北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

【防衛情報】UH-72B軽ヘリコプター配備開始とチェコAH-1Z譲渡,MH-139A準備とオーストラリアUH-60

2022-10-17 20:15:05 | 先端軍事テクノロジー
■特報:世界の防衛,最新論点
 今回は各国のヘリコプター関連の装備状況について新しい情報を纏めてみました。

 アメリカ国防総省はコロラド州兵が初のUH-72B軽ヘリコプターを受領したと発表しました。UH-72Bラコタヘリコプターの受領式典は8月4日、ミシシッピ州のコロンバスにあるエアバスヘリコプター社施設において行われ、2022年に納入される18機のUH-72Bヘリコプターの内2機が引き渡され、州兵航空隊のUH-60ヘリコプターと混成運用する。

 コロラド州兵はUH-72B最初の配備部隊として選定された背景には中西部に位置するコロラド州での山間部捜索救難や州警察の麻薬取り締まり作戦支援へ高出力のエンジンを搭載したヘリコプターが必要とされた為で、UH-72Bを活用する事で、高性能であるが運用コストの高い既存のUH-60の飛行時間を節約する事にもつながるとの期待があるようです。

 UH-72B軽ヘリコプターはエアバスH-145-D3の軍用型で、UH-72Aとの外見上の相違点はテイルローター部分が密閉形状へ変更している点ですが、エンジン出力の25%向上など山間部での運用能力向上など、高山部での運用性能は強化されています。配備は州兵用であり連邦軍での海外運用などは想定されていませんが、割り切った任務には十分な性能だ。
■米空軍のMH-139A
 AW-139は日本では公官庁を中心に100機近くが運用されているのですが自衛隊には見向きもされないという、UH-60の補完的な機種として最適に思えるのですが。

 アメリカ空軍は九月までにMH-139AグレイウルフヘリコプターのFAA補足型式証明を取得しました。現在空軍には機体4機が試験用に配備されていて、型式証明に必要な飛行試験は空軍第413飛行試験飛行隊が実施し、FAA連邦航空局より補足型式証明という暫定的な運用手続きを行い、今後型式証明獲得に向けてアメリカ空軍は各種の試験を行います。

 MH-139AグレイウルフヘリコプターはUH-1N軽輸送ヘリコプターの後継として配備されるもので、空軍は80機の導入を予定しています。任務には要人輸送や連絡輸送という平時の任務も含まれますが、重要な任務はICBM大陸間弾道ミサイル基地などアメリカ本土の基地施設が敵特殊部隊等の攻撃を受けた際、警備部隊を緊急展開させる用途も含まれます。

 MH-139AグレイウルフヘリコプターはガリレオヘリコプターのアグスタウェストランドAW-139ヘリコプターの軍用仕様で、AW-139は日本でも海上保安庁や警視庁に大阪府警などが運用中だ。製造はフィラデルフィアのレオナルド工場にて行われている。その性能は最大離陸重量6.8tで人員15名を輸送、巡航速度は306km/hで航続距離は1250kmです。
■チェコへAH-1Z供与
 自衛隊もUH-1J後継機に同系統のUH-2を選んだのですからUH-2を元にAH-1Wの四枚ローター型を製造するかAH-1Zという選択肢はあっていいと思う。

 チェコ国防省は8月19日、AH-1Z戦闘ヘリコプター6機とUH-1Y軽輸送ヘリコプター2機をアメリカ政府より無償供与されました。チェコ陸軍は既に2020年、ベル社との間でAH-1Z戦闘ヘリコプター8機を5億6000万ドルにて取得契約を結んでおり、くわえてUH-1Y軽輸送ヘリコプターも4機を導入する契約を2020年にすでに結んでいます。

 AH-1Z戦闘ヘリコプターについて、チェコ陸軍は冷戦時代にソ連より導入したMi-24/35ハインド攻撃ヘリコプターの後継機に充てる事となっています。その納入は2023年から2024年にかけ行われる予定です。AH-1Z戦闘ヘリコプターとUH-1Y軽輸送ヘリコプターは機体構成要素の85%が共通であり、合計20機が揃う事となり整備効率が高まるでしょう。

 AH-1Z戦闘ヘリコプターは愛称がヴァイパー、AH-64Eアパッチガーディアンの陰に隠れる形で輸出には縁が遠い状況が続いていましたが、取得費用と運用費用をAH-64Eよりも抑えているという事で近年徐々に採用国が増えています。UH-1Yは愛称がヴェノム、多用途ヘリコプターですがハイドラ70ロケット弾やM-134ミニガンなども搭載が可能です。
■豪州UH-60再選定
 自衛隊も航空自衛隊が用途廃止したUH-60救難ヘリコプターを再生改造して陸上自衛隊へ移管する選択肢はあってよかったのではないか。

