北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

特集:平成27年度防衛予算概算要求概要⑰・・・空母脅威に備える次期戦闘機と新弾頭Ⅲ

2014-10-11 23:12:21 | 防衛・安全保障

◆空母を一撃で破壊可能な新型ミサイル開発へ

 空母脅威に備える次期戦闘機とミサイル弾頭、今回で三回目となりました。

Aimg_0875 F-2支援戦闘機にASM-3超音速対艦ミサイル、その前のF-1支援戦闘機にASM-1空対艦ミサイル、ソ連軍脅威に対抗すべく開発された技術は戦闘機だけで達成し得るものでは無く、将来戦闘機関連事業も隣国航空母艦脅威へはその戦闘機から投射するミサイルとともに完成するもの。

Img_8934 具体的には、大型艦艇及び島嶼上の脅威に対処する誘導弾用弾頭技術の研究、としまして“空母等の大型艦艇の外壁を貫徹し、艦艇内部で起爆し、爆風効果で破壊する大型艦艇対処用 弾頭及び島嶼上の地上目標等に対し広範囲に高い貫徹力を有する攻撃が可能な地上目標対処用弾頭の研究を実施”が明示されます。

09thimg_1242_1 いうなれば、一発で航空母艦を行動不能にできる程度の威力を持つ弾頭を開発し、併せて弾頭部分の換装により広範囲の陸上部隊の主要装備を明確に打撃を加える事の出来る弾頭を開発する計画です。もちろん、対艦ミサイル全般は強力な破壊力を秘めてはいるのですが、此処に加えて、ということ。

Yimg_8901 大型艦艇対処、これは現在のASM-3の技術に依拠して超音速巡航性能を有し射程を防空網の制圧範囲外から、特に周辺国の艦対空誘導弾の射程外から投射できる性能を持つとともに、被発見性を回避するべくASM-3のようにミサイル本体を小型化しステルス性をもつものとなるのでしょう。

Gimg_8190_1 大型艦艇対処には、バンカーバスターほどの貫徹能力は求められないものの、艦内まで浸徹したのちに爆発させることで上部構造物のような部分ではなく格納庫内という最も脆弱性を有する部分への打撃力とダメージコントロール能力の破壊をかなり想定しているものと考えられます。

Thimg_8049  今回は弾頭開発であるため、ミサイルそのものの射程や航空機への搭載能力、特に戦闘機に搭載できるのか対艦ミサイルとなるのか、潜水艦にのみ搭載するのかなどの要求性能などは明示されていませんが、大型艦艇対処として具体的に航空母艦への打撃を明示している点は注目に値するでしょう。

Jimg_9664  地上目標対処、これは上記弾頭と同一弾頭とするのか、もしくは同一誘導弾に搭載し弾頭の規格共通化を行うことで誘導弾本体の共通化を目指すものであるのかはさだかではありませんけれども、我が国が批准したクラスター弾禁止条約の範囲外となる誘導子弾を開発するのでしょう。

Biimg_3856 クラスター弾禁止条約の枠外は子弾についても誘導能力を求めているため、地上の装甲目標など高付加価値目標を評定し識別し命中させる能力が盛り込まれることとなり、より具体的には島嶼部防衛に際しての沿岸部における水陸両用車両などを刈り取る性能が求められます。

Gimg_1504 仮に子弾が誘導能力を有するならば、大型艦艇対処に先んじた護衛の水上戦闘艦などの上部構造物の特に電装品部分などに対し小型弾を命中させることにより生じる電装品の損壊、チープキルを併せて期することが出来るでしょうし、潜水艦などから投射できるのであれば我が国は潜水艦からの策源地攻撃能力も併せてもつこととなります。

Gimg_2350  特筆すべきは、地上目標対処能力で、識別能力を持つことにはなるということは当然として、島嶼部防衛能力には資する装備には間違いありませんが、地上目標を攻撃できる能力であることは、策源地攻撃能力の強化に大きな弾みをつける事となるやもしれません。

Img_1233  策源地攻撃、例えば我が国本土に対する弾道ミサイル攻撃や巡航ミサイルを搭載する運搬手段たる爆撃機基地への打撃手段ともなりましょう。加えて、対地攻撃用途に用いられるという事と加え、戦闘機から投射できるのか護衛艦から運用できるのか、様々な視点から考えたくなるところ。

Img_6610  更に特に潜水艦から発射することが可能なミサイルに搭載できるのかで、抑止力に防御力のみの消極的なものでは無く積極的な用途としまして、報復的抑止力、つまり相手に我が国攻撃を行う以外の防衛力整備を行わせる抑止力を整備できる、という事にもなるわけです。

Nimg_8256_1  大型艦艇及び島嶼上の脅威に対処する誘導弾用弾頭技術の研究、これは我が国へ突き付けられる航空母艦という強大な脅威に対処すると共に、報復的抑止力の欠如による抑止体系の欠缺への解決策になり、もちろん運搬手段として弾頭の誘導技術などがいかに進展するかに左右されるのですが、防衛力の転換点ともなり得る技術開発の開始となるでしょう。

