北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

【日曜特集】百里基地航空祭二〇一二【09】ファントム機動飛行とイーグル機動飛行(2012-10-20)

2022-07-03 20:01:54 | 航空自衛隊 装備名鑑
■参院選前の防衛考察
 ファントムの機動飛行と共に地上では次の飛行展示の準備が進む、この百里基地航空祭を撮影しましてから早いもので間もなく十年というところです。

 参院選が来週投票日を迎えますが、防衛費が論点に上がっていたものの、防衛力については議論とならないものが日本らしいものだよなあ、と考えさせられたものでした、自衛隊は2021年までファントムが現役でして、この機体の初飛行は1959年という古いものです。

 自衛隊の装備、全般的に古いものを更新できずに定数を減らして定数割れを防ぐという状況で、これは贅沢をしているとか無駄遣いがあるというものではなく、防衛予算をそのままに島嶼部防衛やミサイル防衛という予算のかかる任務を増やした為、後回しのしわ寄せ。

 防衛予算というよりも、戦車も火砲も削れるだけ削って平成初期の四分の一まで削減するというが、国産装備故に維持費が減らした分だけ量産効果の悪化で高くなり、しかも年単位で需要の無い装備等は撤退を始める為に使える装備の維持さえ難しくなるという現状が。

 防衛費の増額というよりは、まず政府防衛基金のような年次予算枠外の緊急予算を確保して、AH-1S対戦車ヘリコプターや73式装甲車や81式短距離地対空誘導弾やUH-1J多用途ヘリコプターやOH-6D観測ヘリコプターの後継機などを緊急取得する方が喫緊と思う。

 大規模災害が発生するのが時間の問題である日本において、戦術偵察機が最盛期40機あったものが、ゼロになっている、無人機があるというが戦術偵察機ほどの迅速な対応ができる機体は無い、こうした装備が無い事の無視も費用だけ論争されている証左といえます。

 戦闘機にしてもファントムは退役した、けれども、1981年から導入が開始されたF-15をボーイング社に要請して、かなり高額で近代化改修し2040年代まで使い続ける計画があるのですが、当のアメリカがイーグルⅡを新造している訳で、器用貧乏にしかみえません。

 イーグルⅡというのはF-15EXというストライクイーグルの改良型を新規に生産しているもので、自衛隊もなにしろ金属疲労や構造寿命があるのだから半世紀以上機体を使いまわす工夫をするよりも、思い切ってF-15JをイーグルⅡに置換えてはどうかとも考えます。

 数が足りないのを能力的には充分と云う意味の分からない理由で例えばC-2輸送機など、生産予定を下方修正して航空機メーカーにダメージを与えて、しかし、その背後で航空技術者が次々自動車技術者などに転換しているのを気付かず、新型機を開発しようとする。

 参院選では、例えば防衛予算を増額すると共に国産装備の比率を高めて、V-22よりはUS-2を、KC-45AよりはC-2輸送機の空中給油型を、と国産装備を製造するだけで正規雇用がどの程度創出されるか、という事も含めて、防衛費の部分を議論してほしかったとおもう。

 スタンドオフミサイルと敵基地攻撃能力、最近は反撃能力というようですが、無理にF-15に搭載するよりも、C-2輸送機を活用する計画を真面目に考えるとか、死の商人として忌避するよりも、一種卑下してきた問題領域というものを真面目に向き合って考えて欲しい。

 防衛費の問題、特に装備調達と装備維持費の問題は、突き返せば、防衛装備を輸出しない分割高である事を受忍する、という長年の防衛政策、分りやすく言えばケンポーキュージョー第一主義というものが、それならば相応の防衛費を、と迫られている構図なのですね。

 防衛費よりも防衛力、しかし防衛力を立て直そうとするならば、成程いま言われているGDP2%という数字は充分現実的な数値となってしまうのです。この当たりを真面目に、必要な装備、棚上げした問題が多すぎるという現実を直視して、考えて欲しいと思うのです。

 F-15戦闘機の機動飛行が始ります、F-15は初期型がF-35Aに更新が遠からず始まるのですが、いまのところ飛行隊はF-4を置換えた2個飛行隊のみとなっています。いや最終的に147機のF-35を導入する事にはなるのですが、F-15の神話に縋るだけが全てではない。

 F-15はアメリカ空軍とイスラエル空軍にサウジアラビア空軍が採用し、戦闘機のロールスロイスと呼ばれた、のは少し前まででして、いまは戦闘爆撃機型のF-15Eが韓国やカタールとシンガポールで採用され、インドネシアも予算的に購入が可能だったという機種です。

 これだけイーグルが揃っていれば周辺国は恐れるに足らず、こういう発想は1990年代当時のもので、戦闘機は年々改良されています、ゼロ戦こと零式艦上戦闘機の初期の高性能とともに後継機開発が遅延し、結局後継機烈風が間に合わなかった事を踏襲してはならない。

 ゼロ戦を例に挙げましたが、スピットファイアやメッサーシュミットBf-109のように性能向上を続け改良型の製造を続けた事で大戦一杯を戦い抜いた事例もある、まあゼロ戦も2000馬力エンジン型を開発できていれば防弾改修も対応できたのかもしれないけれども。

 イーグルⅡを200機程度10年間でライセンス生産し、戦術偵察ポッド搭載型と旧式化したF-15MSIPを無理に改修せず後継機としたうえで、今後計画のF-2後継機開発が遅延するならば更に96機を量産したならば、かなりの雇用創出に繋がるとも思うのですよね。

 十年近く前の航空祭の様子、戦闘機の飛行展示は華麗で素晴らしい、今年百里基地に行けば戦闘機はF-2に転換していますので、新しくなったとはいえるのですが、もう少し防衛力と防衛費というものの関係を考える政治家が、国会にて防衛力整備を議論してほしい。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 【京都幕間旅情】近鉄ACE特急... | トップ | サハリン2プロジェクト日本資... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

航空自衛隊 装備名鑑」カテゴリの最新記事