■特報:世界の防衛,最新論点
無人航空機については世界中話題がつきません。そしてこれからの防衛には空からの無人機とともに水中や水上と地上などからの運用も広まる事でしょう。
フランスのナーバルグループは将来の海上戦闘における無人機スウォーム攻撃への研究を開始しました。無人機スウォーム攻撃とは蜜蜂の群れによる蜂群攻撃のような各個の攻撃力は高くは無いものの同時多数の無人機により退陣攻撃は勿論、精密なセンサーやミサイル発射装置など脆弱性の高い装備品を体当たり攻撃等により無力化するというものです。
ナーバルグループと新興企業イカルススウォーム社が開発を担うとのことで、この開発計画は2022年2月1日に正式に開始されたとの事です。無人機をもちいてのスウォーム攻撃は従来、地上戦において懸念されていたものですが、無人機の性能向上とともに航続距離が延伸し、将来には沿岸部を航行する艦艇に対しても脅威が及ぶものだと懸念されている。
イカルススウォーム社は10機から最大100機の無人機を同時運用し、フランス海軍の協力と共に水上戦闘艦への脅威がどの程度か、また防護技術等を開発するとのこと。無人機によるスウォーム攻撃は基本的に市販の無人機技術の延長線で考えられますが、将来には無人船や水中無人機が加わる可能性が高く、無人の無人機母艦の出現も考えられるでしょう。
■バイラクタルHALE-B高度記録
バイラクタルTB-2無人機の性能はもはや世界が疑いようのない水準まで達しているところですが次の一歩へ。
トルコのバイラクタル社製バイラクタルHALE-B無人機は高度1万2200mの高高度飛行記録を樹立しました。これはウクライナ戦争においてロシア軍へ猛威を振るうウクライナ軍のTB-2無人機の延長線上にある改良型無人機で、HALEとは高高度滞空型を示すもの、TB-2は中空域で運用するものですが、HALE-Bは旅客機の巡航高度よりも上を飛行した。
バイラクタルHALE-B無人機は750hpエンジン双発の1500hpを破棄する航空機で2021年8月に試作機3機がトルコ軍へ納入されています。小型無人機と云う印象のあるバイラクタル無人機ですが、このバイラクタルHALE-Bは最大離陸重量で5.5tと大きく、各種センサーや武装など最大搭載能力は1350kgに達し、現在1900hpの改良型も開発中という。
高高度飛行試験は2022年3月11日に実施され、高度1万2200mを76分間に渡り滞空しました。バイラクタル無人機は指令電波に指向性の高いビーム方式を採用しており、対電子戦に暴露しにくい利点がありますが、バイラクタルHALE-B無人機は合せて衛星通信能力が付与され、更に自律飛行能力も有していて、より広い空域での作戦運用が可能です。
■RKG-1600無人機用弾薬
対戦車手榴弾は重すぎて命中箇所も正確でなければ効果が無く無意味な装備と思われていたものが一転しました。
ウクライナ軍はロシア軍に対しRKG-1600無人機用弾薬を使用し成功しました。驚くべき点は電動式の市販無人機がこの弾薬運搬も用いられている点です。初の戦果は市街地に脅威を及ぼすロケット弾薬車、市販のクワッドドローンには搭載能力の限界があり今回使用されたものは八発式の無人機が用いられています、しかしこれらは人力搬送が可能です。
RKG-1600無人機用弾薬は1950年代にソ連が開発したRKG-9対戦車手榴弾が転用されています、これは1.1kgの重量級手榴弾で投擲後に制動傘が開傘し戦車に対して真上から降着するという構造、手榴弾そのものは筒状の成形弾薬となっていて、垂直に命中すると150mmの圧延均一鋼鈑を貫徹しますが、手榴弾としては重すぎ15mほどしか飛びません。
RKG-9対戦車手榴弾をウクライナのマヤックプラント社は無人機用に改造したものがRKG-1600、難しい事は考えずに対戦車兵が投擲する代わりに市販無人機が目標直上まで運び投下するというもの。制動傘は投擲の際には安定を妨げる邪魔な追加物ですが、真上から投下する為に安定に寄与します。RKG-9は備蓄があり、地味ですが無視できぬ威力です。
■オーストラリアLAND129PHASE3
スキャンイーグルは素晴らしい航空機なのですが。
オーストラリア軍はインシツ社とともにオーストラリア陸軍将来無人機システムを構築します。これはLAND129PHASE3として進められるもので包括的な無人航空機体系を構築し、24時間体制での継続的な警戒監視体制を戦域全般に渡り獲得するのが狙い。オーストラリア軍は国軍の11万名規模への増強を目指しているが、質的強化も継続して進める。
LAND129PHASE3ではRQ-21インテグレーター無人機などが有力視されている、この機体はボーイングインシツ社が先行して開発したスキャンイーグル無人機を拡大改良したもので、機体そのものは2012年にアメリカ海兵隊へ納入されている。この機体は機体重量が34kgと軽量ながら17kgまでのセンサーを搭載、24時間の滞空能力を有している機体だ。
スキャンイーグルも滞空時間は大きいがRQ-21はセンサー性能が高い。なおオーストラリア軍では既に装備するM-1A1AD主力戦車とRQ-4グローバルホーク無人偵察機を連接する試験を開始しているが、今回想定している無人機は飛行場以外からも運用可能であるとともに、旅団や師団単位でも運用でき、つまり自前の施設から自己完結させる能力が狙い。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
