■世界の空中機動戦術
攻撃ヘリコプターについては変革無くしては生き残る事は出来ないという軍事全ての命題がヘリコプターも例外ではないという事を示しただけなのかもしれません。

攻撃ヘリコプターは脆弱という印象を強く突き付けられたウクライナ戦争におけるロシア軍攻撃ヘリコプターの損害、しかし、世界を見ますとヘリボーン戦術全体を否定する動きはありません。するとロシア軍は運用を間違えたか機種を間違えたか投入の順番を間違えたか、となります。攻撃ヘリコプターは脆くとも他の機体もそれ程頑丈ではありません。

ブラックホークダウンという1993年にソマリアの首都モガディシオでの市街戦、ブラックシーの戦いを描いた映画がありましたが、UH-60特殊戦ヘリコプター2機が低空飛行中に撃墜され、作戦が救出作戦へ唐突に移行した事で大規模な市街戦にレンジャー部隊が孤立する様子が描かれています、攻撃ヘリコプターより脆弱な機体は逆に生き残れないという。

MQ-9やRQ-1のような無人機が有ればどうにかなりそうに思える事ですが、実はMQ-9の任務は以前にアメリカ軍はP-3C哨戒機等を充てて、空中から高精度のカメラによる情報収集は行っていました、ただ、高高度すぎますと建物や錯綜地形では死角が生じます、そしてP-3Cも航空祭の様に超低空に降りて飛行は出来ず、結局はヘリコプターの出番となる。

イラク治安作戦でもソマリア安定化作戦でも、結局のところ攻撃ヘリコプターは無敵ではないが脆弱な多用途ヘリコプターや武装した観測ヘリコプターではより簡単に撃墜されてしまうという点が挙げられます。これを象徴する様にAH-64Dは200発以上被弾し生還した機体はありますが、多用途ヘリコプターでは半分の100発以上受け生還した事例はない。

そしてもう一つ、ロシア軍のウクライナにおける問題点として、攻撃ヘリコプターの飛行高度が高すぎたのではないか、という問題があるのかもしれません。超音速戦闘機は高度100mで飛行した場合でも生存できる可能性は多少あります、しかし攻撃ヘリコプターは低速である分、もっと低く飛ぶように設計されています、その為の訓練は充分であったか。

攻撃ヘリコプターの難点は地対空ミサイルです、いや、ウクライナ軍のMi-8中型ヘリコプターがマリウポリ製鉄所強行輸送に際して携帯地対空ミサイル命中を受けても飛行を継続した事例が有るには在るのですが、スティンガーミサイルに撃墜されるKa-52アリゲーター攻撃ヘリコプター、Ka-52はかなり頑丈とされるのですが、映像が撮影されています。

高度100m程度と戦術飛行としてはかなり高い高度を飛行していたのが原因ではないか、匍匐飛行という単語がありますが、30m程度を低空飛行します、かなり危険な飛行に思えますがヘリコプターは200km/h前後の速い速度で飛行しますので、この高度であれば携帯地対空ミサイルは発射できません、オートフォーカスに時間のかかるカメラに似ている。

河川の上を超低空飛行する演習映像がNATOなどでは撮影されていますが、これも真下に敵が居ない、河川には潜水艦も水遁の術の忍者も居ませんし、水飛沫は赤外線を拡散するという特性はあります、攻撃ヘリコプターは、只在るだけで価値、という時代は過ぎ去り、Mi-24ハインドやAH-1Sコブラの開発は1960年代、対抗戦術への対抗が必要な時代です。

ヘリコプターに対戦車ミサイルを搭載していた武装ヘリコプターの場合は、最前線付近に野戦飛行場を配置し、森林などに徹底した偽装とともにヘリコプターを配置し、防衛線が突破された際の火消などに重宝されていました。これが戦闘ヘリコプターとなりますと、波状的に展開する敵の梯団の、その後方まで進出して攻撃を加える任務が加わるのですが。

携帯地対空ミサイルが照準する時間は無くとも、只上に向けて機銃を撃つ、機関銃を多数の一斉射撃が集中する事でヘリコプターを怯ませる事は出来ますが、逆に言えばその為に攻撃ヘリコプターは装甲防御を施しているのであり、もちろん23mm機関砲弾が数百発命中して落ちたイラク戦争のAH-64の事例はありますが、一機に数百発当てるのは難しい。

