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新年防衛論集二〇二四【6】新しい88艦隊を越えて-想定以上の緊迫化中東アフリカ地域の安全保障を睨む対応

2024-01-06 07:00:44 | 北大路機関特別企画
■DMO分散型ドクトリン
 2023年の中東アフリカ情勢激変と変化と共に波及した我が国安全保障への影響は邦人救出やタンカー攻撃など予想以上の緊迫感を齎す事となりました。

 海上防衛力について。一つの理想図は、永らく提示していますように、"新しい88艦隊"へ護衛艦隊を改編することです。現在、護衛艦隊を構成する護衛隊群は4個、この護衛隊群は2個護衛隊より成り、DDHヘリコプター搭載護衛艦を中枢とする編成の護衛隊とDDGイージス艦を中枢とする編成の護衛隊より編成されています。

 新しい88艦隊、というのは、護衛隊の編成を全て、ヘリコプター搭載護衛艦、イージス艦、汎用護衛艦2隻、以上4隻に編成統一するという提案です。ヘリコプター搭載護衛艦を要するに4隻増強すべき、という試案で、ヘリコプター搭載護衛艦は現在全通飛行甲板型、航空隊を収容できるため、護衛隊が航空隊を運用できる。

 作戦単位を増やさなければならない、我が国周辺では中国が新空母福建を建造中で最終的に航空母艦だけで4隻、更に075型強襲揚陸艦を5隻は建造するものと見られ、我が国では平時にあっては一個護衛隊群を即応体制におくほかは、重整備入渠の護衛隊群と整備明けの護衛隊群に准高練度状態へ訓練中の護衛隊群という体制だ。

 専守防衛の我が国にあって、整備間隔などを有事に対応させる主導権は相手側にあり、必然的に一つの護衛隊群だけが初動を担うことになるのです。すると、新しい88艦隊というものは、二つの海域に一定規模の部隊を展開させることが可能となり、護衛隊に航空隊を統合運用し、二つの隊で群、任務群を編成できるわけです。

 F-35B戦闘機、2024年より新田原基地へ配備が開始される予定です。これは航空自衛隊が所管することになりますが、おそらくシーレーン防衛はじめ、我が国の海上防衛には不可欠の存在となります。それは卓越した空戦性能はもちろんですが、ステルス性とEO/DASはじめ情報収集能力が総じて高く、戦域情報優位を得る決定打だ。

 ひゅうが型護衛艦、現在自衛隊は護衛艦いずも型の、いずも、かが、のみにF-35B運用能力を付与しようとしていますが、2隻では即応体制維持さえできません。一方で、空母打撃群を構成するわけではないのだから飛行隊規模の12機を搭載する必然性は必ずしもなく、故に若干小型の護衛艦ひゅうが型にも搭載を検討すべきです。

 一方、2022年のイエメン沖弾道ミサイル事案は驚かされました。護衛艦あけぼの、に向け弾道弾が発射され、命中こそしませんでしたが自衛隊初の弾道ミサイル攻撃がアフリカ沖で発生するとは。そしてこの問題は、護衛隊も分散運用されているという現実を示したことにほかなりません。ただ、現在、分散という単語は面倒ですが。

 DMO分散型海軍ドクトリン、分散という単語には現在アメリカが進める、かならずしも2000年代初頭のような空間優位を保てない状況における運用構想、その実は既に2007年頃に模索されていたものなのですけれども、そうしたDMOの概念と重ねて考えさせられるかもしれません、ただ、本項目で示している概念は少しことなる。

 中国海軍が055型防空駆逐艦の量産を一段落させたことで、054B型フリゲイトの量産を漸く軌道に載せた、この日本版の分散という概念は中国で言うところの054B型のような位置づけが必要になってきているのではないか、ということです。055型は誰でもわかる航空母艦直衛艦ですが、054Bは哨戒任務などにも対応する艦だ。

 新しい88艦隊、この構想を示した際に一つの選択肢として可能性を示したのは、既に実施されているプレゼンスオペレーション、つまり日本から遠く離れた海域でのプレゼンスを発揮するための遊弋任務です。プレゼンスオペレーションは安倍政権時代の産物ですが、この実施は菅政権と岸田政権、あのコロナ禍下でも継続した。

 プレゼンスオペレーションの枠内に、中東アフリカ地域の安全保障を睨む対応を含めるべきなのかという視点が、今後必要となりうる。いや、あけぼの弾道ミサイル攻撃事案が発生するまでは、海賊対処は機関砲と無人機があれば充分、哨戒艦が完成したならば、そちらに移管できる任務ではないかと高をくくっていたのです。

 2023年の一年間は異常な一年間であった、元首相が暗殺されロシアウクライナ戦争が勃発した2022年も異常であったし、COVID-19の2020年とアフガニスタン崩壊の2021年も相応でしたが、2023年は中東アフリカの邦人輸送だけで2回、そして今回の弾道ミサイル事案、中東アフリカ地域への注力を再認識せねばなりません。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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