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【京都幕間旅情】三井寺(円城寺)延暦寺との千年戦争と本願寺蓮如受け入れた信仰への多様性

2022-02-02 20:00:38 | 旅行記
■比叡山延暦寺焼討の指揮所
 千年戦争という信仰上の対立を前回紹介しましたが対立は平安朝の頃から戦国時代を経て近年まで続きます。

 織田信長が元亀2年こと西暦1571年に比叡山を焼討した際、織田信長が指揮を執ったのはここ三井寺だという。寺社仏閣には容赦ないという印象が後世にある織田信長ですが、名古屋の熱田神宮はじめ織田信長が寄進した建物は数多く現存し、不思議に思う事がある。

 延暦寺焼討、その指揮を執ったのが同じ天台宗系の三井寺であり、そして三井寺には織田信長が修繕した建物も現存しているので、やはり無差別攻撃ではなく相手は選んでいたといえます。そして三井寺では織田信長は歓待されたという。茶菓子などもだされたもよう。

 不思議に思ったのは寺院焼討の武将を茶菓子で歓待したということで、一見忖度したのかとも考えた事もありましたが、歴史を知れば首肯する、何度も延暦寺に焼討され、七度ほど全焼していたのですから、今度はこちらがながめる番だ、こう考えたのかもしれない。

 金堂、今の三井寺では拝観料を収めれば国宝を間近に拝観する事も出来まして、ここまで近寄れて、写真はご遠慮をとのことでしたが、万人を受け入れる寺院の空気と云うか雰囲気には、なにか親しみを感じまして、観光客ではなく寺を知るには京都より大津、と思う。

 唐院が一段高く塀に囲まれ一郭を構成していまして四脚門、灌頂堂、唐門、大師堂、長日護摩堂、唐より伝来した様々な経典や仏具を収める。幾度も焼討された三井寺にあっても、こうしたものはその都度門徒により運び出され、魂の部分は破壊を免れたというから凄い。

 三井寺。不死鳥の寺と云われる通り幾度もの戦火から復興した寺院ですが、言い換えれば何度も焼かれた事を示します。源平合戦が昨今、大河ドラマの題材となり注目を集めていますが、この源平合戦に際しても、その先の鎌倉時代の揺動期にも戦火に見舞われた。

 弁慶の引き摺り鐘。三井寺にはかの武蔵坊弁慶が比叡山僧兵として三井寺を攻撃した際に引き摺り持ち帰ったとされる鐘があります、この鐘は長らく延暦寺にあったといいまして、そして実はもう少し後の鎌倉初期の鋳造といいますが、伝承と共にいまも残っていまして。

 藤原道長や白河上皇が帰依した三井寺は、最盛期には今の長野市の善光寺もその末寺とした程の勢力を誇り、武家からも源氏が幾度も戦勝祈願を行っています。この頃の比叡山は朝廷へも強訴を繰り返す頃でしたので、三井寺も容赦なく、しかし源氏により再興される。

 源頼政が治承4年こと西暦1180年に以仁王と共に平家打倒へ以仁王の挙兵を行った際は三井寺僧兵も協力し、しかし挙兵が失敗した事から今度は平重衡と平忠度の軍勢に攻撃され伽藍など600以上を焼討されています。その復興は平家滅亡後、源頼朝により行われた。

 源平合戦に介入した結果の焼討、こうした歴史もあるのですが、しかし焼討の半数は比叡山延暦寺の門徒や僧兵によるものでした。弁慶の引き摺り鐘というものが伝承されるのもこうした所以があるのですね。しかしこの対立は不思議にも日本の仏教に多様性を生んだ。

 蓮如。本願寺中興の祖というべき蓮如も、比叡山延暦寺により云う度も本願寺を焼かれています。織田信長の石山本願寺焼討が有名ですが、この石山というのは滋賀県の東海道本線もある大津市内の石山は関係ない、いまの大阪城のある丘陵地が石山と呼ばれていた。

 蓮如に話を戻しますと、蓮如が宗祖親鸞の教えを説いて延暦寺に幾度も攻撃を受けた際、蓮如を匿い、そして近江の地で布教活動を地下でつづけた際に仏具や仏典を預かったのが、他ではない三井寺であったという。対立はあっても画一を避けた、そんな歴史もあるのですね。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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