■NATO北欧拡大の論点
スウェーデンがNATO加盟となれば同国ゴトランド島はバルト海とロシア飛び地カリーニングラードを左右する大事となります。
トルコ政府はNATO加盟国において唯一、フィンランドとスウェーデンのNATO加盟交渉について反対しています。これはトルコがテロ組織と指定するクルド人武装勢力に対し両国がテロ組織指定していない為、という理由を提示していますがNATOとロシアの対立が決定的と成れば、トルコはロシアと黒海を面した隣国同士であり、緊張が激化しましょう。
露土戦争とキューバ危機、トルコはロシアと独特の関係を維持しており別の視点も考えられるかもしれない。ロシアのぺスコフ大統領補佐官は今日、プーチン大統領が近くトルコへ外国訪問を行うべく調整中であると発表しました。他方、トルコの施策はNATOの協調に影響を及ぼしていると見えるかもしれませんが、慎重に議論を再考する機会ともなる。
フィンランドとスウェーデンのNATO加盟はそれほど簡単なのか、ロシア軍のウクライナ侵攻を受け急遽両国による中立政策の放棄を背景に開始されたNATO加盟申請には、若干の不確定要素があるように思えます。NATO加盟国の義務はGDP比の国防費一定規模の担保や装備のNATO標準化に指揮官の英語能力などが挙げられ、これは対応できるでしょう。
フィンランドのパトリアAMV装甲車はNATOでは1000両以上が採用されていますし、スウェーデンのCV-90装甲戦闘車は完成度の高さから、実質欧州標準装甲戦闘車となっています、ただ、NATOは装備とともに指揮系統を統合化し、そして加盟国の義務としてNATOは加盟国を守るべくNATOに対しては加盟国も義務を負っている。それは核にも。
しかし、ニュークリアシェアリング、フィンランド政府はNATOのニュークリアシェアリング政策を保留する姿勢を示しており、また、スウェーデン政府は自国領内にNATO基地を置かない限定的な加盟を示唆しています。これではNATO-PfP、平和のためのパートナーシップ協定とあまり変わらないのではないか、他の加盟国が容認できるのか、懸念する。
NATOは強力な軍事同盟であり、極めて深い防衛協力を1949年の創設当時から一貫して協力している為に、冷戦時代に巨大な核戦力と最大規模の戦車戦力や膨大な砲兵戦力を持つソ連がNATOへの軍事的挑戦に着手する事を、正に実力で抑止した、こうした歴史があります。しかしその為にNATOは厳しい、単なる軍事同盟以上の安全保障体制を構築した。
ニュークリアシェアリングをNATOは採用しており、イタリアとオランダとトルコに最大で200発程度の戦術核兵器を前方展開させています、これはB-61核爆弾というアメリカの標準的戦術核爆弾で戦闘機などから投射するものなのですが、加盟国はNATOが核兵器を使用せざるをえないと決定した場合は、この決定に従うことも義務となっているのですね。
NATOニュークリアシェアリングは、NATO加盟国の重要な地域において核兵器を使用しなければ戦線全体が崩壊する危機に曝された際、NATOが核兵器の使用を決定すると、当該国に核爆弾が貸与され、投下する事となります。NATOではなく投下される当該国が投下するのは核戦場となれば自国民が確実に被害を受ける為、正統性を持つ政府が行うため。
B-61核爆弾が採用された背景には、B-61核爆弾は確実な起爆の為の調整と実験が行われており投下したら可変威力方式により確実に任意の核爆発を起こすことと、基本的に自由落下爆弾である為、目的外、例えば自国領域外の敵国広報策源地への戦略攻撃、こうした越権使用が出来ない為に更なる報復攻撃、例えば水爆による戦略核攻撃を回避できるという。
残酷に思われるかもしれませんが、例えば西ドイツのフルダギャップ、ここが陥落するならばドイツ深部を抜けてフランス始め周辺国が危険になる為、住民毎西ドイツ政府が核攻撃を行う、ハノーバー正面の防衛に失敗するならば一挙にオランダの要港アムステルダム等が危険となる為に西ドイツアルフェルトの周辺地域ごと核兵器で、などが想定された。
核兵器の使用はもう一つ、侵攻する敵が通常戦力の防衛網に突破口を穿つ為に核攻撃を加えてくる可能性がありますが、この際に核の報復を行わなければ先に使用した側に歯止めのかからぬ核使用を継続させる懸念が生じる、B-61核爆弾は0.3キロトンから350キロトンまで核爆発威力を調整でき、この際に相手の核攻撃威力に応じ使用が迫られる事もある。
加盟国の義務であり、しかし核兵器を使わない選択肢として通常戦力による防衛が成功するならば必要はありません、その為に西ドイツは戦車4200両という、今の戦車保有数が225両からロシア脅威を受け300両へ再拡大している最中ですので、それこそ桁違いの戦力を整備、アメリカ第五軍団やイギリスライン軍団などを自国領域に駐屯を要請していた。
