■特報:世界の防衛,最新論点
ロシア軍ウクライナ侵攻を受け欧米各国がロシア制裁に踏み切る中、インドは歴史的にロシア製兵器とその技術に依存している為の隔靴掻痒があるようで今回はそのインドの装備計画などをみてみましょう。
F-2と比べると一回り小型で四半世紀遅れていますが、インド空軍はLCAテジャス戦闘機へGPS誘導爆弾JDAM-ER運用能力を付与させます。LCAテジャス戦闘機はイギリス製ナット軽攻撃機の後継機を期して1960年代から開発が開始され、延々と開発遅延を重ねていた航空機ですが、このほど漸く量産、試作機の不具合が解消され制式化の後に量産が実現したインドが誇る国産戦闘機となっているもの。
GPS誘導爆弾JDAM-ER運用能力は滑空により80km遠方の目標に対して精密誘導可能なシステムで、これはアメリカのFMS調達により取得されます。テジャスは現在量産されている超音速戦闘機としては小型であるものの、インド空軍はMiG-21戦闘機の後継に位置付けており、6個飛行隊整備を計画、また海軍では空母艦載機型の開発も見込んでいます。
開発が大幅に遅延し、また性能面でも陳腐化しており機体は小型で将来発展性に、という様々な指摘のあるテジャス戦闘機ですが、軍事予算に対して必要な装備品が多いインドには性能とともに取得費用を抑えている上に自国製造業に寄与するテジャスは有力な選択肢となっています。JDAM運用能力付与はその多用途性能を高めることともなるのでしょう。
■カルヴァリ級潜水艦
オーストラリアの日本潜水艦導入を断念した後の潜水艦計画の右往左往を見ますとインドのような手堅い選択肢は評価されるべきですし、日本の輸出についても同様に参考とされるべきでしょう。
インド海軍が導入を進めているカルヴァリ級潜水艦の最終艦となる六番艦がムンバイ造船所において進水式を迎えました、一番艦カルヴァリは2009年に起工式を迎え2017年に竣工しており、この建造にはフランスのDCNS社が協力、潜水艦は通常動力方式を採用し全長67.5mで水中排水量は1700t、浮上しての航続距離は8ノットで12000kmとのこと。
フランスとスペインが共同開発したスコルペヌ級潜水艦は元々スペインとフランスの将来通常動力潜水艦として設計されたもので、その後フランス海軍が戦略ミサイル原潜建造優先により導入を断念、スペインが導入し輸出も実現、水中排水量1070t型と1668t型及び1800t型と運用する各国の要求性能に応じた各種派生型が設計、2005年に完成しています。
カルヴァリ級は先代が旧ソ連のインド海軍向けフォックスロット級潜水艦の艦名でもありましたが、こちらはソ連で建造され1967年から運用開始、しかし2010年までに全艦退役しています。インド海軍の装備体系はモザイクといえるほどに各国製装備が林立しているのですが、近年インドは輸入兵器から国産化へ舵を切っており、本級もその一例なのです。
■インドSu-30近代化改修
日本のF-15近代化改修は三菱による改修を一段落した後にボーイング任せとしたことがお幅な予算超過を招いているとことですがインドは。
インド空軍のSu-30戦闘機近代化改修をインド国内防衛企業が担当するもよう。これはモディ政権が進めるメイクインディア政策の一環として国防産業の育成が目的です。今回Su-30戦闘機のなかでも新型のSu-30MKIが改修の対象となっており、IRST超長距離赤外線捜索追尾システムの独自開発とSu-30戦闘機への統合化が見込まれる。期限は未定です。
HALヒンディスタンエアロナティクスリミテッド社とBELバハラットエレクトリクスリミテッド社が共同で開発し、IRST本体の開発はBELバハラットエレクトリクスリミテッド社が行い、戦闘機への統合化はHALヒンディスタンエアロナティクスリミテッド社が担当する、IRSTの装備によりレーダーを用いず戦闘機などの目標を遠距離から捕捉します。
Su-30MKI戦闘機はロシア製で、ロシアは従来、独自型やリバースエンジニアリングを行う中国よりも、完全輸入によりロシアの製造業を脅かさないインドを市場として輸出していますが、インド政府ではこうした施策ではいつまでもロシア依存が続くとし、技術協力を受けつつ独自開発能力や製造能力を高めるというメイクインディア政策を進めています。
■T-14アルマータ戦車を参考
日本の戦車産業はかろうじて維持できている水準ですが、インドの場合はアージュン戦車の問題に曝されその打開策にロシアを想定しています。
インド軍の次期主力戦車はロシアのT-14アルマータ戦車を参考とする計画ですが不確定要素が生じ始めました、それはロシアのウクライナ侵攻によりロシアとの防衛協力がアメリカや欧州と日本はじめ各国との経済制裁の対象となりうる可能性があるためです。具体的にはインドは中立政策の一環として冷戦時代には西側からもソ連からも兵器を購入した。
しかし、ソ連崩壊後の新生ロシアは経済破綻し、インドとの防衛協力が大きな意味を持つようになります。それは水上戦闘艦や戦闘機について、インドは独自仕様の要求をロシアに行い、いわば一国完結の様にインドは必要な装備開発をロシアに要請します、これは経済破綻下のロシア軍需産業には、事業存続以上の大きな意味が在ったのです。具体的には。
インド海軍向けのフリゲイトがそのまま設計をロシア仕様として維持され、ロシア軍が経済崩壊により大型水上戦闘艦を全く調達できない状況にあっても経済再建目処が就いた際に即座に取得できたのは輸出が出来た為で、Su-27戦闘機も近代化改修を維持できました。しかし、迂回技術供与にも当るものであり、戦車共同開発も制裁対象となり得るのです。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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ロシア軍ウクライナ侵攻を受け欧米各国がロシア制裁に踏み切る中、インドは歴史的にロシア製兵器とその技術に依存している為の隔靴掻痒があるようで今回はそのインドの装備計画などをみてみましょう。
