北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

対領空侵犯措置任務と増大する緊急発進へ、量的強化の必要性Ⅳ JAS-39は分散運用可能

2015-03-21 00:05:00 | 北大路機関 広報
◆JAS-39は分散運用可能
 航空自衛隊の今までの戦闘機から見たJAS-39は散々な評価というのが前回、しかし、兵站基盤が薄い状況下においても運用できるというものは非常に大きな強みです。

 たとえばJAS-39を3機から6機程度分散運用する際、一回二回の作戦運用ならば5tトラック3台、一定期間でも5tトラック9両に整備器材と燃料弾薬を搭載し飛行場に展開することで、運用基盤が整います、移動管制塔用車両1両・弾薬運搬車2両・燃料車3両・整備器材車1両・指揮通信車両1両・人員輸送兼自活車両1両、というもの。

 実際にはここに警備班の四輪駆動車が2両と携帯地対空誘導弾組用の車両1両が加わるのですが、これだけの車両が展開することで3機を緊急発進や航空阻止に対応できる最小限の部隊が展開できるのです。最小限でも、戦闘機が展開した島はその周辺に敵戦闘機を容易に寄せ付けません。

 JAS-39は、原型機でAMRAAMを運用可能なPS-05/Aレーダーとデータリンク装置CDL39を搭載、エンジンはF/A-18CのF-404が原型のRM-12,軽量ですが充分機動性がありますし、対案攻撃能力が元々盛り込まれています、何より航空機に対艦ミサイルを搭載したのは世界でもスウェーデン空軍が最初ですから、ね。

 飛行場に空輸展開する場合には、自走する必要が無いので、C-130H輸送機1機でJAS-39戦闘機を短期間であれば3機運用する機材を運搬可能で、航続距離は短いのですがデータリンクにより必要な運用を行うことで、一旦離陸すれば地上からの支援が無くとも防空作戦や航空阻止作戦へ参加可能です。

 整備も高度に自動化されており、重整備以外はエンジン交換を含め全線にて対応可能、トラックに搭載された機材だけで補給なしでも6日間程度の作戦運用が可能、再発進はエンジン起動中に実施した場合で空対空戦闘時10分間、空対地戦闘20分間での武装と燃料補給が可能、といいます。

 これをF-15戦闘機で実施する場合、燃料車は大型トラックではなくトレーラーの大型車両が必要になりますし、エンジン整備ひとつとっても双発機であり、整備には人員と時間を要します。特に前線基地で運用しない前提にて設計されていますので、元々こうした運用を想定していません。この差異こそがJAS-39の強みといえるわけです。

北大路機関:はるな
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平成二十六年度三月期 陸海空自衛隊主要行事実施詳報(2015.03.21-22)

2015-03-20 21:55:56 | 北大路機関 広報
◆自衛隊関連行事
 年度末、如何お過ごしでしょうか。

 今週末は自衛隊関連行事が行われませんが、いよいよ舞鶴基地のヘリコプター搭載護衛艦しらね自衛艦旗返納行事が近づいています。今週末が現役の,しらね最後の一般公開であり、舞鶴基地一般公開などでその最後の雄姿を目に焼き付けておくのもいいでしょう。

 練習艦隊近海練習航海がいよいよ開始されます。江田島基地は呉駅から直線距離では近いものの、自動車で行くには少々厳しい立地ということで有名ですが、練習艦隊出航の様子は中々勇壮なものです、そして全国を回りますので機構の際にはぜひ足を運ばれることをお勧めします。

 練習艦隊近海練習航海の日本全国の寄港予定につきましては既報の通りですが、ヘリコプター搭載護衛艦くらま参加の近海練習航海部隊は貴重な機会です、寄港予定に関する詳細は第二北大路機関でも日程を掲載しますので、ご覧ください。