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無人航空機については世界中話題がつきません。そしてこれからの防衛には空からの無人機とともに水中や水上と地上などからの運用も広まる事でしょう。
フランスのナーバルグループは将来の海上戦闘における無人機スウォーム攻撃への研究を開始しました。無人機スウォーム攻撃とは蜜蜂の群れによる蜂群攻撃のような各個の攻撃力は高くは無いものの同時多数の無人機により退陣攻撃は勿論、精密なセンサーやミサイル発射装置など脆弱性の高い装備品を体当たり攻撃等により無力化するというものです。
ナーバルグループと新興企業イカルススウォーム社が開発を担うとのことで、この開発計画は2022年2月1日に正式に開始されたとの事です。無人機をもちいてのスウォーム攻撃は従来、地上戦において懸念されていたものですが、無人機の性能向上とともに航続距離が延伸し、将来には沿岸部を航行する艦艇に対しても脅威が及ぶものだと懸念されている。
イカルススウォーム社は10機から最大100機の無人機を同時運用し、フランス海軍の協力と共に水上戦闘艦への脅威がどの程度か、また防護技術等を開発するとのこと。無人機によるスウォーム攻撃は基本的に市販の無人機技術の延長線で考えられますが、将来には無人船や水中無人機が加わる可能性が高く、無人の無人機母艦の出現も考えられるでしょう。
■バイラクタルHALE-B高度記録
バイラクタルTB-2無人機の性能はもはや世界が疑いようのない水準まで達しているところですが次の一歩へ。
トルコのバイラクタル社製バイラクタルHALE-B無人機は高度1万2200mの高高度飛行記録を樹立しました。これはウクライナ戦争においてロシア軍へ猛威を振るうウクライナ軍のTB-2無人機の延長線上にある改良型無人機で、HALEとは高高度滞空型を示すもの、TB-2は中空域で運用するものですが、HALE-Bは旅客機の巡航高度よりも上を飛行した。
バイラクタルHALE-B無人機は750hpエンジン双発の1500hpを破棄する航空機で2021年8月に試作機3機がトルコ軍へ納入されています。小型無人機と云う印象のあるバイラクタル無人機ですが、このバイラクタルHALE-Bは最大離陸重量で5.5tと大きく、各種センサーや武装など最大搭載能力は1350kgに達し、現在1900hpの改良型も開発中という。
高高度飛行試験は2022年3月11日に実施され、高度1万2200mを76分間に渡り滞空しました。バイラクタル無人機は指令電波に指向性の高いビーム方式を採用しており、対電子戦に暴露しにくい利点がありますが、バイラクタルHALE-B無人機は合せて衛星通信能力が付与され、更に自律飛行能力も有していて、より広い空域での作戦運用が可能です。
■RKG-1600無人機用弾薬
対戦車手榴弾は重すぎて命中箇所も正確でなければ効果が無く無意味な装備と思われていたものが一転しました。
ウクライナ軍はロシア軍に対しRKG-1600無人機用弾薬を使用し成功しました。驚くべき点は電動式の市販無人機がこの弾薬運搬も用いられている点です。初の戦果は市街地に脅威を及ぼすロケット弾薬車、市販のクワッドドローンには搭載能力の限界があり今回使用されたものは八発式の無人機が用いられています、しかしこれらは人力搬送が可能です。
RKG-1600無人機用弾薬は1950年代にソ連が開発したRKG-9対戦車手榴弾が転用されています、これは1.1kgの重量級手榴弾で投擲後に制動傘が開傘し戦車に対して真上から降着するという構造、手榴弾そのものは筒状の成形弾薬となっていて、垂直に命中すると150mmの圧延均一鋼鈑を貫徹しますが、手榴弾としては重すぎ15mほどしか飛びません。
RKG-9対戦車手榴弾をウクライナのマヤックプラント社は無人機用に改造したものがRKG-1600、難しい事は考えずに対戦車兵が投擲する代わりに市販無人機が目標直上まで運び投下するというもの。制動傘は投擲の際には安定を妨げる邪魔な追加物ですが、真上から投下する為に安定に寄与します。RKG-9は備蓄があり、地味ですが無視できぬ威力です。
■オーストラリアLAND129PHASE3
スキャンイーグルは素晴らしい航空機なのですが。
オーストラリア軍はインシツ社とともにオーストラリア陸軍将来無人機システムを構築します。これはLAND129PHASE3として進められるもので包括的な無人航空機体系を構築し、24時間体制での継続的な警戒監視体制を戦域全般に渡り獲得するのが狙い。オーストラリア軍は国軍の11万名規模への増強を目指しているが、質的強化も継続して進める。
LAND129PHASE3ではRQ-21インテグレーター無人機などが有力視されている、この機体はボーイングインシツ社が先行して開発したスキャンイーグル無人機を拡大改良したもので、機体そのものは2012年にアメリカ海兵隊へ納入されている。この機体は機体重量が34kgと軽量ながら17kgまでのセンサーを搭載、24時間の滞空能力を有している機体だ。
スキャンイーグルも滞空時間は大きいがRQ-21はセンサー性能が高い。なおオーストラリア軍では既に装備するM-1A1AD主力戦車とRQ-4グローバルホーク無人偵察機を連接する試験を開始しているが、今回想定している無人機は飛行場以外からも運用可能であるとともに、旅団や師団単位でも運用でき、つまり自前の施設から自己完結させる能力が狙い。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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