自国内で核攻撃なんてものを容認したい国はありません、ただ、これも加盟国の義務である、そしてそれでもNATOに加盟しなければ国土と主権とともに国民全体を防衛する事は出来ない、こうした悲壮な覚悟とともに、核兵器を使用するのはNATO全体の意思であるが、投下される国の政府に付託し加盟国の義務として核兵器を使用させる、枠組なのです。
ニュークリアシェアリングの核爆弾備蓄施設は情報公開されているものでは以下の通り、ベルギーのクライネブローゲル基地、イタリアのアビアーノ空軍基地、イタリアのゲディトレ空軍基地、オランダのフォルケル空軍基地、トルコのインジルリク空軍基地、これらの基地にアメリカ製B-61核爆弾が20発から40発前方展開され、NATOが管理している。
ニュークリアシェアリングにおいても、戦時以外に核兵器を置かない協定を結ぶことは可能です、こういいますのもB-61核爆弾を提供しているのはアメリカ政府であり、アメリカと二国間協定を結ぶ事で平時に置かない事は可能、クリントン政権時代にドイツ政府はシュパンダーレム基地とラムシュタイン基地に置かぬ協定を結び、実現した事例があります。
しかしそれでも、核兵器のNATO全体の意思として使用が決定した場合には、従う事は加盟国の義務であり、平時に強力な同盟に参加する、虎の威を借りる狐、こうした漁夫の利は認められません。勿論、フィンランドとスウェーデンが国内でニュークリアシェアリングを合意させる可能性もあるのですが、ロシア怖し、しかし核も怖し、簡単な議論ではありません。
ただ、これは可能性なのですが、ウクライナ戦争停戦のNATOが提示できる切り札となるのではないか。例えば1962年キューバ危機ではキューバから遥か離れたトルコのアメリカ軍配備ジュピター核ミサイルの撤去が交渉の天王山となりました。逆に今回、ウクライナから離れた北欧二カ国がNATO加盟を断念する事が、ロシアとの交渉に大きな鍵を与えるのかも、しれませんね。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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スウェーデンがNATO加盟となれば同国ゴトランド島はバルト海とロシア飛び地カリーニングラードを左右する大事となります。
トルコ政府はNATO加盟国において唯一、フィンランドとスウェーデンのNATO加盟交渉について反対しています。これはトルコがテロ組織と指定するクルド人武装勢力に対し両国がテロ組織指定していない為、という理由を提示していますがNATOとロシアの対立が決定的と成れば、トルコはロシアと黒海を面した隣国同士であり、緊張が激化しましょう。
露土戦争とキューバ危機、トルコはロシアと独特の関係を維持しており別の視点も考えられるかもしれない。ロシアのぺスコフ大統領補佐官は今日、プーチン大統領が近くトルコへ外国訪問を行うべく調整中であると発表しました。他方、トルコの施策はNATOの協調に影響を及ぼしていると見えるかもしれませんが、慎重に議論を再考する機会ともなる。
フィンランドとスウェーデンのNATO加盟はそれほど簡単なのか、ロシア軍のウクライナ侵攻を受け急遽両国による中立政策の放棄を背景に開始されたNATO加盟申請には、若干の不確定要素があるように思えます。NATO加盟国の義務はGDP比の国防費一定規模の担保や装備のNATO標準化に指揮官の英語能力などが挙げられ、これは対応できるでしょう。
フィンランドのパトリアAMV装甲車はNATOでは1000両以上が採用されていますし、スウェーデンのCV-90装甲戦闘車は完成度の高さから、実質欧州標準装甲戦闘車となっています、ただ、NATOは装備とともに指揮系統を統合化し、そして加盟国の義務としてNATOは加盟国を守るべくNATOに対しては加盟国も義務を負っている。それは核にも。
しかし、ニュークリアシェアリング、フィンランド政府はNATOのニュークリアシェアリング政策を保留する姿勢を示しており、また、スウェーデン政府は自国領内にNATO基地を置かない限定的な加盟を示唆しています。これではNATO-PfP、平和のためのパートナーシップ協定とあまり変わらないのではないか、他の加盟国が容認できるのか、懸念する。
NATOは強力な軍事同盟であり、極めて深い防衛協力を1949年の創設当時から一貫して協力している為に、冷戦時代に巨大な核戦力と最大規模の戦車戦力や膨大な砲兵戦力を持つソ連がNATOへの軍事的挑戦に着手する事を、正に実力で抑止した、こうした歴史があります。しかしその為にNATOは厳しい、単なる軍事同盟以上の安全保障体制を構築した。
