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ウクライナ戦争-要請された1000門の榴弾砲,制空権論点無き奇妙な戦場に代替案の航空打撃力と急造ロケット砲

2022-06-18 07:00:33 | 防衛・安全保障
■臨時情報-ウクライナ情勢
 ウクライナ政府が戦闘機供与要請を行わなくなったのは戦場様相故か運用訓練時間確保の難しさからか、しかし昨今、火砲1000門を世界に要請しました。

 制空権、航空優勢や絶対航空優勢という単語でも説明されますが、ウクライナ戦争は奇妙な戦争といわれます、先ずロシア軍の侵攻が非ナチズム化という非常に曖昧で故に実証しにくい理由で開始され、国際法上の正当性も国連安保理決議も無いまま全面侵攻という国連創設前の認識で始められました、そして何より奇妙なのは、制空権の話題が出ないこと。

 榴弾砲1000門が必要だ、こうウクライナ政府は繰り返しますが報道にもある通り例えば砲兵王国とナポレオン時代から第一次大戦時代に名を馳せたフランスでさえ現在の保有火砲は96門、輸出用を含め砲身精製能力は年間100本といいます、するとウクライナの需要を満たすには十年を要する計算となり、そんなものでNATOは大丈夫かと思われるでしょう。

 NATOならば空軍を使う。さて欧州は砲兵火力が冷戦時代と比較し大幅に縮小されています、ただ、これを補うのは本来、航空打撃力、その駆使により発揮されるものです。例えば冷戦時代、欧州では戦闘機よりも攻撃機が重視され、ドイツ連邦軍を見れば主力戦闘機は古めかしいF-4ファントムと、懐かしいF-104スターファイターでしたが、攻撃機は更に新しい。

 トーネード攻撃機、一応短射程空対空ミサイルは搭載できるのですが対地攻撃と対艦攻撃能力の高いトーネード攻撃機がドイツ連邦軍では主力を占めていて、更に練習機ですが軽攻撃機として機能するアルファジェット軽攻撃機も運用されていました、地対空ミサイルの前に攻撃機は苦戦を強いられることが予想されるも、それでも最良の打撃力と評された。

 侵攻高度30m、ウクライナではロシア軍Ka-52攻撃ヘリコプターが90m程度の硬度で悠然と飛行し次々と撃墜され攻撃ヘリコプターの時代は終わったのではと危惧されましたが、冷戦時代にアルファジェットやトーネードといった攻撃機は高度30mを亜音速で侵攻、対空火力の脅威を非常というより非情な訓練により樹木すれすれの低高度飛行で避けました。

 ウクライナ東部地域でのロシア軍砲兵火力は非常に大きなものがありますが、これをNATOに対して行ったならば、砲兵には砲兵だけでという道理は無く、確実に航空攻撃により砲兵は殲滅されたでしょう、特にNATO加盟国にはクラスター弾全廃条約に加盟していない国も多く、砲兵部隊の特に目立つロケット砲兵射撃はクラスター弾の良い的です。

 1000門の火砲供与要請、それでは絶望的なのか、こう問われますと何とも言えません。砲身の精製は施設の関係上各国とも限界はありますが、砲兵は火砲の他にロケット砲を装備しています、それも自衛隊が配備するMLRSのようなロケットシステムは製造に時間を要しますが、ロケット弾発射器というだけならば点火装置付のパイプを束ねれば製造できる。

 韓国のK-136やチェコのRM-70にスロバキアのVP-14とスペインのテルエル、ロケット弾発射筒を束ねたロケット砲は命中精度の問題があり、冷戦後各国が廃止に動いたためにロシア中国製以外で残るものといえばこの程度ですが、戦時急造に向いた設計です。どうしても必要ならば、こうした戦時急造兵器の再生産という選択肢も、あるにはあるのです。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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