北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

【日曜特集】第7師団創設56周年記念行事(12)89式装甲戦闘車と73式装甲車に96式自走迫撃砲(2011-10-09)

2022-06-26 20:11:40 | 陸上自衛隊 駐屯地祭
■89FVと73APCの行進
 戦車部隊の観閲行進が全国の師団祭では行進の大団円を知らせる迫力を残すのですが、第7師団は最初から機械化部隊の迫力が続きます。

 装甲戦闘車、89式装甲戦闘車は優れた装備です、いやしかしこれが過去形となりつつあるのは基本設計の古さに挙げられます。装甲戦闘車の用途は乗車戦闘での戦車支援から下車戦闘の短縮化へ敵陣地へ肉薄できるよう重装甲化が新世代のものですし、ミサイルも。

 第11普通科連隊だけでは、装甲戦闘車が配備される事で得られる機動力、戦闘における優位の獲得という、相手に対抗手段を講じさせる前に浸透する打撃力というものを、ドクトリンとして内部化させられないように思うのですよね、ドクトリンの硬直化は問題です。

 89式装甲戦闘車も、しかし数が揃っていれば十分活躍できたように思います、実際冷戦時代にはもともと北部方面隊師団の各一個普通科連隊は89式装甲戦闘車でFV化する構想はあったという、73式装甲車並みの350両は量産される計画はあったという、実際はしかし。

 標準的な性能として考えると、戦闘重量は26tありますので、防御力は低すぎる訳ではありません、昨今の装甲戦闘車の重装甲化が異常なだけです、35mm機関砲も強力ですし、なにより戦車に随伴できます、出力重量比で戦車随伴を設計に反映させた点は重要です。

 68両しか量産されず、第7師団の第11普通科連隊にしか装備出来ない装備となったために73式装甲車と混成運用されていて、しかも73式装甲車は74式戦車に随伴する運用要求に依拠した設計、つまり90式戦車には随伴が難しく10式戦車には完全に置き去りとなる。

 自衛隊も北部方面隊の総合近代化師団へ戦車を集中させるという防衛大綱に基づき、これはロシア軍ウクライナ侵攻により白紙撤回させるべき過去の思案に思えるのですが、ともかく戦車は北海道に集中させるという、すると戦車を支援する装甲戦闘車は強化すべきだ。

 プーマやアスコッドにリンクスといった、40t級の装甲戦闘車が開発されていますが、これらは大口径機関砲で対処するにはかなり無理のある重装甲となっています。日本に侵攻する可能性の阿多海諸国にはこれら装甲車に対抗する装備が予測され、日本も参考とすべき。

 対戦車ミサイルは車載型とするのが即座の射撃を可能とする為に必要な設計であると考えられていましたが、装甲戦闘車が車体を曝してミサイルを射撃するよりは、脆弱な装甲を戦車に曝す事無く、大型の対戦車ミサイルを車内に搭載し下車戦闘する運用が今日のもの。

 40mm機関砲の時代が到来していますので、逆に装甲戦闘車は相手が主力戦車以外であれば機関砲で対処可能です、いや40mm機関砲のAP弾は第二次大戦中の75mm徹甲弾よりも貫徹力が上になっていまうので、第二世代戦車程度であれば優位に戦闘が可能となる。

 火器管制装置の優位がありますので、交戦距離2000m未満を考えている例えば弾三世代の一翼を担うT-72戦車であれば対抗は可能です、ただ、主力戦車が120mm砲を搭載している通り、T-72B3やT-80といった相手では分が悪いのも確かです。こので対処法は多様に。

 戦車と遭遇したならば装甲戦闘車が下車戦闘のために停車するまえに戦車が行進間射撃で敵戦車を撃破してしまうのですが、新しい世代の装甲戦闘車は対戦車戦闘の枠組みそのものを転換させているという。これは言い換えれば、89式装甲戦闘車の旧式化を意味します。

 一方で、対戦車ミサイルを搭載した装車も依然として存在しまして、例えばコングスベルク社製RWS遠隔操作銃搭にはジャベリン搭載型が開発されていまして、これは装甲戦闘車ではなく装輪装甲車、ストライカー装輪装甲車に採用されているものなのですが、積む。

 装甲偵察車であればフランスのジャガー装甲偵察車は、これは六輪式の装輪装甲車ですが、40mmCTA機関砲とともにMMP対戦車ミサイルを搭載、ミラン対戦車ミサイルの後継で射程は4kmですので89式装甲戦闘車の重MATと射程や運用では似ているといえます。

