィッチーズを起用した事に若干疑問符はあるのですが、ね。

 大津地本ポスターは昨年から掲示していたとの事ですが、突如先週からの批判報道を受け、急遽撤去しています。しかし批判はいつの間にか全国放送のワイドショーへ取り上げられるようになり、そもそもアニメーションとのコラボや、女性キャラクターそのものを自衛隊広報へ連携する事への批判、変な方向に走っているような印象を受けなくもありません。

 魔女狩りのようだ。当方の所感でしたが、金曜日の小牧航空祭前夜にてストライクウィッチーズは魔女の作品だから魔女狩りに遭った、という冷静な分析、誰がうまい事云えと。しかし、前述の通り文化庁推薦アニメの一つでもあり、批判は適当なのかという印象が一つ。内容としても、描写は兎も角として自衛隊広報の趣旨から大きく逸脱はしていません。

 魔法科高校の劣等生、SFアニメ作品が一昨年の岐阜基地航空祭では広報に起用され、その前年は国民的人気劇画ゴルゴ13が起用、麻生外務大臣が愛読している関係もありゴルゴ13は外務省邦人保護広報にも活躍していました。ハイスクールフリートや艦隊これくしょん等海事系作品は海上自衛隊とも深く広報協力し、この種の連携は今に始まった事ではない。

 蒼き鋼のアルペジオ、人格を持つ潜水艦が主人公の作品なのですが、2012年自衛隊観艦式では何故か海上自衛隊とコラボレーションを実施しています。どうしてもSFといいますと軍事要素と若干でも重なるものがありまして、同時にリアリティを追求しますと軍事機構たる自衛隊の協力が要る、対して広報を強化した自衛隊、双方の利益一致となったかたち。

 ストライクウィッチーズポスター、大津と無関係か、と問われますと大津には大津海軍航空隊、水上戦闘機強風等が配備されていた歴史があります。作品に日本は出てきませんが日本とよく似た扶桑国が登場します。主人公の宮藤芳佳は武藤金義、登場人物の坂本美緒は坂井三郎がモデルといい、日本海軍の搭乗員でした。ですから繋がりが皆無ではない。

 広報とは受け手の主観的なもの、多様であっていい。ストライクウィッチーズ起用への批判はジェンダー論的批判がありますが、ならばゴルゴ13を併用し二種類広報予算を確保すればよいのか。アニメーションの自衛隊広報連携事態へ批判があるのであれば専守防衛という領域に入った敵は確実に無力化する防衛力と精強さを誇示した広報とすればよいのか。

 防衛力と精強を前面に推し出した広報というものは、あっていいとは思います。例えば自衛隊の任務、南西諸島へ押しかかる中国大陸某国からの軍事脅威や朝鮮半島某国からの核攻撃脅威に北方領土で軍事演習を続け北海道北部へ大陸某国からの軍事脅威を受ける現状を前に自衛隊が如何にシーレーンを維持し航空優勢を確保、着上陸を阻止するか、など。

 しかし、精強さを第一に推し出す広報へも批判が集まる事も事実です。例えば昨年実施された築城基地航空祭へは航空祭特別塗装のF-2戦闘機、平成の零戦と呼ばれた機体に築城海軍航空隊時代の標語、見敵必戦を捩った見敵必殺を記したところ、好戦的だとの地元自治体の批判が集まった事も記憶に新しいもの。故に批判は絶無とはできず、やるしかない。

 ガーリーエアフォース、現在もBS-211にて毎週水曜日2500時より、小松基地と那覇基地を舞台に擬人化した自衛隊機、JAS-39やF-4EJとF-2,米軍のF-15が搭乗する作品が放映されていまして、自衛隊と中国軍や台湾軍と米軍が協力し未知の勢力から人類を護る、との世界観のアニメーション作品へ、音響や基地描写等の面で航空自衛隊が協力しています。

 ガメラ2レギオン襲来、1996年のSF映画で映像作品として初めて日本SF大賞を受賞した作品がありました。もし巨大生物災害が現実の日本において発生した場合、人々や公的機関はどう動くのか、を問うた作品、自衛隊も富士学校や高射学校はじめ撮影に全面協力しているのですが、何故か新聞赤旗で叩かれた。故にこうした批判は常にあるのでしょう。コラボも含め、完全賞賛ではなく、上手くやってゆく方向性を模索するべきなのでしょう、ね。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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コメント (3)
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