■被災地に神戸港&伊丹空港移設
神戸国家災害戦略防災基地とは、移動式の港湾と空港を神戸周辺に準備し災害時に神戸港や伊丹空港の一部を現地に即座に移設する、という方式の提案です。
防災といいますと耐震補強をしっかりと行い家具を固定、非常用持ち出し袋と三日分の食糧に水を用意しておけば、あとは火の用心と避難所整備、この認識が根底から崩れたのが東日本大震災でした。何しろ内陸数kmにわたって津波被害を受け、家屋は土台から建物五階部分まで根こそぎ津波に押し流される状況では個人や市町村の防災準備では限界がある。
アメリカ軍の大規模戦争準備、今回防災に応用するべく参考としたのは、湾岸戦争やヴェトナム戦争で50万名規模の米軍部隊を本土から遠く離れた前線へ展開させた戦訓に基づく、拠点となる空港や港湾設備をそのまま現地へ持って行くという兵站基盤を応用出来れば、荒野となった被災地、救助即応に即座の復旧と迅速な復興に着手できるであろう期待です。
神戸国家災害戦略防災基地、在日米軍が大規模武力紛争に備え我が国首都圏へ実施している横田基地、相模原総合補給廠、横浜ノースドック、この三施設体系に範を採った国家規模の防災施設群を建設すべきという視点、伊丹空港、神戸ポートアイランド、神戸港、という三要素から自治体に不能な高次元の国家災害戦略防災基地を、という考え方です。
RDCS,緊急展開型導橋システムの略称ですが、大規模災害を考えますとONRアメリカ海軍先端研究室が主導として開発している港湾代替施設の導入を併せて検討する必要があるでしょう。本特集では移動式の空港と港湾施設を準備するべき、としていますが、移動式の空港がハーベストファルコンであるのに対し、移動式の港湾施設がこのRDCSということ。
南海トラフ巨大地震に際して、確実に考えなければならないのは津波災害です。そして津波災害は人命への大きな脅威を及ぼすと共に港湾インフラや道路施設と沿岸部の空港施設や鉄道施設を危険に曝します。この中で船舶輸送の中枢となる港湾施設が津波被害を受ける事は、長期的な救助活動へ影響を及ぼします。港が使えなければ物資を陸揚げできない。
マルベリーシステムという移動式埠頭が1944年のノルマンディー上陸作戦において連合軍が活用しました、これは最大200万規模の部隊展開を考える際にシェルブール港やカレー港を連合軍が確保しなければ、海岸から戦車揚陸艦などで上陸するのでは充分な荷役機能を確保出来ない為に代替案として開発されたもの、巨大な艀の海岸固定式埠頭、という。
オーバーロード作戦として連合軍がノルマンディーへ上陸した際にドイツ軍が最も悩んだのは連合軍が大量の物資をどの港湾施設から揚陸しているか把握できなかった事であり、同時に主要港湾から距離のあるノルマンディー着上陸は軍事合理性から有り得無いとドイツ軍が判断している、ここに連合軍は戦略的奇襲の可能性を見出した事が成功へ繋がる。
RDCSは、350mの連結式浮桟橋です。海岸線までは喫水のある船舶では接近できません、この為に港というものがあるのですが。しかしRDCSの350mという距離の導橋を構築してしまえば海岸地形にもよりますがRORO船、車両や貨物をそのままタラップから乗降させる構造の貨物船からそのまま海岸線へ揚陸させる事が可能です。これは津波災害に強い。
津波災害において沿岸部へ揚陸させる際に最も障害となるのは津波漂流物です、何故ならば生存者を含む漂流者、生存者以外も含めて、漂流物とともに漂流している可能性があります。簡単に漁網などで掃海する事は出来ません、しかし、漂流物を除去しなければ揚陸艇を揚陸させる事もなかなかできません。外洋に面していれば流れてゆく可能性もあるが。
港湾施設は、しかし潮流や波浪の影響を受けにくい場所が港湾としての条件として良港である為、津波漂流物が滞留する場所に築港される事が多い。そこで、RDCSが配置する事が出来るならば、漂流物が塞ぐ救援艦船と港湾施設の最中をそのまま水上道路を通す事が可能となります。津波被害を受けた後でも埠頭を使えば荷役作業が素早く展開できます。
