北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

空母福建-中国が003型航空母艦進水式で命名,日本海軍が建造の空母"信濃"を七七年ぶりに上回る大型艦

2022-06-18 20:15:33 | 先端軍事テクノロジー
■検証-中国空母福建
 自衛隊は護衛艦ひゅうが型はじめ全通飛行甲板型護衛艦を揃えてきましたが昨日中国が進水式を挙行した大型艦は紛れもない航空母艦でした。

 日本が空母信濃を建造してから77年、昨日6月17日、中国が003型航空母艦一番艦の進水式を挙行、艦名を空母福建と命名しました。この003型航空母艦、今後は福建級航空母艦と称するものですが、満載排水量は80000tあり、これは日本海軍が第二次世界大戦中に建造した信濃の満載排水量718900tを凌駕し、アジア最大の空母となった事を示します。

 空母福建は江南造船において2020年ごろから衛星写真にてその存在が確認され、周辺対象物と比較しても全長は300mを優に超え、これまで中国が取得した遼寧と大連という2隻の航空母艦よりも大型化していると認識、ただ2022年3月頃と考えられた進水式は、中国の厳格なCOVID-19コロナ対策により遅れているとされていましたが、遂に実現しました。

 全長は320mで全幅78m、注目すべき点はカタパルトとして電磁式カタパルトを搭載、これは大型の艦載機を発信させる為にアメリカやフランスは蒸気カタパルトを用いますが、高圧蒸気は腐食の要因となり整備間隔が短く、アメリカも最新のジェラルドフォード級から電磁カタパルトへ転換しており、中国もアメリカのすぐ後ろまで技術で猛追しています。

 写真は自衛隊のF-35ですが、中国が福建級航空母艦を建造した背景、恐らく第五世代戦闘機を搭載する為のものです。中国海軍は瀋陽航空機製造公社のステルス戦闘機J-31に早くから注目していました、このJ-31戦闘機というのは中国初のステルス機開発に際しJ-20戦闘機に敗れ制式化の機会を逸した為、瀋陽航空機製造が独自に輸出用として2012年ごろから航空展に出展していました。

 J-31,しかし特色としてJ-20よりも小型であり、海軍は空母艦載機型の開発を決定、2021年10月29日に空母艦載機型を初飛行させています。J-31戦闘機は全長17.3mと全幅11.5mで最大離陸重量28tとなっている。J-20が全長21.2mに全幅13.1mと最大離陸重量37tですので、J-31は小型化に成功しており、空母艦載機として搭載に目処がついたといえる。

 第五世代機で空母艦載機であるJ-31,外見がF-35に類似していることから、不正アクセスにより技術情報を得たとの推測もあるようですが、エンジンについては中国は猛烈な予算投入により戦闘機用エンジンの技術開発を進めているものの流石にまだ米英には及ばず、出力に限界があり、充分な装備を搭載するには、空母大型化が必須だったと考えられます。

 日本にとっての脅威度は。対した事は無いと断言するには聊か無責任であるように思います、こう言いますのも中国海軍はこの003型航空母艦を計画し、建造開始から進水式までを5年間、日本で云うところの中期防衛力整備計画一期分の期間で実現しており、これは言い換えれば今後十年間で更に増強される事を示しています、何隻建造されるか不明だ。

 脅威度という視点から考えますと、最初の空母遼寧が再就役した頃とは根本的に事情が違います、遼寧をウクライナから受領し修理し再就役させた時代とは異なり、055型防空駆逐艦という満載排水量1万tクラスの艦隊防空艦が建造されていますし、商級攻撃型原潜の数が揃い、特に商級原潜は巡航ミサイル運用能力を強化した改良型建造が進められています。

 空母部隊として考えた場合には、艦隊防空艦の数も質もかなり強化されており、またアメリカ海軍の空母打撃群を参考としたような、支援に充てる攻撃型原潜の強化も進んでいます。福建は三隻目の空母、先行する二隻の空母と共に作戦稼働と作戦待機と定期整備というローテーションも組めるようなりました、これまでとは脅威度ははるかに違うのです。

 中国の空母部隊増強、日本の防衛から考えた倍ですが、実任務を実施した場合の脅威度と共に平時のプレゼンスオペレーションを実施された場合のポテンシャルという部分で大きく違います、実任務といえば、例えば日本の南西諸島への侵攻という危惧ですが、中国本土からのミサイル爆撃機や戦闘機と弾道ミサイルに加えてさらに一つ空母がくわわった。