北大路機関:はるな

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

平成二十六年度十月期 陸海空自衛隊主要行事実施詳報(2014.10.11・10.12)

2014-10-10 23:20:16 | 北大路機関 広報

◆自衛隊関連行事

 台風19号の日本本土接近が週末から週明けにかけて、行事予定を掲載しますが最新の情報をご確認の上行動してください。

Uimg_4714  中部方面隊創設54周年記念行事伊丹駐屯地祭、兵庫県伊丹市に所在する中部方面総監部の創設記念行事で、隷下の第3師団、第10師団、第13旅団、第14旅団、中部方面隊直轄部隊の観閲行進が行われるほか、今年度も訓練展示が行われるということ。

Uimg_8110 目達原駐屯地祭、第3対戦車ヘリコプター隊が展開し、AH-1S対戦車ヘリコプターに加えA-64D戦闘ヘリコプターが配備される唯一の実戦部隊です。航空部隊行事ということで少々天候、特に台風の動向が気になるところでは在りますが、明日土曜日に行われます。

Fimg_6157 玖珠駐屯地祭 、玖珠駐屯地は第4戦車大隊、第8戦車大隊という西部方面隊全ての戦車大隊が駐屯する駐屯地で、 西部方面隊には74式戦車が装備、二個戦車大隊の駐屯する駐屯地は昨今中々貴重です。戦車部隊は荒天に強いのですが、こちらもどうなるのでしょうか。

Hbimg_4330 飯塚駐屯地祭、西部方面隊の拠点防空及び野戦防空を担う第2高射特科団が駐屯する駐屯地です。ホークミサイルなどを装備し、第15高射特科連隊創設までは沖縄県の防空も担う一大高射特科部隊でした。ちなみに陸上自衛隊には東千歳の第1高射特科団と団編成の高射部隊は二つのみ。

Simg_1054  普通科部隊関連行事は、福島駐屯地創立61周年記念式典 、国分駐屯地創立記念行事など。普通科部隊行事は駐屯地ならではの個性などもありますので、お近くの方は是非、といえるところです。ただ、国分駐屯地は南九州ですので、台風の動向にご注意ください。

Mimg_6721 艦艇広報 in 長崎 長崎県五島市福江港行事等多用途支援艦あまくさ一般公開など。繰り返しになりますが、台風19号の日本本土接近が週末から週明けにかけて、行事予定を掲載しますが最新の情報をご確認の上行動してください。

◆駐屯地祭・基地祭・航空祭

注意:本情報は私的に情報収集したものであり、北大路機関が実施を保証するものではなく、同時に全行事を網羅したものではない、更に実施や雨天中止情報などについては付記した各基地・駐屯地広報の方に自己責任において確認願いたい。情報には正確を期するが、以上に掲載された情報は天候、及び災害等各種情勢変化により変更される可能性がある。北大路機関

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

JR貨物自衛隊機材輸送列車 名古屋臨海鉄道南荒子貨物ターミナルPowerShotG-16撮影

2014-10-09 22:29:42 | コラム

◆自衛隊鉄道輸送!施設車両の積降

 八月に撮影しましたJR貨物自衛隊機材輸送の模様についてお伝えしましょう。

Rtimg_7925 今年7月3日に東海道本線西浜松から根室本線新富士駅までの区間、名古屋の第10師団協同転地演習へ合わせたJR貨物自衛隊機材輸送が行われ、長物用無蓋貨車チキ7000形10輌およびチキ6000形2両という12両編成の貨物輸送が行われ、豊川駐屯地第10特科連隊のFH-70榴弾砲を輸送したとのことですが、それとは別のもの。

Rtimg_7928 JR貨物自衛隊機材輸送は、名古屋臨海鉄道南荒子貨物ターミナルにおいて実施されており、その様子を隣接する南荒子駅より見る事が出来ました。春日井駐屯地第10施設大隊のドーザーが輸送されていました。無蓋貨車チキに積載されたドーザが協力会社により日本通運の輸送車両へ吊り上げられ、搭載されています。

Rtimg_7922 協同転地演習JR貨物の根室本線新富士駅から東海道本線西浜松への自衛隊機材輸送列車復路は7月21日から7月24日に行われたとのことでチキ6000形2輌とチキ7000形10輌の12両編成にてDF-200ディーゼル機関車、EH-500電気機関車、EF-210電気機関車、EF-65電気機関車、と切り替え輸送されたとのことでした。

Rtimg_7931 大型ドーザの積降は、第10師団隷下部隊の支援の下ではありましたが、専用機材がある訳ではなく協力会社同士の作業となっており、数時間を要していました。他方、輸送需要が無ければJR貨物の自衛隊貨物輸送に関連する貨車自体が縮小する事ともなりますので、様々な輸送基盤を構築しておくということも重要なのでしょう。

