■戦争は長期化の様相
ロシア海軍艦艇や戦略爆撃機を含む爆撃機の我が国周辺での行動が活性化しているのはこれまでお伝えしている通りです。

開戦四カ月、ロシア軍ウクライナ侵攻という現代以前の近代のような侵略から始まりました戦争は、ウクライナ軍の善戦とロシア軍の稚拙な指揮により最初の数週間での首都キエフ、現地名キーウ攻防戦でロシア軍の撃退に成功、しかし長期化の様相を見せ、その影響はロシア経済制裁の一翼を担う日本へもロシア軍機の飛来増大として顕在化しています。

日本も巻き込まれるのか、こういう認識ですが、今回ロシアがウクライナを侵攻した、核開発疑惑とナチズムの台頭、あり得ないと主張してもロシアはIAEA国際原子力機関やNPT査察プログラムを通さず、大量破壊兵器疑惑を一方的に主張し手続きを取らず侵攻、ナチズム台頭にしても大統領がユダヤ系でありあり得ない事さえも無視しました、これは。

ロシアの主張をそのまま理解してしまえば、日本を侵略する際にも、国境を接しているフィンランドを侵略する際にも、ドイツ侵攻の方便にさえ使えてしまい、許容できるものではありません、力が有れば如何としても無理が通るならば、それはロシア自身が対ファシスト戦争におけるナチスドイツの立場を擁護する事にも繋がるのです、この為に制裁が。

日本も巻き込まれるというよりは、ここでロシアの主張に恭順を示せば、いずれ日本も北海道や新潟が戦場となり、東京や大阪に巡航ミサイルが着弾する事となる、ウクライナで消耗したロシア軍が直ぐにと云う事は無いでしょうが時間の問題となる、だからこそ経済制裁により対応していますが、結果的にロシア軍の軍事圧力が日本へ向いている状況です。

ウクライナ軍は、首都防衛はほぼ達成できていますが、南部ではマリウポリ失陥後、ロシア軍が兵力全てをドンバス地域へ投入へ投入しており、一時攻撃が後退していた第二都市ハリコフへもミサイル攻撃が再開されています、要するに体勢を立て直したロシア軍に対し次第に圧されている状況があり、ロシアは機動戦を断念し第一次大戦型の砲兵戦重視へ移行しました。

火力で圧されている状況がある、ウクライナ軍は砲兵で劣勢という指摘がありますが、世界で最も砲兵を重視し規模では世界最大を自負するロシア軍を相手としているのですから、火砲だけで対応するには限度があります、ただ、こうした状況では本来、低空侵攻可能な攻撃機や戦闘ヘリコプターが威力を発揮するのですが、こうした装備も充分ありません。

火砲を求めている、ウクライナ軍は厳し状況を挽回するには、当初要請していたソ連時代からの装備としてウクライナ軍も採用する152mm火砲や122mm火砲ではなくNATO標準の155mm火砲を求めている状況です。NATOや欧州各国が支援を表明しているのですが、様々な事情から遅れている状況があり、これは戦争を狂気化させる可能性があります。

PzH-2000自走榴弾砲が遂にウクライナへ到着したとのことです。これはウクライナのレズニコフ国防大臣がSNS上で到着を発表したもので、6月22日にAFP通信なども報じました。PzH-2000は52口径の155mm自走榴弾砲で、フランスが提供したカエサル装輪自走榴弾砲と比較し、装甲化されている点、装軌式で不整地踏破能力の高さが特色というもの。

しかし、時間がかかった、という印象は否めません。実際のところ、ノルウェーは39口径のM-109自走榴弾砲を22両提供すると決定し、イタリアもFH-70榴弾砲の提供を決定しています、が、アメリカの提供した90門のM-777榴弾砲、そしてフランスのカエサル自走榴弾砲12両が引き渡され、第一線で使用されているのみ、他は供与に向け準備中という。

HIMARSとMLRS,アメリカがHIMARSを4両、イギリスがMLRSを3両ウクライナへ供与すると発表しました、自衛隊でいえば一個特科中隊の規模ですが、提供決定は大きなニュースとなりました一方、訓練に時間がかかるとアメリカ当局者が付け加えた通り、配備は遅れ今月23日に到着しました、この二つの装備は射程が大きく重要な装備なのですが。