ニュークリアシェアリングをNATOは採用しており、イタリアとオランダとトルコに最大で200発程度の戦術核兵器を前方展開させています、これはB-61核爆弾というアメリカの標準的戦術核爆弾で戦闘機などから投射するものなのですが、加盟国はNATOが核兵器を使用せざるをえないと決定した場合は、この決定に従うことも義務となっているのですね。
NATOニュークリアシェアリングは、NATO加盟国の重要な地域において核兵器を使用しなければ戦線全体が崩壊する危機に曝された際、NATOが核兵器の使用を決定すると、当該国に核爆弾が貸与され、投下する事となります。NATOではなく投下される当該国が投下するのは核戦場となれば自国民が確実に被害を受ける為、正統性を持つ政府が行うため。
B-61核爆弾が採用された背景には、B-61核爆弾は確実な起爆の為の調整と実験が行われており投下したら可変威力方式により確実に任意の核爆発を起こすことと、基本的に自由落下爆弾である為、目的外、例えば自国領域外の敵国広報策源地への戦略攻撃、こうした越権使用が出来ない為に更なる報復攻撃、例えば水爆による戦略核攻撃を回避できるという。
残酷に思われるかもしれませんが、例えば西ドイツのフルダギャップ、ここが陥落するならばドイツ深部を抜けてフランス始め周辺国が危険になる為、住民毎西ドイツ政府が核攻撃を行う、ハノーバー正面の防衛に失敗するならば一挙にオランダの要港アムステルダム等が危険となる為に西ドイツアルフェルトの周辺地域ごと核兵器で、などが想定された。
核兵器の使用はもう一つ、侵攻する敵が通常戦力の防衛網に突破口を穿つ為に核攻撃を加えてくる可能性がありますが、この際に核の報復を行わなければ先に使用した側に歯止めのかからぬ核使用を継続させる懸念が生じる、B-61核爆弾は0.3キロトンから350キロトンまで核爆発威力を調整でき、この際に相手の核攻撃威力に応じ使用が迫られる事もある。
加盟国の義務であり、しかし核兵器を使わない選択肢として通常戦力による防衛が成功するならば必要はありません、その為に西ドイツは戦車4200両という、今の戦車保有数が225両からロシア脅威を受け300両へ再拡大している最中ですので、それこそ桁違いの戦力を整備、アメリカ第五軍団やイギリスライン軍団などを自国領域に駐屯を要請していた。
自国内で核攻撃なんてものを容認したい国はありません、ただ、これも加盟国の義務である、そしてそれでもNATOに加盟しなければ国土と主権とともに国民全体を防衛する事は出来ない、こうした悲壮な覚悟とともに、核兵器を使用するのはNATO全体の意思であるが、投下される国の政府に付託し加盟国の義務として核兵器を使用させる、枠組なのです。
ニュークリアシェアリングの核爆弾備蓄施設は情報公開されているものでは以下の通り、ベルギーのクライネブローゲル基地、イタリアのアビアーノ空軍基地、イタリアのゲディトレ空軍基地、オランダのフォルケル空軍基地、トルコのインジルリク空軍基地、これらの基地にアメリカ製B-61核爆弾が20発から40発前方展開され、NATOが管理している。
ニュークリアシェアリングにおいても、戦時以外に核兵器を置かない協定を結ぶことは可能です、こういいますのもB-61核爆弾を提供しているのはアメリカ政府であり、アメリカと二国間協定を結ぶ事で平時に置かない事は可能、クリントン政権時代にドイツ政府はシュパンダーレム基地とラムシュタイン基地に置かぬ協定を結び、実現した事例があります。
しかしそれでも、核兵器のNATO全体の意思として使用が決定した場合には、従う事は加盟国の義務であり、平時に強力な同盟に参加する、虎の威を借りる狐、こうした漁夫の利は認められません。勿論、フィンランドとスウェーデンが国内でニュークリアシェアリングを合意させる可能性もあるのですが、ロシア怖し、しかし核も怖し、簡単な議論ではありません。
ただ、これは可能性なのですが、ウクライナ戦争停戦のNATOが提示できる切り札となるのではないか。例えば1962年キューバ危機ではキューバから遥か離れたトルコのアメリカ軍配備ジュピター核ミサイルの撤去が交渉の天王山となりました。逆に今回、ウクライナから離れた北欧二カ国がNATO加盟を断念する事が、ロシアとの交渉に大きな鍵を与えるのかも、しれませんね。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
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