北大路機関

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US-2を増強せよ!【2】アメリカ軍のMC-130輸送機水上機改造計画とUS-2飛行艇による無人艦艇支援提案

2022-10-20 20:00:04 | 先端軍事テクノロジー
■US-2とC-130飛行艇案
 飛行艇は消えゆく存在なのかと問われますと世界には枯れたと思われた技術が逆に再評価される事もあるという一点を思い返すべきなのかもしれない。

 対潜飛行艇から救難飛行艇に新しい運用領域を獲得し、これまでのヘリコプターかヘリコプターの航続圏外である場合には沿岸の基地から高速船を救難に走らせるという方式から、飛行艇の救難用への転用は、救助に要する時間を数十時間から数時間まで短縮し、北太平洋など海水温の低い海域での救難能力を飛躍的に向上、救命率も高くなりました。ただし。

 救難飛行艇はそれ程数が必要ではない、という問題が生じます。予備機が随伴する、それでも対潜飛行艇の様に何カ所も同時に着水することは、そんなに同時に航空機が毎日と遭難していては困りますし、なかなかあり得ません、故に必要な機体は稼働数機で対応できてしまう、だからこそいまの、製造ラインを維持できない、こうした問題が生じるのです。

 V-22輸送機など、仮にUS-2飛行艇が製造不能となってもアメリカから購入するなどして、ほかの航空機で対応することはできないのか、若干こうした考えが生まれてくることは否定できません、特に救難航空部隊にKC-130空中給油機を配備しV-22を救難航空機として採用するならば航続距離はかなり延伸できます。しかし、そう使い勝手は良くないようで。

 V-22を開発した当のアメリカ自身が、変な航空機の開発を進めています、それはMC-130輸送機を飛行艇に改造するというもの。一応2022年内に完成させるという方針ではあるのですが、完成予想図を見ますと少々厳しいといいますか無理矢理の印象が拭えない、いやアメリカは時折JATO補助推進装置でC-130を数直離着陸させようとする等無理をするが。

 C-130輸送機は汎用性に優れた航空機でAC-130は対地攻撃機に改造されましたし、最近の施策を見ますとハーヴェストホーク計画として洋上哨戒機に改造する案が実験成功、ラピッドドラゴン計画としてミサイル爆撃機に改造する計画もあれば無人機母機として改造されたものもあります、が、飛行艇に改造するというのはかなり無理があるようにも思える。

 こうした策を強行、いや構想するに至ったのは近年の太平洋地域における中国の海洋進出を受けての輸送能力強化です。救難用ではないのですが、要するに空港のない離島に飛行艇と行いますか、水上発着可能な輸送機で輸送しようというもの。これは言い換えれば、V-22に空中給油を繰り返して輸送するという方式の限界、アメリカ軍自身の認識でしょう。

 ただ、C-130飛行艇案には無理がある。C-130輸送機に、C-21輸送機の胴体ほどもあるような大きさのフロートを二つ装着し、支柱で支えて、輸送機を海におろすというもの。見た目は単純ですし模型飛行機ならば直ぐにでもできそうですが、着水の衝撃で支柱がおれてしまわないかという難点があります、そして輸送能力ですが、フロートの位置が厳しい。

 C-130とUS-2では胴体の大きさが違うとの指摘があるかもしれません、ただ、完成予想CGをみる限りではC-130は後部貨物扉が開閉できない大きさのフロートが装着されているのです。特殊部隊を輸送するのでしょう、なぜなら原型のMC-130は特殊作戦航空機であるためです、つまり用途はUS-2の重要性をちぐはぐながらアメリカが実証した構図だ。

 US-2には用途はある、なにしろUSのUは多用途をしめすものなのですから。真剣に考えなければならないのは、PS-1に実用性の難しさが指摘された時代と現代とでは軍事技術が前提として大きく変容しているのです。これは変な話なのですが、無人ヘリコプターDASHが護衛艦たかつき型などに将来性の高い装備として採用されたものの、厳しいものでした。

 海上自衛隊では事故による喪失は無かったようですが、アメリカ海軍では墜落事故が相次ぎ、結論が実用性なしとされ、早々にアメリカでの運用が終了、日本もこれに続きDASH発着装置の位置がアスロックランチャーなどに転用、今では呉の自衛隊てつのくじら館くらいでしか見ることができなくなったのです。一方、無人機そのものの認識は、今どうか。

 30年以上を経て無人ヘリコプターそのものはMQ-8として艦載運用の将来を左右する重要な航空機としてみられたように、です。MQ-8は海上自衛隊も導入を予定しているものですが、滞空時間が長く、SH-60一機分の区画に2機を留置できます、一旦用途無しと考えられた装備も、技術革新により、同型機種ではないにしても、装備体系は返り咲きうるのだ。

