北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

ウクライナ戦争開戦四カ月-第一次大戦型の砲兵戦展開と戦争早期終結左右するウクライナへの火力緊急供与

2022-06-25 20:00:11 | 国際・政治
■戦争は長期化の様相
 ロシア海軍艦艇や戦略爆撃機を含む爆撃機の我が国周辺での行動が活性化しているのはこれまでお伝えしている通りです。

 開戦四カ月、ロシア軍ウクライナ侵攻という現代以前の近代のような侵略から始まりました戦争は、ウクライナ軍の善戦とロシア軍の稚拙な指揮により最初の数週間での首都キエフ、現地名キーウ攻防戦でロシア軍の撃退に成功、しかし長期化の様相を見せ、その影響はロシア経済制裁の一翼を担う日本へもロシア軍機の飛来増大として顕在化しています。

 日本も巻き込まれるのか、こういう認識ですが、今回ロシアがウクライナを侵攻した、核開発疑惑とナチズムの台頭、あり得ないと主張してもロシアはIAEA国際原子力機関やNPT査察プログラムを通さず、大量破壊兵器疑惑を一方的に主張し手続きを取らず侵攻、ナチズム台頭にしても大統領がユダヤ系でありあり得ない事さえも無視しました、これは。

 ロシアの主張をそのまま理解してしまえば、日本を侵略する際にも、国境を接しているフィンランドを侵略する際にも、ドイツ侵攻の方便にさえ使えてしまい、許容できるものではありません、力が有れば如何としても無理が通るならば、それはロシア自身が対ファシスト戦争におけるナチスドイツの立場を擁護する事にも繋がるのです、この為に制裁が。

 日本も巻き込まれるというよりは、ここでロシアの主張に恭順を示せば、いずれ日本も北海道や新潟が戦場となり、東京や大阪に巡航ミサイルが着弾する事となる、ウクライナで消耗したロシア軍が直ぐにと云う事は無いでしょうが時間の問題となる、だからこそ経済制裁により対応していますが、結果的にロシア軍の軍事圧力が日本へ向いている状況です。

 ウクライナ軍は、首都防衛はほぼ達成できていますが、南部ではマリウポリ失陥後、ロシア軍が兵力全てをドンバス地域へ投入へ投入しており、一時攻撃が後退していた第二都市ハリコフへもミサイル攻撃が再開されています、要するに体勢を立て直したロシア軍に対し次第に圧されている状況があり、ロシアは機動戦を断念し第一次大戦型の砲兵戦重視へ移行しました。

 火力で圧されている状況がある、ウクライナ軍は砲兵で劣勢という指摘がありますが、世界で最も砲兵を重視し規模では世界最大を自負するロシア軍を相手としているのですから、火砲だけで対応するには限度があります、ただ、こうした状況では本来、低空侵攻可能な攻撃機や戦闘ヘリコプターが威力を発揮するのですが、こうした装備も充分ありません。

 火砲を求めている、ウクライナ軍は厳し状況を挽回するには、当初要請していたソ連時代からの装備としてウクライナ軍も採用する152mm火砲や122mm火砲ではなくNATO標準の155mm火砲を求めている状況です。NATOや欧州各国が支援を表明しているのですが、様々な事情から遅れている状況があり、これは戦争を狂気化させる可能性があります。

 PzH-2000自走榴弾砲が遂にウクライナへ到着したとのことです。これはウクライナのレズニコフ国防大臣がSNS上で到着を発表したもので、6月22日にAFP通信なども報じました。PzH-2000は52口径の155mm自走榴弾砲で、フランスが提供したカエサル装輪自走榴弾砲と比較し、装甲化されている点、装軌式で不整地踏破能力の高さが特色というもの。

 しかし、時間がかかった、という印象は否めません。実際のところ、ノルウェーは39口径のM-109自走榴弾砲を22両提供すると決定し、イタリアもFH-70榴弾砲の提供を決定しています、が、アメリカの提供した90門のM-777榴弾砲、そしてフランスのカエサル自走榴弾砲12両が引き渡され、第一線で使用されているのみ、他は供与に向け準備中という。

 HIMARSとMLRS,アメリカがHIMARSを4両、イギリスがMLRSを3両ウクライナへ供与すると発表しました、自衛隊でいえば一個特科中隊の規模ですが、提供決定は大きなニュースとなりました一方、訓練に時間がかかるとアメリカ当局者が付け加えた通り、配備は遅れ今月23日に到着しました、この二つの装備は射程が大きく重要な装備なのですが。

