北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

【防衛情報】RQ-21インテグレーター無人機豪州採用とフランスのイカルス海上無人機スウォーム攻撃対処

2022-06-06 20:21:54 | 先端軍事テクノロジー
■特報:世界の防衛,最新論点
 無人航空機については世界中話題がつきません。そしてこれからの防衛には空からの無人機とともに水中や水上と地上などからの運用も広まる事でしょう。

 フランスのナーバルグループは将来の海上戦闘における無人機スウォーム攻撃への研究を開始しました。無人機スウォーム攻撃とは蜜蜂の群れによる蜂群攻撃のような各個の攻撃力は高くは無いものの同時多数の無人機により退陣攻撃は勿論、精密なセンサーやミサイル発射装置など脆弱性の高い装備品を体当たり攻撃等により無力化するというものです。

 ナーバルグループと新興企業イカルススウォーム社が開発を担うとのことで、この開発計画は2022年2月1日に正式に開始されたとの事です。無人機をもちいてのスウォーム攻撃は従来、地上戦において懸念されていたものですが、無人機の性能向上とともに航続距離が延伸し、将来には沿岸部を航行する艦艇に対しても脅威が及ぶものだと懸念されている。

 イカルススウォーム社は10機から最大100機の無人機を同時運用し、フランス海軍の協力と共に水上戦闘艦への脅威がどの程度か、また防護技術等を開発するとのこと。無人機によるスウォーム攻撃は基本的に市販の無人機技術の延長線で考えられますが、将来には無人船や水中無人機が加わる可能性が高く、無人の無人機母艦の出現も考えられるでしょう。
■バイラクタルHALE-B高度記録
 バイラクタルTB-2無人機の性能はもはや世界が疑いようのない水準まで達しているところですが次の一歩へ。

 トルコのバイラクタル社製バイラクタルHALE-B無人機は高度1万2200mの高高度飛行記録を樹立しました。これはウクライナ戦争においてロシア軍へ猛威を振るうウクライナ軍のTB-2無人機の延長線上にある改良型無人機で、HALEとは高高度滞空型を示すもの、TB-2は中空域で運用するものですが、HALE-Bは旅客機の巡航高度よりも上を飛行した。

 バイラクタルHALE-B無人機は750hpエンジン双発の1500hpを破棄する航空機で2021年8月に試作機3機がトルコ軍へ納入されています。小型無人機と云う印象のあるバイラクタル無人機ですが、このバイラクタルHALE-Bは最大離陸重量で5.5tと大きく、各種センサーや武装など最大搭載能力は1350kgに達し、現在1900hpの改良型も開発中という。

 高高度飛行試験は2022年3月11日に実施され、高度1万2200mを76分間に渡り滞空しました。バイラクタル無人機は指令電波に指向性の高いビーム方式を採用しており、対電子戦に暴露しにくい利点がありますが、バイラクタルHALE-B無人機は合せて衛星通信能力が付与され、更に自律飛行能力も有していて、より広い空域での作戦運用が可能です。
■RKG-1600無人機用弾薬
 対戦車手榴弾は重すぎて命中箇所も正確でなければ効果が無く無意味な装備と思われていたものが一転しました。

 ウクライナ軍はロシア軍に対しRKG-1600無人機用弾薬を使用し成功しました。驚くべき点は電動式の市販無人機がこの弾薬運搬も用いられている点です。初の戦果は市街地に脅威を及ぼすロケット弾薬車、市販のクワッドドローンには搭載能力の限界があり今回使用されたものは八発式の無人機が用いられています、しかしこれらは人力搬送が可能です。

 RKG-1600無人機用弾薬は1950年代にソ連が開発したRKG-9対戦車手榴弾が転用されています、これは1.1kgの重量級手榴弾で投擲後に制動傘が開傘し戦車に対して真上から降着するという構造、手榴弾そのものは筒状の成形弾薬となっていて、垂直に命中すると150mmの圧延均一鋼鈑を貫徹しますが、手榴弾としては重すぎ15mほどしか飛びません。