マルベリーシステムとRDCSの違いについてですが、RDCSは12mと24mの分割式艀構造を採用していまして、接合部分にはダンパーを備えています。マルベリーシステムよりも一つ一つは小型なのですが、ダンパーにより波浪の動揺、上下動の影響を吸収する事が出来ます。勿論限度はありますが、マルベリーシステムよりも長い距離を繋げる訳ですね。
事前集積船や病院船という選択肢、陸上の倉庫に救援物資を集積するのではなく、貨物船、それこそそれほど大きくは無い中古のカーフェリーなどでも代替できるもので、船舶要員は平時には最低限の保守管理を、災害時には予備自衛官を招集し操船させる、召集が間に合わない場合には、現役要員が操船し、その補填に予備自衛官、という施策もあり得ます。
きたかみ、太平洋フェリーの新旧交代が先日行われましたが、旧きたかみ、は廃船となります。こうした中古フェリーを取得するという選択肢はあるでしょう、はくおう、自衛隊の傭船はこの方式で取得しました。毎日運航するのではありませんから多少老朽化していても問題はありません。カーフェリーであれば輸送艦よりも輸送力だけは非常に大きい。
病院船、政府は幾度か大規模災害への対処を主眼にその装備化を検討しています。要するに客船やタンカーを改造し病院設備を船内に搭載し、独立した運用が可能となります。また、アメリカ軍が世界中に展開させる事前集積船という、これは明らかに軍用に用途が限定されますが、師団規模の装備品をRORO船に搭載し、洋上へ配置するという施策もある。
事前集積船という選択肢は、例えば貨物船数隻分に、別に戦車や装甲車は不要ですが、保存食料や3t半トラック、トラックならば消防でも運用可能だ、小型水陸両用車輌等を搭載し、遊弋させておく選択肢はあり得るかもしれません。もちろん、この施策を採っているアメリカ軍は車両のバッテリー性能維持等、定期的に必要な整備を行っているのですが。
海上待機、これこそ自治体にはできない、政府が国家事業として防災政策を薦めなければ発想として生まれない発想です。ここまでも十年以内に来るか判らない災害へ備える必要はあるのか、という批判もあるでしょうが、ここまで記した防災施策は国家規模の災害対処とともに、防衛出動という起きえない事が望ましい事態への抑止力ともなるでしょう。
ハーベストファルコンは津波災害により壊滅した飛行場施設を復旧させるためにアメリカの施策を学ぶという視点で必要性を提示しましたが、本来はアメリカ空軍が何もない滑走路だけの施設へ戦闘機部隊を展開させる為の資材です。災害時には寄与しますが、南西諸島有事にて、那覇基地がミサイル飽和攻撃を受けた際にも当然復旧へ活用できる装備です。
ラニーミード級汎用輸送艇は大量の支援物資を沿岸部で埠頭と埠頭を仕分けと輸送の為に用いる沿岸用輸送艇ですが、災害時に大量の物資を輸送する用途であると共に、そもそも有事の際にも必要な燃料や衛生器材と戦闘支援器材を仕分けるもの、防衛出動に際しても必要な機材は戦闘車両や火砲と弾薬だけではなく、防災と防衛で重なる必要物資は多い。
RDCS,緊急展開型導橋システムも津波被害を受けた港湾復旧に必要な機材であると提示しましたが、元々RDCS,緊急展開型導橋システムそのものはアメリカ軍が大量の物資や車両を事前集積船から沿岸部へ揚陸する為の器材である訳で、これも南西諸島有事の他に大量の陸上部隊を輸送する際などに輸送艦に載りきらない車両や物資の輸送に寄与するものだ。
災害対処へ大きな投資を、とも受け取れるこの特集ですが、自衛隊の主任務は防災ではなく防衛だ、という反論は当然有り得るでしょう、当方も同感です。しかし、神戸国家災害戦略防災基地、という選択肢は同時に戦闘以外の戦闘支援や兵站という部分で、防衛力強化に資するものです。何より、共に国家危機、という部分で重なっているのですから、ね。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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神戸国家災害戦略防災基地とは、移動式の港湾と空港を神戸周辺に準備し災害時に神戸港や伊丹空港の一部を現地に即座に移設する、という方式の提案です。