 東部ハリコフ州においてロシア軍が再度攻勢にでている段階であり、砲兵火力は喫緊の課題となっていますが引き渡しは遅れています。ただ、これはNATOが出し渋っている、という訳でもありません。ポーランドやチェコが提供したT-72戦車などは既に運び込まれているとされ、政治的な配慮から配備を遅らせているわけではないとわかります。では何か。

 問題は二つ、NATOの装備はロシア系装備を中心としたウクライナ軍からは運用に教育が必要である事、そしてNATO全体で提供できる火砲は、そもそもNATOがいま保有している火砲の少なさから限界がある、この二つの問題があります。教育訓練は、無視できない問題で、一時的とはいえ厳しい前線から貴重な兵員を教育へ一旦下げなければなりません。

 ドイツ側の限界もある、PzH-2000をそのまま譲渡されても、動かす事は出来るでしょうが2S1自走砲とは車内が根本から違います、自衛隊の75式自走榴弾砲と99式自走榴弾砲の違いという安易なものではなく設計思想は勿論、人間工学や操砲に関する哲学から違う装備です、つまり教育が必要だ、しかしドイツ軍にPzH-2000は40門しか稼働していない。

 PzH-2000を供与するには、ウクライナ兵へPzH-2000の運用砲を教育する必要があるのですが、なにしろPzH-2000が40門しか無いということは、PzH-2000の要員もまた40門分しか想定していない、ムンスター戦車学校から教育要員が受け入れるにしても限界があります、実際、火砲については定点で延々弾幕を張る火砲は、欧州にはもうありません。

 火砲は、カエサル自走榴弾砲やM-777榴弾砲について、標定装置などがデジタル化されており、従来火砲よりも短時間で正確な射撃が可能となっていますが、標桿射撃など伝統的な火砲とは操作方法が異なります。勿論可能ですが精度が大幅に落ちる為の緊急用という。NATOは火力投射手段として火砲の他に航空機供与まで踏み込んでもよいのではないか、現状のままでは、この戦争は長引くのでしょう。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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【京都発幕間旅情】榛名さんの総監部グルメ日誌-三重久居,自衛隊駐屯地の駅前酒場で頂く焼き立ての焼き鳥

2022-06-25 14:44:30 | グルメ
■榛名さんの総監部グルメ日誌
 総監部というには航空学校明野本校と第33普通科連隊び第1警戒隊や第14高射隊が置かれているくらいですが、難しい事は考えず晩酌の話題です。

 夕暮れ酒場、こんな単語がありましたが、なんでもCOVID-19の時代となりますと晩酌は、一杯やると自動車を運転できない程に判断力が鈍り、感染対策の抜け穴になることから慎重を呼び掛けられ、呼び掛けられると呑む気は霧散します、ただ、事情は変わってきた。

 近鉄特急が行き交う近鉄本線、夕暮れが近づいてまいりました。COVID-19,このところの落ち着きということで、まあ夕暮れ前ならばまだ客の入っていない店もあるだろうし、一番乗りで晩酌を嗜んでみよう、二年前ならばこれ、油断だぞ、と戒めたのかもしれません。

 久居駅前の駅前通り、いや自衛隊側の通りですので自衛隊通りと呼ぶべきでしょうか、反対側の方が繁華街となっているのですが、こんな時代ですので静かな自衛隊通り側で、ちょっとビールと焼き鳥を頂こう、という気分で暖簾の向こうを覗けばほら、空いているね。

 三川、ビールを最初に注文しまして、メニューを見ますのはその後です。焼酎にも色々と興味はあるのですが、銘柄を考えずに済むのはビールの方、黄金色の芳醇な液体が冷たさを秘めてジョッキに注がれ泡と共に運ばれてきます、その僅かな頃合いに最初の品を選ぶ。

 じゃこおろし、素早く出てきます注文は何かを聞きますとポテトサラダなどが挙げられましたが、キュウリが好きではありませんので、それにここは伊勢湾に近い、何処産かは聞きませんでしたが醤油をちょいちょいと垂らし、同時に注文の焼き鳥を待ちつつ摘まむ。

 鳥皮串の、ここは一本一本注文するのではなく二本一皿で400円からという仕組みでして、できればお任せ五本という注文が出来ればなあ、こう思ったものなのですが、まあ久々の店で焼きたての焼き鳥、難しい事は考えずにふうふう吹いて焼き立てを、口に運んでゆく。

 ぽんじり。考えてみると、おまかせ五本という注文ですと一皿に五本載っているのですから、直ぐ冷めてしまうのですよね、焼き立てを頂くならば、なるほど、一本二本を都度に齧る方が、お店といいますか、焼き台の目の前で食べているのだからなあ、とも納得する。

