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新年防衛論集二〇二四【7】日本型DMO分散型ドクトリンの模索-プレゼンスオペレーションと新しい88艦隊

2024-01-06 14:11:44 | 北大路機関特別企画
■日本とアフリカの関係
 F-35Bの航空自衛隊配備がいよいよ開始されるという間近の防衛力強化を前に、しかし突き付けられている安全保障上の問題はこの防衛力整備さえ辛うじて間に合うのかという厳しいものです。

 新しい88艦隊、要するにヘリコプター搭載護衛艦とイージス艦に2隻の汎用護衛艦という、現在の護衛隊半分の編成を共通編成として、一つの作戦単位を分散運用できるよう整備する。この概念は、そんな人員がどこにあるのか、と海上自衛隊の現状をしる方からは反論を受けるのですが、現状体制で任務が遂行可能か、と。

 いずも、かが。現在海上自衛隊がF-35B運用能力を付与しようとしているのはこの2隻なのですが、このままでは、インド太平洋とこの2隻に任務が集中する、すると現状では一回出航したら半年近く帰れない任務航海が毎年数回と重なることになる、そんな状況で人員を集められるのか、という。過剰勤務そのものを危惧する。

 任務は増大する、しかし人員を増やせないというならばどこかに破綻が待っているわけで、任務を減らすことができない以上、人員を増やす覚悟のほうを固めなければ成りません、それは同時に前回に示したイエメン情勢を含め、自衛隊の活動領域を広げざるを得ない状況も傍らに考える必要があるのだから。そう、アフリカです。

 日本のこれからの発展を考えた場合、結局のところ人口増加の続くアフリカ地域との協力関係を強化する必要があるのですが、アフリカ開発会議、幾度も行われた会議においてアフリカ諸国首脳や産業界と官僚に民間団体の方々までもが異口同音に示すのは、日本人は何故直接アフリカに来ないのか、ということ。

 自己責任論。わたしのもっとも嫌う表現なのですが、日本のアフリカ進出を妨げているのは現行憲法とともに自己責任論があるように思うのです。自己責任論というのは、イラクにおいて発生した邦人人質事件に際して、日本国内で支持された、外務省が行くなと行っている地域への入国で事件に巻き込まれた際のもの。

 イラクの邦人人質事件は、最初の事例はニュージーランド留学中の若者が見聞を広めるため、という理由で、物見遊山というか好奇心もあったのだろうか、イラクに入国し武装勢力に拘束、そして残念な結果を迎えたというものでした。自称民間軍事会社をこさえて同様の結果になった方がいて、なぜかわたしが心配されたことも。

 アルジェリアガスプラント邦人襲撃事件、ただ上記の自己責任論に強い違和感を感じたのは、物見遊山ではなく業務のために中東アフリカ地域で職務に就いていた同胞に対しても同様の発言が向けられたことでした、これは根本から異なる議論として考えられるべきではないか。この状況は多少改善されつつも、今も続く。

 アフリカへ日本人は何故こないのか、その理由は自己責任論として危険な地域に出国した場合の命の保障がないためにほか成りません。いや、過激な平和主義者の話として、日本人として自衛隊を海外派遣させる方便につかわれないように、自分のことは自分でやるのが当然、と邦人救出への反対論があったのを覚えている。

 沖縄戦の集団自決論を21世紀に振り回すような平和主義者の論理をまじめに聞いていると、いのちより平和が大事と自決の強要を迫られそうな危機感があるのですが、この通り、日本の活力、いや存続というべきなのかもしれない、このためのアフリカ地域での活動を考える上では、この地域の邦人保護がなにより重要です。

 プレゼンスオペレーションとして新しい88艦隊の1個護衛隊を可能な範囲においてインド太平洋地域に遊弋、具体的にはインド洋とアラビア海、この海域に遊弋させる必要があります。可能であればF-35Bを搭載して、基本的にはSH-60YとV-22を搭載して。また必要面からはAH-64Eか艦載型MQ-9のような航空機も導入して。

 イージス艦は今年導入が正式契約となったトマホークミサイル運用能力付与により一定の打撃力を有することとなりますので、情勢次第によっては単独行動も可能ですし、ヘリコプター搭載護衛艦から物資のヴァートレップ輸送を受ける前提で、護衛隊を編成する護衛艦が500km程度離隔して任務に当たることも可能でしょう。

 海賊対処と邦人救出と船団護衛、ヘリコプター搭載護衛艦に陸上自衛隊の1個小隊程度の人員を便乗させることができれば合間に各国との親善訓練も可能です。これくらいの安全確保の体制が常態と出来て初めて、日本の経済活動の範囲を必要な範囲まで広げられるのではないか、こう考えますと、海上防衛力は重要です。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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