防災といいますと耐震補強をしっかりと行い家具を固定、非常用持ち出し袋と三日分の食糧に水を用意しておけば、あとは火の用心と避難所整備、この認識が根底から崩れたのが東日本大震災でした。何しろ内陸数kmにわたって津波被害を受け、家屋は土台から建物五階部分まで根こそぎ津波に押し流される状況では個人や市町村の防災準備では限界がある。
アメリカ軍の大規模戦争準備、今回防災に応用するべく参考としたのは、湾岸戦争やヴェトナム戦争で50万名規模の米軍部隊を本土から遠く離れた前線へ展開させた戦訓に基づく、拠点となる空港や港湾設備をそのまま現地へ持って行くという兵站基盤を応用出来れば、荒野となった被災地、救助即応に即座の復旧と迅速な復興に着手できるであろう期待です。
神戸国家災害戦略防災基地、在日米軍が大規模武力紛争に備え我が国首都圏へ実施している横田基地、相模原総合補給廠、横浜ノースドック、この三施設体系に範を採った国家規模の防災施設群を建設すべきという視点、伊丹空港、神戸ポートアイランド、神戸港、という三要素から自治体に不能な高次元の国家災害戦略防災基地を、という考え方です。
RDCS,緊急展開型導橋システムの略称ですが、大規模災害を考えますとONRアメリカ海軍先端研究室が主導として開発している港湾代替施設の導入を併せて検討する必要があるでしょう。本特集では移動式の空港と港湾施設を準備するべき、としていますが、移動式の空港がハーベストファルコンであるのに対し、移動式の港湾施設がこのRDCSということ。
南海トラフ巨大地震に際して、確実に考えなければならないのは津波災害です。そして津波災害は人命への大きな脅威を及ぼすと共に港湾インフラや道路施設と沿岸部の空港施設や鉄道施設を危険に曝します。この中で船舶輸送の中枢となる港湾施設が津波被害を受ける事は、長期的な救助活動へ影響を及ぼします。港が使えなければ物資を陸揚げできない。
マルベリーシステムという移動式埠頭が1944年のノルマンディー上陸作戦において連合軍が活用しました、これは最大200万規模の部隊展開を考える際にシェルブール港やカレー港を連合軍が確保しなければ、海岸から戦車揚陸艦などで上陸するのでは充分な荷役機能を確保出来ない為に代替案として開発されたもの、巨大な艀の海岸固定式埠頭、という。
オーバーロード作戦として連合軍がノルマンディーへ上陸した際にドイツ軍が最も悩んだのは連合軍が大量の物資をどの港湾施設から揚陸しているか把握できなかった事であり、同時に主要港湾から距離のあるノルマンディー着上陸は軍事合理性から有り得無いとドイツ軍が判断している、ここに連合軍は戦略的奇襲の可能性を見出した事が成功へ繋がる。
RDCSは、350mの連結式浮桟橋です。海岸線までは喫水のある船舶では接近できません、この為に港というものがあるのですが。しかしRDCSの350mという距離の導橋を構築してしまえば海岸地形にもよりますがRORO船、車両や貨物をそのままタラップから乗降させる構造の貨物船からそのまま海岸線へ揚陸させる事が可能です。これは津波災害に強い。
津波災害において沿岸部へ揚陸させる際に最も障害となるのは津波漂流物です、何故ならば生存者を含む漂流者、生存者以外も含めて、漂流物とともに漂流している可能性があります。簡単に漁網などで掃海する事は出来ません、しかし、漂流物を除去しなければ揚陸艇を揚陸させる事もなかなかできません。外洋に面していれば流れてゆく可能性もあるが。
港湾施設は、しかし潮流や波浪の影響を受けにくい場所が港湾としての条件として良港である為、津波漂流物が滞留する場所に築港される事が多い。そこで、RDCSが配置する事が出来るならば、漂流物が塞ぐ救援艦船と港湾施設の最中をそのまま水上道路を通す事が可能となります。津波被害を受けた後でも埠頭を使えば荷役作業が素早く展開できます。