◆駐屯地祭・基地祭・航空祭
・今週末の一般公開行事はなし
◆注意:本情報は私的に情報収集したものであり、北大路機関が実施を保証するものではなく、同時に全行事を網羅したものではない、更に実施や雨天中止情報などについては付記した各基地・駐屯地広報の方に自己責任において確認願いたい。情報には正確を期するが、以上に掲載された情報は天候、及び災害等各種情勢変化により変更される可能性がある。北大路機関
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新護衛艦いずも引渡式・自衛艦旗授与式典、3月25日横浜磯子にて挙行

2015-03-19 23:00:00 | 海上自衛隊 催事
◆DDH-183いずも、海上自衛隊最大の護衛艦就役へ
 海上自衛隊によれば護衛艦いずも引渡式・自衛艦旗授与について、その挙行が3月25日とする発表がありました。

 いずも、艦長は吉野敦1佐で、現在最大の護衛艦は、ひゅうが型ヘリコプター搭載護衛艦の満載排水量19000tですが、いずも型護衛艦は満載排水量27000tとなり、海上自衛隊最大の護衛艦となります。ひゅうが型と同じく護衛艦いずも型はヘリコプター運用能力を重視した全通飛行甲板型護衛艦に当たり、横須賀基地へ配備されるもようで、二番艦も今夏進水式を迎えます。

 式典は、横須賀地方総監井上力海将が執行責任者となり、海上幕僚監部代表海上幕僚長武居智久海将と装備施設本部長山内正和出席の下、ジャパンマリンユナイテッド横浜事業所磯子工場にて3月25日、1030から1035時に引渡式、1035時から1140時まで自衛艦旗授与式を行い、祝賀会食などを挟み1345時より1405時まで出港見送りが行われます。一般公開は行われませんが、磯子海釣り施設などから式典を見る事が出来るでしょう。

 いずも就役と同時に舞鶴ではヘリコプター搭載護衛艦しらね除籍行事が行われると報じられており、ヘリコプター搭載護衛艦の艦砲を搭載する従来型ヘリコプター搭載護衛艦は、くらま、一隻となり全通飛行甲板型護衛艦への世代交代が進むと共に、新護衛艦いずも、へは厳しさを増す国際情勢への任務完遂が求められます。

北大路機関:はるな
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ヘリコプター搭載護衛艦くらま以下8隻、練習艦隊近海練習航海部隊・外洋練習航海部隊21日江田島出港

2015-03-18 23:46:20 | 海上自衛隊 催事
◆練習艦隊江田島
 来たる3月21日、江田島幹部候補生学校より練習艦隊近海練習航海部隊及び外洋練習航海部隊が出港します。

 くらま、以下8隻が出港するという今年度は近年最大規模の練習艦隊の陣容で、練習艦隊司令官中畑康樹海将補が指揮をとり、近海練習航海部隊は第65期一般幹部候補生課程修了者を含む1070名、が参加し、続く遠洋航海へ向け日本の主要港を廻り初級幹部に必要な修養を積むというもの。

 同日外洋練習航海が同時に出港しまして、第67期飛行幹部候補生課程修了者を含む400名が参加、第12護衛隊司令杉本雅春1佐が指揮官となり、海外との交流及び初級幹部自衛官として必要な経験を艦隊行動と共に演練します、飛行幹部候補生なので遠洋航海には参加せず航空教育部隊へ向かいます。

 近海練習航海部隊参加艦は、ヘリコプター搭載護衛艦くらま、護衛艦やまぎり、練習艦かしま、練習艦しまゆき、練習艦しらゆき、練習艦せとゆき、以上六隻で例年よりも多くなっています。外洋練習航海部隊参加艦は護衛艦きりさめ、護衛艦あさゆき、以上二隻で計八隻が参加、うち五隻が並んで江田島を出港します。

 近海練習航海部隊の寄港先は以下の通り。3月21日の江田島発が、くらま、やまぎり、しまゆき。3月21日から3月22日に柱島沖くらま、やまぎり、しまゆき、しらゆき、せとゆき。3月23日より3月25日へ 神 戸くらま、やまぎり、しらゆき。阪神基地隊(しまゆき、せとゆき。3月26日より3月28日まで 高 知くらま、しらゆき、せとゆき。 3月27日と3月29日鹿児島やまぎり、しまゆき。 3月30日より4月1日佐世保くらま、やまぎり、しまゆき、しらゆき、せとゆき。