 大隅をロックでと考えたのですが最初は水割りで、続いて。やはり焼き鳥には少し度の強い個性で胃の腑を満たしたいのですが、順番を考えて水割りです。家呑みではロックの溶けた氷で自然水割りを待つのですが、しかし、改めて、創ってもらう水割りは美味しい。

 ハツ、焼きあがりました。久しぶりなので勘が鈍っているのですが、部位によって焼き時間が違いますので、お酒を口に運ぶ頃合いと注文する部位というものはもう少し考えねばならないのですが、まあ、美味しいので細かい事は良しとしましょう、美味しければ良し。

 赤霧島を、今度はロックで。しかし目の前に霧島さんが並んでふと気づいたのですが、ここ三重県なのだからご当地のキンミヤを頂くべきでしたよね。ちびりちびりと焼き鳥を嗜んでいますと、放映されている地元ローカルニュース番組では今日のCOVID-19感染者数が、また増え始めている、そんな論調と店も混雑が始まりましたので、晩酌を終えました。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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アフガニスタン南東部地震-タリバン政権は救助作戦終了,発災後72時間経ず救助終了-各国へは資金等要請

2022-06-25 07:01:56 | 防災・災害派遣
■臨時情報-アフガン地震
 日本であれば初動72時間こそが生存者救命が左右されると大車輪で救助部隊を掻き集めるのですが。

 アフガニスタンでの地震は、タリバン政権が救助作戦の終了を発表しました。現地時間22日未明にアフガニスタン南東部にて発生した地震は、タリバン現地当局者の発表として死者数1000名以上、負傷者は1500名に昇るとしていて、被害は甚大です。タリバン政権は国際社会に支援を求めつつ、しかし救助作戦は24日までに終了したとも発表しています。

 日本政府を含め国際緊急援助隊を派遣している国はいまのところありません、これはアフガニスタンのタリバン政権は民主政権を武力打倒した後に女性参政権は勿論、教育や就業制限など女性人権を無視した施策を採り、各国との歩み寄りを拒否した政策を採っている為です。今回も、国際社会に支援を求めつつ、しかし具体的な支援などが不明確のままだ。

 地震は現地時間0130時頃に発生、震源は南東部ホスト州の州都ホストから44kmの地点で、地震の規模を示すマグニチュードは6.1、イギリスのBBCによれば被害はパクティカ州のガヤン地区とバルマル地区に集中していると現地医療関係者の声を伝えています。ただ、ホストから被災地までは舗装道路が無く、携帯電話中継施設倒壊により通信不能ともいう。

 タリバン政権の救助はヘリコプターにより行われているようですが、BBC報道を見る限りはMi-8中型ヘリコプターが1機飛行している以外はそれらしい救助活動はなく、また南東部は親タリバン地域ではあるのですが、ヘリコプター発着地域には小銃で武装したタリバン勢力が警戒している様子も映り、治安の問題か援助過小からの騒乱などが考えられます。

 国際社会の支援を求めているタリバン政権ですが、同時に昨年8月の民主政権転覆により同国は厳しい経済制裁下にあり、また、昨年の政権奪取後における各国との外交関係構築にも熱心ではなく、内陸国である同国ですが人道支援を行った場合でも被災地へ救援物資を搬入できる国は、多くはありません。タリバン政権が救助作戦を終了している事も響く。

 OCHA国連人道問題調整事務所によれば、国連とパキスタン政府が医療チーム派遣を準備中とのことです。ただ、被災地は土煉瓦造の建物が多く、日本では影響が出ない程度の揺れでも圧潰する事例が被害を大きくしているようです、特に死者1000名以上といいますが、まだ瓦礫の下に被災者が居る状況で、災害発生後72時間を経ずして救助が終了している。

 人道支援を要請するタリバン政権ですが、そもそも現地政府が何もしていない中で海外からの支援を受ける姿勢は被災地へ国際緊急援助を派遣する諸国が好意的に見るには無理があり、また、資金援助を行った場合でもアフガニスタンはタリバン政権前まで海外援助に依存しており、タリバン政権自身が経済破綻している中、被災者に渡るかの透明性が無い。

 タリバン政権は災害発生後まだ瓦礫の下に生存者がいるとされる72時間以内に救助を撃ち切り、一方で外国援助の再開を求めるなど、統治能力の限界を示していますが、問題は日本はじめ先進国から見れば破綻しているといえる統治機構を、当事者のタリバン政権側が改善させようという姿勢が見えない点で、なんとかならないのかという率直な印象です。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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