■トマホーク導入論考察
トマホーク導入論について今回はその背景を考察すると共に気になった点を一つ挙げておきましょう。
F-15戦闘機近代化改修、今回のトマホークミサイルについて、12式地対艦誘導弾システムの改良型開発に時間を要するという実状もさることながら、政府は安倍政権時代にスタンドオフミサイルとしてF-15戦闘機に搭載する射程1000km程度の空対地ミサイルを導入する計画がありました、ただ、この改修計画に現在、大きな遅れがあり停滞している状況だ。
岸防衛大臣時代、F-15戦闘機の近代化改修に問題が生じていました。改修によりスタンドオフミサイルを搭載する方針でしたが、岸大臣は商社出身故のコスト管理の厳しさがあるのでしょうが、改修を担当したボーイング社が開発費用を当初の四倍まで肥大化させ、コスト管理に失敗、改造費だけで三菱重工のF-2戦闘機新造費用に迫る改造費となりました。
試作改修は実施される方針ですが、なにしろボーイングが三菱よりも安価な費用を提示したために決定したF-15の改修費用を、ボーイングが一方的に増額し続け、三菱の提示見積もりを遙かに越える金額を提示、これを受け2020年に岸大臣は改修計画の凍結を発表し、この遅れがそのまま、自衛隊にスタンドオフミサイル導入の遅延にも繋がったかたち。
トマホークミサイルは、言い換えればスタンドオフミサイルの導入と12式地対艦誘導弾システム改良型、当初は二種類の隙間ないミサイルにより北朝鮮のミサイル脅威に立ち向かう方針であったのでしょうが、F-15改修の目処が立たないために、手っ取り早い選択肢として、既に完成度の高いトマホークミサイルを導入する方針を考えたのかもしれません。
反撃能力を考えるならば、例えばNSM海軍ストライクミサイル、ノルウェーが開発した射程350kmのミサイルで欧州からアメリカ軍とオーストラリアが採用、昨今は東南アジア諸国でも採用の流れがある装備、こうしたミサイルをF-2戦闘機から投射する選択肢もあるのかもしれませんしF-35戦闘機でJSMミサイルを用いる選択肢も、有るはずだ。そして。
政治主導で実任務を考えず、こうした装備が欲しいという考えが先行しているのではないか、この点を危惧します。もちろん、過去に策源地攻撃能力が検討された際、自衛隊が研究を行い、トマホークはXX発なければこの任務は失敗するか所要の期間内に成果を発揮出来ない、こうしたような結論が在って政治がトマホーク導入に動いたならば、別ですが。
オペレーションリサーチ、自衛隊は任務として付与された作戦領域においてその能力研究を行っています、これは過去昭和の時代に三矢研究という、当時懸念された朝鮮戦争の停戦崩壊を念頭に自衛隊の作戦運用や有事法制のあり方などを独自研究したところ、国会で政治問題化しました。故に越権となる部分は政治判断を仰いできたという歴史があります。
政治はいわば防衛研究のifという想定を自ら封じたのですから、自衛隊に付与していない任務について、策源地攻撃や邦人輸送など、こんな事もできないのか、という発言を行う権限を、こうした研究を政治が禁じたことで自らの責任領域へ併呑し今に至ります。故に自衛隊として、命じられなければオペレーションリサーチはできないという事なのですね。
具体的に政治は、自衛隊に対して明確な任務を示す必要があります。"北朝鮮のミサイル発射施設を破壊せよ"もしくは"移動式発射装置を含めて破壊せよ"、"ミサイル部隊指揮中枢を麻痺させ日本への攻撃を遮断せよ"、こうした能力を求め、自衛隊側が"現有の装備ではXX日要する"とか"新たにAAという装備と弾薬をXXt追加することで可能"と応じる構図です。
オペレーションリサーチに基づかず、"政治決定でトマホークミサイルを導入する"ことが先行している、実のところ懸念する点はここにあります。その懸念の背景には"破壊する北朝鮮ミサイル発射装置の位置を発見する手段"と"核ミサイルを識別する能力"、"長射程兵器攻撃への戦果確認の手段"というようなものが議論されないゆえ、どうしても気になるのだ。
トマホーク導入を先行させる前に、まず自衛隊へ"統合任務部隊編成"を前提として、政治が反撃能力を具体的に整備する場合、めくら撃ちでは効果がありません、作戦を所管する航空自衛隊と恐らく海上自衛隊、また地対艦ミサイルの後継装備を所管する陸上自衛隊との間で議論し、どう行った装備が必要なのかを自衛隊が研究するよう政治が命じるべきです。
めくら撃ちでは効果がない、一例としてあげますと、ロシア軍は今年八月までにウクライナへ600発の弾道ミサイルや巡航ミサイルを打ち込んでいますが、ウクライナの作戦能力を麻痺させるには至っていません。オペレーションリサーチに基づく結果としてのトマホークと云う選択肢なのか、それとも軍事雑誌に政治家が影響されただけか、この点が気になるのです。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)