 4月 3日より4月 5日中城くらま、やまぎり、しらゆき、と、那覇しまゆき、せとゆき。 4月11日より4月13日八戸くらま、しらゆき、せとゆき。4月11日より4月13日函館やまぎり、しまゆき。4月14日より4月16日大湊くらま、やまぎり、しまゆき、しらゆき、せとゆき。4月19日より4月21日舞 鶴くらま、やまぎり、しらゆき、せとゆき。4月22日三机くらま、やまぎり、しらゆき、せとゆき。

 4月23日より5月5日呉かしま、しまゆき。4月25日より5月5日横須賀やまぎり。5月7日 鳥羽かしま、やまぎり、しまゆき。5月8日より5月10日(日) 横須賀かしま、やまぎり、しまゆき。 5月10日より5月21日 晴海かしま、やまぎり、しまゆき。予定は以上の通り。外洋練習航海部隊はインドネシアのジャカルタ、ベトナムのダナンへ向かいます。

 近海練習航海部隊は外洋練習航海部隊と併せ8隻が参加しますが、江田島発が、くらま、やまぎり、しまゆき、となっていますので、かしま、等は途中から合流、くらま、は三机に寄港したのち、かしま、へ旗艦を移すようで、遠洋航海は、かしま、中心に実施されるとのことなのでしょう。

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クリミア危機で核兵器準備、ロシアプーチン大統領が国営放送で当時の情勢を発言

2015-03-17 01:20:12 | 国際・政治
◆クリミア危機とウクライナ情勢
 ロシア国営放送が15日に放映したクリミア危機クリミア併合一周年番組”クリミア、祖国への道”において、ロシア軍はクリミア危機に際し、核兵器の準備を行っていたことをプーチン大統領が発言しました。

 クリミア危機はウクライナにおける親ロシア派のヤヌコーヴィッチ大統領が民主化暴動により首都を追われ、親欧米派による臨時政権が樹立したことを契機としたロシア黒海艦隊基地の位置するウクライナ領クリミア半島へのロシアによる編入に際し、クリミア半島へロシア軍部隊を派遣したことを認めたうえで、核兵器使用の準備を行っていた事を認めたかたちです。

 核攻撃は実行されなかったためその標的などは明らかにされていませんが、ロシア軍の核兵器は、クリミア半島の武力併合に際しNATO軍等が展開した場合へ策源地への限定核攻撃を行うことが想定されていたのでしょう。根拠として、NATOは1980年代より空中機動部隊と機甲部隊をデータリンクにより密接に協同し高速で機動するエアランドバトルを前提とした改編をおこなっているため、拠点となる策源地や空軍基地を叩く事でしか大規模戦闘に対応できない可能性があるためです。

 国営放送の”クリミア、祖国への道”では、欧米のウクライナ危機においてロシア軍が実際に行動したクリミア地域へ欧米が攻撃をお粉可能性は認識しており、世界的な規模での核兵器を全面的に使用する必要はないとの予測は行われていたものの、必要に応じ警戒態勢を即応体制に引き上げ核兵器使用準備を行える体制を構築するための必要性は認識しており、警戒態勢を段階強化したとのことです。

 核兵器が使用される状況を予測しますと、世界的な紛争へ展開することを避ける言及でしたのでドイツ本土などNATO加盟国領内への核攻撃は避け、使用する場合でも水爆等の戦略核兵器ではなく広島型原爆程度乃至それ以下の戦術核、使用される状況もクリミア半島へ展開したロシア軍部隊に対しNATO軍が大規模な攻撃を実施した場合の黒海海上へ支援展開するNATO海軍部隊か、ウクライナ領内における親ロシア派住民地域へ影響が限られる範囲内でのウクライナ領内へ進出したNATO軍部隊への使用、という方式が考えられたというところ。

