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北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

IAEA国際原子力機関ウクライナ核管理支援へ,ロシア軍ダーティーボム核汚染爆弾使用懸念

2022-10-27 20:01:41 | 国際・政治
■南部ヘルソン占領地留意点
 ダーティボム、劣化ウランから高濃度核廃棄物まで危険性には多寡はあるのですが仮に実際の使用と成ればウクライナにも欧州は勿論日本を含めた世界に影響は甚大だ。

 IAEA国際原子力機関は24日、ウクライナ国内の核関連施設へ査察官を派遣すると発表しました。これはウクライナ政府の要請を受けてのもので、核関連施設の名称は明らかにはされていませんが、二カ所に派遣するとのこと。この施策は先日、ロシアのショイグ国防相によるウクライナによるダーティボム使用の懸念があるとの主張への、即座の反論です。日本にできる事は無いか。

 ロシア政府の主張として、ウクライナ軍は劣勢を挽回するために秘密研究所において秘密裏にダーティボムを製造しようとしているというものがあり、ウクライナ政府はこの疑惑を払拭するためにも第三者機関であるIAEA国際原子力機関に国内の核関連施設情報開示を積極的に行い、核管理がなされている証明を行うことで陰謀論へ対抗する構えでしょう。

 IAEA国際原子力機関のグロッシ事務局長は当該施設の一つについては9月にもIAEAが査察を行っており、この際にも申告外核物質などは見つかっていないとしています。一方で、IAEAが正確な調査とともにウクライナ側に疑惑の根拠がないと示すには、ロシア側が逆にダーティボムを使用する懸念があり、ウクライナに責任を押しつける懸念が拭えないのだ。

 ヘルソン州でのロシア軍大規模撤退兆候、上記の懸念に大きな根拠となるのはウクライナ軍が25日に発表した南部ヘルソン州ロシア軍占領地においてロシア軍撤退の兆候がある為です、ウクライナ軍に依ればドニエプル川東岸の占領地について、ロシア軍は陣地構築を行いつつ、後方である西岸地域において陣地構築よりも退却路を整備しているとのこと。

 ドニエプル川東岸、つまりロシア本土側、この占領地では地雷敷設が行われているものの陣地構築よりも、地雷を敷設しない連絡経路を残しており、これが大規模な撤退に用いる際の退路ではないか、独自の分析を発表しました。なお、ウクライナ当局の分析であり、当該地域では第三国メディアは戦闘地域であり確認が難しい状況ではあるのですが、ね。

 ヘルソン市においてもロシア占領軍が市民に対してロシアへ移動するよう警告を出しており、またヘルソン市占領軍による軍政による行政サービスが10月下旬から停滞しているとCNNなどのメディアが報じています。これをロシア側は大規模な市街戦を懸念してと発言していますが、仮に当該地域にロシアがダーティボムを使用した場合はどうなるのかと。

 ダーティーボムは核廃棄物などを爆弾の周囲に取り付け、火薬により拡散させるものです。核爆弾ほどの破壊力はなく核廃棄物が広範囲に飛散するのみであり、また中性子爆弾ほど近距離であっても車両や建物内などで即死するほどの放射線量ではありません、しかし広範囲で福島第一原子力発電所の事後直後除染前の敷地内よりも放射線量は高くなります。

 ドニエプル川周辺地域やヘルソン市に対して、仮にロシア軍がダーティボムを使用した場合、建物などの破壊は最小限ですが高濃度核汚染により数ヶ月から数年間、除染が完了するまで市街地をウクライナ軍が奪還することは不可能となります。これはロシアが2014年に占領したクリミア半島へのウクライナ軍接近へも牽制する効果があるのかもしれません。

 ロシア軍の行動について、しかしウクライナ軍はヘルソン市に対して軍政機構が撤退している一方で戦闘部隊が増強されているとの分析も示しています。これはウクライナ国防省情報総局が25日にCNNの取材に対し示した見解で、撤退しているのはロシアの金融機関と行政機関及び負傷者であるとし、撤退した分戦闘部隊を代わりに増強しているとのこと。

 占領地での徴兵、ロイター通信が24日に報じたところに依れば親ロシア派武装勢力はヘルソン州においてロシアへ退去を拒んだ住民に対し義勇兵への参加を呼びかけています。いまのところ任意での志願をもとめる形ですが、ロシア軍に呼号する武装勢力ははドネツクにおいて過去強制的な徴兵を行っており、今回はどうか今後の動静が注目されるところだ。しかし、それにしてお北海道の隣の隣国は酷い。