Rtimg_7932 1t半(新73式小型トラック)の先導を受け、ドーザーを搭載した日本通運の車両はそのまま春日井駐屯地方向へ降りてゆきました。一両ではありますが、自衛隊車両の貨車からの積降を終了まで長時間に渡り撮影出来、非常に貴重なものを見る事が出来た、と言えるやもしれません。

北大路機関:はるな

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

浜松基地航空祭エアフェスタ浜松2014(2014-09-28) POWERSHOTG-16撮影速報

2014-10-08 23:49:16 | 航空自衛隊 装備名鑑

◆航空自衛隊発足の基地にて見上げた60周年 

 浜松基地航空祭2014、ご報告が遅れましたが行ってまいりました。

Ciimg_3497  浜松基地、航空自衛隊創設記念行事が執り行われた基地として知られ、航空自衛隊発祥の地というべき基地です。現在は航空教育集団司令部が置かれ、航空自衛隊教育訓練体系の中枢としての地位を担うと共に第1航空団がT-4練習機二個飛行隊を展開、搭乗員教育等の拠点ともなっているところ。

Ciimg_3581 航空教育集団司令部、その隷下部隊として第1航空団、航空自衛隊第1術科学校、航空自衛隊第2術科学校、教材整備隊が置かれているほか、航空総隊直轄部隊として、警戒航空隊司令部、同 第602飛行隊、更に高射教導隊や航空救難団飛行群 浜松救難隊が展開、中部航空方面隊隷下の中部航空音楽隊も置かれています。

Ciimg_3482  今回の浜松基地航空祭展開は少々多忙で時間のやりくりの方で最後まで展開できるのかどうかわからなかったのですが、前日に目途が付きまして足を運んだしだい。新たに購入したDOMKE-F612 ロングレンズを試してみたい、というところも大きかったのですが、ね。

Ciimg_3453  浜松基地航空祭ですが、やはりこちらも混雑が名物、今年は前回足を運んだ2012年よりも相当混雑しておりまして、東海道新幹線浜松駅より北へ5kmという好立地にある関係上、早朝からシャトルバス待ちの行列が東海道本線と東海道新幹線の浜松駅駅舎を貫いて遥かに並んでいました。

Ciimg_3638  浜松基地航空祭ですが、前回と同じ時間帯に展開したものの行列は明らかに長くなっていました、一瞬小松基地航空祭のシャトルバス行列の悪夢が脳裏をかすめましたが、そこは政令指定都市浜松市、大都市浜松には充分なタクシーが確保されていた為何とかなった、というところ。

Ciimg_3620  当方、偶然方々の自衛隊関連行事で顔を合わせる方々とタクシー乗り場前で顔を合わせまして、相乗りで基地へ向かいましょう、と速攻で乗り込みました。車内で語り合いますと全員勘違いで初対面の方々でしたが、いろいろと雑談で盛り上がり、また会いましょうと基地まで。

Ciimg_3624  刹那出遅れたかと浜松駅で焦ったのは僅か二十分前、早々に浜松基地へ展開しますと先行の首都圏からの有人が最前列を確保し頑張っているという事でしたので、当方は陣中見舞へと糧食と清涼飲料水を数本、その後明らかに多くなっている来場者の中で合流を果たしました。

Ciimg_3615  767号機と747号機、なにやら旅客機を思い出すところ。混雑していた浜松基地ですが、橋の法に行きますと何とか離着陸を最前列の隙間から撮影できましたので、言い換えれば混雑しているように感じたのはシャトルバスだけで、基地全般ではそうでもなかった、のかな。

Ciimg_3477  今年の航空祭の見どころは、何と言っても全国初展示となった基地防衛用地対空誘導弾、今年こそ展示されるかと思いきや直前に高射教導群は浜松に展開しているが隷下の基地防空教導隊は千歳基地に展開している事に気づき、しまったと思っていたところですが、第二術科学校の教材が展示されていましたのでこちらを撮影です。

Ciimg_3463  エコ航空祭、今年度の浜松基地航空祭はエコを掲げ、会場内にゴミ箱を設置しない、という方針を採られたようで、これにより隊員の方々のごみ回収の手間は省けるのですが、模擬店のほうの清涼飲料水販売もゴミ縮小の関係上か明らかに少なく、気のせいか熱中症患者の話と救急車のサイレンを多く耳にしたもの。

Ciimg_3608  熱中症対策は水分を十分にという放送だけで基地内で水分を購入できない状況になっていましたので、これはあまりに酷では、と思わざるを得ないものでした。後で聞くところではいよいよと危険性を認識したのか、ブルーインパルス飛行展示終了後に基地側が臨時給水所を開設し対応した、とのこと。