 飛行艇、救難飛行艇として運用している海上自衛隊ですが、対潜飛行艇としてソナーを積んで、とは考えないのですけれども、例えば水中センサーの母機や無人艦艇の支援用、船舶よりも遥かに高速で進出でき、行動半径が非常に広く、人員を太平洋の真ん中に急速に送り込む事が出来る能力というものは、あまり低く評価できないように、考えるのですね。

 US-2飛行艇は、例えば無人艦艇の支援に最適と考える、もちろん主翼に無人哨戒艇を搭載しろという訳ではありません、しかし、無人艦艇の脆弱性を飛行艇は補えるとは言える。ここで思い出すのは先日ペルシャ湾で発生した米軍の無人艦船がイラン海軍に拿捕されかけた事例でしょうか。無人艦艇は、訓練後のソノブイ等の様に敵対国に回収の懸念がある。

 無人艦艇は将来の広範囲における海洋哨戒を左右する装備と考えられていますが、拿捕されかけたさいに、もちろんRWS遠隔操作銃塔などを装備するならば撃退することも警告射撃を行うことも可能なのでしょうけれども、発砲しますと大事になります、発砲ではなく発泡でも行って妨害する選択肢はないにはないのですが、拿捕を避けることはできません。

 アメリカ海軍はイラン海軍に拿捕されかけた無人艦船を独力ではなく、サイクロン級哨戒艇を緊急展開させることで奪還しました、いや時間としては非常に難しい状況で、イラン海軍はアメリカの無人航空機に発見されたことで急ぎ船上に収容しているところを間一髪、という状況で回収したかたちです、哨戒艇は軍艦、国際法上拿捕することは許されません。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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ロシア経済制裁と欧州エネルギー危機,ウクライナ戦争を左右する冬季寒波予想をECMWF欧州中期気象予報センターが予報

2022-10-20 07:01:44 | 防衛・安全保障
■臨時情報-ウクライナ情勢
 欧州エネルギー危機が欧州各国にとりリスクとなりつつありますが根本要因となるのは冬の気象です。

 戦争に気象というものは不可欠の要素です、いや戦争そのものがかつては食糧不足を原因として始まるものが多く、特に火山噴火などによる日照不足などが続く気象条件では食糧が不足しやすく、寒冷期となれば農業用水として必要な雪解けの遅れが食糧不足となり、戦争の遠因ところか要因となります、逆に温暖な気候には長期間に渡る冷戦が起きやすい。

 ウクライナ戦争、温暖化が続けばロシアは欧州に対して譲歩を強いられるでしょうし、フンガトンガフアパイ火山の噴火影響で今年冬に大寒波が欧州を襲うとしたならば、逆にロシアへ妥協せよとの世論が生まれてくるのかもしれません、その背景にはロシアの天然ガス、よりわかりやすい表現をしますと、ロシアが暖房の熱源を握っているという構図です。

 ECMWF欧州中期気象予報センターによれば、12月ごろに欧州へ寒波が訪れる可能性があるとのこと。天然ガスの需要は気象条件に大きく左右されるとのことで、9月に入り日本では6月の暑さが嘘のように、なにしろ7月と8月が一昔の暑さの相場だったのに、このところ残暑が10月まで続く年さえあったものの、今年9月はひんやりと気温が快適でした。

 欧州でも9月は冷涼であったようで、9月後半には一例としてドイツでは過去数年間の家庭天然ガス消費量が14.5%増大したとのこと。数日から十数日間の寒波ならば我慢できないか、こう思われるかもしれませんが、問題は先日相次ぎ発生しているバルト海でのノルドストリームガスパイプラインへの破壊工作です。修理には一定以上の時間を要するという。

 ノルドストリーム破壊工作、欧州がロシアに妥協の姿勢を示したとしても、即日天然ガスパイプライン再稼働で供給再開、こう甘くないのはガスパイプラインを再開するまでに修理が必要なのだから、修理期間を見越して早めに妥協を強いるという状況です。ただ、温暖化が問題視される現状、寒波については予報の限界がある事も確かではあるのだけれど。

 気象、ナポレオンが敗北したワーテルローの戦いではフランス軍が誇る砲兵隊がタンボラ火山噴火による欧州雨量増大により機動を制限され、騎兵隊も泥濘に機動を、と例を出すまでもなく、今回のロシア軍ウクライナ侵攻も緒戦で予想外に早い雪解けがロシア軍戦車の機動を制限し、ウクライナ軍首都キエフ防衛の成功を一助となったのは周知の通りです。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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