東部ハリコフ州においてロシア軍が再度攻勢にでている段階であり、砲兵火力は喫緊の課題となっていますが引き渡しは遅れています。ただ、これはNATOが出し渋っている、という訳でもありません。ポーランドやチェコが提供したT-72戦車などは既に運び込まれているとされ、政治的な配慮から配備を遅らせているわけではないとわかります。では何か。

問題は二つ、NATOの装備はロシア系装備を中心としたウクライナ軍からは運用に教育が必要である事、そしてNATO全体で提供できる火砲は、そもそもNATOがいま保有している火砲の少なさから限界がある、この二つの問題があります。教育訓練は、無視できない問題で、一時的とはいえ厳しい前線から貴重な兵員を教育へ一旦下げなければなりません。

ドイツ側の限界もある、PzH-2000をそのまま譲渡されても、動かす事は出来るでしょうが2S1自走砲とは車内が根本から違います、自衛隊の75式自走榴弾砲と99式自走榴弾砲の違いという安易なものではなく設計思想は勿論、人間工学や操砲に関する哲学から違う装備です、つまり教育が必要だ、しかしドイツ軍にPzH-2000は40門しか稼働していない。

PzH-2000を供与するには、ウクライナ兵へPzH-2000の運用砲を教育する必要があるのですが、なにしろPzH-2000が40門しか無いということは、PzH-2000の要員もまた40門分しか想定していない、ムンスター戦車学校から教育要員が受け入れるにしても限界があります、実際、火砲については定点で延々弾幕を張る火砲は、欧州にはもうありません。

火砲は、カエサル自走榴弾砲やM-777榴弾砲について、標定装置などがデジタル化されており、従来火砲よりも短時間で正確な射撃が可能となっていますが、標桿射撃など伝統的な火砲とは操作方法が異なります。勿論可能ですが精度が大幅に落ちる為の緊急用という。NATOは火力投射手段として火砲の他に航空機供与まで踏み込んでもよいのではないか、現状のままでは、この戦争は長引くのでしょう。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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ロシア海軍艦艇や戦略爆撃機を含む爆撃機の我が国周辺での行動が活性化しているのはこれまでお伝えしている通りです。

開戦四カ月、ロシア軍ウクライナ侵攻という現代以前の近代のような侵略から始まりました戦争は、ウクライナ軍の善戦とロシア軍の稚拙な指揮により最初の数週間での首都キエフ、現地名キーウ攻防戦でロシア軍の撃退に成功、しかし長期化の様相を見せ、その影響はロシア経済制裁の一翼を担う日本へもロシア軍機の飛来増大として顕在化しています。

日本も巻き込まれるのか、こういう認識ですが、今回ロシアがウクライナを侵攻した、核開発疑惑とナチズムの台頭、あり得ないと主張してもロシアはIAEA国際原子力機関やNPT査察プログラムを通さず、大量破壊兵器疑惑を一方的に主張し手続きを取らず侵攻、ナチズム台頭にしても大統領がユダヤ系でありあり得ない事さえも無視しました、これは。

ロシアの主張をそのまま理解してしまえば、日本を侵略する際にも、国境を接しているフィンランドを侵略する際にも、ドイツ侵攻の方便にさえ使えてしまい、許容できるものではありません、力が有れば如何としても無理が通るならば、それはロシア自身が対ファシスト戦争におけるナチスドイツの立場を擁護する事にも繋がるのです、この為に制裁が。

日本も巻き込まれるというよりは、ここでロシアの主張に恭順を示せば、いずれ日本も北海道や新潟が戦場となり、東京や大阪に巡航ミサイルが着弾する事となる、ウクライナで消耗したロシア軍が直ぐにと云う事は無いでしょうが時間の問題となる、だからこそ経済制裁により対応していますが、結果的にロシア軍の軍事圧力が日本へ向いている状況です。

ウクライナ軍は、首都防衛はほぼ達成できていますが、南部ではマリウポリ失陥後、ロシア軍が兵力全てをドンバス地域へ投入へ投入しており、一時攻撃が後退していた第二都市ハリコフへもミサイル攻撃が再開されています、要するに体勢を立て直したロシア軍に対し次第に圧されている状況があり、ロシアは機動戦を断念し第一次大戦型の砲兵戦重視へ移行しました。

