■南海トラフ地震への国家の備え
本日は東日本大震災慰霊の日です。そしてあの災厄が突き付けた事実は地質学が示し歴史地震として歴史にのみ残る巨大災害が現代にも発生し得る現実です。
神戸国家災害戦略防災基地、仙台港であっても那覇軍港であっても良い、と本特集では提示しましたが、しかし確実性を期するならば神戸港の方が理想的です。神戸港の荷役能力の高さと伊丹空港という内陸部の空港施設、二つの利点を強調しましたがもう一つ、神戸市は本州最狭部に隣接している為です、要するに日本海側に近い太平洋岸の港湾という。
福知山線を利用するならば、貨物列車という最大の陸上輸送手段の恩恵を享受できるでしょう。JR貨物により日本海縦貫線を通じて本州全域から救援物資の輸送について太平洋沿岸を通らず、神戸へ集積する事が可能です。小浜線の輸送力の低さを考慮するならば、東海道本線京都線と神戸線が無事であれば湖西線経由で北陸本線から輸送する事も可能です。
横浜線、今回の特集において参考としている在日米軍首都圏戦略施設にあたる横田基地と相模原総合補給廠に横浜ノースドックがJR横浜線により連絡されています。永らく205系電車が山手線と同じような塗装で運行され続け、旧型車両が活躍するという印象がある横浜線、新横浜駅と横浜駅で東海道新幹線と東海道本線を結ぶ横浜線は横田基地へ向かう。
横田基地はヴェトナム戦争最盛期までは基地への航空燃料輸送に液体輸送貨物列車を活用していました。ここで活躍した路線の一つは横浜線の輸送でした。陸上輸送において例えばEF-200電気機関車は一両で1500tの貨物を牽引し、トラック輸送やトレーラー輸送とは次元の違う大量の輸送能力を有しています。ここで神戸港と鉄道線の関係が活きてくる。
伊丹空港、福知山線において重要な点は神戸港に近い点に併せて伊丹空港沿線を運行していまして、日本海側への運輸能力とともに、伊丹空港と神戸港を繋ぐ要素としても機能する点でしょう。ただ、関西国際空港のように直接空港内に乗り入れている訳ではなく、福知山線は尼崎から大阪方面へ延びる為、神戸港への直接輸送は考慮されている訳ではない。
関西国際空港と大阪港の連接性の方が、平時における物流からは連接性は高いと考えられます。特に関西国際空港は海上空港であり、伊丹空港が内陸部で周辺に住宅地化されている状況とは違います、特に24時間尾航空機離発着を行える利点から、災害時に被害を受けないのであれば、関西国際空港の利点は大きいといえるでしょう。しかし、関空空港は。
南海トラフ巨大地震を想定する限り、関西国際空港は5mから7mの津波直撃を受けます。2018年台風21号の高潮被害により第一期空港島全域が水没し丸々二日間、空港施設全体が閉鎖されました。可能ならば津波対策として静岡県の浜岡原子力発電所のように最大規模の津波を想定した止水壁と防波堤で覆う事が望ましいのですが、建設は現実的に難しい。
関西国際空港が伊丹空港程津波災害への安全性を確保出来ない背景には、津波は最大波高以上に遡上高が大きくなり、勿論30m40mの巨大防波堤ならば防ぐことは出来ましょうが、無理に高過ぎる防波堤を建設しますと、滑走路を離着陸する旅客機が防波堤に衝突する危険が生じます、残る選択肢は空港施設10m程度の嵩上げですが、これは新設と変わらない。
日本海縦貫線との連接性は、巨大地震により伊丹空港滑走路などが影響を受けた場合に代替案として石川県の小松空港から北陸本線経由で物資を輸送する事も可能です。もっとも、伊丹空港が破損するような規格外の規模の巨大地震で有れば、福知山線の影響も、なにより伊丹空港のすぐ隣を運行していますので路線被害も、無視できない可能性がありますが。