フランス軍の事例を見ますともう一つ、2013年のマリにおけるサーバル作戦ではEC-665戦闘ヘリコプターが大きな戦果を挙げました、それはC4I時代にあって地上部隊は小隊規模で分散運用した場合でも電子の空間で連携する事が出来、孤立したように見えて相互の位置が電子地図上で常に確認し合います、つまり薄く広く分散して前進する事ができる。

EC-665は広く薄く分散した地上部隊の上空を近接航空支援に近い形で連節し、つまりEC-665の真下に敵が居るのではなく友軍地上部隊が展開している状況を維持し、地上部隊が発見した目標を掃討した、この運用は小隊規模の部隊が分散運用される為、数日に一回、AS-532ヘリコプターが燃料と弾薬に糧食を補給することで前進を継続できたとのこと。

VAB軽装甲車やVBL軽装甲機動車は装輪装甲車として燃費が良い、もちろん分散させ過ぎ、不期遭遇戦となったガオ市街戦では戦死者も出てしまいましたが、EC-665は即座に集中できる航空火力として威力を発揮しています。つまり、ヘリコプターも使い方を工夫しなければならない、ヴェトナム戦争時代のような大編隊は半世紀前か記念行事だけのものだと。

ロシア軍の運用は、1979年のアフガン侵攻のような状況や1968年前後のヴェトナム戦争であれば大きな威力を発揮したでしょう、しかし、1945年に威力を発揮した地上を埋め尽くす戦車軍団の攻撃を1991年に行ったイラク軍がMLRSによる鉄の雨で一掃されたように、2022年の時代に1970年前後の戦術を踏襲しても、対策はもうある、という構図です。

ロシア軍は戦闘ヘリコプターをどのように戦場に投入するのか、横に並べて友軍戦車上空を大編隊で飛行させる、展示演習での飛行は訓練したのでしょうが、目標への接近経路選定や匍匐飛行、敵防空部隊への対処とヘリコプター攻撃の限界、こうしたものをどこまで健闘していたのか、見栄えだけの訓練であったのかが、戦場で突き付けられたといえましょう。本特集はこの第二回を最後としますが、現実として見える課題は自衛隊にも当てはまる警鐘といえましょう。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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攻撃ヘリコプターについては変革無くしては生き残る事は出来ないという軍事全ての命題がヘリコプターも例外ではないという事を示しただけなのかもしれません。

攻撃ヘリコプターは脆弱という印象を強く突き付けられたウクライナ戦争におけるロシア軍攻撃ヘリコプターの損害、しかし、世界を見ますとヘリボーン戦術全体を否定する動きはありません。するとロシア軍は運用を間違えたか機種を間違えたか投入の順番を間違えたか、となります。攻撃ヘリコプターは脆くとも他の機体もそれ程頑丈ではありません。

ブラックホークダウンという1993年にソマリアの首都モガディシオでの市街戦、ブラックシーの戦いを描いた映画がありましたが、UH-60特殊戦ヘリコプター2機が低空飛行中に撃墜され、作戦が救出作戦へ唐突に移行した事で大規模な市街戦にレンジャー部隊が孤立する様子が描かれています、攻撃ヘリコプターより脆弱な機体は逆に生き残れないという。

MQ-9やRQ-1のような無人機が有ればどうにかなりそうに思える事ですが、実はMQ-9の任務は以前にアメリカ軍はP-3C哨戒機等を充てて、空中から高精度のカメラによる情報収集は行っていました、ただ、高高度すぎますと建物や錯綜地形では死角が生じます、そしてP-3Cも航空祭の様に超低空に降りて飛行は出来ず、結局はヘリコプターの出番となる。

イラク治安作戦でもソマリア安定化作戦でも、結局のところ攻撃ヘリコプターは無敵ではないが脆弱な多用途ヘリコプターや武装した観測ヘリコプターではより簡単に撃墜されてしまうという点が挙げられます。これを象徴する様にAH-64Dは200発以上被弾し生還した機体はありますが、多用途ヘリコプターでは半分の100発以上受け生還した事例はない。

そしてもう一つ、ロシア軍のウクライナにおける問題点として、攻撃ヘリコプターの飛行高度が高すぎたのではないか、という問題があるのかもしれません。超音速戦闘機は高度100mで飛行した場合でも生存できる可能性は多少あります、しかし攻撃ヘリコプターは低速である分、もっと低く飛ぶように設計されています、その為の訓練は充分であったか。

