北大路機関

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【防衛情報】ユーロサトリ2022のドイツボクサー装輪装甲車,ボクサーレグアン機動橋とRCH155装輪自走砲

2022-10-18 20:18:45 | 先端軍事テクノロジー
■特報:世界の防衛,最新情報
 ユーロサトリでのボクサー装甲車各種派生型を見てみますと自衛隊もオーストラリア陸軍のようにこちらを思い切って500両程度導入しても良かったのではと思いました。

 ドイツのクラウスマッファイヴェクマン社はボクサーレグアン機動架橋を発表しました。これは6月にパリで行われたユーロサトリ2022において展示されたもので、ボクサー装輪装甲車にレグアン架橋装置を搭載したもの、かなり大きな工兵機材ですが、ボクサーはモジュール装甲車として開発しており、その搭載による機動力の低下は最小限度とのこと。

 レグアン架橋装置は14m型と22m型が開発されており、14mはレオパルド2A7を筆頭に各種戦車等が通行可能というMLC80規格、22m型は装甲戦闘車の大半が通行可能なMLC50規格に対応しているとのことで、戦車旅団配備と装輪装甲車主体の部隊毎に運用を変える事が出来、この二種類の架橋モジュールは短時間で換装可能と説明されています。

 戦車橋などは戦車車体を応用しているものが多い中、ボクサー装輪装甲車はもともと高い防御力と共に機動性を有する装備で、舗装道路では戦車よりも早く不整地踏破力も高い。架橋部隊の行動は攻撃や接近経路の方向を示すと共に優先目標として攻撃されるものとなっています。敢えて装輪装甲車から派生型を開発した架橋装置は敵前渡河に際し有用です。
■RCH155自走榴弾砲
 ボクサーが何でも積める事は知っていましたが。

 ドイツのクラウスマッファイヴェクマン社はユーロサトリ2022において新型のRCH155装輪自走榴弾砲を発表しました。これは同社が製造しているボクサー装輪装甲車のモジュールシステムを応用し、現在ドイツ連邦軍の主力自走榴弾砲となっていますPzH-2000の火力を付与したAGM-155mm榴弾砲モジュールを搭載した自走榴弾砲です。

 AGM-155mm榴弾砲モジュールそのものは、2014年に完成、無人砲塔システムを採用しており、これまでにMLRSシステムの車体部分に搭載し簡易52口径155mm榴弾砲とするなど、既に手頃な自走砲を求める各国に提示されましたが未だ成約はありません。RCH155装輪自走榴弾砲は、ボクサー装甲車に155mm砲反動に対応する事を確認し完成しました。

 RCH155装輪自走榴弾砲はPzH-2000自走榴弾砲の後継という位置づけではなく補完という設計であり、現在のところドイツ連邦軍へ配備される計画はありませんが、クラウスマッファイヴェクマン社では既に配備されているボクサー装輪装甲車から改造が可能であるとともに、取得費用はPzH-2000自走榴弾砲よりも低く抑えられているとしています。
■RCH155の各種性能
 19式装輪自走榴弾砲よりもこちらの方が遥かに生存性が高くしかも有用そうに思える。

 ドイツのクラウスマッファイヴェクマン社が発表したRCH155装輪自走榴弾砲について、発表されている性能を見てみましょう。AGM-155mm榴弾砲モジュールをボクサー装輪装甲車に搭載した自走榴弾砲ですが、これは無人砲塔システムを採用しているため、RCH155装輪自走榴弾砲の乗員は操縦手と車長兼砲手の2名で運用できるものとなっています。

 AGM-155mm榴弾砲モジュールは毎分6発から8発の射撃が可能、NATOが開発するJBMOU将来弾薬にも対応したシステムです。砲塔は360度旋回が可能となっており、そして遠隔操作方式の無人砲塔である為、乗員以外の大隊指揮所などから射撃の遠隔操作も可能であるとのこと。なお、現在のところ155mm砲弾の射程は54kmとなっています。

 RCH155装輪自走榴弾砲のもう一つの興味深い点は、ボクサー装輪装甲車そのものが遠隔操作により自動運転に対応させる計画があり、言い換えれば155mm自走榴弾砲の無人運用が可能という事を意味します。装輪自走砲といえばトラック方式の簡易自走砲が近年注目されていますが、RCH155装輪自走榴弾砲はボクサーの汎用性を最大限発揮した装備です。
■リンクスにスパイク
 大口径機関砲だけではやはり限界があるということなのでしょう。