マルベリーシステムとRDCSの違いについてですが、RDCSは12mと24mの分割式艀構造を採用していまして、接合部分にはダンパーを備えています。マルベリーシステムよりも一つ一つは小型なのですが、ダンパーにより波浪の動揺、上下動の影響を吸収する事が出来ます。勿論限度はありますが、マルベリーシステムよりも長い距離を繋げる訳ですね。
事前集積船や病院船という選択肢、陸上の倉庫に救援物資を集積するのではなく、貨物船、それこそそれほど大きくは無い中古のカーフェリーなどでも代替できるもので、船舶要員は平時には最低限の保守管理を、災害時には予備自衛官を招集し操船させる、召集が間に合わない場合には、現役要員が操船し、その補填に予備自衛官、という施策もあり得ます。
きたかみ、太平洋フェリーの新旧交代が先日行われましたが、旧きたかみ、は廃船となります。こうした中古フェリーを取得するという選択肢はあるでしょう、はくおう、自衛隊の傭船はこの方式で取得しました。毎日運航するのではありませんから多少老朽化していても問題はありません。カーフェリーであれば輸送艦よりも輸送力だけは非常に大きい。
病院船、政府は幾度か大規模災害への対処を主眼にその装備化を検討しています。要するに客船やタンカーを改造し病院設備を船内に搭載し、独立した運用が可能となります。また、アメリカ軍が世界中に展開させる事前集積船という、これは明らかに軍用に用途が限定されますが、師団規模の装備品をRORO船に搭載し、洋上へ配置するという施策もある。
事前集積船という選択肢は、例えば貨物船数隻分に、別に戦車や装甲車は不要ですが、保存食料や3t半トラック、トラックならば消防でも運用可能だ、小型水陸両用車輌等を搭載し、遊弋させておく選択肢はあり得るかもしれません。もちろん、この施策を採っているアメリカ軍は車両のバッテリー性能維持等、定期的に必要な整備を行っているのですが。
海上待機、これこそ自治体にはできない、政府が国家事業として防災政策を薦めなければ発想として生まれない発想です。ここまでも十年以内に来るか判らない災害へ備える必要はあるのか、という批判もあるでしょうが、ここまで記した防災施策は国家規模の災害対処とともに、防衛出動という起きえない事が望ましい事態への抑止力ともなるでしょう。
ハーベストファルコンは津波災害により壊滅した飛行場施設を復旧させるためにアメリカの施策を学ぶという視点で必要性を提示しましたが、本来はアメリカ空軍が何もない滑走路だけの施設へ戦闘機部隊を展開させる為の資材です。災害時には寄与しますが、南西諸島有事にて、那覇基地がミサイル飽和攻撃を受けた際にも当然復旧へ活用できる装備です。
ラニーミード級汎用輸送艇は大量の支援物資を沿岸部で埠頭と埠頭を仕分けと輸送の為に用いる沿岸用輸送艇ですが、災害時に大量の物資を輸送する用途であると共に、そもそも有事の際にも必要な燃料や衛生器材と戦闘支援器材を仕分けるもの、防衛出動に際しても必要な機材は戦闘車両や火砲と弾薬だけではなく、防災と防衛で重なる必要物資は多い。
RDCS,緊急展開型導橋システムも津波被害を受けた港湾復旧に必要な機材であると提示しましたが、元々RDCS,緊急展開型導橋システムそのものはアメリカ軍が大量の物資や車両を事前集積船から沿岸部へ揚陸する為の器材である訳で、これも南西諸島有事の他に大量の陸上部隊を輸送する際などに輸送艦に載りきらない車両や物資の輸送に寄与するものだ。
災害対処へ大きな投資を、とも受け取れるこの特集ですが、自衛隊の主任務は防災ではなく防衛だ、という反論は当然有り得るでしょう、当方も同感です。しかし、神戸国家災害戦略防災基地、という選択肢は同時に戦闘以外の戦闘支援や兵站という部分で、防衛力強化に資するものです。何より、共に国家危機、という部分で重なっているのですから、ね。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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