■特報:世界の防衛最新論点
ドイツ政府はウクライナ戦争勃発を受けロシア脅威へ国防の建て直しを開戦前夜の勢いで進めていますが、流石に今回は驚かされました。
ドイツ政府はCH-47輸送ヘリコプター60機を50億ユーロで取得し老朽化したCH-53輸送ヘリコプターを更新する、これは4月にドイツのビルトアムゾンダーク紙の報道で示されました。ドイツ連邦軍はCH-53重輸送ヘリコプターを大量に運用していますが、双発型のG型は導入開始から半世紀を経るものとなっており、後継機が模索されていました。
CH-47輸送ヘリコプター60機を50億ユーロ、極めて巨額の防衛装備調達となりますが、これはショルツ首相がロシア軍ウクライナ侵攻を受け緊急計上した1000億ユーロの特別軍事予算から捻出されることとなります。ボーイング社では、輸送ヘリコプターは年内に機種決定となれば早ければ2025年末から2026年内に納入が可能であるともされています。
F型という最新型のCH-47シリーズが導入されるとのこと、CH-47Fはデジタルコックピット方式を採用しシンガポール軍向けに開発されたものですが、アメリカ陸軍でも新造すると共に既存のCH-47シリーズをF型へ近代化改修しています。CH-47は基本設計は古いものの今も生産が継続しており、運用支援は今後数十年に渡り継続することもたしかです。
ドイツ連邦軍のCH-53輸送ヘリコプター後継機計画についてCH-47Fが選定されましたが、この後継機候補には合せてCH-53K重輸送ヘリコプターも候補に挙げられていました。何故CH-47が選定されたのでしょうか、この背景にはCH-53はアメリカ海兵隊とイスラエル航空宇宙軍しか採用していないという要因が在り、運用互換性の問題が挙げられます。
CH-47Fは60機50億ユーロとなっていますが、CH-53Kは一機当たり1億ユーロを超えるという高い価格見積もりがあり、機内の輸送能力はともに完全武装の兵員55名を輸送するという、言い換えれば同程度となっています。また、NATOではイギリスやオランダにイタリアやスペインなど、CH-47を運用する国も多く運用面での互換性も評価されました。
CH-53はドイツ陸軍で、いまはドイツ空軍に移管されましたが50年に渡る運用実績はあります、しかしこれもCH-47選定を覆すには至らない背景として、ドイツが運用しているのは双発型のCH-53Gであり、三発型であるCH-53Kの運用は、エンジン整備負担の増大も示す事となる為NATO諸国と歩調を合わせたともいえる。ただ、正式決定発表はまだです。
ドイツ連邦軍のCH-47F輸送ヘリコプター導入とボーイング社の支援について。ボーイング社はドイツ空軍がF/A-18E/F戦闘機をトーネード攻撃機後継機に選定した際に、その定期整備や予備部品現地生産に関してドイツ国内防衛産業との提携強化を発表しています。その上でボーイング社製CH-47Fもドイツ国内産業への経済波及効果が意識されています。
ボーイング社は既に欧州NATO諸国に採用されている多数のCH-47を運用する為に、欧州航空大手のエアバスヘリコプターズ社との間で提携しており、ボーイング社によればドイツがCH-47を採用した場合、500名規模の正規雇用が生まれるとしています。一方、CH-53を製造するシコルスキー社については、厳しい結果となったともいえるかもしれません。
CH-53K重輸送ヘリコプターは機内貨物室容積でCH-47よりも若干小さいものの、三発の強力なヘリコプターであり吊下げ空輸能力は勝っています、それでも輸出実績はイスラエルのみであり、前型のCH-53Dなどを多数を採用しているアメリカ海兵隊も重輸送ヘリコプターの装備定数を削減する計画があり、今後運用基盤や維持基盤に影響も予想されます。
■CH-53KにIOC
CH-53KについてIOC初度作戦能力付与という話題がありました。
アメリカ海兵隊は2022年4月22日、最新型のCH-53Kキングスタリオン重輸送ヘリコプターへIOC初度作戦能力付与を発表しました。CH-53Kは従来海兵隊で運用されたCH-53E重輸送ヘリコプターを元にグラスコックピットの採用や、エンジンをT408-GE-400として出力を強化、機内の貨物室を大型化しハンヴィーも収容可能とした。
CH-53Kキングスタリオン重輸送ヘリコプター、スーパースタリオンと称された従来型に対し輸送能力も大幅に向上しており、エンジン出力は57%向上、時間当たりの輸送能力ではCH-53Eと比較した場合で実質三倍以上に強化されているとのこと。2024年度からはMEU海兵遠征群への配備が開始され、海兵沿岸連隊の支援にも必要な装備とされている。
フォースデザイン2030としてアメリカ海兵隊は2030年を目処に伝統的な水陸両用部隊から、中国の海洋進出による変化の著しい太平洋島嶼部地域での作戦を主眼とする沿岸砲兵主体の編成へ転換を進めているとことですが、この為に航空輸送する装備は従来よりも大型化、空輸能力強化は求められています。ただ、生産数はE型よりも少なくなる計画です。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)