 ドイツのラインメタル社は開発している輸出用KF-41装甲戦闘車にスパイク対戦車ミサイル運用能力付与を実証しました。リンクスと愛称を冠するKF-41装甲戦闘車はドイツの重装甲戦闘車と呼ばれたプーマ装甲戦闘車よりも更に防御力を強化した、恐らく世界で最も防御力を高めた装甲戦闘車として2018年にユーロサトリ国際装備展で発表されました。

 KF-41装甲戦闘車には30mmか35mm機関砲を備えたランス砲塔システムを搭載していますが、これまで戦車と遭遇した際には対処法がありませんでした。リンクスにはリンクス120として120mm滑腔砲を搭載した新型の開発がユーロサトリ2022において発表されていますが、こちらは歩兵の輸送ができません、そこでミサイル搭載が進められています。

 スパイクLR対戦車ミサイルはランス砲塔システムにMELLS多目的ミサイル発射システムが内蔵式として追加されており、射撃に際しては展開させるもの。スパイクLRの射程は4kmで700mmの装甲を貫徹可能ですが、改良型のスパイクLR2は射程が10kmに延伸されています。KF-41装甲戦闘車はミサイルの搭載で高い対戦車能力を得る事となります。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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C-130HとC-130Rの統合運用部隊を常設すべきだ!イタリアF-35B縦割り行政からの教訓

2022-10-18 07:00:44 | 国際・政治
■その先にF-35B統合運用見据え
 軍隊というものは何時の時代もお役所であることは不変なのですが一見非合理に見えるものがある。

 空輸部隊こそ統合任務部隊を常設するべきではないか、海上自衛隊がC-130R輸送機を運用し航空自衛隊もC-130H輸送機を運用する、同じ機種とはR型とH型で微妙に異なることは確かなのですが、同系統の航空機であることは確かです、海上自衛隊のC-130R輸送機は再生航空機であり、一概に比較することはできないのですが同じC-130輸送機なのです。

 常設統合任務部隊、防衛省に輸送調整司令部を置き、必要な輸送任務は陸海空の垣根無く行う。この必要性を感じたのは、イタリア軍のF-35B戦闘機配備計画を聞いたためでした、イタリア軍はF-35戦闘機を導入します、それもF-35A戦闘機とともに短距離離着陸能力をもつF-35B戦闘機も導入するのですが、配備計画は海軍と空軍が同数を別々に、という。

 イタリアのF-35B戦闘機導入計画は30機、しかし空軍と海軍のどちらかが包括して装備するのではなく、海軍航空隊と空軍がそれぞれ15機、配備します。海軍は当然のように空母カブールの艦載機として運用する計画なのですが、空軍は基本的に艦上運用を考えていないといい、空軍は独自の緊急展開部隊構想があり、ここに滑走路不要のF-35Bをあてる。

 C-130J輸送機とF-35B戦闘機、イタリア空軍は滑走路がほとんど整備されていない前線飛行場から運用できる二つの機種の航空機により、欧州や中東とアフリカや場合によっては更に遠いインド太平洋地域への緊急展開能力を整備する構想があり、このために必要、という方針を示しています。そして海軍と空軍、所属も別々ならば配備する基地も別々です。

 自衛隊は航空と海上、C-130HとC-130Rの統合運用部隊を常設するべき、この指針は先ず自衛隊の陸海空の垣根を越えて運用する組織を置くことで、将来的に配備される航空自衛隊のF-35B戦闘機、配備開始は2024年なのでまさにもうまもなくという状況にあるF-35Bをイタリアのように縦割り行政の弊害とせぬよう、まず前例を作る必要がある為だ。

 航空自衛隊はF-35B戦闘機の運用として南西方面有事における南西諸島、沖縄県と鹿児島県島嶼部での離島飛行場を活用し、主要基地がミサイル攻撃により機能不随に陥った場合でも防空基盤を維持する方針を示しています。対して海上自衛隊は、いずも型ヘリコプター搭載護衛艦からの運用を重視している、ここに同床異夢の可能性があるのですよね。

 いずも型護衛艦は海上自衛隊の骨幹戦力であり、多くの予算を投じてF-35B搭載改修を進めています。一方で航空自衛隊はF-35Bを艦上に常設配備する計画はないとしています、これは当初、政治的に"航空母艦を装備して周辺国に脅威を与えない"という対外的な発言と考えていたのですが、そうではなく本気で手放さないと、考えているのかもしれません。

 航空自衛隊から考えた場合、離島などの代替滑走路の延長線上に護衛艦の飛行甲板をみており、護衛艦での運用は行うが、南西方面地域からF-35Bを離す考えはない、こう構想している可能性があるのです。そこでより上の防衛省の統合運用として、先ずC-130から、続いてF-35Bを統合運用するための基盤を、今からでも考えるべきではないでしょうか。

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