 プレゼンスオペレーション、しかし前述の実任務という脅威よりも平時に空母複数を展開させる運用の方が、国民世論に対する圧力は大きくなります、例えば防衛空白地帯付近を空母が遊弋した場合は。小笠原諸島などは日本の防衛空白地帯で、小笠原諸島は東京都であり練馬の第1師団管区となっていますが、最寄の部隊は御殿場板妻の第34普通科連隊だ。

 小笠原諸島近海に、ヴェトナム戦争時代のヤンキーステーションのような空母数隻が張り付く状況を再現されますと、日本は広さにして本州と同じ地域の防衛という負担に迫られる事となります。福建を中心に編成される機動部隊の能力を考えれば無視するわけにもいかず、我が国では冷戦後の1996年防衛大綱改定以来の、防衛政策変更が迫られるでしょう。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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【京都幕間旅情】大徳寺,一休宗純が見れば何を思う-撮影禁止の伽藍面は東京の方に投げかけられた重い言葉

2022-06-18 14:10:02 | 写真
■一休さん蓮如持念仏抱き枕
 撮影禁止の伽藍面は今の時代には行きません、こんな声を向けられましてしかし改めてみてみますと日常の散策を一歩前に塔頭へ進むと確かに撮影禁止が多い。

 大徳寺を散策する、その際に余りに人が少ない為にマスクを外してみる。僅かに修学旅行生がこの大徳寺を選んだ背景というものを少し考えてみるのですが、京都五山を回る趣向か、純粋に一休宗純はじめ大徳寺所縁或る僧侶への興味故か、と閑散でも考えてしまう。

 一休宗純、考えてみると室町時代のヒーローといえる一人ですね。狂雲子や破戒僧と呼ばれる僧侶ですが、なにも単なる破天荒と云う訳ではなく応仁の乱という時代に在って反面教師的な振る舞いから禅宗を通じて社会の再構築を試みたという僧侶、一休さんともいう。

 蓮如、本願寺門主蓮如とも親交が深く蓮如を訪ねた際に留守であった為、持念仏阿弥陀如来像を枕に昼寝し、蓮如にそれは私の商売道具だぞと笑われ、なにこれなどは元は金属と樹木よと、唯物信仰に一石を投じた、日本で最初に抱き枕を実践した高僧でもあるのです。

 破戒僧と呼ばれる一休さんのお話しを敢えて思い起こすのは、この一休宗純が中興になった大徳寺は、拝観できるところは特別拝観が数多あるのですが、写真を撮れる場所が余りに少ないという、指摘を知りました。実は拝観よりも散策が多い当方には実感はあまり。

 龍源院と興臨院については撮影ができるのですが、この他については入ったら最後撮らせてくれないものがおおい、いや特別名勝というものもありますので、まったく理解できないかといえば、多少は理解できるのですが、今の時代一部位は、ともおもうのですよね。

 特別名勝に大徳寺方丈庭園が列せられていて、記憶では特別公開も2000年代に撮影出来て、フィルム時代に撮影した記憶もあるのですが、イージス艦のCICでもないのですしちょっと理解できません。お上でさえ行幸の際には御真影の撮影を許される程の現代に、です。

 興臨院なんかは常設公開されていますので、此処が撮影できますと大徳寺の情景をいろいろとお伝えできるのですけれども、特別公開されている所は軒並み駄目、数年に一度の特別公開も撮影は駄目だ、となりますと、今の時代感傷は共有する時代であるようにも。

 孤篷庵の七年に一度の特別公開も行われていましたが。しかし聞いてみますと撮影禁止という、いやはや散策しているだけの大徳寺でふと寄るところは撮影出来た場所がありますので、こう改めて云われた撮影できないをもとに観てみますと、ほんとうだ、と驚く。

 一休宗純がこの話を着たらばどう思うのだろう、別に中傷や毀損の為に撮影しているという訳でもないのです、蓮如さんの持念仏の阿弥陀如来像さんのように釈迦如来さんを抱き枕にさせろという訳でもありません、拝観料の上乗せが要るならば応じるという前提で。

 黄梅院の撮影禁止の理由を聞きますと、前は良かったのだけれども過去に酔客が撮影で揉めたので禁止にしたという僧侶のお話が、なるほど、ここアルコールオッケーにする為に撮影禁止にしたとの事、今度は拝観料を収めた直後にポケットボトルを煽ろうかと思った。

