北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

【防衛情報】ドイツ軍CH-47輸送ヘリコプター60機50億ユーロで取得,米海兵隊CH-53K重輸送ヘリコプター初度作戦能力

2022-06-27 20:20:59 | 先端軍事テクノロジー
■特報:世界の防衛最新論点
 ドイツ政府はウクライナ戦争勃発を受けロシア脅威へ国防の建て直しを開戦前夜の勢いで進めていますが、流石に今回は驚かされました。

 ドイツ政府はCH-47輸送ヘリコプター60機を50億ユーロで取得し老朽化したCH-53輸送ヘリコプターを更新する、これは4月にドイツのビルトアムゾンダーク紙の報道で示されました。ドイツ連邦軍はCH-53重輸送ヘリコプターを大量に運用していますが、双発型のG型は導入開始から半世紀を経るものとなっており、後継機が模索されていました。

 CH-47輸送ヘリコプター60機を50億ユーロ、極めて巨額の防衛装備調達となりますが、これはショルツ首相がロシア軍ウクライナ侵攻を受け緊急計上した1000億ユーロの特別軍事予算から捻出されることとなります。ボーイング社では、輸送ヘリコプターは年内に機種決定となれば早ければ2025年末から2026年内に納入が可能であるともされています。

 F型という最新型のCH-47シリーズが導入されるとのこと、CH-47Fはデジタルコックピット方式を採用しシンガポール軍向けに開発されたものですが、アメリカ陸軍でも新造すると共に既存のCH-47シリーズをF型へ近代化改修しています。CH-47は基本設計は古いものの今も生産が継続しており、運用支援は今後数十年に渡り継続することもたしかです。

 ドイツ連邦軍のCH-53輸送ヘリコプター後継機計画についてCH-47Fが選定されましたが、この後継機候補には合せてCH-53K重輸送ヘリコプターも候補に挙げられていました。何故CH-47が選定されたのでしょうか、この背景にはCH-53はアメリカ海兵隊とイスラエル航空宇宙軍しか採用していないという要因が在り、運用互換性の問題が挙げられます。

 CH-47Fは60機50億ユーロとなっていますが、CH-53Kは一機当たり1億ユーロを超えるという高い価格見積もりがあり、機内の輸送能力はともに完全武装の兵員55名を輸送するという、言い換えれば同程度となっています。また、NATOではイギリスやオランダにイタリアやスペインなど、CH-47を運用する国も多く運用面での互換性も評価されました。

 CH-53はドイツ陸軍で、いまはドイツ空軍に移管されましたが50年に渡る運用実績はあります、しかしこれもCH-47選定を覆すには至らない背景として、ドイツが運用しているのは双発型のCH-53Gであり、三発型であるCH-53Kの運用は、エンジン整備負担の増大も示す事となる為NATO諸国と歩調を合わせたともいえる。ただ、正式決定発表はまだです。

 ドイツ連邦軍のCH-47F輸送ヘリコプター導入とボーイング社の支援について。ボーイング社はドイツ空軍がF/A-18E/F戦闘機をトーネード攻撃機後継機に選定した際に、その定期整備や予備部品現地生産に関してドイツ国内防衛産業との提携強化を発表しています。その上でボーイング社製CH-47Fもドイツ国内産業への経済波及効果が意識されています。

 ボーイング社は既に欧州NATO諸国に採用されている多数のCH-47を運用する為に、欧州航空大手のエアバスヘリコプターズ社との間で提携しており、ボーイング社によればドイツがCH-47を採用した場合、500名規模の正規雇用が生まれるとしています。一方、CH-53を製造するシコルスキー社については、厳しい結果となったともいえるかもしれません。

 CH-53K重輸送ヘリコプターは機内貨物室容積でCH-47よりも若干小さいものの、三発の強力なヘリコプターであり吊下げ空輸能力は勝っています、それでも輸出実績はイスラエルのみであり、前型のCH-53Dなどを多数を採用しているアメリカ海兵隊も重輸送ヘリコプターの装備定数を削減する計画があり、今後運用基盤や維持基盤に影響も予想されます。
■CH-53KにIOC
 CH-53KについてIOC初度作戦能力付与という話題がありました。

 アメリカ海兵隊は2022年4月22日、最新型のCH-53Kキングスタリオン重輸送ヘリコプターへIOC初度作戦能力付与を発表しました。CH-53Kは従来海兵隊で運用されたCH-53E重輸送ヘリコプターを元にグラスコックピットの採用や、エンジンをT408-GE-400として出力を強化、機内の貨物室を大型化しハンヴィーも収容可能とした。

 CH-53Kキングスタリオン重輸送ヘリコプター、スーパースタリオンと称された従来型に対し輸送能力も大幅に向上しており、エンジン出力は57%向上、時間当たりの輸送能力ではCH-53Eと比較した場合で実質三倍以上に強化されているとのこと。2024年度からはMEU海兵遠征群への配備が開始され、海兵沿岸連隊の支援にも必要な装備とされている。