火力で圧されている状況がある、ウクライナ軍は砲兵で劣勢という指摘がありますが、世界で最も砲兵を重視し規模では世界最大を自負するロシア軍を相手としているのですから、火砲だけで対応するには限度があります、ただ、こうした状況では本来、低空侵攻可能な攻撃機や戦闘ヘリコプターが威力を発揮するのですが、こうした装備も充分ありません。

火砲を求めている、ウクライナ軍は厳し状況を挽回するには、当初要請していたソ連時代からの装備としてウクライナ軍も採用する152mm火砲や122mm火砲ではなくNATO標準の155mm火砲を求めている状況です。NATOや欧州各国が支援を表明しているのですが、様々な事情から遅れている状況があり、これは戦争を狂気化させる可能性があります。

PzH-2000自走榴弾砲が遂にウクライナへ到着したとのことです。これはウクライナのレズニコフ国防大臣がSNS上で到着を発表したもので、6月22日にAFP通信なども報じました。PzH-2000は52口径の155mm自走榴弾砲で、フランスが提供したカエサル装輪自走榴弾砲と比較し、装甲化されている点、装軌式で不整地踏破能力の高さが特色というもの。

しかし、時間がかかった、という印象は否めません。実際のところ、ノルウェーは39口径のM-109自走榴弾砲を22両提供すると決定し、イタリアもFH-70榴弾砲の提供を決定しています、が、アメリカの提供した90門のM-777榴弾砲、そしてフランスのカエサル自走榴弾砲12両が引き渡され、第一線で使用されているのみ、他は供与に向け準備中という。

HIMARSとMLRS,アメリカがHIMARSを4両、イギリスがMLRSを3両ウクライナへ供与すると発表しました、自衛隊でいえば一個特科中隊の規模ですが、提供決定は大きなニュースとなりました一方、訓練に時間がかかるとアメリカ当局者が付け加えた通り、配備は遅れ今月23日に到着しました、この二つの装備は射程が大きく重要な装備なのですが。

東部ハリコフ州においてロシア軍が再度攻勢にでている段階であり、砲兵火力は喫緊の課題となっていますが引き渡しは遅れています。ただ、これはNATOが出し渋っている、という訳でもありません。ポーランドやチェコが提供したT-72戦車などは既に運び込まれているとされ、政治的な配慮から配備を遅らせているわけではないとわかります。では何か。

問題は二つ、NATOの装備はロシア系装備を中心としたウクライナ軍からは運用に教育が必要である事、そしてNATO全体で提供できる火砲は、そもそもNATOがいま保有している火砲の少なさから限界がある、この二つの問題があります。教育訓練は、無視できない問題で、一時的とはいえ厳しい前線から貴重な兵員を教育へ一旦下げなければなりません。

ドイツ側の限界もある、PzH-2000をそのまま譲渡されても、動かす事は出来るでしょうが2S1自走砲とは車内が根本から違います、自衛隊の75式自走榴弾砲と99式自走榴弾砲の違いという安易なものではなく設計思想は勿論、人間工学や操砲に関する哲学から違う装備です、つまり教育が必要だ、しかしドイツ軍にPzH-2000は40門しか稼働していない。

PzH-2000を供与するには、ウクライナ兵へPzH-2000の運用砲を教育する必要があるのですが、なにしろPzH-2000が40門しか無いということは、PzH-2000の要員もまた40門分しか想定していない、ムンスター戦車学校から教育要員が受け入れるにしても限界があります、実際、火砲については定点で延々弾幕を張る火砲は、欧州にはもうありません。

火砲は、カエサル自走榴弾砲やM-777榴弾砲について、標定装置などがデジタル化されており、従来火砲よりも短時間で正確な射撃が可能となっていますが、標桿射撃など伝統的な火砲とは操作方法が異なります。勿論可能ですが精度が大幅に落ちる為の緊急用という。NATOは火力投射手段として火砲の他に航空機供与まで踏み込んでもよいのではないか、現状のままでは、この戦争は長引くのでしょう。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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