Ciimg_3659  当方は一通り編隊を撮影し、その後は地上展示を撮影したのちにエアパーク方面へ転進しました。もともとは基地内の地上展示機を一時間程度で撮影し、順光の撮影環境のある方面へ移動する計画だったのですが、計画というものは変更がつきもの。一方、途中乗換失敗にてはぐれたいつもお世話になっている方がエアパーク側へ到達したとの事でこちらも移動へ。

Ciimg_3709  今回投入したDOMKEドンケ F612 ロングレンズ、中々の逸品でした。なによりこれまでDOMKEのF-1Xという最大のドンケバックにすべてを収容し行動していたのですが、あまりに重く、こうしたなかでCANON300mmF2.8を一眼レフに装着したまま収納できる、だけ、というカメラバックを採用してみたのですが、物凄く軽く、これはいいものでした。

Ciimg_3670  少々時間を要しましたがブルーインパルス飛行展示までに移動を完了しまして、飛行展示を撮影後、久々に航空自衛隊広報館を見学、路線バスを利用し浜松駅へ比較的短時間にて撤収することが出来ました次第です。最後になりましたが現地でご一緒いただきました皆様、ありがとうございました。

北大路機関:はるな

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

統合幕僚長に河野克俊海将、海上幕僚長・横須賀地方総監・舞鶴地方総監に新人事

2014-10-07 21:57:18 | 国際・政治

◆統幕長岩崎空将の退官を承認

 政府は7日の閣議で統幕長岩崎空将の退官を承認すると共に新統幕長に河野海将の昇任を了承しました。

88img_1087 新統合幕僚長に第31代海上幕僚長河野克俊海将が着任します。これを受け、後任の海上幕僚長と、これに合わせての横須賀地方総監及び舞鶴地方総監に新人事が発令されることとなり、海上幕僚長に防大21期の武居智久海将が横須賀地方総監より昇任することとなりました。

88img_3880  新横須賀地方総監に舞鶴地方総監の井上力海将が昇任、新舞鶴地方総監に自衛艦隊司令部幕僚長の堂下哲郎海将補が海将に昇進し着任します。このほか、情報本部統合情報部長益田哲也1佐が海将補へ昇進し海上幕僚監部指揮通信情報部長へ着任するほか、海上幕僚監部指揮通信情報部長の大塚海夫海将補が自衛艦隊司令部幕僚長へ昇任するとのこと。

88img_8204  井上力海将は防大24期、第四護衛隊群司令や練習艦隊司令官に統合幕僚監部運用部長などを歴任、堂下哲郎海将補は防大26期で第三護衛隊群司令や幹部候補生学校長を歴任しています。海上幕僚長から統合幕僚長への昇任は齋藤隆海将以来となります。

88_img_4262  海上幕僚長と自衛案隊司令官が同格とされたなかで杉本正彦海将、河野克俊海将と自衛艦隊司令官からの海上幕僚長への昇任が二人続いたなか、久々に五地方総監の最先任と言われた横須賀地方総監からの海上幕僚長昇任となりました。新人事はいずれも10月14日付で発令されます。

北大路機関:はるな

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

特集:平成27年度防衛予算概算要求概要⑯・・・空母脅威に備える次期戦闘機と新弾頭Ⅱ

2014-10-06 22:04:24 | 防衛・安全保障

◆一兆円規模の開発費を数十年間で段階開発

 我が国戦闘機開発は各国が一兆円を超える開発計画を数十年間に区分し段階を組んで進めています。

Bimg_2262  次期支援戦闘機。“将来戦闘機関連事業(412億円)将来戦闘機に関し、国際共同開発の可能性も含め、戦闘機(F-2)の退役時期までに開発を選択肢として考慮できるよう、国内において戦闘機関連技術の蓄積・高度化を図るための実証研究を実施”、平成27年度防衛予算概算要求概要記述はこの通り。

Img_9151  次期戦闘機構成要素に関する研究は、単純にこの412億円で戦闘機を開発することは不可能である、と言い切る事は余りに総計で、例えばこの水準の開発費を十五年単位で継続しただけで単純計算では6000億円程度の開発費を形状し開発することができるのだ、ということができるでしょう。

Img_8712_1  しかしそれだけではなく、次期戦闘機開発に必要な各種構成要素は分割され、いうなれば航空機開発関連の予算そのものの本流が一元化されているという形をとり部分部分が此処に開発がとん挫した場合での全体に影響しないようパズルのピース一つ一つを時間をかけ開発されていまして、かたちになろうとしているところ。

Himg_3304  精密模型を週刊で部品を販売し長期間に莫大な資金を投じて完成品をくみ上げる某週刊誌方式で、国家規模でディアゴスティーニ方式か、と驚かれるかもしれませんが、実態はどちらかというと大学の学部と博士前期課程に後期課程を通じて専門研究者を養成する方式と似ているかもしれません。