F-2と比べると一回り小型で四半世紀遅れていますが、インド空軍はLCAテジャス戦闘機へGPS誘導爆弾JDAM-ER運用能力を付与させます。LCAテジャス戦闘機はイギリス製ナット軽攻撃機の後継機を期して1960年代から開発が開始され、延々と開発遅延を重ねていた航空機ですが、このほど漸く量産、試作機の不具合が解消され制式化の後に量産が実現したインドが誇る国産戦闘機となっているもの。
GPS誘導爆弾JDAM-ER運用能力は滑空により80km遠方の目標に対して精密誘導可能なシステムで、これはアメリカのFMS調達により取得されます。テジャスは現在量産されている超音速戦闘機としては小型であるものの、インド空軍はMiG-21戦闘機の後継に位置付けており、6個飛行隊整備を計画、また海軍では空母艦載機型の開発も見込んでいます。
開発が大幅に遅延し、また性能面でも陳腐化しており機体は小型で将来発展性に、という様々な指摘のあるテジャス戦闘機ですが、軍事予算に対して必要な装備品が多いインドには性能とともに取得費用を抑えている上に自国製造業に寄与するテジャスは有力な選択肢となっています。JDAM運用能力付与はその多用途性能を高めることともなるのでしょう。
■カルヴァリ級潜水艦
オーストラリアの日本潜水艦導入を断念した後の潜水艦計画の右往左往を見ますとインドのような手堅い選択肢は評価されるべきですし、日本の輸出についても同様に参考とされるべきでしょう。
インド海軍が導入を進めているカルヴァリ級潜水艦の最終艦となる六番艦がムンバイ造船所において進水式を迎えました、一番艦カルヴァリは2009年に起工式を迎え2017年に竣工しており、この建造にはフランスのDCNS社が協力、潜水艦は通常動力方式を採用し全長67.5mで水中排水量は1700t、浮上しての航続距離は8ノットで12000kmとのこと。
フランスとスペインが共同開発したスコルペヌ級潜水艦は元々スペインとフランスの将来通常動力潜水艦として設計されたもので、その後フランス海軍が戦略ミサイル原潜建造優先により導入を断念、スペインが導入し輸出も実現、水中排水量1070t型と1668t型及び1800t型と運用する各国の要求性能に応じた各種派生型が設計、2005年に完成しています。
カルヴァリ級は先代が旧ソ連のインド海軍向けフォックスロット級潜水艦の艦名でもありましたが、こちらはソ連で建造され1967年から運用開始、しかし2010年までに全艦退役しています。インド海軍の装備体系はモザイクといえるほどに各国製装備が林立しているのですが、近年インドは輸入兵器から国産化へ舵を切っており、本級もその一例なのです。
■インドSu-30近代化改修
日本のF-15近代化改修は三菱による改修を一段落した後にボーイング任せとしたことがお幅な予算超過を招いているとことですがインドは。
インド空軍のSu-30戦闘機近代化改修をインド国内防衛企業が担当するもよう。これはモディ政権が進めるメイクインディア政策の一環として国防産業の育成が目的です。今回Su-30戦闘機のなかでも新型のSu-30MKIが改修の対象となっており、IRST超長距離赤外線捜索追尾システムの独自開発とSu-30戦闘機への統合化が見込まれる。期限は未定です。
HALヒンディスタンエアロナティクスリミテッド社とBELバハラットエレクトリクスリミテッド社が共同で開発し、IRST本体の開発はBELバハラットエレクトリクスリミテッド社が行い、戦闘機への統合化はHALヒンディスタンエアロナティクスリミテッド社が担当する、IRSTの装備によりレーダーを用いず戦闘機などの目標を遠距離から捕捉します。
Su-30MKI戦闘機はロシア製で、ロシアは従来、独自型やリバースエンジニアリングを行う中国よりも、完全輸入によりロシアの製造業を脅かさないインドを市場として輸出していますが、インド政府ではこうした施策ではいつまでもロシア依存が続くとし、技術協力を受けつつ独自開発能力や製造能力を高めるというメイクインディア政策を進めています。
■T-14アルマータ戦車を参考
日本の戦車産業はかろうじて維持できている水準ですが、インドの場合はアージュン戦車の問題に曝されその打開策にロシアを想定しています。
インド軍の次期主力戦車はロシアのT-14アルマータ戦車を参考とする計画ですが不確定要素が生じ始めました、それはロシアのウクライナ侵攻によりロシアとの防衛協力がアメリカや欧州と日本はじめ各国との経済制裁の対象となりうる可能性があるためです。具体的にはインドは中立政策の一環として冷戦時代には西側からもソ連からも兵器を購入した。
しかし、ソ連崩壊後の新生ロシアは経済破綻し、インドとの防衛協力が大きな意味を持つようになります。それは水上戦闘艦や戦闘機について、インドは独自仕様の要求をロシアに行い、いわば一国完結の様にインドは必要な装備開発をロシアに要請します、これは経済破綻下のロシア軍需産業には、事業存続以上の大きな意味が在ったのです。具体的には。
インド海軍向けのフリゲイトがそのまま設計をロシア仕様として維持され、ロシア軍が経済崩壊により大型水上戦闘艦を全く調達できない状況にあっても経済再建目処が就いた際に即座に取得できたのは輸出が出来た為で、Su-27戦闘機も近代化改修を維持できました。しかし、迂回技術供与にも当るものであり、戦車共同開発も制裁対象となり得るのです。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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