■特報:世界の防衛,最新論点
今回はアメリカ海軍の艦艇について最新情報を纏めてみました。従来型艦艇や無人装備等の面で海上自衛隊にとり参考となる部分などがあるでしょう。
アメリカ海軍が導入するコンステレーション級ミサイルフリゲイト一番艦が8月31日、起工式を迎えました。これはウィスコンシン州にあるフィンカンティエリ造船所において行われたもので、2026年に海軍に引き渡される計画です。続いて既に2番艦と3番艦の予算も認められており、間もなく起工式を迎えます。毎年2隻から3隻が建造されるという。
コンステレーション級ミサイルフリゲイトはイタリア海軍のカルロベルガミー二級フリゲイトを原型として建造され、軽武装であるLCS沿海域戦闘艦の任務を一部置換える水上戦闘艦、満載排水量は7290tでAN/SPY-6(V)3レーダーをイージスシステムを搭載している。MK.41VLSは32セルでSM-2MRミサイルを搭載、NSM対艦ミサイルも16隻を搭載する。
インディペンデンス級沿海域戦闘艦とフリーダム級沿海域戦闘艦が今後五年間で大量退役が進む事から海軍はコンステレーション級ミサイルフリゲイトの建造で補う構想ですが、現在計画されているのは20隻、海軍ではこの規模の艦艇は全体で56隻が必要としています。なお一番艦コンステレーションの建造費は2020年予算で12億8120万ドルとのこと。
■LCS大量除籍へ
自衛隊の護衛艦もがみ型を構想したコンパクト護衛艦構想の段階ではあめりかの沿海域戦闘艦は参考とはされていましたが、敢えて従来型として正解だったのでしょうか。
アメリカ海軍のインディペンデンス級沿海域戦闘艦LCSが船体構造の重大な影響に悩まされている、アメリカ海軍の准機関紙であるネイビータイムズが報道しました。これは独特の三胴船構造を採用したアルミ合金製船体が亀裂などに曝されており、少なくとも建造された半数に影響が及んでいる、この為に一部の艦は常識的な波浪でも運用制限を行うという。
インディペンデンス級沿海域戦闘艦は最高速力46ノットを発揮しますが、波浪2.5mという太平洋地域では通常のやや高めの波浪に対して15ノットで航行した場合に船体に亀裂が生じる可能性があり、低速運用を行うとのこと。なお海軍では問題は喫水線下ではおこるもので無いとし、亀裂が即座に浸水沈没に繋がらないと最低限安全確保を主張しています。
インディペンデンス級沿海域戦闘艦は満載排水量3104t、軽量ですが8340馬力の強力なエンジンとウォータージェット推進により速力を発揮し、作戦モジュールを積み替える事で様々な作戦に対応できるとしています。しかし作戦モジュールの開発は遅延し予想以上に軽合金製船体が海水腐食に悩まされ、海軍では就役から20年未満で退役を開始しています。
■UISSの初度作戦能力
こういう無人掃海装備を例えば自衛隊のUS-2飛行艇のような大型飛行艇の主翼に装備できたならば、機雷掃討の概念を一から変えられると思うのですが。
アメリカ海軍は7月22日、UISS無人掃海システムのIOC初度作戦能力獲得を発表しました。UISSとは無人感応曳航型システムの略称でMCM-MP機雷対処ミッションパッケージの重要要素として開発、アメリカ海軍において長らく評価試験が実施されていたものであり、沿海域戦闘艦のPMS-420ミッションモジュールを構成する主要装備となっている。
UISS無人掃海システムはアルミニウム船体を採用する無人舟艇でありディーゼルエンジンを搭載し自律航行と管制航行共に対応しています。主たる任務は機雷探知と機雷掃海、この為に音響掃海及び磁気掃海に必要な能力を有している。沿海域戦闘艦のほか、VOOという運用システム搭載の軍用や民間船舶に加え陸上からの機雷掃海等も可能になるという。