 ロシア大統領が核攻撃の可能性を考えていた点に言及した点は、大きな意味があります。ウクライナ危機に際して核兵器の使用準備を行った点に言及すれば、核攻撃を前提として核恫喝を行ったことになりました、これは慎重にさけ、一年前のクリミア危機に際して核兵器使用の準備を行っていたという表現を採っていることは非常に大きな意味でして、核恫喝を現在進行形の事態に対し行うならば、安保理決議の対象となり、ロシアは常任理事国ではあるものの当事者として安保理での主導権を失う可能性がありました、しかし、懐古の形ならば核恫喝には直接的には当たりません。

 実際に核攻撃の準備を行っていたのか、これは兆候を示さなかった点で使用は思考の枠組みには入っていたものの、現実性は当時ほぼなかったのではないと考えます。こういますのも、核兵器は戦術核戦域核戦略核問わず政治的なものであり、運用を示唆することは非常に慎重に行わねばなりません、核兵器運用の最大の要とは実戦における高威力の爆弾というものでは決してなく、核抑止力の均衡が国際公序となっており平時における世界大戦規模の全面戦争を通常兵器に限定するものを含め抑止することと核兵器運用を示唆する事で核抑止均衡を国際公序としている以上使用させないという均衡を国際公序維持を言う観点から最大の共通利益とし、相手に最大限の譲歩を引き出す手段になるのですから。

 これは、核兵器を使用する以上、核兵器でなければ対応できない標的が存在しており、核兵器を使用することで失う国際関係における損益を核攻撃しないことで失う利益が上回亭る前提があります。そして譲歩を引き出す際には、核兵器の使用準備を行ていることを誇示することで、相手からの譲歩へ繋げる重要な要素となりますが、今回はこれが示されませんでした。反論に、クリミア危機へNATO軍が大規模部隊を派遣しなかったことはロシア軍の核兵器使用兆候を受けてのものであったのではないか、という視点ですが、そもそもNATO理事会がNATO加盟国でもなくNATO域外にあたるウクライナ領内へ部隊を派遣する方針を定めていませんでしたので、後日談として示した方にこそ意味があるのでしょう。

 しかし、この発言に意味が無かったのかと問われれば全くそうではありません、真逆です。前述の通り、核兵器を使用しないという国際公序があり、核兵器の使用兆候を示唆することで相手に最大限の譲歩を引き出すのが核抑止の均衡です、そしてロシアのプーチン大統領は、必要ならば当時核兵器を使う可能性があったことを示し、必然的に今後必要な状況があるならばロシアは核兵器を使用する、と明示したことに他なりませんので、今後のウクライナ情勢、ロシアとしては東部ウクライナ情勢を注視し、ソビエト連邦時代の国内に当たり衛星国であったウクライナが欧米よりの路線を展開しつづけ、ロシア南部へ新しいNATO加盟国を構築するような動きがあれば、軍事行動は辞さないし、その際に妨害を受けた場合には核兵器の使用を選択肢に含むのだ、と発言したわけでもある、というかたち。

 核兵器は使うことを示唆させることで最大限の譲歩を、とは、クリミア危機において核兵器を使う可能性の有無は別として使う可能性があると示したことで、必然的に現在ロシアが中止している東部ウクライナ情勢へもNATOの対応如何によっては核兵器を、と使用を示唆することで抑制する、つまり東部ウクライナ情勢を念頭にクリミア危機時にしようを検討していたとの発言を以て、NATOへの抑制を強いたといえるでしょう。一方で、これは形而的に受け取れば、ロシアは全面戦争以外の限定戦争に際しても核兵器使用を念頭とした運用体系を採っていることを示唆したわけでもあり、ロシアが隣国に当たる我が国としても将来的に核恫喝を受ける可能性を間接的に示唆されたともいえるもの。

 我が国北方には大きな脅威が再度出現しつつある兆候であり、北方の隣国に対して非常に慎重な立場と外交を継続し続けなければならない事を今回の発言は示唆しています。他方、一種の核恫喝ではありますが、これによりNATOを中心とした欧米諸国が次に発生するであろう危機、現在も継続中である東部ウクライナ情勢への対応を誤らぬよう、必要な措置を継続する事、更に必要ならば軍事力の投射を覚悟し、核恫喝への備えと抑止力の均衡維持へ注力することが求められます。

