北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

【京都幕間旅情】陶器神社-若宮八幡宮社,東山区五条橋東に源氏の氏神で幕府の宗祀の社殿

2021-06-03 20:00:40 | 写真
■清水五条の坂道に歴史と陶器
 陶器の並ぶ様子に贈答の品々良し美しを考えつつ散策していますとふと神社に至りました、しかし参拝と共に歴史を視ますと驚くほどに奥深い。

 陶器神社。清水焼の湯呑、京都を思わせる一品は数多思い浮かぶのですが清水焼は意外と多くの方に喜んでもらえます。北大路機関では九谷焼を重宝しているのですが、しかし云われると焼き物は普段使いするものですと案外頂くと嬉しいのですが、それと同じやも。

 六条左女牛八幡宮、こう称される社殿は五条通の京都市東山区五条橋東に在りまして、京阪清水五条駅から清水寺へ五条通り沿いに坂道を往く際、こう手頃なしかし趣味の良い焼き物が店舗に並ぶ界隈に神社は位置しています。そう新しい神社ではないが、興味深い。

 千年近い歴史に在って三度の移転という出来事がありまして、この結果に氏子地域を有さない神社という位置づけとなっています。正式名は若宮八幡宮社、この若宮神社という神社は全国に数多ありますがかつては祇園八坂神社、北野天満宮に並ぶ規模であったという。

 応神天皇と仲哀天皇と神功皇后の八幡三神を主祭神として奉じる社殿、本殿は三間社流造銅板葺となっています。その創建の歴史は古く天喜元年こと西暦1053年、仏説による末法末世の初年にあたる年にあって左女牛西洞院の境内に創建された小さな社が当社でした。

 源頼義が末法の時代、左女牛西洞院の邸宅に石清水八幡宮の若宮を造営したため、左女牛八幡宮や六条八幡宮と称されたものです。源頼義の社殿はそれ程大きなものではありませんでしたが、鎌倉幕府開府と共にその歴史的由来から幕府の宗祀となり、広がってゆく。

 京都には数多歴史が詰まるのは千年の都というその名の通りなのですが、しかし荘園も長屋も寺社仏閣も、京都盆地の広さはそう変わらない訳ですので栄子必衰といいますか、転換点というものがあります。ここもそうですがかつて今より遥か広かった寺社仏閣は多い。

 源頼朝は源氏の氏神として厚く保護しまして、これは同時に源氏との繋がりを重視する室町や江戸の武家政権からの保護を受ける事となりますが、石清水八幡宮の大火に際しては、当社の方から石清水八幡宮に遷宮されるなど、政治的な影響を受ける事も多くなります。

 祇園八坂神社、北野天満宮に並ぶ規模という往時の姿はこの歴史的背景に依拠するもので、嘉禎元年こと西暦1235年には将軍藤原頼経の病気平癒祈祷を執権北条泰時に命じられまして、室町時代には足利尊氏により下賜品や奉納を得られると共に規模を広めてゆきます。

 室町時代、足利将軍家にとっては御所八幡宮社や石清水八幡宮と並ぶ幕府の宗祀という位置づけとなります。もっとも、この政治との近しい関係から応仁の乱に際しては、兵火により社殿を焼失してしまい、足利義輝及び義昭の尽力により再建されるまで時間を要した。

 織田信長、大内義隆、毛利三家、細川、三好、朝倉氏、この安土桃山時代には戦国武将からの寄進を多く集めましたが、豊臣秀吉の京都大改造に際し、東山の地に遷宮を求められ、二度目の遷宮により氏子の多くが遷宮につけないなど、受難といえる状況となりました。

 元和元年こと西暦1615年、徳川家康より神領73石の寄進を受けまして、勿論最盛期の社殿神域ほどの壮大さは有さないものの、現在位置に遷座しまして、併せて当地の特産品と云うべきでしょうか、清水焼との関係から陶器神社と称されるようになってゆきました。

 清水焼発祥之地石碑も並ぶ境内には、意外と光差す広い五条通界隈の、中心部でありながら中層建築物が目立たない立地には穏やかな風と、車の騒音以外に雑踏の音の響かない、日常の静寂という風情とともに、清水寺に至る行程に一抹の香辛料を感じる事ができます。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 【京都発幕間旅情】揖斐三輪... | トップ | 令和三年度六月期 陸海空自... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

写真」カテゴリの最新記事