東海道本線で輸送する事は難しい、何故ならば2011年東日本大震災では津波警報により被災地から離れた東海道本線が不通になった為です、東海道本線は静岡県で沿岸部を運行していますから、ね。東日本大震災では伊勢湾沿岸の近鉄線も津波警報により運行を見合わせました。南海トラフ地震でも伊勢湾が津波被害を受ける為、東海道本線は安全ではない。
山陽本線は津波の直撃を逃れます。西日本沿岸全域に津波警報が発令される状況ですが、四国に守られた瀬戸内海沿岸の山陽本線は、潮位変化の被害は勿論無視できないでしょうが、津波の直撃による軌道崩壊等、復旧に時間を要する懸念だけは安心材料があるのです。もっとも、最大規模で発生した場合は、沿線が震度七の激震に襲われ破損の懸念はある。
大阪府北部地震の実例、震度七の懸念が政府の被害想定において最大規模で発生した場合に山陽本線が含まれているのですけれども、同じ震度七の大阪府北部地震では沿線が激震に襲われた山陽本線も軌道崩壊の被害からは免れました、阪急線が駅電光掲示板落下等、落下しても特急ダイヤを表示したままという強靭さを発揮しましたが、軌道は無事だった訳です。
神戸はなにしろ幕末の開港以来成長を続けてきましたので、日本の近代化と共に鉄道網や物流が集中する構造、阪神大震災により機能低下に見舞われるまでは荷役取扱量で世界一であった港湾です。そして神戸港は阪神工業地帯の最大の港湾施設であり、規模は非常に大きい。この為、道路網も港湾施設も鉄道さえも物流が神戸市に集約されているのですね。
日本海に近い神戸の立地は、日本海縦貫線との連携は勿論の事、国家災害戦略防災基地としての役割を考える場合、日本海沿岸における巨大災害に対しても即応性が高いことを意味します。もちろん、ポートアイランドから救援物資を海上輸送する際には関門海峡か津軽海峡を経由する必要がありますので、即座、という訳には行けませんが鉄道が使える。
日本海中部地震を筆頭に過去には津波災害は発生していますし、安土桃山時代の歴史地震として記録に残る天正地震の想定震源域は若狭湾沿岸部、従って南海トラフ巨大地震以外にも巨大な津波災害を伴う地震は日本海側においても留意する要素はあるのです。この点で福知山線と東海道本線湖西線を通じ、山陰本線北陸本線に至る神戸の立地は非常に高い。
阪神淡路大震災、神戸港の強靭な利点はもう一つ、1995年に発生したあの災厄と共に港湾と埠頭は大きな被害を受け、液状化被害と共に岸壁の破損、荷役施設の被害も看過できないものでした。神戸港が阪神大震災で受けた甚大な被害は、現在でも神戸港メリケン波止場に一部が震災遺構として永久保存されています。しかし復旧と共に耐震岸壁へ替わった。
神戸港耐震補強により、ポートアイランドも強化されるとともに、震災後に建設されました神戸空港も、滑走路など施設は大きくはありませんが液状化対策が施されています。南海トラフ巨大地震が連動発生した場合の神戸港の強靭性はまだ未知数ではありますが、少なくとも阪神大震災前ほどの脆弱性は、耐震強化により払拭されたと考えていいでしょう。
南海トラフ巨大地震は最大規模で発生した場合、想定死者数32万という先進国では核攻撃を除いて想定外の規模の死者数を突き付けています。この為に日本国家は災害に最大の挑戦を突き付けられる構図ですが、神戸国家災害戦略防災基地という選択肢は、神戸という現代日本が作り上げた巨大都市総力が災害被害を局限化できる施策である、と信じます。今回三日間に渡り連日掲載しました、巨大災害への備えに関する提言特集は、巨大災害には巨大都市機能でしか対抗し得ないと結論とし今回を最終回としましょう。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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本日は東日本大震災慰霊の日です。そしてあの災厄が突き付けた事実は地質学が示し歴史地震として歴史にのみ残る巨大災害が現代にも発生し得る現実です。