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対領空侵犯措置任務と増大する緊急発進へ、量的強化の必要性Ⅲ 欧州機の持つ新しい能力

2015-03-16 21:47:54 | 防衛・安全保障
◆JAS-39戦闘機
 F-16の利点と欠点を提示しましたが、今回からは数回に分けJAS-39について、航空自衛隊のF-15の写真と共に。

 JAS-39の利点について、JAS-39はスウェーデン空軍が自国向けに開発した軽量戦闘機で、制空攻撃偵察の各任務に対応する機能を有することから戦闘機は従来Jと記載していた機種をJAS,としましたものです。限られた兵站支援で運用可能で戦闘行動半径や搭載能力は機体規模が小型である通り大きくはありませんが、比較的安価だ、というもの。

 JAS-39は原型のJAS-39A/B,そして電子装置を改良しA型から回収が可能なJAS-39C,開発中でブラジル空軍が採用することを検討しつつ開発国のスウェーデン空軍では採用されない方針なのですがJAS-39E/F,所謂グリペンNGというものがあります、最新型に当たる機体で現在国際市場に提示中です。

 本稿はJAS-39E/FとJAS-39C、このあたりは項目ごとに分ける事としましょう。リースなどの選択肢がありますが、この場合最新型のグリペンNGとJAS-39のC型等は費用が変わってきますし、長期的に運用するのか、応急的に採用するのか、このあたりで変わってきますから、ね。

 JAS-39の運用は、主要空軍基地を基点とした航空戦闘が主要空軍基地の弾道ミサイル攻撃や爆撃により無力化される可能性が付きまとう中で、2~6機程度に分散して運用し、一か所に固まる事で一挙に撃破される可能性を抑えた点が特色です。弾道ミサイル15発で基地機能は喪失するといいますから、分散の利点は大きい。

 従来運用していたJ-37戦闘機もこの点を重視し400m級の高速道路を臨時飛行場として運用できる特色がありましたが、その分重量が大きくなりすぎたJ-37は補強道路で無ければ運用不能で、JAS-39はこの反省から滑走距離は多少長くなっても通常の道路で運用できるよう軽量化しました。

 ただ、我が国の場合には高速道路での運用は直線高速道路区画であり、高速道路標識や速度監視装置等に加え照明等が離発着に障害となる設備を有せず中央分離帯を可搬式として即座に移動させられるものとするなど条件がありまして、このあたり路面強度面での可否よりも制約要素として大きいかもしれません。

 さて、御承知の通り航空自衛隊のJAS-39に対する視点ですが、元々候補ではありませんでした。しかしこれには日本固有の事情がありまして、従来の航空自衛隊の戦闘機をそのまま1:1で置き換えるものでは無い特性を考えなければならないでしょう。まず航続距離が短いという点、これだけで大きな一つとなります。

 更に航空自衛隊は分散運用を元々考えていないという点、航空自衛隊はそもそも高速道路からの運用を前提としていない点、などなどJAS-39が候補になり得なかった理由は非常に多いのですが、しかし、これを従来の戦闘機の会いたいとしてJAS-39を考える場合と、別物の運用を行う戦闘機と異なる点を理解すべきでしょう。

 候補に挙がらない最たる理由は航空自衛隊の戦闘機数が防衛計画の大綱に上限が盛り込まれているため、軽量安価な航空機を採用したとしても高性能で高価な航空機を採用したとしても機数は変わらず高性能機を整備したほうが同じ機数ならば有利という点から、まったく想定に含まれていません。

 これを踏まえたうえで、今回の当方が示しました視点は、戦闘機が不足する状況が生じているという前提の上で、戦闘機数を増勢するという視点を供していますので、これまでの航空自衛隊戦闘機とは異なった視点から運用する、という幾つかの視点と共に提示しました、次回からはその詳細を列挙することとします。