 フォースデザイン2030としてアメリカ海兵隊は2030年を目処に伝統的な水陸両用部隊から、中国の海洋進出による変化の著しい太平洋島嶼部地域での作戦を主眼とする沿岸砲兵主体の編成へ転換を進めているとことですが、この為に航空輸送する装備は従来よりも大型化、空輸能力強化は求められています。ただ、生産数はE型よりも少なくなる計画です。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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東京電力-電力需給ひっ迫注意報発令,2011年の政治決定による原発停止と再稼働への政治決断の必要性

2022-06-27 07:00:52 | 防災・災害派遣
■臨時情報-電力関連
 六月の猛暑としては今回のものは災害規模に迫るものですが、仮に今後の夏本番を受け大規模電力不足と成れば巨大な災害に発展しかねません。

 東京電力は猛暑による冷房などの電力需要が高まり供給能力が他の電力会社からの融通を受けた場合でも供給不足となる懸念から昨日初の、電力需給ひっ迫注意報、この発令に踏切りました。原子力発電所のほぼ全てが停止し、火力発電は温室効果ガス削減機運を受け施設老朽化による廃止が続き、再生可能エネルギー開発は調整電力開発が進んでいません。

 政治決定による原発再稼働、今回は11年以上続く停止状態から、急な点検が間に合うとは考えられませんので、この夏の電力不足は最早回避出来ないと云わざるを得ないのですが、原子力事業者と原子力技術者の再確保という十年単位の再構築計画を、今からでも着手し、須年以内にこの状況を脱する必要があるよう考えます、その為には政治決定が必須と思う。

 菅直人首相(当時)は2011年5月2日の参議院予算委員会にて、浜岡原子力発電所において“地震の影響を受けやすい場所に立地していると指摘を受けており、政府としても国民に安心してもらえるかしっかり見極めて判断しなければならない”とし、当時点検中であった静岡県の浜岡原発、2011年7月に予定されていた再稼働への慎重な姿勢を示しました。

 海江田経済産業大臣(当時)は5月6日、浜岡原発の原子炉再稼働について政府として中部電力に運転停止を求める要請を行うと0700時にテレビ中継を行い、政府として事実上政治決定により運転停止を求めた事を全世界に発表しました。これは法的措置ではありませんが、3月11日から続く東京電力福島第一原発事故を背景に要請を公表した意味は大きいもの

 2011年5月6日の政府要請に基づく原子力発電所停止、政府要請は電力事業者が仮に根拠法が無いとしても拒絶する事は出来ません、いわば政治決定により原発を停止させた、この一点を考えれば、当時とは政党が違うという言い分ではなく、政治決定による再稼働を行わなければ、この状況を覆す事は出来ないのではないか、電力供給が逼迫しても、です。

 しかし、日本の原発全停止措置は、この“東海地震が切迫している”という受け留めができる政府要請と共に、法的措置ではなく政治主導での超法規的な要請に基づくものであり、地震発生の可能性を示唆された場合は日本の原発立地自治体で地震懸念の無い地域は存在せず、いわば慎重論に圧される形で原発停止のドミノ倒し的要請が広がる事となりました。

 停止要請から11年、確かに日本国内では熊本地震や胆振東部地震に鳥取県西部地震や能登半島地震など、地震は多発していますが冷温停止中の原子力関連施設が破損する様な地震は起きていません。問題は日本の電源構成において30%以上を占めていた原子力が突然、発電から冷温停止として逆に電力が必要となる負債化した事が、余りに突然であったこと。

 LNG液化天然ガス、中部電力は2011年5月8日に浜岡原発停止に伴う代替発電用にカタールからの液化天然ガス緊急調達への接触を開始したと毎日新聞が報じました、ここで日本と云う巨大な電力需要市場をLNGにより急遽まかなう措置が開始され、他の原発にも波及した事でLNGの取引価格が急騰、世界エネルギー市場を突然混乱させることとなります。

 再生可能エネルギー開発は確かに進められました、太陽光発電などは1kwあたり42円という破格の数字が政府により決定され、太陽光発電バブルというものが日本で生じました、しかしこれは再生可能エネルギーの普及以前に、日本の製造業に高すぎる電気料金を突き付け、国内の製造業を海外に転させざるを得なくなり、モノづくり大国の地位は後退した。

 電力不足、今回の六月猛暑により電力不足が顕在化したように思われるかもしれませんが、延々と2011年より続いている問題です。もちろん、太陽光パネルが風景として増加していますので、一見代替電源が確保されたように錯覚するのですが、再生可能エネルギーは太陽光の場合で日暮れや早朝などの発電能力など限界があり、調整電源が不充分なのです。

 大規模ダム開発による水力発電拡充や、化石燃料による発電が投資家の理解を得られないのであれば国営石炭火力発電所を建設し世界からの批判を電力会社に代わり国営会社が引き受ける選択肢もあります、しかしこれも時間がかかるのですが、2011年以降、増えるのは太陽光発電偏重、調整電力開発は放置されたまま、今年も夏の猛暑と電力不足が話題だ。

 政治決定による原発再稼働、ただ、万一の事態が発生した場合には政府には電力会社に措置命令を発する、生命の危険があっても実施を強制する事は可能ですが、実能力として原子力施設へ万一の際は対応する事が出来ません。しかし、シーレーン防衛など経済を意識した防衛政策は存在する一方、こうした状況にも政治決定は必要と考える余地もあるか、考える必要はあるのでしょう。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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