 ヘルソン市北方にあるカホウカダム、ロシア軍が警戒しているのはヘルソン市への緊要地形にウクライナ軍浸透の兆候があるためで、ここを占領された場合、ロシア軍は、6月にウクライナ軍がマリウポリ守備において直面したような包囲の脅威にロシア軍が曝される懸念があるのかもしれません、ただ、戦闘部隊増強の情報がただしければという前提です。

 戦闘部隊の増強は、まさか自軍の駐屯地域にダーティボムを使用するとはまともな指揮系統を持つ軍隊では考えにくい為、ヘルソン市を核汚染させる懸念は低いことを逆に示す構図だ。一方、仮に使用される場合、どういった指揮系統で使用されるかは未知数の部分が多く、今この瞬間もロシアによる攻撃、核汚染の脅威が続いていることだけは、事実です。


北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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ロシア軍ダーティーボム核汚染爆弾使用懸念のウクライナ情勢と福島第一原発事故教訓生かせぬ無防備大国日本

2022-10-27 07:01:44 | 国際・政治
■臨時情報-ウクライナ情勢
 核汚染爆弾ダーティボムが使用される懸念に対し原発事故を経験した日本が除染装備等何かできない後考えた際、日本は次の原発事故さえまったく無防備のままと気付かされました。

 ロシア軍によるウクライナでのダーティボム使用の懸念、こうしたものが高まる中、仮に使用された場合に対処できる除染装備などをウクライナへ供与すべきと、考えたのですが、日本は2011年にあれだけの原発事故を経験していながら、まったく除染装備などが増えていないということに、改めて嘆息と危機感と、そしてもちろん安全保障上懸念を感じます。

 福島第一原発事故、除染は未だに機関困難区域があるのですが、除染は放射性降下物が付着したあと、短時間であればあるほど容易です。それは短時間ならば洗い流せる、放射性物質には水溶性のストロンチウムなど、染み込むものや土壌やコンクリートなどに吸着するなど、付着から時間が経つとともに流すから削り取り除去、時間と共に困難が増すのだ。

 原発事故後、例えば放射性物質が降下している最中であれば、スプリンクラーなどにより建築物に付着することを回避できます、そのまま降下物は流れ出てしまいますが、一カ所に凝集しない限り年間線量許容値をこえるリスクは低く、大量の水で付着を防ぐ方式は例えば海上自衛隊の護衛艦などにも放射能除去装置として採用されている一つの王道と云う。

 日本の除染は、原発敷地内の原子炉冷却作業などに必要な場合をのぞけば空間線量が十分低下したあとで、高圧放水装置による除去と建設機械による汚染土壌除去、という方式で用いられています、故に高線量地域での除染活動を行う能力は、自衛隊の化学科部隊と一部の施設科部隊しか有していないのが現状です。その規模は限られ、また、民間には無い。

 NBC防護能力を有する車両が十分あれば、万一使用された場合に備えウクライナへ供与することも可能なのかもしれません、核汚染から人命を守る装備を、まさか日本の平和団体であっても批判しないでしょう、批判するならばそれは、ウクライナ人はロシアに絶滅されるべき、という差別的な団体が平和団体を自称しているにすぎません。ただ、問題が。

 師団に2000年代までは一個小隊、化学防護小隊があっただけでしたが、現在は特殊武器防護隊という中隊規模の部隊へ強化は為されています。ただ、これとても核攻撃や化学兵器などによる攻撃を受けた際の部隊防護と装備除染などが行える程度でしかなく、もし日本の市街地がダーティボムにより攻撃を受けた場合は、想定されていないという現実がある。

 これは自衛隊の本来任務に核攻撃からの民間防衛が含まれていないためなのですが、そうした場合、国民保護法の観点から地方自治体が責務を負うこととなります。汚染された地域、線量が十分さがるまで帰還困難区域に指定し避難指示を行うくらい、原発事故と異なりその費用や補償金を交戦国から得る方法が非常に限られ、自ら除染するほかありません。

 原発事故さえ、次の原発事故を起こさないことに注力しているだけで、電力会社にはNBC防護能力のある車両や遠隔操作式の建機など、放射性降下物の汚染状況下で行動できる装備が充分、というよりも試験用の若干数さえありません、結局日本は、福島第一原発事故を受けて、補償金というお金で解決する手段以外、学ばなかったというのが残念ですね。

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