 RKG-9対戦車手榴弾をウクライナのマヤックプラント社は無人機用に改造したものがRKG-1600、難しい事は考えずに対戦車兵が投擲する代わりに市販無人機が目標直上まで運び投下するというもの。制動傘は投擲の際には安定を妨げる邪魔な追加物ですが、真上から投下する為に安定に寄与します。RKG-9は備蓄があり、地味ですが無視できぬ威力です。
■オーストラリアLAND129PHASE3
 スキャンイーグルは素晴らしい航空機なのですが。

 オーストラリア軍はインシツ社とともにオーストラリア陸軍将来無人機システムを構築します。これはLAND129PHASE3として進められるもので包括的な無人航空機体系を構築し、24時間体制での継続的な警戒監視体制を戦域全般に渡り獲得するのが狙い。オーストラリア軍は国軍の11万名規模への増強を目指しているが、質的強化も継続して進める。

 LAND129PHASE3ではRQ-21インテグレーター無人機などが有力視されている、この機体はボーイングインシツ社が先行して開発したスキャンイーグル無人機を拡大改良したもので、機体そのものは2012年にアメリカ海兵隊へ納入されている。この機体は機体重量が34kgと軽量ながら17kgまでのセンサーを搭載、24時間の滞空能力を有している機体だ。

 スキャンイーグルも滞空時間は大きいがRQ-21はセンサー性能が高い。なおオーストラリア軍では既に装備するM-1A1AD主力戦車とRQ-4グローバルホーク無人偵察機を連接する試験を開始しているが、今回想定している無人機は飛行場以外からも運用可能であるとともに、旅団や師団単位でも運用でき、つまり自前の施設から自己完結させる能力が狙い。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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北朝鮮-日曜日の日本海へミサイル八発連続発射,30分間で異なる射程と上昇限度の弾道ミサイルなど発射

2022-06-06 07:00:28 | 防衛・安全保障
■臨時情報-北朝鮮弾道弾
 ミサイル発射の一報が入りますと若干でも万一を考える為に着弾の続報まで平穏ではありません。

 北朝鮮は5日日本時間0900時頃、凡そ30分間に渡り8発の弾道ミサイル等を発射しました。今回の北朝鮮ミサイル発射は、複数の箇所から様々な射程のミサイルが発射されており、ミサイル実験と云うよりはミサイル演習という水準のもので、日韓の発表で発射地点などに差異があり、弾道ミサイル他に通常のロケット弾が含まれる可能性があります。

 平壌近郊の順安飛行場付近から8発が発射された、韓国国防省はこのように発表しています。韓国のミサイル探知は同じ朝鮮半島に置かれたレーダーサイトにより実施されています。8発の弾道ミサイルは到達高度が25kmから90kmと差異があり、飛翔距離も110kmから600kmと差異がありました。異なる射程のミサイルを撃った意図は不明としている。

 我が国防衛省は朝鮮半島西岸と半島内陸部と東岸の複数個所から少なくとも6発が発射されたとしています。なお、ミサイルは何れも日本海に向け発射されましたが我が国EEZ排他的経済水域外に落下したと発表しています。防衛省からの情報を受け海上保安庁が日本海を航行中の船舶や航空機へ注意喚起を行いましたが、幸い被害などはありませんでした。

 北朝鮮の日曜日におけるミサイル演習、その意図は不明です。ただ、幾つか考えられる背景があります。韓国海軍は先週にアメリカ海軍の原子力空母エイブラハムリンカーンとともに米韓合同演習を沖縄周辺海域において実施され、日韓にとっては日常的な演習ですが、北朝鮮には合同演習を行う同盟国の空母も無ければ空母と連携できる艦もありません。

 北朝鮮は同時に、COVID-19新型コロナウィルス感染症の感染拡大に見舞われています、一旦は小康状態となっていましたが、24時間で人口比1%ちかい感染者数が発生する厳しい感染再拡大とが繰り返しており、米韓合同演習に対しても有効な対抗演習を行えていません、こうした中で弾道ミサイル演習は数少ない対抗演習の機会となっている可能性も。

 核実験準備も行われているとの報道があります北朝鮮、COVID-19新型コロナウィルスへはミサイルも核兵器も有効な選択肢となる訳ではありませんが、直接的な効果は無くとも、COVID-19新型コロナウィルス対策に失敗しているとしても、周辺国の軍事力に対する抑止力は維持されているとの国内向けの誇示が、この演習と関係しているのかもしれません。

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