Img_4577a  将来戦闘機関連事業(412億円)には、主としてエンジン部分、レーダードーム技術、ヘルメットマウンデッドディスプレイ技術、以上が盛り込まれています。エンジン部分はタービンブレードや燃焼室などの部分、既に研究開発されているエンジンの構成要素をシステムインテグレーション技術により統合されます。

Fimg_9488  部品全体は素材などから個々の技術が寄り集まって開発されるのですが、これを一度に開発するには少々技術的障壁が大きく、例えば防衛省は防衛庁時代にT-1練習機用エンジンを開発した際にはタービンブレード技術が稚拙であったため燃焼室からの高熱に耐えられず溶解してしまうなどの問題が生じました。

Img_0439  このため、例えばT-4練習機用エンジンなど既に国産開発されたエンジンも技術的習作の部分を量産し、次の開発に活かすというあたかも鰻屋のタレのように積み重ねその都度完成部分を製品化しつつ、次の開発に繋げてきました、此処が漸く戦闘機用低バイパス比エンジンの水準にちかづいてきた、ということ。

Timg_2924  レドーム技術は、既にスマートスキンレーダー技術という開発が開始されている部分、機体の側面や主翼にレーダーとしての機能を盛り込み、機体の側面方向や後方部分に対してレーダーによる警戒を行う研究が進められていますが、この部分を更にレドームの技術から進めるもの。

Img_2631  レドームはスマートスキンをそのまま航空機に装着した場合、超音速飛行により膨大な高熱エネルギーが空気摩擦により生じるためスマートスキンを高熱が損壊してしまう可能性がありますため、主翼部前面レドームと機首レドームへ応用させる技術の研究が来年度から始まるということ。

Gimg_0425  加えて、ヘルメットマウンデッドディスプレイ技術はF-15戦闘機近代化改修用に既に開発されていますが、軽量化しつつ広視野角を確保する技術開発が開始されるということになるのです、が、平成27年度防衛予算概算要求概要に示されているのはこの通りですのでこれだけで戦闘機開発は達成できません。

Img_317909  先端技術実証機ATD-Xは、この中で如何なる位置づけにあるのか、と言いますと、海上自衛隊の試験艦あすか、のような位置づけにあるといえるもので、ATD-Xがあの大きさの機体に充分な戦闘機としての実用的な性能を保持出来ればそのまま実用化という選択肢もあるのですが、実現できなければ過渡的な試験機というものになります。

Img_6370  実用、例えば超音速飛行性能を有しレーダーと火器管制装置に2000km程度の航続距離と850km程度の戦闘行動半径、もう少し日本の防衛正面の転換で必要とされますが、それと5tから8tの武装搭載量を備えていればそのまま戦闘機として通用しましょう。

Nimg_8522  逆にあの機体規模でそれだけの性能を盛り込むことが出来たならば十分最新世代戦闘機として対応可能で、すぐにでも量産すべきですが、具体的な要求性能ではなく飛行実験において国産開発された先進技術を実証するための試験母機という位置づけの機体にはそうしたものは盛り込まれていません。

Gimg_9999  実証機とは何を実証するのか、これまで開発を丹念につづけ、既に蓄積した多数ある個々の新技術は応用次第で戦闘機に発展しうる実用性をもつもので机上段階と部分試験の形を総合的な航空機開発に耐えるものへ昇華しているものを実証する、実証機とはいうなればこういうもの。

Nimg_8697_1  平成27年度防衛予算概算要求概要に盛り込まれた技術開発はどちらかというえば、平成40年代を見据えた新戦闘機開発に向け、ATD-Xに搭載して試験するための構成要素を研究し、将来開発に繋げるものといえ、これまでの分散された膨大な技術開発が総体として機能するための土台を構成しているといえるでしょう。

北大路機関:はるな

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

平成26年度北部方面隊実動演習・東北方面隊主幹連隊等協同転地演習、北海道で実施中

2014-10-05 23:49:42 | 防衛・安全保障

◆統合機動防衛力整備を目指し訓練

 現在、北海道において二つの大きな演習が実施中です。本日はこの話題について。

Simg_4076  北海道において平成26年度北部方面隊実動演習と東北方面隊主幹連隊等協同転地演習が実施されています。現在陸上自衛隊では統合機動防衛力整備として陸上自衛隊の他管区への機動力を増強することで全自衛隊の即応性向上と総合的な抑止力強化を進めており、その能力練成へ端的な事例といえるでしょう。

Img_2583  協同転地演習とは、冷戦時代北方機動演習として本州の陸上自衛隊部隊をソ連軍などの侵攻を想定した北方有事へ緊急展開させ北海道の防衛力を増強させる想定での訓練で、近年では自衛隊の長距離展開能力の整備へ北部方面隊を含め広く実施されるようになってきました。