沿海域戦闘艦など水上戦闘艦から機雷掃討を行う方式をオーガニック方式といいますが、フリーダム級沿海域戦闘艦とインディペンデンス級沿海域戦闘艦を2000年代から大量建造したアメリカ海軍には、これらを機雷掃討任務に充てる必要な装備開発の難航が続いており、UISS無人掃海システムは2020年代に遅れながら漸く実用化したシステムとなります。
■イランが無人艇鹵獲未遂
奪還できてよかった、無人装備の難点はこうして鹵獲される懸念があるとともに自爆装置などは浮流機雷扱いされる為に難しいという点が挙げられます。
アメリカ海軍第五艦隊は8月29日、イラン海軍に公海上で鹵獲されたセイルドローンエクスプローラー無人哨戒艇を奪還しました。エクスプローラー無人哨戒艇はイラン革命防衛隊の支援船シャヒドバジャラーの接近を感知、これを受け第五艦隊は第26海上戦闘回転翼飛行隊のMH-60S哨戒ヘリコプターとサイクロン級哨戒艇サンダーボルトを派遣します。
イラン革命防衛隊はこの時点で既にエクスプローラー無人哨戒艇を曳航しており、第五艦隊の艦艇及び航空機接近を感知すると慌てて船上に揚収しようとしましたが、サンダーボルトが揚収前に接近し強行接舷の姿勢を見せた為、革命防衛隊は拿捕を断念しました。無人哨戒艇は省力化が進んでいますが、拿捕に対する根本的な脆弱性を示したかたちです。
セイルドローンエクスプローラー無人哨戒艇はカリフォルニア州のアラメダに本社を置くセイルドローン社が開発した無人船舶で、太陽電池と風力を用いて長大な航続距離を有しており、2019年には南極の気象観測任務へ無人自律航行のまま七カ月間で、実に2万0100kmもの距離を航行、また自律航行による大西洋往復航海も成功させています。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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今回はアメリカ海軍の艦艇について最新情報を纏めてみました。従来型艦艇や無人装備等の面で海上自衛隊にとり参考となる部分などがあるでしょう。
アメリカ海軍が導入するコンステレーション級ミサイルフリゲイト一番艦が8月31日、起工式を迎えました。これはウィスコンシン州にあるフィンカンティエリ造船所において行われたもので、2026年に海軍に引き渡される計画です。続いて既に2番艦と3番艦の予算も認められており、間もなく起工式を迎えます。毎年2隻から3隻が建造されるという。
コンステレーション級ミサイルフリゲイトはイタリア海軍のカルロベルガミー二級フリゲイトを原型として建造され、軽武装であるLCS沿海域戦闘艦の任務を一部置換える水上戦闘艦、満載排水量は7290tでAN/SPY-6(V)3レーダーをイージスシステムを搭載している。MK.41VLSは32セルでSM-2MRミサイルを搭載、NSM対艦ミサイルも16隻を搭載する。
インディペンデンス級沿海域戦闘艦とフリーダム級沿海域戦闘艦が今後五年間で大量退役が進む事から海軍はコンステレーション級ミサイルフリゲイトの建造で補う構想ですが、現在計画されているのは20隻、海軍ではこの規模の艦艇は全体で56隻が必要としています。なお一番艦コンステレーションの建造費は2020年予算で12億8120万ドルとのこと。
■LCS大量除籍へ
自衛隊の護衛艦もがみ型を構想したコンパクト護衛艦構想の段階ではあめりかの沿海域戦闘艦は参考とはされていましたが、敢えて従来型として正解だったのでしょうか。
アメリカ海軍のインディペンデンス級沿海域戦闘艦LCSが船体構造の重大な影響に悩まされている、アメリカ海軍の准機関紙であるネイビータイムズが報道しました。これは独特の三胴船構造を採用したアルミ合金製船体が亀裂などに曝されており、少なくとも建造された半数に影響が及んでいる、この為に一部の艦は常識的な波浪でも運用制限を行うという。
