北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

沖縄本土復帰五〇年-明日,半世紀の温度差-最大課題は県独自産業復興による観光と基地依存経済からの脱却

2022-05-14 20:05:07 | 北大路機関特別企画
■沖縄-明日で本土復帰50年
 普天間基地の名護移設後には嘉手納以南の在日米軍基地全面返還が実現することにはなるのですが。

 沖縄は明日で本土復帰50年を迎えます。沖縄返還後の首里城大学転用や為替政策による産業の壊滅と基地依存経済の醸成、コザ暴動と本土復帰運動などを考えますと、少なくとも沖縄はアメリカではなく日本という意思を突き付けた事が、日本政府の沖縄返還要求と重なり本土復帰を実現したものですが、周辺情勢と基地問題とが根深い問題を残しました。

 本土復帰の翌年が第四次中東戦争に伴うオイルショックが日本の高度経済成長時代を終焉させ、財政投融資が充分に進まず僅かに沖縄海洋博覧会が一時的な需要を喚起しつつも、結局は観光業と基地依存経済という沖縄経済を定着させてしまいました。実は基地問題以上に、この地域産業開発というものを真剣に取り組む事が基地問題を解決させると考える。

 在日米軍基地の問題や沖縄経済の問題は、実は北大路機関が創設された当時に最も議論された議題であり、自衛隊行事を行脚する前の北大路機関は、アガンベンにロールズにカールシュミットやアレントとスタンリーホフマンで議論討議を重ねつつ、沖縄、当時の米軍再編に伴う在日米軍再編の問題に合せて深く議論していたものでした。しかし、根は深い。

 基地がある事により基地関連資材を運び込む港湾と飛行場が整備され、ここから輸送する空港設備と基地とを結ぶ道路網が整備され、人の流れが醸成される。基地問題は経済問題とも不可避でして、基地がなくなれば跡地にホテルを、というような経済対策ではなく、基地関連物流を置換える巨大な何かを、造船業でも製造業でも自動車産業でも、必要です。

 基地依存経済からの脱却を行うには、那覇軍港が返還されるならば大型貨物船と貨物ターミナルとして物流ハブ港としての機能を果たせると考えたものですが、軍用物流とは桁違いの民間物流をハブ港たるにはやはり規模が足りず、先端産業など東南アジアや中国に近い立地を活かすには半導体産業などを模索するも、これに必要な水源のダムがありません。

 飛行場は、当時には実現するとは考えられなかったのですが那覇空港の拡張工事が行われていましたので、跡地利用の進まない読谷補助飛行場を加えて、アジアのハブ空港として、旧共産圏などから距離のある航空拠点成り得るのではないかという議論は、ロシアのウクライナ侵攻により空は開かれ続けるものではないと妙に当ったのですが、実現はきびしい。

 航空産業、例えば飛行場の物流地区隣接地あたりに航空機定期整備施設、厚木の日本飛行機や仙台空港のような産業開発は可能ではないかとも提案しているところですが、ユーロコプターのいまはエアバスヘリコプター、この施設が神戸空港に隣接して完成しますとあながち非現実ではなかったと考えつつ、県経済をけん引できる程の規模ではありません。

 基地問題。こちらも、実は基地の周りに学校が多数と聞きますと、一度八尾駐屯地の滑走路周り1kmの学校を数えて欲しいと思いますし、基地の周りに住民生活がと聞きますと、一度岐阜基地を観光して欲しいとも考えます、こうして思いますと基地問題に関心があるという方にも、日本全体の基地を俯瞰していないのではないかとも考える事がありました。

 奄美大島と沖縄本島。基地問題と経済の問題を考えますと、そもそも立地が非常によく似た沖縄本島と奄美大島、沖縄県と鹿児島県という違いはあれ観光地として何故ここまで観光客数が違うのか、こうした視点を考える必要があるようにも。いや、日本以外にも観光客溢れるグアムと距離が近いものの秘境に近い扱いのサイパンを比較しても成立ちますが。

 ただ、日本を護る米軍基地、この発想がそもそも憲法九条とともに日本だけを護る以外に用途を認めない米軍基地、こう拡大解釈されているようにも思いまして、いやいや太平洋戦争に負けた理由をもう少し研究し議論すべきでは、とも考えます。シーレーン途絶を回避する事が必要であり、米軍基地は朝鮮半島と台湾海峡、フィリピンから等距離という。

 憲法を改正して、少なくとも着上陸までは待つという受動的な防衛政策を、そもそも戦争を起こさせない、という外交防衛政策へ一体化させられなければ現状は続くのですが、結局、包括的ではなく個別に安全保障を考えてしまう事で、相互連環の対応策というものを議論さえできません、ただ、この問題を50年間も続けるのは、如何にも長すぎないか、と。

 知る事から始めるべき、これは先日の憲法記念日に際しても示しました論点ではあるのですが、同情するが何も行動しないという上辺に留まることなく、沖縄の基地と本州の基地や周辺情勢と憲法問題に憲法解釈、安全保障上の外交関係や、どれも連関した命題であり、先ず知る為の努力を始め、そして積み重ねてゆく事が、重要なのだとも考えるのです。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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