 オーストラリア国防省はUH-60M多用途ヘリコプター40機の有償供与についてアメリカ国務省の承認を受けました。この契約には機体40機に加え、T700-GE 701Dエンジン88基とAN/AAR-57-CMWSミサイル警報システム44基およびH-764U-GPS航法装置 96 基、AN/ARC-231RT-1808A SATCOM航空無線システムなどが含まれているとのことです。

 NH-90輸送ヘリコプターをユーロコプター社、現在のエアバスヘリコプターズ社より取得していたオーストラリア軍ですが、高温のオーストラリア国内では故障が相次ぎ、短期間で運用を断念し代替にUH-60M多用途ヘリコプターを導入する事となりました。なおNH-90はニュージーランドでも運用されていますが、こちらには顕著な問題はありません。

 UH-60をオーストラリアが導入するのは今回が初めて絵はありません、1986年から39機のS-70を導入しており、初号機は輸入しましたが1987年からデハビラントオーストラリア社が38機をライセンス生産しています、しかし後継にNH-90が決定した事で退役が始り2021年に最後の機体が退役しましたが、今回改めてUH-60を再度選択した構図です。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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ウクライナ戦争長期化と世界LNGエネルギー危機,欧州天然ガス危機が波及する世界規模の資源価格高騰

2022-10-17 07:00:26 | 国際・政治
■臨時情報-ウクライナ情勢
 経済産業省などのこの冬のエネルギー不足に対する対応策や政府の指針が見えない中、厳しい現実が突き付けられようとしています。

 2022年も10月となり、冬の季節が近づいていますが、この冬は恐らくLNG液化天然ガスと石油価格が上昇します、これは原子力発電の大半を停止している我が国にとり、1973年石油危機以来となるエネルギー危機となり、物価上昇や円安の加速という二重苦に陥る可能性があります、それはロシアの欧州天然ガス供給遮断が欧州のLNG需要を高めるゆえ。

 政府は1月からの電気料金一部世帯支援等を構想していますが、電力会社に原因があるのではなくLNGの国際取引価格が上昇し、併せて代替エネルギーとして石油取引価格が上昇する為であり、政府支援も元の値段が高い為という、焼け石に水、的な状況となる可能性があり、しかも欧州の冬季電力需要増大を背景、夏の電力不足と比較にならない可能性が。

 太陽光発電など再生可能エネルギーにより補填できないかと問われれば、夏以降ドイツなど欧州では冬の電力不足を見越し、国運を掛けたという表現が当てはまる程の、2011年直後における日本の様な勢いでの再生可能エネルギー発電基盤構築が進められていて、太陽光パネルや風力発電装置も、国際取引価格が上昇しており、生産さえ間に合わない状況だ。

 ロシア経済制裁解除の可能性は若干ですが残ります、それはロシア軍がウクライナにおいて決定的敗北を喫し、クリミア半島を含む東部地域と南部地域からの撤退の実現、若しくは撤退を前提とした停戦が実現し、これが次の攻撃準備に繋がらぬよう、過去のコソボ平和維持任務のように、当事者であるロシア軍以外のPKO部隊が停戦監視に当る、という。

 しかし、これを期待するのは構わないのですが、願望を現実としてリスクを受け入れ対策を怠る事があってはなりません。現実問題としてはロシア軍は動員体制を数週間以内に完了させ、これらの予備役兵をウクライナへ投入する為、装備が不十分であり相当の人的消耗を強いられる事となるのでしょうが、短期決戦をロシアが想定していない事は確かです。

 再生可能エネルギー、日本は2011年東日本大震災以降、太陽光発電に莫大な価格保証制度という支援策を講じており、逆にこの電気代高騰が日本製造業の海外流失を加速させたといえるのですが、再生可能エネルギーの発電量そのものは非常に高い水準まで成長させていますが、夜間発電できない太陽光発電が中心で、調整させる基盤発電機能がありません。

 国内の原子力発電所全てを再稼働させる事ができれば、ある程度の電力供給を成り立たせる事は可能ですが、原子力規制委員会が平時の手続きを守る、つまり今は有事という認識が無い状況では、その期待は出来ません。原子力規制委員会の所管は原発からの事故防止であり、電力安定供給は所掌外なのですから、当然といえば当然なのですが、現状厳しい。

 ガス制限令、政府は14日の閣議家艇で、企業などに需給ひっ迫時のLNGガス供給制限を行う法整備で不足を補おうとしています、いや、ドイツ政府なども夏の時点でガス配給制を示唆していましたが、日本では不足が予想される数十日前になり準備が始まった段階です。大規模水力発電など電源開発にも本腰を入れて欲しいところですが、この冬は覚悟が必要だ。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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