神戸国家災害戦略防災基地、仙台港であっても那覇軍港であっても良い、と本特集では提示しましたが、しかし確実性を期するならば神戸港の方が理想的です。神戸港の荷役能力の高さと伊丹空港という内陸部の空港施設、二つの利点を強調しましたがもう一つ、神戸市は本州最狭部に隣接している為です、要するに日本海側に近い太平洋岸の港湾という。
福知山線を利用するならば、貨物列車という最大の陸上輸送手段の恩恵を享受できるでしょう。JR貨物により日本海縦貫線を通じて本州全域から救援物資の輸送について太平洋沿岸を通らず、神戸へ集積する事が可能です。小浜線の輸送力の低さを考慮するならば、東海道本線京都線と神戸線が無事であれば湖西線経由で北陸本線から輸送する事も可能です。
横浜線、今回の特集において参考としている在日米軍首都圏戦略施設にあたる横田基地と相模原総合補給廠に横浜ノースドックがJR横浜線により連絡されています。永らく205系電車が山手線と同じような塗装で運行され続け、旧型車両が活躍するという印象がある横浜線、新横浜駅と横浜駅で東海道新幹線と東海道本線を結ぶ横浜線は横田基地へ向かう。
横田基地はヴェトナム戦争最盛期までは基地への航空燃料輸送に液体輸送貨物列車を活用していました。ここで活躍した路線の一つは横浜線の輸送でした。陸上輸送において例えばEF-200電気機関車は一両で1500tの貨物を牽引し、トラック輸送やトレーラー輸送とは次元の違う大量の輸送能力を有しています。ここで神戸港と鉄道線の関係が活きてくる。
伊丹空港、福知山線において重要な点は神戸港に近い点に併せて伊丹空港沿線を運行していまして、日本海側への運輸能力とともに、伊丹空港と神戸港を繋ぐ要素としても機能する点でしょう。ただ、関西国際空港のように直接空港内に乗り入れている訳ではなく、福知山線は尼崎から大阪方面へ延びる為、神戸港への直接輸送は考慮されている訳ではない。
関西国際空港と大阪港の連接性の方が、平時における物流からは連接性は高いと考えられます。特に関西国際空港は海上空港であり、伊丹空港が内陸部で周辺に住宅地化されている状況とは違います、特に24時間尾航空機離発着を行える利点から、災害時に被害を受けないのであれば、関西国際空港の利点は大きいといえるでしょう。しかし、関空空港は。
南海トラフ巨大地震を想定する限り、関西国際空港は5mから7mの津波直撃を受けます。2018年台風21号の高潮被害により第一期空港島全域が水没し丸々二日間、空港施設全体が閉鎖されました。可能ならば津波対策として静岡県の浜岡原子力発電所のように最大規模の津波を想定した止水壁と防波堤で覆う事が望ましいのですが、建設は現実的に難しい。
関西国際空港が伊丹空港程津波災害への安全性を確保出来ない背景には、津波は最大波高以上に遡上高が大きくなり、勿論30m40mの巨大防波堤ならば防ぐことは出来ましょうが、無理に高過ぎる防波堤を建設しますと、滑走路を離着陸する旅客機が防波堤に衝突する危険が生じます、残る選択肢は空港施設10m程度の嵩上げですが、これは新設と変わらない。
日本海縦貫線との連接性は、巨大地震により伊丹空港滑走路などが影響を受けた場合に代替案として石川県の小松空港から北陸本線経由で物資を輸送する事も可能です。もっとも、伊丹空港が破損するような規格外の規模の巨大地震で有れば、福知山線の影響も、なにより伊丹空港のすぐ隣を運行していますので路線被害も、無視できない可能性がありますが。