ドイツ政府はウクライナ戦争勃発を受けロシア脅威へ国防の建て直しを開戦前夜の勢いで進めていますが、流石に今回は驚かされました。
ドイツ政府はCH-47輸送ヘリコプター60機を50億ユーロで取得し老朽化したCH-53輸送ヘリコプターを更新する、これは4月にドイツのビルトアムゾンダーク紙の報道で示されました。ドイツ連邦軍はCH-53重輸送ヘリコプターを大量に運用していますが、双発型のG型は導入開始から半世紀を経るものとなっており、後継機が模索されていました。
CH-47輸送ヘリコプター60機を50億ユーロ、極めて巨額の防衛装備調達となりますが、これはショルツ首相がロシア軍ウクライナ侵攻を受け緊急計上した1000億ユーロの特別軍事予算から捻出されることとなります。ボーイング社では、輸送ヘリコプターは年内に機種決定となれば早ければ2025年末から2026年内に納入が可能であるともされています。
F型という最新型のCH-47シリーズが導入されるとのこと、CH-47Fはデジタルコックピット方式を採用しシンガポール軍向けに開発されたものですが、アメリカ陸軍でも新造すると共に既存のCH-47シリーズをF型へ近代化改修しています。CH-47は基本設計は古いものの今も生産が継続しており、運用支援は今後数十年に渡り継続することもたしかです。
ドイツ連邦軍のCH-53輸送ヘリコプター後継機計画についてCH-47Fが選定されましたが、この後継機候補には合せてCH-53K重輸送ヘリコプターも候補に挙げられていました。何故CH-47が選定されたのでしょうか、この背景にはCH-53はアメリカ海兵隊とイスラエル航空宇宙軍しか採用していないという要因が在り、運用互換性の問題が挙げられます。
CH-47Fは60機50億ユーロとなっていますが、CH-53Kは一機当たり1億ユーロを超えるという高い価格見積もりがあり、機内の輸送能力はともに完全武装の兵員55名を輸送するという、言い換えれば同程度となっています。また、NATOではイギリスやオランダにイタリアやスペインなど、CH-47を運用する国も多く運用面での互換性も評価されました。
CH-53はドイツ陸軍で、いまはドイツ空軍に移管されましたが50年に渡る運用実績はあります、しかしこれもCH-47選定を覆すには至らない背景として、ドイツが運用しているのは双発型のCH-53Gであり、三発型であるCH-53Kの運用は、エンジン整備負担の増大も示す事となる為NATO諸国と歩調を合わせたともいえる。ただ、正式決定発表はまだです。
ドイツ連邦軍のCH-47F輸送ヘリコプター導入とボーイング社の支援について。ボーイング社はドイツ空軍がF/A-18E/F戦闘機をトーネード攻撃機後継機に選定した際に、その定期整備や予備部品現地生産に関してドイツ国内防衛産業との提携強化を発表しています。その上でボーイング社製CH-47Fもドイツ国内産業への経済波及効果が意識されています。
ボーイング社は既に欧州NATO諸国に採用されている多数のCH-47を運用する為に、欧州航空大手のエアバスヘリコプターズ社との間で提携しており、ボーイング社によればドイツがCH-47を採用した場合、500名規模の正規雇用が生まれるとしています。一方、CH-53を製造するシコルスキー社については、厳しい結果となったともいえるかもしれません。
CH-53K重輸送ヘリコプターは機内貨物室容積でCH-47よりも若干小さいものの、三発の強力なヘリコプターであり吊下げ空輸能力は勝っています、それでも輸出実績はイスラエルのみであり、前型のCH-53Dなどを多数を採用しているアメリカ海兵隊も重輸送ヘリコプターの装備定数を削減する計画があり、今後運用基盤や維持基盤に影響も予想されます。
■CH-53KにIOC
CH-53KについてIOC初度作戦能力付与という話題がありました。
アメリカ海兵隊は2022年4月22日、最新型のCH-53Kキングスタリオン重輸送ヘリコプターへIOC初度作戦能力付与を発表しました。CH-53Kは従来海兵隊で運用されたCH-53E重輸送ヘリコプターを元にグラスコックピットの採用や、エンジンをT408-GE-400として出力を強化、機内の貨物室を大型化しハンヴィーも収容可能とした。
CH-53Kキングスタリオン重輸送ヘリコプター、スーパースタリオンと称された従来型に対し輸送能力も大幅に向上しており、エンジン出力は57%向上、時間当たりの輸送能力ではCH-53Eと比較した場合で実質三倍以上に強化されているとのこと。2024年度からはMEU海兵遠征群への配備が開始され、海兵沿岸連隊の支援にも必要な装備とされている。
フォースデザイン2030としてアメリカ海兵隊は2030年を目処に伝統的な水陸両用部隊から、中国の海洋進出による変化の著しい太平洋島嶼部地域での作戦を主眼とする沿岸砲兵主体の編成へ転換を進めているとことですが、この為に航空輸送する装備は従来よりも大型化、空輸能力強化は求められています。ただ、生産数はE型よりも少なくなる計画です。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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