 12.7mm機銃などを搭載するRWS、暗視装置と火器管制装置を搭載し歩兵が車外に出て肉眼で照準するよりもRWSを通じて照準したほうが素早い、この観点からジャベリンミサイルを一体化している、RWSは日本製鋼が護衛艦用に国産化しており、日本にも可能という。

 01式軽対戦車誘導弾を国産RWSに搭載するという選択肢は、交戦距離が1500mと非常に短くなるのですが、安上がりな選択肢といえるのかもしれない。ただ、ミサイルは瞬発交戦能力や開けた地形でなければ運用が難しいという、運用成約が在るのも確かではあるが。

 もっとも、1989年のまだ冷戦機運が残る頃の設計に2020年代の中国との島嶼部戦などまで展望しろと考えるほうがどうかしているのですけれども、故に旧式化は致し方ない。後継車両というものを考える必要がある。いや後継車両は共通装軌車両があるのですけれど。

 日本の新しい装甲戦闘車、共通装軌車両として開発されているのですが89式装甲戦闘車の設計をもとに銃眼は廃止されているようですが、防御力などはそのままなのですよね。戦闘重量35t程度、増加装甲により41t程度まで想定した装甲戦闘車は必要であるよう思う。

 装甲戦闘車は必要であるよう思う、こういう背景に中国は装甲戦闘車の配備を大車輪で進めていまして、ロシアの新型装甲戦闘車は57mm自動砲を搭載、防御力というものはそうとう考えねば生き残ることは出来ませんし、数少なくなる戦車で対抗せねばならなくなる。

 装甲車は、なにより自衛官の生命が大事と主張する政党は与野党ともに多いのですが、万一のことを考えるならば、それこそ装甲戦闘車の強化を提示しなければ、政策として矛盾し、論理破綻する政治家の名札のように思えてなりません。これは、如何なものだろうか。

 機械化部隊、しかしすべての部隊、普通科部隊を装甲戦闘車により充足すればよい、というような安直な考えでもありません。いや突き詰めれば、第2師団型の戦車連隊と3個普通科連隊を基幹とした編成の師団に装甲戦闘車を充足させてみては、とおもうのですが。

 96式自走120mm迫撃砲、この装備は120mm迫撃砲を開発したフランスなどはVAB軽装甲車に牽引させていましたが、もともと120mm迫撃砲は105mm榴弾砲と並ぶ火力と射程を有していました為、120mm迫撃砲の自走化がスウェーデンやフィンランドで進められた。

 開放型戦闘室に120mm砲を装備しているのみ、簡易な方法でM-113装甲車を転用したM-1064自走迫撃砲などを思い出す方式ですが、射程も長く一つの選択肢であるように思えます。北欧の事例は後填式砲塔を採用しているものですから、遥かに高性能なのですが。

 砲塔式の自走迫撃砲には、フィンランドが行進間射撃を可能とする、間接照準射撃を走行しつつ実現するという砲兵の夢を具現化した様な装備が開発されています、陣地変換せず走りながらであれば敵砲兵の反撃を受ける事はありません、これには驚かされましたが。

 戦車や普通科部隊へ直掩火力を供するには、考えれば昨今流行の52口径155mm砲では少々大袈裟過ぎますが、120mm迫撃砲の自走化が代替し得るのか、直接掩護の任務領域でも補完する程度に限られるのか、野砲がNATOや日本で削減される中、多くの関心事です。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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【京都幕間旅情】榛名さんの総監部グルメ日誌:北大路,ビブレ前からイオン前となった街のグリルのハンバーグ

2022-06-26 18:21:20 | グルメ
■榛名さんの総監部グルメ日誌
 勘違いというものは誰にでもあるものですが今回の勘違いはちょっとさびしい。

 北大路ビブレ、ビブレにイオンが入るとは聞いていたのですが、勘違いしていまして北大路ビブレが無くなりイオンタウン北大路に鞍替えする、という事だったのですね。もう少し新聞を読まなくては。ビブレの文字が無くなっていまして、全替えだったのかと驚いた。

 北大路機関といえば北大路駅、こういう訳ではありませんがもともと北大路機関は北大路機関沿いで研究会を繰り返していた自主ゼミでした、そして北大路ビブレは、まあ思い出の多い場所なのですが、ここが単なる雑多なイオンモールの一つになったのは寂しいもの。

 イオンタウン北大路、しかし、新しくなったと云えばとりあえず行ってみるのは性というものでして、まあ、ちょっと言いたいことはあるけれども来客も多く賑わっていました、これはこれで北大路駅とその界隈の活気につながってゆくのだろうと、期待しつつ。