東海道本線で輸送する事は難しい、何故ならば2011年東日本大震災では津波警報により被災地から離れた東海道本線が不通になった為です、東海道本線は静岡県で沿岸部を運行していますから、ね。東日本大震災では伊勢湾沿岸の近鉄線も津波警報により運行を見合わせました。南海トラフ地震でも伊勢湾が津波被害を受ける為、東海道本線は安全ではない。
山陽本線は津波の直撃を逃れます。西日本沿岸全域に津波警報が発令される状況ですが、四国に守られた瀬戸内海沿岸の山陽本線は、潮位変化の被害は勿論無視できないでしょうが、津波の直撃による軌道崩壊等、復旧に時間を要する懸念だけは安心材料があるのです。もっとも、最大規模で発生した場合は、沿線が震度七の激震に襲われ破損の懸念はある。
大阪府北部地震の実例、震度七の懸念が政府の被害想定において最大規模で発生した場合に山陽本線が含まれているのですけれども、同じ震度七の大阪府北部地震では沿線が激震に襲われた山陽本線も軌道崩壊の被害からは免れました、阪急線が駅電光掲示板落下等、落下しても特急ダイヤを表示したままという強靭さを発揮しましたが、軌道は無事だった訳です。
神戸はなにしろ幕末の開港以来成長を続けてきましたので、日本の近代化と共に鉄道網や物流が集中する構造、阪神大震災により機能低下に見舞われるまでは荷役取扱量で世界一であった港湾です。そして神戸港は阪神工業地帯の最大の港湾施設であり、規模は非常に大きい。この為、道路網も港湾施設も鉄道さえも物流が神戸市に集約されているのですね。
日本海に近い神戸の立地は、日本海縦貫線との連携は勿論の事、国家災害戦略防災基地としての役割を考える場合、日本海沿岸における巨大災害に対しても即応性が高いことを意味します。もちろん、ポートアイランドから救援物資を海上輸送する際には関門海峡か津軽海峡を経由する必要がありますので、即座、という訳には行けませんが鉄道が使える。
日本海中部地震を筆頭に過去には津波災害は発生していますし、安土桃山時代の歴史地震として記録に残る天正地震の想定震源域は若狭湾沿岸部、従って南海トラフ巨大地震以外にも巨大な津波災害を伴う地震は日本海側においても留意する要素はあるのです。この点で福知山線と東海道本線湖西線を通じ、山陰本線北陸本線に至る神戸の立地は非常に高い。
阪神淡路大震災、神戸港の強靭な利点はもう一つ、1995年に発生したあの災厄と共に港湾と埠頭は大きな被害を受け、液状化被害と共に岸壁の破損、荷役施設の被害も看過できないものでした。神戸港が阪神大震災で受けた甚大な被害は、現在でも神戸港メリケン波止場に一部が震災遺構として永久保存されています。しかし復旧と共に耐震岸壁へ替わった。
神戸港耐震補強により、ポートアイランドも強化されるとともに、震災後に建設されました神戸空港も、滑走路など施設は大きくはありませんが液状化対策が施されています。南海トラフ巨大地震が連動発生した場合の神戸港の強靭性はまだ未知数ではありますが、少なくとも阪神大震災前ほどの脆弱性は、耐震強化により払拭されたと考えていいでしょう。
南海トラフ巨大地震は最大規模で発生した場合、想定死者数32万という先進国では核攻撃を除いて想定外の規模の死者数を突き付けています。この為に日本国家は災害に最大の挑戦を突き付けられる構図ですが、神戸国家災害戦略防災基地という選択肢は、神戸という現代日本が作り上げた巨大都市総力が災害被害を局限化できる施策である、と信じます。今回三日間に渡り連日掲載しました、巨大災害への備えに関する提言特集は、巨大災害には巨大都市機能でしか対抗し得ないと結論とし今回を最終回としましょう。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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