 千利休のように、大徳寺の庭園には明らかにされると法主が切腹ものといいますか刑事罰を迫られる事情でもあるわけでもないでしょうから、御本尊を撮影させろとは言いませんが、全て撮影禁止というのは時代錯誤の塔頭と思うのですよね、それなら拝観謝絶がよい。

 一休宗純がこの話を着たらばどう思うのだろう、室町時代の庭園は幕府が作庭を命じた際には他の寺院や貴族邸宅から巨岩や奇岩を接収したといいますので、室町時代の盗品がばれるのだろうか、そんな事を思うのです。もう少し撮影に寛容であって欲しいのですよね。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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ウクライナ戦争-要請された1000門の榴弾砲,制空権論点無き奇妙な戦場に代替案の航空打撃力と急造ロケット砲

2022-06-18 07:00:33 | 防衛・安全保障
■臨時情報-ウクライナ情勢
 ウクライナ政府が戦闘機供与要請を行わなくなったのは戦場様相故か運用訓練時間確保の難しさからか、しかし昨今、火砲1000門を世界に要請しました。

 制空権、航空優勢や絶対航空優勢という単語でも説明されますが、ウクライナ戦争は奇妙な戦争といわれます、先ずロシア軍の侵攻が非ナチズム化という非常に曖昧で故に実証しにくい理由で開始され、国際法上の正当性も国連安保理決議も無いまま全面侵攻という国連創設前の認識で始められました、そして何より奇妙なのは、制空権の話題が出ないこと。

 榴弾砲1000門が必要だ、こうウクライナ政府は繰り返しますが報道にもある通り例えば砲兵王国とナポレオン時代から第一次大戦時代に名を馳せたフランスでさえ現在の保有火砲は96門、輸出用を含め砲身精製能力は年間100本といいます、するとウクライナの需要を満たすには十年を要する計算となり、そんなものでNATOは大丈夫かと思われるでしょう。

 NATOならば空軍を使う。さて欧州は砲兵火力が冷戦時代と比較し大幅に縮小されています、ただ、これを補うのは本来、航空打撃力、その駆使により発揮されるものです。例えば冷戦時代、欧州では戦闘機よりも攻撃機が重視され、ドイツ連邦軍を見れば主力戦闘機は古めかしいF-4ファントムと、懐かしいF-104スターファイターでしたが、攻撃機は更に新しい。

 トーネード攻撃機、一応短射程空対空ミサイルは搭載できるのですが対地攻撃と対艦攻撃能力の高いトーネード攻撃機がドイツ連邦軍では主力を占めていて、更に練習機ですが軽攻撃機として機能するアルファジェット軽攻撃機も運用されていました、地対空ミサイルの前に攻撃機は苦戦を強いられることが予想されるも、それでも最良の打撃力と評された。

 侵攻高度30m、ウクライナではロシア軍Ka-52攻撃ヘリコプターが90m程度の硬度で悠然と飛行し次々と撃墜され攻撃ヘリコプターの時代は終わったのではと危惧されましたが、冷戦時代にアルファジェットやトーネードといった攻撃機は高度30mを亜音速で侵攻、対空火力の脅威を非常というより非情な訓練により樹木すれすれの低高度飛行で避けました。

 ウクライナ東部地域でのロシア軍砲兵火力は非常に大きなものがありますが、これをNATOに対して行ったならば、砲兵には砲兵だけでという道理は無く、確実に航空攻撃により砲兵は殲滅されたでしょう、特にNATO加盟国にはクラスター弾全廃条約に加盟していない国も多く、砲兵部隊の特に目立つロケット砲兵射撃はクラスター弾の良い的です。

 1000門の火砲供与要請、それでは絶望的なのか、こう問われますと何とも言えません。砲身の精製は施設の関係上各国とも限界はありますが、砲兵は火砲の他にロケット砲を装備しています、それも自衛隊が配備するMLRSのようなロケットシステムは製造に時間を要しますが、ロケット弾発射器というだけならば点火装置付のパイプを束ねれば製造できる。

 韓国のK-136やチェコのRM-70にスロバキアのVP-14とスペインのテルエル、ロケット弾発射筒を束ねたロケット砲は命中精度の問題があり、冷戦後各国が廃止に動いたためにロシア中国製以外で残るものといえばこの程度ですが、戦時急造に向いた設計です。どうしても必要ならば、こうした戦時急造兵器の再生産という選択肢も、あるにはあるのです。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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