◆空母を一撃で破壊可能な新型ミサイル開発へ
空母脅威に備える次期戦闘機とミサイル弾頭、今回で三回目となりました。
F-2支援戦闘機にASM-3超音速対艦ミサイル、その前のF-1支援戦闘機にASM-1空対艦ミサイル、ソ連軍脅威に対抗すべく開発された技術は戦闘機だけで達成し得るものでは無く、将来戦闘機関連事業も隣国航空母艦脅威へはその戦闘機から投射するミサイルとともに完成するもの。
具体的には、大型艦艇及び島嶼上の脅威に対処する誘導弾用弾頭技術の研究、としまして“空母等の大型艦艇の外壁を貫徹し、艦艇内部で起爆し、爆風効果で破壊する大型艦艇対処用 弾頭及び島嶼上の地上目標等に対し広範囲に高い貫徹力を有する攻撃が可能な地上目標対処用弾頭の研究を実施”が明示されます。
いうなれば、一発で航空母艦を行動不能にできる程度の威力を持つ弾頭を開発し、併せて弾頭部分の換装により広範囲の陸上部隊の主要装備を明確に打撃を加える事の出来る弾頭を開発する計画です。もちろん、対艦ミサイル全般は強力な破壊力を秘めてはいるのですが、此処に加えて、ということ。
大型艦艇対処、これは現在のASM-3の技術に依拠して超音速巡航性能を有し射程を防空網の制圧範囲外から、特に周辺国の艦対空誘導弾の射程外から投射できる性能を持つとともに、被発見性を回避するべくASM-3のようにミサイル本体を小型化しステルス性をもつものとなるのでしょう。
大型艦艇対処には、バンカーバスターほどの貫徹能力は求められないものの、艦内まで浸徹したのちに爆発させることで上部構造物のような部分ではなく格納庫内という最も脆弱性を有する部分への打撃力とダメージコントロール能力の破壊をかなり想定しているものと考えられます。
今回は弾頭開発であるため、ミサイルそのものの射程や航空機への搭載能力、特に戦闘機に搭載できるのか対艦ミサイルとなるのか、潜水艦にのみ搭載するのかなどの要求性能などは明示されていませんが、大型艦艇対処として具体的に航空母艦への打撃を明示している点は注目に値するでしょう。
地上目標対処、これは上記弾頭と同一弾頭とするのか、もしくは同一誘導弾に搭載し弾頭の規格共通化を行うことで誘導弾本体の共通化を目指すものであるのかはさだかではありませんけれども、我が国が批准したクラスター弾禁止条約の範囲外となる誘導子弾を開発するのでしょう。
クラスター弾禁止条約の枠外は子弾についても誘導能力を求めているため、地上の装甲目標など高付加価値目標を評定し識別し命中させる能力が盛り込まれることとなり、より具体的には島嶼部防衛に際しての沿岸部における水陸両用車両などを刈り取る性能が求められます。
仮に子弾が誘導能力を有するならば、大型艦艇対処に先んじた護衛の水上戦闘艦などの上部構造物の特に電装品部分などに対し小型弾を命中させることにより生じる電装品の損壊、チープキルを併せて期することが出来るでしょうし、潜水艦などから投射できるのであれば我が国は潜水艦からの策源地攻撃能力も併せてもつこととなります。
特筆すべきは、地上目標対処能力で、識別能力を持つことにはなるということは当然として、島嶼部防衛能力には資する装備には間違いありませんが、地上目標を攻撃できる能力であることは、策源地攻撃能力の強化に大きな弾みをつける事となるやもしれません。
策源地攻撃、例えば我が国本土に対する弾道ミサイル攻撃や巡航ミサイルを搭載する運搬手段たる爆撃機基地への打撃手段ともなりましょう。加えて、対地攻撃用途に用いられるという事と加え、戦闘機から投射できるのか護衛艦から運用できるのか、様々な視点から考えたくなるところ。
更に特に潜水艦から発射することが可能なミサイルに搭載できるのかで、抑止力に防御力のみの消極的なものでは無く積極的な用途としまして、報復的抑止力、つまり相手に我が国攻撃を行う以外の防衛力整備を行わせる抑止力を整備できる、という事にもなるわけです。
大型艦艇及び島嶼上の脅威に対処する誘導弾用弾頭技術の研究、これは我が国へ突き付けられる航空母艦という強大な脅威に対処すると共に、報復的抑止力の欠如による抑止体系の欠缺への解決策になり、もちろん運搬手段として弾頭の誘導技術などがいかに進展するかに左右されるのですが、防衛力の転換点ともなり得る技術開発の開始となるでしょう。
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)