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南太平洋バヌアツ共和国を巨大サイクロンが直撃 首都ポートビラ中心に被害甚大

2015-03-15 00:44:02 | 防災・災害派遣
◆サイクロン“パム”、瞬間最大風速85米
 CNN等が報じたところによると、超巨大サイクロンが南太平洋のバツアツ共和国を直撃、首都ポートビラ等で甚大な被害が出ているとのこと。

 現地時間13日0800時頃、南太平洋のバヌアツ共和国へ超巨大サイクロン“パム”が上陸し、瞬間最大風速85mという猛烈な突風により首都ポートビラは壊滅状態となり、オーストラリアの赤十字社等によれば、ポートビラ以外の被害状況は情報が途絶し不明だが、首都政府庁舎など多くが突風で倒壊しており、緊急の人道支援が必要な状態となっており、情報収集などを含め支援を求めていると報じられています。

 バヌアツ共和国は人口24万人、南にニューカレドニア、東にフィジー、西には慣れてオーストラリアという立地で、英連邦に加盟する独立国で国土の大半は800kmという広範囲に島々が分布する島嶼部国家で、環太平洋火山帯に位置し標高数百m級の火山が複数あり、火山性地震や噴火活動がたびたび観測されています。

 首都ポートビラ市が所在するエファテ島のほか、太平洋戦争中は豪州と米本土を結ぶ戦略上の要衝としてエスピリトサント島が活用され、有名なエロマンガ島もこの領土に含まれています。島嶼部国家であるため、島々の間の情報が途絶している現状では被害の全容はつかめません。

 今回の被害は既に数十名の死者が出ているとの報道がありますが、サイクロンの規模がハリケーンカテゴリ換算でカテゴリ5という最大規模のものとなっており、南半球でここ数年内に発生したサイクロンとしては最大のものとなり、アメリカハワイの太平洋合同台風警戒センターも規模予報を修正しているほど。

 住宅被害が大きく、多くの住民や公官庁が破壊されると共に避難所も破壊されているため、食料と飲料水などの緊急支援、住居などの資材と医療などの支援が迅速に求められている、報道は出始めたばかりであり現地からの情報はツイッターに限られる状況、今後情報の更なる収集が求められます。

 当初の想定以上の規模となり高潮と共に沿岸部を破壊すると同時に突風がかなりの建造物被害を出していることから、バヌアツ共和国だけでは対応できません。近傍にはフランス太平洋艦隊司令部の置かれる仏領ニューカレドニアやオーストラリア本土がありますが、バヌアツ政府からの要請があれば、我が国からも国際緊急援助隊が編制し派遣される可能性があります。

 空港設備の機能不随や沿岸部の被害に病院機能の喪失が想定されますので、海上自衛隊の輸送艦による沿岸部の救援と輸送機による人道物資緊急空輸等が求められるところです。しかし、距離があるため、空輸支援などと異なり艦艇による支援は時間を要し、この点被害状況を冷静に見てゆく必要があるでしょう。

 なお、来週18日に南極観測支援を終えて日本へ帰途に或る砕氷艦しらせ、がオーストラリアのフリーマントル港に入港しますので、仮に自衛隊が人道支援に当たる場合、こちらが転用される可能性もあります。砕氷艦は極地観測支援へ大きな物資輸送能力とヘリコプターによる空輸能力を有しており、病院設備も有しています。実際、立ちえば昨年のエアアジア旅客機墜落事故では、ソマリア沖海賊対処任務から帰途にあった護衛艦が捜索支援に当たりました。

 他方、サイクロンの規模はハリケーン換算でカテゴリ5から4に下がってはいますが、勢力は下がっているものの未だ大きく、バヌアツへの再上陸は現在の進路では心配がないとのことですが、負傷者救護や救援物資などが遅れた場合、更なる被害拡大が懸念されます。サイクロンは日曜日15日0800時の時点でニュージーランド北方へ南下しており、ニュージーランド東部沖を通過する可能性が生じているとのことです。

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対領空侵犯措置任務と増大する緊急発進へ、量的強化の必要性Ⅱ 機種に関する一考察