Gimg_8533  東北方面隊の協同転地演習は東北方面総監松村五郎陸将を統裁官として連隊等協同転地演習として9月25日から10月14日まで実施され、東北方面隊管区から北部方面隊管区へ実施され、北部方面隊管内の演習において攻撃訓練などが実施されています。

Himg_0855  この東北方面隊主幹連隊等協同転地演習においては第9師団を主力とする一個普通科連隊が配属部隊を以て実施され、人員1750名、車両500両、航空機5機を以て矢臼別演習場へ展開、車両には戦車7両が含まれています。展開は5日間で実施、攻撃訓練が今月1日から10日まで実施、14日までに復路を踏破する計画とのこと。

Pimg_0940 併せて東北方面隊協同転地演習実施中の矢臼別演習場では平成26年度北部方面隊実動演習が実施されています。北部方面隊実動演習参加部隊と東北方面隊協同転地演習参加部隊が同じ矢臼別演習場において行動することで連携要領の演練にも寄与することでしょう。

Mimg_1910 平成26年度北部方面隊実動演習には、北部方面総監田邉揮司良陸将が統裁官となり、方面総監部、第2師団、第7師団、第5旅団、第11旅団、第1特科団、第1高射特科団より人員6600名が抽出、戦車45両を含む1700両の車両と航空機15機が参加し実施されると発表されました。

Img_1527 訓練は矢臼別演習場他に北海道大演習場、札幌駐屯地で実施され、9月25日から10月15日まで実施、警戒監視訓練、攻撃訓練、防御訓練、沿岸監視訓練、協同耐寒訓練、協同防空訓練、ペトリオット警備訓練、通信訓練を実施、航空自衛隊との連携も視野に含まれているもよう。

Mimg_2262 なお、北部方面隊は平成26年度北部方面隊実動演習に続き、北部方面隊の連隊等協同転地演習を予定しています。御嶽山噴火災害自衛隊派遣などで災害派遣に注目が集まっていますが、第一の任務である防衛へも万全の訓練が行われているわけですね。

北大路機関:はるな

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

特集:平成27年度防衛予算概算要求概要⑮・・・空母脅威に備える次期戦闘機と新弾頭Ⅰ

2014-10-04 22:02:00 | 防衛・安全保障

◆平成40年代を見据え次世代機開発

 平成27年度防衛予算概算要求概要では技術研究開発の推進、技術開発ではなく研究も盛り込まれています。

Timg_70820  将来戦闘機関連事業(412億円)、大型艦艇及び島嶼上の脅威に対処する誘導弾用弾頭技術の研究(15億円)、このなかでも上記二つの事業は平成40年代を見据えての技術開発に向けた技術研究ではありますが、我が国周辺での空母脅威への大きな対処手段の構築となるでしょう。

09thimg_1242_1 将来戦闘機関連事業は具体的には“将来戦闘機に関し、国際共同開発の可能性も含め、戦闘機(F-2)の退役時期までに開発を選択肢として考慮できるよう、国内において戦闘機関連技術の蓄積・高度化を図るための実証研究を実施”、として具体的にFS-Xを見据えたものが示されることとなりました。

Nimg_9356 大型艦艇及び島嶼上の脅威に対処する誘導弾用弾頭技術の研究は、“空母等の大型艦艇の外壁を貫徹し、艦艇内部で起爆し、爆風効果で破壊する大型艦艇対処用弾頭及び島嶼上の地上目標等に対し広範囲に高い貫徹力を有する攻撃が可能な地上目標対処用弾頭の研究を実施”と空母脅威への対処を明示しています。

Nimg_8701  我が国周辺において我が国領土の軍事的侵攻を選択肢の視野に入れ、国際法を無視した強圧的外交政策と軍事行動を進める国が、航空母艦の取得と複数の航空母艦の建造、更には航空母艦を中心とした機動部隊の建設を進めていまして、その矛先が我が国に刺さる瞬間に対応策が必要となります。

Img_1267 その具体的施策として、将来戦闘機関連事業と大型艦艇及び島嶼上の脅威に対処する誘導弾用弾頭技術の研究にかんする技術研究開発の推進が行われることとなり、即座の対応策とはなり得ませんが、恐らく現在のまま隣国の航空母艦による機動部隊が複数整備され脅威が顕在化する頃を見計らった研究が進められてゆきます。

Img_7426 平成40年代を見据え、という部分は平成27年度防衛予算概算要求概要には盛り込まれていませんが、現在のまま開発を推移させた場合、技術実証機開発などの蓄積された部分を元として研究が開発に転換し具体的装備品に反映されるにはその程度の時間を要する、というもの。

Gimg_7252  自衛隊最新戦闘機と言えばF-2,という誤解がありますが正しくはF-2は支援戦闘機でF-15戦闘機と明確に任務が区分されていまして、現在の航空自衛隊は対戦闘機戦闘と航空優勢確保を戦闘機の専管とし支援戦闘機部隊が近接航空支援及び航空阻止に加えて主軸の一つとして対艦攻撃任務を付与しています。