トマホーク導入論について今回はその背景を考察すると共に気になった点を一つ挙げておきましょう。
F-15戦闘機近代化改修、今回のトマホークミサイルについて、12式地対艦誘導弾システムの改良型開発に時間を要するという実状もさることながら、政府は安倍政権時代にスタンドオフミサイルとしてF-15戦闘機に搭載する射程1000km程度の空対地ミサイルを導入する計画がありました、ただ、この改修計画に現在、大きな遅れがあり停滞している状況だ。
岸防衛大臣時代、F-15戦闘機の近代化改修に問題が生じていました。改修によりスタンドオフミサイルを搭載する方針でしたが、岸大臣は商社出身故のコスト管理の厳しさがあるのでしょうが、改修を担当したボーイング社が開発費用を当初の四倍まで肥大化させ、コスト管理に失敗、改造費だけで三菱重工のF-2戦闘機新造費用に迫る改造費となりました。
試作改修は実施される方針ですが、なにしろボーイングが三菱よりも安価な費用を提示したために決定したF-15の改修費用を、ボーイングが一方的に増額し続け、三菱の提示見積もりを遙かに越える金額を提示、これを受け2020年に岸大臣は改修計画の凍結を発表し、この遅れがそのまま、自衛隊にスタンドオフミサイル導入の遅延にも繋がったかたち。
トマホークミサイルは、言い換えればスタンドオフミサイルの導入と12式地対艦誘導弾システム改良型、当初は二種類の隙間ないミサイルにより北朝鮮のミサイル脅威に立ち向かう方針であったのでしょうが、F-15改修の目処が立たないために、手っ取り早い選択肢として、既に完成度の高いトマホークミサイルを導入する方針を考えたのかもしれません。
反撃能力を考えるならば、例えばNSM海軍ストライクミサイル、ノルウェーが開発した射程350kmのミサイルで欧州からアメリカ軍とオーストラリアが採用、昨今は東南アジア諸国でも採用の流れがある装備、こうしたミサイルをF-2戦闘機から投射する選択肢もあるのかもしれませんしF-35戦闘機でJSMミサイルを用いる選択肢も、有るはずだ。そして。
政治主導で実任務を考えず、こうした装備が欲しいという考えが先行しているのではないか、この点を危惧します。もちろん、過去に策源地攻撃能力が検討された際、自衛隊が研究を行い、トマホークはXX発なければこの任務は失敗するか所要の期間内に成果を発揮出来ない、こうしたような結論が在って政治がトマホーク導入に動いたならば、別ですが。
オペレーションリサーチ、自衛隊は任務として付与された作戦領域においてその能力研究を行っています、これは過去昭和の時代に三矢研究という、当時懸念された朝鮮戦争の停戦崩壊を念頭に自衛隊の作戦運用や有事法制のあり方などを独自研究したところ、国会で政治問題化しました。故に越権となる部分は政治判断を仰いできたという歴史があります。
政治はいわば防衛研究のifという想定を自ら封じたのですから、自衛隊に付与していない任務について、策源地攻撃や邦人輸送など、こんな事もできないのか、という発言を行う権限を、こうした研究を政治が禁じたことで自らの責任領域へ併呑し今に至ります。故に自衛隊として、命じられなければオペレーションリサーチはできないという事なのですね。
具体的に政治は、自衛隊に対して明確な任務を示す必要があります。"北朝鮮のミサイル発射施設を破壊せよ"もしくは"移動式発射装置を含めて破壊せよ"、"ミサイル部隊指揮中枢を麻痺させ日本への攻撃を遮断せよ"、こうした能力を求め、自衛隊側が"現有の装備ではXX日要する"とか"新たにAAという装備と弾薬をXXt追加することで可能"と応じる構図です。
オペレーションリサーチに基づかず、"政治決定でトマホークミサイルを導入する"ことが先行している、実のところ懸念する点はここにあります。その懸念の背景には"破壊する北朝鮮ミサイル発射装置の位置を発見する手段"と"核ミサイルを識別する能力"、"長射程兵器攻撃への戦果確認の手段"というようなものが議論されないゆえ、どうしても気になるのだ。
トマホーク導入を先行させる前に、まず自衛隊へ"統合任務部隊編成"を前提として、政治が反撃能力を具体的に整備する場合、めくら撃ちでは効果がありません、作戦を所管する航空自衛隊と恐らく海上自衛隊、また地対艦ミサイルの後継装備を所管する陸上自衛隊との間で議論し、どう行った装備が必要なのかを自衛隊が研究するよう政治が命じるべきです。
めくら撃ちでは効果がない、一例としてあげますと、ロシア軍は今年八月までにウクライナへ600発の弾道ミサイルや巡航ミサイルを打ち込んでいますが、ウクライナの作戦能力を麻痺させるには至っていません。オペレーションリサーチに基づく結果としてのトマホークと云う選択肢なのか、それとも軍事雑誌に政治家が影響されただけか、この点が気になるのです。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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