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新哨戒艦は掃海艇えのしま型派生型か?【3】掃海隊群掃海艦艇12隻体制と12隻の新哨戒艦

2019-11-11 20:11:38 | 先端軍事テクノロジー
■不思議な一致:十二隻+十二隻
 第三回が一応本特集の最終回としましょう。本特集については十月初旬掲載の第二回から大分と間が空いてしまいましたね。

 掃海艇の高性能化に伴い建造費が高騰した結果、掃海隊群が実施する機雷掃討に併せて必要な重要水道での日施掃海へ必要な配備数を整備できない状況があります。そこで主として機関砲による哨戒任務に当り、簡易掃海艇として機雷掃討は不能としても必要に応じ曳航掃海器具を搭載し日施掃海として掃海任務に当る艦艇が生まれるのでは、という視座でした。

 掃海隊は将来、掃海艇2隻と哨戒艦2隻を基幹として編成されるのではないでしょうか。こういいますのも、掃海隊群は2個掃海隊群へ再編される事となりますが、配備される掃海艦艇は12隻が6個掃海隊へ配属される計画です。2個掃海隊群にFFM護衛艦は22隻配備される計画ですので、掃海艇の方が少数派となる一種不均衡な状態となってしまいます。

 哨戒艦の整備数は12隻、実は不思議な事に掃海艦艇と哨戒艦は同数が配備される事となる、もちろん伝統的な軽武装で長期の航行能力を持つ哨戒艦が掃海隊に配属されたならば、機雷に破壊される危険があり全く使い道がありません。しかし、掃海艇派生型の哨戒艦であれば、掃海艇と同程度に機雷からの安全性は確保されるわけですから問題はありません。

 掃海艇として哨戒艦が機雷戦を支援する可能性も考えられます、もちろん機雷掃討は行えません、行うならば建造費が高騰しますから出来ないのですが、係維掃海や音響掃海に磁気総会という、伝統的な掃海具の曳航であれば可能でしょう。特に現在の掃海艇は機雷掃討を重視するあまり、すがしま型掃海艇等は曳航掃海具を臨時搭載としているほどです。

 曳航掃海具による掃海は機雷敷設が確認された海域での機雷掃討には十分威力を発揮出来ません、しかし、有事の際に重要航路や湾口を毎日行う日施掃海を行うには海底を細かに掃海艇が機雷探知装置で数十m毎に精査する事は時間的に出来ず、曳航掃海具による掃海が必要となります。この点で哨戒艦による補助掃海艇として曳航掃海具運用は意味がある。

 掃海隊として掃海艇の機雷掃討任務に対し哨戒艦は曳航掃海具を曳航し補助掃海艇として機能させる、掃海艇にしかできない掃海任務が在りますが、哨戒艦が機雷掃討を行なえない制限も無い。機雷戦にFFMが参加する場合は機雷への脆弱性を抱えるFFMに対して前方に展開してのFFMの水中USV運用支援を行う、いわば補完的に用いるという発想です。

 30FFMか掃海艇えのしま型の補完、との視点は実は論拠として繋がっています。えのしま型掃海艇は三番艇が要求されて後に建造が10年以上停滞しています、そしてこれを補うのが水上戦闘艦に掃海任務を付与するオーガニック方式、という海上自衛隊として研究は行っているものの未知数の領域の戦力化です。能力が規定以下であった場合、どうするか。

 機雷処理弾薬は従来のS-10機雷処分具に置き換わる使い捨ての機雷処分ロボットです、昨今は機雷にとり掃海艇を狙うのが機雷掃討方式の採用で難しくなり、せめて高価な機雷処分具だけでも破壊するという志の低い機雷が増えている為、敢えてこちらも使い捨ての機雷処分具を投入し、消耗戦に臨むという発想です。これは哨戒艦にも搭載、できうるもの。

 MQ-8無人ヘリコプター、オーガニック方式による機雷掃海は水上戦闘艦が機雷原へ進出しない前提である為、この無人機に搭載するレーザーセンサーが大きな意味を有します。哨戒艦に充分なセンサーを搭載しておらずとも、後方から支援へ展開するMQ-8の支援を受ける事で、第一線に展開する機雷戦艦艇はそれ程万能性が求められるものではありません。

 掃海艇準拠の哨戒艦、自衛隊は12隻を整備する計画ですが簡易掃海艇としても転用できる艦艇ならば、掃海艇長として艦艇運用の経験に近い実績を中級幹部に積ませる事も可能です。艦長経験、これは意外と無視できません。特に掃海艇が機雷掃討能力重視による建造費の三倍増という高騰により縮小する中、部隊の水準を維持する上では重要な施策です。

 掃海艇船体を採用する事での難点は、しかし数多い。第一に掃海艇はそれ程高速航行を想定しない為に最高速力は14ノットと、護衛艦の30ノットには遥かに及びません。掃海艇には対空レーダーや電子戦装置を搭載しておらず本格的な水上戦闘には対応できません、センサーノードとして機材を搭載するならば、それだけでも数十億の費用が重なります。

 えのしま型掃海艇の補完として、掃海艇設計応用の哨戒艦は活用できます。また、掃海管制艇のような無人掃海装置SAMを運用する母船としても機能するでしょう、特に掃海管制艇は現在旧型掃海艇を転用していますが木造艇故に今後減少してゆく。掃海任務に限れば水中処分母船としても機能し得ます。安く造り大きく育てる、云わばそういう概念ですね。

 いずも型護衛艦、安く造り大きく育てる、という概念は此処にも当てはまります。哨戒ヘリコプターと掃海輸送ヘリコプターを運用する大型ですが固有武装が限られる全通飛行甲板型護衛艦は汎用護衛艦とそれ程建造費は変わりません、しかしF-35B戦闘機を搭載する、という事で起きく育てる事に成功した訳ですね。安く造り大きく育てる、一つの潮流だ。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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1 コメント

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Unknown (ねこまんま)
2019-12-12 23:37:54
今頃の投稿ですみません。

新型哨戒艦は、掃海艦あわじ型よりも大きくなりそうですね。
哨戒艦をFRP船としなかった場合は、廃れてしまう技術かも知れません。
民間では小型船でしか採用されてないので、自衛隊が考えて継承させるとしたら、哨戒艦だと思います。
問題の速力も、既に掃海艦艇が警戒監視に当たっているので、十分だと思います。
近年、多様性を持たせて建造しているので、掃海艦艇不足時には、転用出来る可能性はあると思います。

哨戒艦は巡視船と同じ装備で十分と読み取れる記事もありましたが、ミサイル艇の装備ぐらいは積んで欲しいです。
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