2015-03-14 21:53:08 | 防衛・安全保障
◆F-16CBlock32
 対領空侵犯措置任務と増大する緊急発進へ、量的強化の必要性、としまして3月8日に掲載しました話題ですが、機種を意図して曖昧としていました。

 この話題は、中国機の鹿児島県南部への異常な接近の爆発的増大とロシア機の北方における再活性化を背景とした緊急発進任務の増大へ、航空自衛隊戦闘機部隊が大きな負担を強いられており、仮に緊急発進へ自衛隊が対応出来ない状況が発生した場合、抑止力という戦争防止の重要な防衛上の機能が喪失してしまう可能性があり、応急的に何らかの施策が必要、として提示したもの。

 F-4,F-15,F-2とある中、航空自衛隊の主力であるF-15戦闘機は制空戦闘機、本来は長大な戦闘行動半径を活かして相手国へ進出し迎撃戦闘機全てを無力化することで航空優勢を奪う制空権確保のための戦闘機で、航空自衛隊は広大な日本列島、北海道稚内から沖縄与那国までの距離が欧州に照らせば北欧コペンハーゲンから北アフリカアルジェまでの距離に匹敵し、限られた戦闘機で広大な空域を防空するために採用されました。

 従って、有事の際には空中早期警戒管制機E-767の管制のもとでKC-767空中給油輸送機により滞空時間を延伸し、我が国への攻撃を実施する空軍の基地を射程に捉え遠距離から一方的に刈り取ってゆくことで無力化する運用が望ましいところではありますが、これは戦時の話であり、平時における運用体系にはこの方式はなじみません、そこで数の不足を補う航空機、という発想を提示しましたわけです。

 数的不足を補う航空機を必要としました訳ですが、応急的な運用を前提としますので、やはりここは既に既存の整備基盤とある程度整合性がとれるという意味で、F-2支援戦闘機の原型となりましたF-16C、F-16CBlock32の中古機を、NATOの余剰機や米州兵空軍の余剰機から取得する、という提案を示しています。他に考えられるのは、運用基盤の負担が小さく分散運用を前提としたJAS-39ですが、こちらは別の機会に。

 F-16、特にBlock32は旧式ではありますが後継のF-35がF-16と同数の調達が行われない方針であることから、運用期間は当面続き、最新のF-16E等の生産は続いていますので、維持部品生産と近代化改修が継続される事が期待でき、部品不足により飛行不能となるリスクと運用基盤の応用が利かないリスクをある程度回避できるでしょう。

 もちろん、F-2とF-16は基本的に別物の航空機であり、整備互換性は高くはありません、特にレーダーは本体規模から異なる完全な別物でありますので、F-2の整備ラインにF-16を持ち込むことはかなりのリスクがありますが、F-2と操縦系統や整備系統が共通する航空機はF/A-18Cやミラージュ2000等よりはF-16の方が近いことは確かです。

 加えてF-16であれば、F-16はF-15よりも米軍での運用数は圧倒的に多く、これは即ち米空軍の部品プールを利用できますので、有事の際に米軍からの整備部品の緊急支援を受ける際や、F-16操縦要員と整備要員を確保することで米軍からF-16を供給してもらい、日本が運用することも不可能ではありません。

 JAS-39,スウェーデン製のこの機種については否定的なご意見を出される方が多いのですが、JAS-39は、実はかなり理想的な航空機であり、もちろん難点も相当ある事は織り込みまして比較すべき提案です。こちらについては利点と欠点双方について、次回検証してみる事としましょう。

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平成二十六年度三月期 陸海空自衛隊主要行事実施詳報(2015.03.14-15)

2015-03-13 22:57:21 | 北大路機関 広報
◆自衛隊関連行事
冬将軍最後の冬季攻勢をかける中ではありますが皆様如何お過ごしでしょうか。

 今週末の自衛隊関連行事は野としまして小牧基地航空祭が行われます、小牧基地は県営名古屋空港と滑走路を共用し、名古屋市営地下鉄から名鉄小牧線に乗り換えることで手軽に足を運ぶことが出来る航空祭で、今年度最後の航空祭ではありますが、非常に足を運びやすい立地の航空祭です。