インディペンデンス級沿海域戦闘艦は最高速力46ノットを発揮しますが、波浪2.5mという太平洋地域では通常のやや高めの波浪に対して15ノットで航行した場合に船体に亀裂が生じる可能性があり、低速運用を行うとのこと。なお海軍では問題は喫水線下ではおこるもので無いとし、亀裂が即座に浸水沈没に繋がらないと最低限安全確保を主張しています。
インディペンデンス級沿海域戦闘艦は満載排水量3104t、軽量ですが8340馬力の強力なエンジンとウォータージェット推進により速力を発揮し、作戦モジュールを積み替える事で様々な作戦に対応できるとしています。しかし作戦モジュールの開発は遅延し予想以上に軽合金製船体が海水腐食に悩まされ、海軍では就役から20年未満で退役を開始しています。
■UISSの初度作戦能力
こういう無人掃海装備を例えば自衛隊のUS-2飛行艇のような大型飛行艇の主翼に装備できたならば、機雷掃討の概念を一から変えられると思うのですが。
アメリカ海軍は7月22日、UISS無人掃海システムのIOC初度作戦能力獲得を発表しました。UISSとは無人感応曳航型システムの略称でMCM-MP機雷対処ミッションパッケージの重要要素として開発、アメリカ海軍において長らく評価試験が実施されていたものであり、沿海域戦闘艦のPMS-420ミッションモジュールを構成する主要装備となっている。
UISS無人掃海システムはアルミニウム船体を採用する無人舟艇でありディーゼルエンジンを搭載し自律航行と管制航行共に対応しています。主たる任務は機雷探知と機雷掃海、この為に音響掃海及び磁気掃海に必要な能力を有している。沿海域戦闘艦のほか、VOOという運用システム搭載の軍用や民間船舶に加え陸上からの機雷掃海等も可能になるという。
沿海域戦闘艦など水上戦闘艦から機雷掃討を行う方式をオーガニック方式といいますが、フリーダム級沿海域戦闘艦とインディペンデンス級沿海域戦闘艦を2000年代から大量建造したアメリカ海軍には、これらを機雷掃討任務に充てる必要な装備開発の難航が続いており、UISS無人掃海システムは2020年代に遅れながら漸く実用化したシステムとなります。
■イランが無人艇鹵獲未遂
奪還できてよかった、無人装備の難点はこうして鹵獲される懸念があるとともに自爆装置などは浮流機雷扱いされる為に難しいという点が挙げられます。
アメリカ海軍第五艦隊は8月29日、イラン海軍に公海上で鹵獲されたセイルドローンエクスプローラー無人哨戒艇を奪還しました。エクスプローラー無人哨戒艇はイラン革命防衛隊の支援船シャヒドバジャラーの接近を感知、これを受け第五艦隊は第26海上戦闘回転翼飛行隊のMH-60S哨戒ヘリコプターとサイクロン級哨戒艇サンダーボルトを派遣します。
イラン革命防衛隊はこの時点で既にエクスプローラー無人哨戒艇を曳航しており、第五艦隊の艦艇及び航空機接近を感知すると慌てて船上に揚収しようとしましたが、サンダーボルトが揚収前に接近し強行接舷の姿勢を見せた為、革命防衛隊は拿捕を断念しました。無人哨戒艇は省力化が進んでいますが、拿捕に対する根本的な脆弱性を示したかたちです。
セイルドローンエクスプローラー無人哨戒艇はカリフォルニア州のアラメダに本社を置くセイルドローン社が開発した無人船舶で、太陽電池と風力を用いて長大な航続距離を有しており、2019年には南極の気象観測任務へ無人自律航行のまま七カ月間で、実に2万0100kmもの距離を航行、また自律航行による大西洋往復航海も成功させています。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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