攻撃ヘリコプターの難点は地対空ミサイルです、いや、ウクライナ軍のMi-8中型ヘリコプターがマリウポリ製鉄所強行輸送に際して携帯地対空ミサイル命中を受けても飛行を継続した事例が有るには在るのですが、スティンガーミサイルに撃墜されるKa-52アリゲーター攻撃ヘリコプター、Ka-52はかなり頑丈とされるのですが、映像が撮影されています。

高度100m程度と戦術飛行としてはかなり高い高度を飛行していたのが原因ではないか、匍匐飛行という単語がありますが、30m程度を低空飛行します、かなり危険な飛行に思えますがヘリコプターは200km/h前後の速い速度で飛行しますので、この高度であれば携帯地対空ミサイルは発射できません、オートフォーカスに時間のかかるカメラに似ている。

河川の上を超低空飛行する演習映像がNATOなどでは撮影されていますが、これも真下に敵が居ない、河川には潜水艦も水遁の術の忍者も居ませんし、水飛沫は赤外線を拡散するという特性はあります、攻撃ヘリコプターは、只在るだけで価値、という時代は過ぎ去り、Mi-24ハインドやAH-1Sコブラの開発は1960年代、対抗戦術への対抗が必要な時代です。

ヘリコプターに対戦車ミサイルを搭載していた武装ヘリコプターの場合は、最前線付近に野戦飛行場を配置し、森林などに徹底した偽装とともにヘリコプターを配置し、防衛線が突破された際の火消などに重宝されていました。これが戦闘ヘリコプターとなりますと、波状的に展開する敵の梯団の、その後方まで進出して攻撃を加える任務が加わるのですが。

携帯地対空ミサイルが照準する時間は無くとも、只上に向けて機銃を撃つ、機関銃を多数の一斉射撃が集中する事でヘリコプターを怯ませる事は出来ますが、逆に言えばその為に攻撃ヘリコプターは装甲防御を施しているのであり、もちろん23mm機関砲弾が数百発命中して落ちたイラク戦争のAH-64の事例はありますが、一機に数百発当てるのは難しい。

フランス軍の事例を見ますともう一つ、2013年のマリにおけるサーバル作戦ではEC-665戦闘ヘリコプターが大きな戦果を挙げました、それはC4I時代にあって地上部隊は小隊規模で分散運用した場合でも電子の空間で連携する事が出来、孤立したように見えて相互の位置が電子地図上で常に確認し合います、つまり薄く広く分散して前進する事ができる。

EC-665は広く薄く分散した地上部隊の上空を近接航空支援に近い形で連節し、つまりEC-665の真下に敵が居るのではなく友軍地上部隊が展開している状況を維持し、地上部隊が発見した目標を掃討した、この運用は小隊規模の部隊が分散運用される為、数日に一回、AS-532ヘリコプターが燃料と弾薬に糧食を補給することで前進を継続できたとのこと。

VAB軽装甲車やVBL軽装甲機動車は装輪装甲車として燃費が良い、もちろん分散させ過ぎ、不期遭遇戦となったガオ市街戦では戦死者も出てしまいましたが、EC-665は即座に集中できる航空火力として威力を発揮しています。つまり、ヘリコプターも使い方を工夫しなければならない、ヴェトナム戦争時代のような大編隊は半世紀前か記念行事だけのものだと。

ロシア軍の運用は、1979年のアフガン侵攻のような状況や1968年前後のヴェトナム戦争であれば大きな威力を発揮したでしょう、しかし、1945年に威力を発揮した地上を埋め尽くす戦車軍団の攻撃を1991年に行ったイラク軍がMLRSによる鉄の雨で一掃されたように、2022年の時代に1970年前後の戦術を踏襲しても、対策はもうある、という構図です。

ロシア軍は戦闘ヘリコプターをどのように戦場に投入するのか、横に並べて友軍戦車上空を大編隊で飛行させる、展示演習での飛行は訓練したのでしょうが、目標への接近経路選定や匍匐飛行、敵防空部隊への対処とヘリコプター攻撃の限界、こうしたものをどこまで健闘していたのか、見栄えだけの訓練であったのかが、戦場で突き付けられたといえましょう。本特集はこの第二回を最後としますが、現実として見える課題は自衛隊にも当てはまる警鐘といえましょう。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
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