 小牧基地はC-130H輸送機とKC-767空中給油輸送機を運用し、救難教育隊がU-125とUH-60Jを運用しています。中々見どころが多そうな航空祭dすが、本年は更にブルーインパルスが参加することが決定しました、しかし、所謂大混雑する航空祭が増える中で小牧基地航空祭は比較的来場者が少なく、楽しめる航空祭となっています。


◆駐屯地祭・基地祭・航空祭
・3月15日:小牧基地航空祭・・・www.mod.go.jp/asdf/komaki/
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ロシア外務省、CFE:欧州通常戦力削減条約枠組みからの脱退を一方通告

2015-03-12 23:53:58 | 国際・政治
◆極東方面への緊張波及はあるか?
 ロシアが印象は3月10日、ロシアの欧州上戦力削減条約からの脱退を一方的に宣言した、とのこと。

 欧州通常戦力削減条約は1992年に東西冷戦の終結を受け、欧州とロシアが1975年からのヘルシンキ会議に基づく相互信頼醸成措置の枠組みを発展させる形で成立したウラル以西の全欧地域における通常兵器の配備全体量へ上限を設けた具体的な軍備管理枠組みです。

 全体としてはロシア側に不利な内容ではありましたがソ連崩壊に伴う経済混乱と共に、ウラル以西の兵器配備を前提としていたため、通常戦力を旧式兵器縮小により数値を満たすと共にウラル以東へ移転する措置を採ったものがあり、結果的に極東地域の兵力不均衡の要因となる可能性が指摘されてきました。

 欧州における通常戦力を削減、これも各種装備を明確に定義づけ縮小する合意が冷戦終結後に合意に至り妥結したことは東西冷戦終結の象徴的な事例として多くの外交研究や合意形成論にレジーム論などの研究対象となってきましたが、今回のロシア離脱により実質的に崩壊へ移行していることとなります。

 ロシアだ隊の要員はウクライナ問題に端を発する欧州とロシアの相互不信の増大であり、ロシア軍の行動活性化と、NATOが新たに緊急対応部隊の新編及び待機部隊の能力向上などの施策を提示したことで、現時点で直接の摩擦は経済制裁の分野にありますが、軍事的緊張が高まる状況を反映しての事でしょう。

 ウラル以西の、という地域的枠組みではありますが、ウラル以東、極東地域への影響は短期的に見た場合通常戦力の増減などが顕著に昌二我が国防衛と安全保障に影響することは少ないかもしれませんが、欧州とロシアの関係悪化は、価値観を共有するステイクホルダーとして欧州との関係を重視する我が国とロシアの関係にも影響を及ぼす事は必至です。

 一方で、欧州通常戦力削減条約は、戦車など各種装備に定義を明確に示しましたが戦車や装甲車に火砲などの世代差による性能の差異は盛り込まれておらず、特にソ連崩壊後の恐慌状態が長く継続したロシアは通常戦力の近代化が大きく遅れており、最新鋭装備を近代化し数的削減に対し質的向上を果たした欧州との差異は大きくなったという背景はあるやもしれません。

 近年は資源輸出などにより経済的成長を取り戻しつつあるロシアは通常戦力の近代化を冷戦後の遅れを取り戻すよう進めてはいますが、全大漁が大きすぎるため近代化の割合は低く、資源価格の暴落と経済制裁により思う通りの進展を将来的に維持できるかは不確定要素を含むようになってきました。

 背景には欧州とロシアの相互不信がある事は確かなのですが、通常戦力削減条約の戦力削減枠組みを、装備品の世代による戦力均衡を期したものへ発展させなかった不作為もあります。一方でこの枠組みは一種シナジー効果をもたらす象徴的な相互理解の多国間関係でもあったため、ロシア脱退宣言の衝撃は非常に大きいと言えるでしょう。

北大路機関:はるな
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