Abimg_3301 F-2支援戦闘機は従来の空対艦ミサイルと比較し射程が非常に長いASM-2や開発中の超音速ASM-3空対艦ミサイルにより高度な打撃力を有しており、特にF-2支援戦闘機は小型ながら同時4発の空対艦ミサイルを比較的大きな戦闘行動半径の下投射し本土防衛に必要な対艦打撃力を発揮できます。

Kimg_4946 現在のF-2支援戦闘機の水準であれば、ASM-2を一個飛行隊18機により72発の斉射が可能であるため、世界で最も強力である米空母機動部隊への打撃力を含めても十分と言え、超音速小型目標という非常に迎撃しにくいASM-3を搭載する将来を見渡しましても十分と言えますが、この優位性は永続的ではありません。

Img_3219  空母脅威へ如何に立ち向かうか、この為には脅威対象である空母に対し防空網を構成する空母艦載機の迎撃を回避するもしくは無力化しつつ接近し、確実な威力を有する弾頭の誘導弾を命中させることで脅威対象の航空母艦そのものの機能を停止させる方式がもとめられるということ。

Img_2222 即ち、接近するまで発見されにくいステルス機により最大限進出し、自衛戦闘能力により航空母艦が発揮する艦載機による攻撃能力を排除、可能な限り接近し空対艦ミサイルによる飽和攻撃を行う、これが次期支援戦闘機に求められる性能として筆頭に挙げられるものでしょう。

Img_3405 加えて空対艦ミサイルは目標に安易に迎撃されないミサイル本体のステルス性と超音速巡航性能を持つと共に一撃、つまり一発でも命中すればその機能を付随に陥れ、航行不能乃至艦載機の発着を不可能とする、艦内及び艦上の航空機を無力化できる性能が求められるわけです。

北大路機関:はるな

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)   

コメント (7)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

平成二十六年度十月期 陸海空自衛隊主要行事実施詳報(2014.10.04・10.05)

2014-10-03 22:42:41 | 北大路機関 広報

◆自衛隊関連行事

 御嶽山火山災害は降雨と共にラハールが発生するまで時間が無くなってきましたが、本日は自衛隊関連行事について。

Gimg_4607 まず、台風18号が本土に接近しており、最大瞬間風速70mという最新情報に鑑みれば非常に警戒を要する規模を維持しており、自衛隊関連行事も一部に変更が出ています。海上自衛隊の艦艇一般公開などは台風避泊実施の関係上変更されますので、最新の情報を元に計画お立てください。

Img_7460 今週末の自衛隊関連行事ですが、中部方面隊管内では特科部隊強化週間、というべきでしょうか、明日土曜日に第10師団隷下の第10特科連隊の豊川駐屯地祭、明後日日曜日には第3師団隷下の第3特科隊の姫路駐屯地祭が行われ、FH-70榴弾砲の迫力を感じる事が出来るでしょう。

Timg_8360  西部方面隊創隊59周年記念行事、今週末の自衛隊関連行事でもっとも注目すべきは日本最大の市街パレードが執り行われる熊本市の西部方面隊創隊59周年記念行事でしょう。健軍駐屯地周辺の一般道路を利用しての市街パレードが有名で、戦車や火砲にロケット砲と装甲車や航空機などが参加します。

Gzimg_1121 海上自衛隊関連行事ですが、日曜日に東日本の哨戒ヘリコプター部隊総元締めというべき第21航空群が展開する館山航空基地において館山航空基地ヘリコプターフェスティバル2014が行われ、土曜日には徳島教育航空群の徳島航空基地祭2014が行われます。

Tbimg_0316 木更津航空祭2014、日曜日に行われます。木更津の第1ヘリコプター団はCH-47J/JA輸送ヘリコプター32機を集中配備する世界有数の大型ヘリコプター部隊で、第12ヘリコプター隊の同型機は現在御嶽山災害派遣に活躍中です。台風の影響が気になりますが、大編隊の雄姿は凄いの一言に尽きる。

Aimg_0625 土浦駐屯地祭、今週末に行われますが、土浦駐屯地には武器学校が置かれており、陸上自衛隊の水陸機動任務への新装備、現在の複合高速艇を補完する両用強襲車AAV-7が研究用に置かれているともいわれています。AAV-7,装備品展示に登場するのか、気になりますね。

Img_7007 土曜日と日曜日、海上自衛隊の艦艇広報は全国で以下の通り行われる予定です。艦艇広報 in 石川ミサイル艇はやぶさ・うみたか一般公開、艦艇広報 in 愛知砕水艦しらせ一般公開、松山港海上自衛隊艦艇一般公開護衛艦さわぎり一般公開、など。ただ、しらせ一般公開は既に日曜日の公開が中止となり、土曜日中に出港する、とのこと。