 ハンバーグだ。いきなりハンバーグかよ、と思われるかもしれませんが、ここは北大路通りを鴨川の手前にあります、グリルはせがわ、ハンバーグの名店です。コロナ禍下にあってもビニールカーテンで感染対策をこれでもかと頑張り、活況が続いていますお店の一つ。

 ハンバーグを中心に様々な洋食を愉しめるところで、川の対岸に黒船来航のようにフレンチなお店がありますが、洋食とは和食と共に日本食の一部を構成しているといわれる通り、ご飯と共によく合う洋食を提供してくれるお店で、ケチャップ好きにはたまらないところ。

 トマトケチャップと付け合せのスパゲティとともに、ワンプレートにおさまりまして、味噌汁とご飯を掻き込む、ワインなんかもあるのですが、まあ、早い時間に来ました割には混雑していまして、柔らかいハンバーグにケチャップの酸味と肉汁とでご飯を頂きます。

 目玉焼きハンバーグというように添えてあるのですが、ケチャップに目玉焼きがまみれない様に、ご飯をハンバーグと目玉焼きとで、前半は洋食風に、後半は有名なハちクマライス風に頂いてゆく、店内には家族連れの元気な声も響きまして、洋食店らしさという感じ。

 ビブレという単語は過去のものになるのか、イオンモールが入ると聞いていたのにビブレの中に入る訳ではないのかあ、よび慣れた単語と地名というものが変ってしまうのは、残念という訳ではないが、なにか空虚感がなあ、そんな事を想いつつ、帰路につきました。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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中国-弾道ミサイル迎撃実験実施,地上配備型ミサイル迎撃システムによるミッドコース迎撃技術実験

2022-06-26 07:00:29 | 先端軍事テクノロジー
■臨時情報-中国軍事実験
 ミサイル防衛は我が国自衛隊も巨額の防衛費をつぎ込み目処を立てるまでに大きな負担が在りましたが、キャッチアップを進めている国が有ります。

 中国国防省は6月19日、新型の地上配備型ミサイル迎撃システムの評価実験を実施したと発表、中国国防省の定義するところの“所要の目的を達成した”とのことです。今回の実験は地上配備型ミサイル防衛システムにおけるミッドコース迎撃技術実験、つまり放物線を描く弾道ミサイルを放物線の中間部分飛翔段階で迎撃する実験を行ったという構図だ。

 地上配備型ミサイル迎撃システムについて中国国防省は遅くとも2010年頃から技術開発を開始していました。またミサイル迎撃実験は過去にも行われ、2018年と2021年2月に実施されています。なお、対象としたミサイルが短距離弾道弾か准中距離弾道弾か中距離弾道弾なのか、それ以上の射程の弾道ミサイルを想定したものなのかは発表されていません。

 中国にとりミサイル防衛システムは喫緊の課題であると共に頭痛の種でもあります。ミサイル防衛の必要性は年々高まっています、その一つの理由はインドのアグニミサイルシリーズが年々改良型の射程を延伸させており、新疆ウイグル自治区の中国軍大陸間弾道ミサイル基地群はもとより、北京首都圏をその射程に収めているという喫緊の課題がある。

 ミサイル防衛は更に、アメリカが従来米ロ間のINF中距離核戦力全廃条約により地上発射型中距離弾道弾などを開発出来なかった為に条約に参加しない中国が独壇場を構成出来ていた一方、INF全廃条約離脱に伴い制約が無くなり、今までの様に北東アジア地域における中国弾道ミサイルによる威圧効果が薄まり、逆に中国も相応に狙われるようなったため。

 しかし、頭痛の種となるのは、弾道ミサイルは巨額の費用を要する点です。今回試験されたのは地上発射型であり、その中間段階の迎撃を目的とするという事は相手が海洋を挟まず弾道ミサイルを投射してくるであろう、インドを念頭としている点が推測できますが、今後太平洋からの脅威に備える為には055型駆逐艦など相応の戦力を充てねばなりません。

 中国のミサイル防衛、比較的大きな国防費により中国は今後、猛烈なキャッチアップを進める事が予想できます、しかし、ここで大きな問題が生じます、それは米ロ間のABM制限条約に影響を及ぼさないか、という懸念です。例えば崩壊したINF中距離核戦力全廃条約の枠組みも、元々中国が条約外でこの種の兵器を増強したことが遠因となっていました。

 INF全廃条約では、中国は条約に加盟していない為にこの種の兵器を一方的に開発しアメリカに優位に立てたという国際法上のミサイルギャップが在った為なのですが、ミサイル迎撃能力も、例えば中国が大陸間弾道弾迎撃能力整備等を進めれば、MAD相互確証破壊の前提を壊しかねず、米ロ間のABMミサイル迎撃能力制限条約を破綻させるかもしれません。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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