Mimg_7342 週明けの火曜日と水曜日に網走港海上自衛隊艦艇一般公開多用途支援艦すおう一般公開、が行われます。火曜日と水曜日の北海道、やはり台風18号の経路が心配になるのですが、こちらもお出かけの方は充分に情報を集め、ご検討ください。

◆駐屯地祭・基地祭・航空祭

注意:本情報は私的に情報収集したものであり、北大路機関が実施を保証するものではなく、同時に全行事を網羅したものではない、更に実施や雨天中止情報などについては付記した各基地・駐屯地広報の方に自己責任において確認願いたい。情報には正確を期するが、以上に掲載された情報は天候、及び災害等各種情勢変化により変更される可能性がある。北大路機関

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

御嶽山噴火災害自衛隊災害派遣 火山災害と装甲車両、89式装甲戦闘車派遣の背景

2014-10-02 23:37:46 | 防災・災害派遣

◆富士学校普通科教導連隊の虎の子装備

 御嶽山噴火、89式装甲戦闘車が派遣されています。何故89式装甲戦闘車が派遣されたのでしょうか。

Img_4883  噴火災害に装甲車両が投入されるだろう、とは考えていましたが、北海道あたりから展開するのかと思いきや。73式装甲車ではなく実際に報道に登場したのはエリコン35mm機関砲を搭載した富士学校の89式装甲戦闘車、でした。

Img_6462  この点で車両を戦車と誤解されている方や、消防や警察にさらに優秀な車両がると誤解されているような方がいるようなので本日は一つ。装甲戦闘車の任務は恐らく大規模噴火時の住民救出用です。山岳救助は自衛隊よりも消防警察、と誤解されている方がいるようですが、装甲車で無ければ不可能、というのが結論です。

Img_3472  火山噴火と自衛隊装甲車は切っても切れない関係です、1989年の富良野火山災害では当時の第2戦車大隊が74式戦車に排土板を装着し待機しましたし、1991年の雲仙普賢岳火山災害では60式装甲車や73式装甲車が住民退避用に待機、2000年の北海道有珠山火山災害でも第7師団の装甲部隊が待機しました。

Img_2410  2011年の霧島新燃岳火山災害では、十分な装甲車が確保できなかったため西部方面特科隊の87式砲側弾薬車が73式装甲車に加えて派遣されています。途中から北部方面隊より装甲車が増派されていますが、西部方面隊管内には装輪装甲車ならば十分確保されていたものの、やはり装軌車両が必要だ、という事でしょう。

Fimg_6681  戦車については、富良野の火山災害などでの輸送用や障害除去用に投入されていますが、雲仙普賢岳では溶岩ドーム監視用に準備されました。最終的に偵察隊の暗視装置が用いられたのですが当初は74式戦車の赤外線投光器よりフィルターを取り外し、溶岩ドームを照らそう、というもの。溶岩ドームが崩壊した際に崩壊型火砕流が発生するため、というものでした。

Img_6297  普賢岳災害派遣では75式装甲ドーザも派遣されています。これは火砕流に伴う火砕サージ被害が発生した際、犠牲者の遺体収容へ展開する際に通常のドーザでは万一の際の防護が困難であり、更にドーザの速度では展開に時間を要したため、戦車に随伴可能な速度と防御力を有する装甲ドーザが派遣された、というかたち。

Img_0159  火山灰堆積地域では装甲車が必要、こういいますのもまず、火山灰が堆積し火山弾が降り注ぐ被災地、という事を忘れてはなりません。火山灰ですが、これは装輪式、つまりタイヤ式の車両ですと溝の部分に火山灰が固着してしまい、隊やチェーンを装着してもやはり火山灰は固着してタイヤの摩擦力を奪ってしまうのでスリップして進めなくなります。

Img_3976  例えば、映画“わんこの島”として先日BSで放映された三宅島火山災害等では、警視庁が不整地突破能力が非常に高いウニモグトラックを三宅島に持ち込んだのですが、数十分走行したところで車輪が駆動不能となり、チェーンを装着しても同様、結局車外に出て灰の掻き落としを頻繁に行わざるを得ませんでした。

Img_6378  もちろん、89式装甲戦闘車は、万能ではありませんが装軌式装甲車ですので、装輪式車両よりは遙かに火山灰堆積地域での行動は容易です。また、生還者の証言として軽トラック並の大きさ火山弾も吹き飛んでいた、と証言がありますので、側面35mm防弾鋼板、上面もある程度の装甲防御力と乗員区画前面に砲塔を持っている装甲戦闘車ならば、生存性は高まります。

Img_7265  当たらなければどうということは無い、という刹那的な気分でいつ何時走行不能になるのか不明だが数十分くらいは大丈夫、という車両で火山危険地域に行くよりは、自衛隊が対応する装備を持っているのだから、これを派遣する、という発想はある意味当然でしょう。

北大路機関:はるな

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる) 

コメント (3)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする