北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

護衛艦FRAM近代化改修と艦隊維持【09】カナダ海軍イロコイ級とオーストラリア海軍アンザック級

2017-01-21 21:54:00 | 先端軍事テクノロジー
■FRAM,諸外国の事例
 護衛艦FRAM近代化改修について、わが国事例を中心に概略を示してきましたが、此処で諸外国の事例を視てみる事としましょう。

 はるな型ヘリコプター搭載護衛艦は、しらね型ヘリコプター搭載護衛艦とFRAM工事を行う事で同等のシステム艦へ改修する事により、航空中枢艦から護衛隊群旗艦という、任務の発展へ対応する事が出来ました、はるな、は1986年3月31日に三菱造船長崎造船所に入り1987年6月23日に公試へ、2年間の工事により8年の艦齢延長にもつながりました。

 FRAMの膨大な費用と期間は、任務変更という能力必要水準の大幅な転換に際して実施する際に費用対効果の面で改修せずとの選択肢を超えられるのかもしれません、こうした面から各国の近代化改修、大規模な改修の実例を視てゆきますと、単純に能力が陳腐化した事からFRAM工事を行うのではなく、水上戦闘艦が設計当時想定しない任務付与がある。

 オーストラリア海軍は、アンザック級フリゲイトへ艦隊防空能力を持つCEAFAR 多目的レーダーの改修事業を2017年までに完了する方針です、アンザック、アランタ、ウォーラムンガ、スチュアート、パラマッタ、バララート、トゥーンバ、パース、全てに対し、上部構造物中央部に巨大なCEAFAR 多目的レーダーの塔型マスト追加工事が行われています。

 アンザック級フリゲイトは主任務が排他的経済水域の哨戒任務とされていたため、元々艦隊防空任務等は想定されていませんでした、しかし、オーストラリア海軍を取り巻く安全保障環境が中国海軍の急激な海洋進出という不確定要素、最大の交易地域である東南アジア東アジア地域、南シナ海を通る為、任務と任務範囲の拡大が見込まれた為の改修です。

 カナダ海軍はイロコイ級ヘリコプター駆逐艦をミサイル駆逐艦へ改造しています、シーキング対潜ヘリコプターを搭載し、その設計思想は護衛艦はるな建造に際しても参考となる点があったようですが、一方でカナダ海軍が担当する北大西洋航路へ1980年代に入りソ連のTu-22M超音速ミサイル爆撃機による脅威が顕在化すると、防空能力が求められます。

 イロコイ級ミサイル駆逐艦への改修において5インチ単装砲とシースパロー短SAM発射機を撤去し、新たに29基分のMk41VLSを搭載、艦砲は小型の3インチ単装砲を搭載しました、シーキングヘリコプター2機の搭載能力は維持、種別のみDDHからDDGへと転換され、イロコイ、ヒューロン、アサバスカン、アルゴンキン、新しい任務へ対応しました。

 アメリカ海軍のスプルーアンス級駆逐艦もFRAM工事により能力を大きく向上させた一例で、満載排水量8040tの大型艦は就役当時、非常に軽武装であったことがソ連駆逐艦のミサイル重装備に対し不利であると批判されましたが、ABL搭載改修としてトマホークミサイル運用能力を獲得、対地攻撃能力が重視される沿海域作戦増大やフロムザシー戦略への転換を想定し、61基のMk41VLSを搭載、強力な巡航ミサイル母艦へ発展しています。

 水上戦闘艦の近代化改修は費用と時間を要するのですが、任務が大きく転換する場合、航空中枢艦からシステム中枢艦へ、哨戒任務から艦隊戦闘任務へ、ヘリコプター駆逐艦から艦隊防空任務へ、シーレーン防衛から対地攻撃任務へ、本来は新造しなければ任務へ対応できない状況へ、新造以外で対応するための施策に、時間と費用を掛けてのFRAM改修という選択肢が示されるのでしょう。

北大路機関:はるな くらま
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トランプ新大統領の外交国防戦略【07】 国防国務両長官の現実路線とトランプ氏発言の不一致

2017-01-20 19:41:00 | 国際・政治
■トランプ新大統領間もなく就任
 日本時間であと五時間後に迫るトランプ氏の新大統領就任、稀代のポピュリストとして名を残すか、偉大な変革者となるのか、オバマ大統領は最後の記者会見においてこの点を記者に問われ、アメリカ国民の選択を信じる、と発言しました。

 トランプ氏の掲げるアメリカ第一主義は、わが国はじめアメリカの価値観を共有する諸国からは決して危惧するものではありませんが、アメリカ第一主義を掲げ結果論としてアメリカ弱体化を招くことは困ります。トランプ新大統領の選挙戦時代発言から内向きの国防外交戦略が採られる懸念がありましたが、新国務長官と新国防長官の南シナ海と対ロ政策は現実路線に依拠していました、しかし、大統領方針とは不一致となります。

 ティラーソン次期国務長官、中国の南シナ海政策を痛烈に批判し強硬姿勢を示唆しました。海洋自由原則に基づく交易の自由こそがアメリカを含む世界の経済的発展に不可欠、建国以来の国是で、海洋自由原則の堅持、トランプ新政権の対中政策や対外軍事政策が曖昧だった事から、中国が進める南シナ海人口島建設や西太平洋排他水域化など南シナ海政策への対応が消極化するのではないかとの危惧がありました。

 中国の人工島建設は認めない、レックスティラーソン新国務長官の上院外交委員会指名承認公聴会演説においての発言に対し、中国共産党機関紙人民日報系国際情報紙環球時報英語版は強く反発、アメリカが人工島を封鎖するのであれば大規模な戦争を覚悟するべき、と明示しました。海上封鎖は当然戦争行為ですので、ある意味当然の発言でもありますが。

 トランプ新政権の選挙当時の発言、在日米軍と在韓米軍引き上げの示唆から、西太平洋地域すべてのシーレーンを掌握し勢力下に置けるとの当初の目論見があっさり瓦解しました。外国国防政策では不確定要素は懸念要素に他ならないのですが、オバマ政権時代から新しい対億関係としてハワイ以西の西太平洋を中国の勢力圏に置くよう主張していました中国は選挙時からの目論見が外れた形で、中国政府の混乱が窺えます。

 ジェームズマティス新国防長官も、上院国防委員会指名承認公聴会において西太平洋地域への関与度合いを強化する方策を示しました。強固な同盟国を持つ国は栄えそうでない国は衰える、こうした同盟国重視の発言とともに、中国の南シナ海における人工島に対して、国務省などとともに統合的な政策を練らなければならない、と強固な姿勢を示したかたち。

 マティス新国防長官は重ねて、第一の脅威をロシアとし、ロシアと協力できる分野が減る一方で向き合わなければならない分野が増えているという現実を認識しなければならない、と発言、NATOへの影響度の増大を示すとともに、国防力を、抑止力は決定的に重大な問題でありそのために強力な軍事力が必要だ、との近代化増進を示唆する発言も示しました。国際公序という基本的な価値観に温度差のあるロシアとの政策へ一線を引いた訳です。

 新政権の方針、アジア人口は30億を超え、この地域の成長へアメリカがどのようにコミットするのかが関心事であり、仮にアメリカのポテンシャルが後退すれば、後退した部分を新しい国家アクターが進出する事はオバマ政権時代の中東政策が如実に示していました、新政権の外務防衛閣僚からの一連の発言は、大統領選挙後の重要な方針の明示といえます。

 国防力の増強に関してですが、もう一つの懸案となっていましたF-35について、トランプ氏からの製造費用見直しの要求を受け、ロッキードマーティン社はF-35製造費用の大幅な値下げを決断です、電装品を簡素化し、複合光学監視装置など幾つかの装備をオプションとする事で、費用縮減は可能とも考えられますが、多国間共同開発という実情があります。しかし、これが更なる開発計画の遅延や各国配備影響へと繋がらないとは言い切れず、不確定要素の一つといえましょう。

 アメリカだけの値下げに留まらず、日本を含め世界中へ供給されるF-35についても見直しが為される事となるでしょう、懸念は、性能へどの程度影響が生じるかについてですが、ステルスのみを優位性として考えた場合、他の各社が開発する航空機よりも制空戦闘での優位性は確実で、費用逓減、アメリカ四軍は既にかなりの数のF-35を契約しています一方、続く大量調達を加速化させる事に繋がるかもしれません。

北大路機関:はるな くらま
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平成二十八年度一月期 陸海空自衛隊主要行事実施詳報(2017.01.21/01.22)

2017-01-19 22:05:53 | 北大路機関 広報
■自衛隊関連行事
 F-35が遂に岩国へ到着し、トランプ新大統領就任間近で、重ねて次の寒波が本州へ広く降雪予報を告げる中、皆様いかがお過ごしでしょうか。

 ロシア海軍駆逐艦アドミラルトリブツ舞鶴入港です。過去には太平洋艦隊旗艦ミサイル巡洋艦ワリァーグも舞鶴へ親善訪問しました、今回は駆逐艦アドミラルトリブツと補給艦ボリスブトマが舞鶴を親善訪問、アドミラルトリブツはウダロイ級駆逐艦の一隻、舞鶴基地へは2013年にアドミラルヴィノグラードフ、2012年にアドミラルパンテレーエフが入港し一般公開されました。

 アドミラルトリブツは舞鶴基地北吸桟橋にて21日土曜日1300時から1500時まで上甲板の一般公開が予定されています。入港は明日20日、月曜日23日に出港予定です、冷戦時代のソ連艦らしくAK-100単装砲背負い式にSS-N-14/RPK-3対潜ミサイルやRBU-6000対潜ロケット等々武装は針鼠、積雪時一般公開見合わせとの事ですが一見の価値ありです。

 ウダロイ級駆逐艦は1155型大型対潜艦として建造した水上戦闘艦で満載排水量8400tと大きく、ヘリコプター2機等を搭載しています。しらね型護衛艦、こんごう型護衛艦の中間程度の大きさ、太平洋艦隊へは現在4隻が配備されており、後はマルシャルシャポシニコフが入港すれば太平洋艦隊のウダロイ級駆逐艦が全て入港した事にもなる。ウクライナ内戦介入を契機とし米ロ関係緊迫化以来、久々の日本寄港です。舞鶴は日本海側、天候がどうなるか、ですね。

 さて、撮影の話題。自衛隊関連行事へ向かう際に、シャトルバス行列というものは、待ち時間に新しい同好の志との交流が深まり、それほど思い返せばつらい時間では無かったなあ、と思う事もあるのですが、それでも早く目的地に行く、若しくは早く帰宅したい、という願いが、特にバスを待って行列がなかなか進まない時など、どうしても思ってしまうことも確かでしょう。

 路線バスを如何に活用するのか、自衛隊前バス停、というようなバス停名称ではなくとも駐屯地や艦艇基地及び航空基地等は近傍にバス停があり、路線バスにより結ばれているところが多く、この場所と時刻表を予め覚えておくことで、シャトルバス待ちの行列では無く移動の自由度が高まりますし、公共交通機関により素早い快適な移動に繋がるものです。

 路線バスの旅、という人気テレビシリーズがありますが、考えさせられるのは過疎地でのバス路線の不採算化により路線廃止など、移動が出来なくなってしまうという厳しい状況です。そこで、乗って残そうバス路線、ではありませんが、自衛隊行事の際に一時的であっても一往復乗車数を増やす事は、ささやかな地元貢献にも、なるのかもしれません、ね。

■駐屯地祭・基地祭・航空祭
・1月21日:舞鶴基地ロシア海軍駆逐艦アドミラルトリブツ一般公開…http://www.mod.go.jp/msdf/maizuru/

■注意:本情報は私的に情報収集したものであり、北大路機関が実施を保証するものではなく、同時に全行事を網羅したものではない、更に実施や雨天中止情報などについては付記した各基地・駐屯地広報の方に自己責任において確認願いたい。情報には正確を期するが、以上に掲載された情報は天候、及び災害等各種情勢変化により変更される可能性がある。北大路機関
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【京都発幕間旅情】栗林公園,四国紫雲山見上げる大名庭園は高松松平家・生駒家百年の夢

2017-01-18 21:14:13 | 旅行記
■栗林公園 紅葉彩る百年の夢
 栗林公園、四国高松の大名庭園で、この地を治めた高松松平家と生駒家が実に百年以上を費やし造営した、百年の夢というべき風情を今に伝えます。

 栗林公園、水戸偕楽園に金沢兼六園そして岡山後楽園、日本三名園として名高い庭園で、岡山後楽園は岡山城天守閣に隣接し威容と精緻な日本庭園様式美を、金沢兼六園の金沢城に続く池群の流れに感動を覚えるのですが、明治期には栗林公園がより良い庭園とされた。

 高松と云えば高松城、即ち玉藻城だろう、とは当方の主観ですが聞けば一度栗林公園へ足を運んでみるべきとのお話をとある御仁より賜り、ヘリコプター搭載護衛艦くらま高松入港の折、久々に足を運んだ高松にて入港撮影後、琴平電鉄に乗車し足を運んだ次第です。

 香川には金刀比羅宮という航海の神様が瀬戸内と広く太平洋を見守っていますが、しかし金刀比羅宮、大物主命を祀り是非とも足を運びたいところでしたが、何分電車で移動しますとかなりの所要時間を要し、くらま撮影を考えますと、冬の昼過ぎに金刀比羅宮は遠い。

 海上自衛隊と金刀比羅宮の所縁は深く、海洋の守り神として海上自衛隊創設前夜の朝鮮戦争海上保安庁航路啓開隊の機雷掃海任務に際しても参拝を受け、毎年金刀比羅宮では海上自衛隊掃海慰霊祭が執り行われています。しかし、その御縁と言いますと旧海軍から続く。

 瀬戸内海から金刀比羅宮へ参詣に行く事が出来ない艦船がその昔、樽にお金と届け先を記して瀬戸内海に浮かべておくと、漁船が拾って金刀比羅宮に届けてくれまして、そして金刀比羅宮の御札が船の母港に届く、という風習があり、軍艦などもお願いしていたという。

 金刀比羅宮と軍艦の関係を海上自衛隊草創期に聞いた乗員が試しにやってみたところ、実際に基地へ御札が届いたとのことです。こうした御縁もありまして、金刀比羅宮には掃海母艦はやせ主錨が除籍と共に奉納されていまして、今度こそ参拝に行きたいものですね。

 四国高松、栗林公園はこの四国の大都市高松に位置する大名庭園です。大名庭園、というのは江戸時代、大名の最大の娯楽として庭園造営があり、敢えて華美荘厳を排し、我が国土の風土風情を彷彿させる回遊式庭園が、全国へ造営されていますが栗林公園もその一つ。

 紫雲山、この山は石清尾山を頂点とする石清尾山塊の北限に位置する標高僅か170mの小山ですが、美しい稜線と緑湛える山容がこの地に人が住み始めた頃からの崇敬を集め、石清尾山麓には縣社石清尾八幡宮も建立されています、栗林公園もその麓に造営されました。

 元亀年間、即ち16世紀に地方豪族佐藤志摩介道益が紫雲山麓に別邸を建設した事が、この栗林公園の始りと云われています、讃岐国国主生駒高俊により別邸には庭園が設けられ、そして江戸時代に入り高松藩12万石が定められると大名庭園としての風格を強めました。

 生駒氏は領民に慕われたものの、江戸城普請への費用ねん出に執った山林伐採が家臣家老の不和を生み、刃傷沙汰に及ぶに至るのを抑える事が出来ず、併せて若殿の倒錯が重なり幕府に裁定を委ねるに至った生駒騒動が発生、生駒氏は遠く山陰へ転封されてしまいます。

 水戸藩より松平頼重が入封しますと、しかし、この造園造営は受け継がれまして、高松松平家により永らく巨石や水流の配置など継続、実に百余年もの歳月を投じて第5代藩主松平頼恭治世下、ようやく完成を視ました、こうした事もあり栗林公園は実に広大そのもの。

 栗林公園、広い敷地には桜に菖蒲と萩に梅、四季折々の花々が彩り、飛来峰からの俯瞰風景、木々と偃月橋の佇まい、芙蓉峰の起伏、庭園池には千秋丸が湖上遊覧へ優雅に進み、撫でる様に散策しても数刻を要するほど、日本庭園の奥深さを楽しむことが出来ます。

北大路機関:はるな くらま
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装輪装甲車(改)防衛装備庁納入!統合機動防衛力整備期する96式装輪装甲車後継装備の誕生

2017-01-17 21:41:03 | 先端軍事テクノロジー
■平成30年度制式化目指す
 装輪装甲車(改)が防衛装備庁へ納入されました、今後は評価試験が行われ、来年度平成30年度に18式装輪装甲車として、制式化を目指します。

 防衛装備庁は1月10日、小松製作所より装輪装甲車(改)の納入を受けました。“装輪装甲車(改)は、陸上自衛隊の現有96式装輪装甲車の後継として、国際平和協力活動、島しょ部侵攻対処等に伴う各種脅威に対応するため、防護力の向上を図った装輪装甲車(改)を開発しました”と発表しています。標準型と通信支援型及び施設支援型が開発されています。

 この装備は平成26年度防衛予算において開発が盛り込まれた装輪装甲車(改)の試作型に当たり、防衛装備庁では平成30年度、つまり来年度までに各種試験を完了し18式装輪装甲車として制式化が見込まれています。現在防衛装備庁では12.7mm重機関銃などを搭載する遠隔操作銃搭RWSが開発中で、限定的乗車戦闘能力を持つ新装甲車となるのでしょう。

 装輪装甲車(改)全長は約8.4mで全幅約2.5mと全高約2.9mで乗員定数は11名で重量約20t、従来型の96式装輪装甲車が全長6.84mで全幅2.48mと全高1.85mで乗員定数は12名で重量約14.5t、装輪装甲車(改)と96式装輪装甲車を比較しますと二回り大きく、全高などは実に1m以上高くなっていまして、より大型の89式装甲戦闘車と比較しても40cm程高い。

 高い車高の意味する点は何か。自衛隊では従来、専守防衛政策を堅持し自国国土を戦場として着上陸を迎え撃つ観点から、戦闘車両は車高を最小限度として被発見性を最小限とする設計が採られたものの、島嶼部防衛では6800の島々全てに部隊を配置できず、国際平和維持活動対応も含め、地雷脅威へ対応すべく車高増加を代償として車体底部をV字形状とし、防御能力を高めた為でしょう。

 96式装輪装甲車は中央即応集団中央即応連隊に北部方面隊全ての普通科連隊へ装甲中隊が置かれている他、施設大隊や通信大隊へ配備、全国の戦車大隊本部や後方支援連隊整備大隊戦車直接支援小隊等へ389両が配備されていますが、統合機動防衛力整備に伴い全国の方面隊へ装甲中隊3個を持つ即応機動連隊を新編する事となっており、現状では装甲車の数が足りません。

 82式指揮通信車も232両が量産されましたが、この後継も必要となりました。この連隊本部や特科中隊へ配備される指揮官通信用装甲車の老朽化が進んでおり、装輪装甲車(改)はこの二車種の後継として621両と増強される即応機動連隊所要の150両程度を含めた770両が量産されるものと考えられます。標準型と通信支援型及び施設支援型はモジュールを積み替える事で生産が可能のようです。

 小松製作所が主契約企業となり開発されました装輪装甲車(改)は、既に運用が開始されていますNBC偵察車と車体部分を共通化させていまして、NBC偵察車の諸元を視ますと全長は8.0mで全幅2.5mと全高3.2mで重量20t、車体規模がほぼ同程度であると共に車高を抑えています。車体部分の共通性は車輪など足回りからも形状共通性が確認できましょう。

NBC偵察車とともに装輪装甲車(改)は96式装輪装甲車と82式指揮通信車を担い、陸上自衛隊の装甲車体系を大きく転換させるものとなるかもしれません。96式装輪装甲車は通信中継装置や地雷原処理装置を搭載し運用してていましたが車体規模の限界から派生型開発に限界があり、制式化から20年以上を経て、改めて大型の新型装甲車両を開発したかたち。

 三菱重工では16式機動戦闘車の車体部分を流用し、現在、耐爆車両MRAPを試作中であると共に、機動戦闘車の高度な車体制御技術を利用し、近接戦闘車を検討中です。これは89式装甲戦闘車と87式偵察警戒車、及び87式自走高射機関砲の後継車両を目指すもので、200両が生産される16式機動戦闘車車体部分との共通化により取得費用低減を目指すもの。

 装輪装甲車(改)と16式機動戦闘車派生型ですが、何故車体部分を共通化しないのか、という素朴な疑問が湧くかもしれません。しかし、理由は簡単で装輪装甲車(改)は懸架装置等駆動部分と足回りが大口径機関砲等の強烈な反動へ対応する設計よりも、取得費用の低減を期した設計を採っている為、反動面から車体部分が共通化出来ないという理由があります。

 自衛隊ではよく似た車両ながら車体部分を共通化しなかった事例として、73式装甲車と73式牽引車がありまして、これがそのまま、89式装甲戦闘車派生型と73式牽引車派生型となります。89式装甲戦闘車、生産数が当初計画の350両よりも大幅に縮小されましたが、派生型として99式自走榴弾砲が開発され、車体部分を可能な範囲ですが共通化しています。

 73式牽引車は155mmカノン砲等の牽引用として開発されましたが、5tトラック派生の中砲牽引車で牽引可能なFH-70へ火砲換装と共に役目を終え、しかし、汎用性に優れ製造費用も安かった事から、76式対砲レーダ装置、87式砲側弾薬車、92式地雷原処理車、96式自走迫撃砲、99式弾薬車、施設作業車、等派生型が開発、高級版と廉価版を区分しました。

 近接戦闘車は、装輪装甲車として16式機動戦闘車の車体部分を応用し開発される方針で、新開発の40mmCTA機関砲乃至50mmCTA機関砲を搭載し、装甲戦闘車型として後部を人員室とするもの、そして後部人員区画を転用し電子光学複合監視装置を搭載する伸縮式マストを搭載した偵察警戒車型が検討され、更にレーダー等を搭載する自走高射機関砲型も。

 89式装甲戦闘車は防衛計画の大綱に示される機甲師団所要として最低でも6個中隊分90両の所要数があると共に、87式偵察警戒車も全国の偵察隊所要として90両が必要です、更に自走高射機関砲は機甲師団所要等40両は必要であり、16式機動戦闘車は200両が生産されることから派生型と併せ420両となり、大量生産の量産効果等が期待できるでしょう。

 87式自走高射機関砲後継は、元々150両が生産予定であった87式自走高射機関砲を置き換えると共に、近年は機関砲の瞬発交戦能力や近接信管破片効果が小型無人機やステルス機への対処能力が再評価され、93式近距離地対空誘導弾の後継へ機関砲の採用可能性があり、スウェーデンのCV-90のような装甲戦闘車転用自走高射機関砲開発の可能性があります。

 ただ、近接戦闘車の開発計画は構成要素の研究がひと段落した時点で一旦棚上げとなっています。中断したままではありますが、偵察警戒車は現在、軽装甲機動車改良型の軽偵察車研究等が為されていますが、高射火器や装甲戦闘車後継所要がありますので、現在のところ喫緊の課題である即応機動連隊所要の装甲車を優先すると共に、16式機動戦闘車量産の進展と共に開発再開が行われるのでしょう。

北大路機関:はるな くらま
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トランプ新大統領の外交国防戦略【06】 長期視野無き国防観,突如浮上F-35見直しの危うい発言

2017-01-16 22:50:46 | 国際・政治
■次の標的は“統合打撃戦闘機”
 トランプ氏、ボーイングにF18戦闘機のコスト算定要請 F35対抗機、との報道です。この発言を受け、製造費用見直しなど、大きな混乱が生じました。長期的な政策を近視眼的に見直しては、かえって長い目で見れば高い費用が掛かる事を忘れてはなりません。

 これはアメリカの通常戦力による優位とこれに依拠する核戦力の優位性を揺るがす可能性があります。トランプ氏、F-35の開発費高騰に嫌気をさし、F/A-18E改良型に注目しているようです。これはF/A-18E改良型としてステルス性を向上させた新型機を開発しており、トランプ氏はこのコスト計算を要請したものでしょう。ボーイング社によりばF/A-18Eよりも遥かにステルス性などが向上しF-16程度の費用に抑えられる新型機となります。

 ただ、F/A-18Hとなるのでしょう新型機はステルス性強化へ機体制御システムなどを再設計する必要があり、コスト高騰の可能性を秘めています。もともとF-16程度の費用となる見通しであったF-35のように安易に新型を検討する事は逆に混乱を兼ねきかねません。ロッキードマーティンはこのほど、F-35戦闘機の新規契約分より契約価格を大きく縮減する方針を明示しましたが、これにより生じる影響は未知数です。

 トランプ氏、F35の巨額費用を批判し削減を宣言、との報道。次の標的は“統合打撃戦闘機”、というところでしょうか。トランプ次期大統領によるF-35開発費高騰の批判は繰り返し行われているものですが、もともとAV-8とF-16にF/A-18、F-117を置き換える野心的な計画なのですから無理は開発開始の時点から認識されていました、開発期間の延長と共に部分的にEA-6の後継機を担うねらい、F-22の製造費用削減を受ける分さらに高性能化を期してF-15Cの後継も含み、高騰したもの。

 仮にF-35を中止しますと、これがアメリカ海空軍と海兵隊を支えた幾つもの機種という柱を一本の大きな大黒柱で支える構想がご破算となるのですから、新しい機種を幾つも、そして大黒柱によりかかる新型機も再設計する莫大な費用が生じる、トランプ氏が示すようなF/A-18改良型を基本とし、アメリカ級揚陸艦に搭載可能な垂直離着陸攻撃機、F-22生産再開による制空戦闘機維持、EA-18海空軍採用、F-117を受け継ぐ開発中止のFB-22等ステルス攻撃機、別々に開発し量産する必要性が出る。

 F-35開発中止示唆に対し、ロッキードマーチン社のマリリンヒューソン最高経営責任者は製造費の縮小を約束しました。F-16-79のような開発当時まだ高価であったF-16Aへ旧式のF-4戦闘機要J-79エンジンを搭載した廉価版を開発、純粋にF-35も空対空戦闘に特化した廉価なレーダーに切り替え、エンジンをF-119の単発に置、更にEO-DAS複合光学装置等をオプション扱いとすれば、かなり費用が削減可能です、性能は著しく下がりますが、F-35を単純にF-16のステルス型後継機、としか認識しないのであれば充分でしょう。

 F/A-18Hといっても簡単ではありません。F/A-18改良型を推すトランプ次期大統領の発言は一部政治的なものが含まれます。現在生産型のF/A-18Eを量産するのはボーイングセントルイス工場ですが、ボーイングセントルイス工場はこのままF/A-18Eの受注が無ければ2018年に生産ラインを閉じ、事実上セントルイス工場では生産する航空機が無くなり閉鎖される事となります。

 セントルイス工場の生産を維持するにはF/A-18Eか改良型の生産を継続する他ないのですが、海軍は必要なF/A-18Eを減耗予備も含め受領し若干数追加、電子戦型のEA-18Gも所要数全てを受領し、見込める輸出先への全ての輸出も完納が見えており、昨今、改めてF-35Cの製造遅れを理由としまして海軍向けのF/A-18E増産を決定し数年間猶予を得ているのですが、更に次の戦闘機計画が無い場合、工場閉鎖として長期的に次の量産計画への障害が及ぶ懸念が現実味を帯びてきました。

 しかし、この発言が市場に与える影響は無視できません。F-35は多国間共同開発計画であり、開発国は主開発国にアメリカとイギリス、部分開発国にオランダとイタリアが、部品開発国にカナダ、オーストラリア、ノルウェー、デンマーク、トルコ、が並ぶ。三菱重工は契約により三菱FACOとして日本国内へ最終組み立て施設を建設中ですし、下手をすれば雇用流失に繋がるとして三菱FACO自体の話も反故にされかねず、問題は重大です。

 そして、F-35は価格高騰と仕様変更により、これも開発計画が手直しで長期化した故の手直しが長期化を招く悪循環が要因なのですが、アメリカ空軍は1763機を調達しますが、他の開発国や導入国は650機を調達予定で、性能低下や生産数激減となれば出資金返還を求める国際訴訟へ発展する可能性があり、支払った場合、ロッキードマーティン社の資本力は軍事産業としては世界有数でも巨額過ぎ耐えられず倒産の懸念が生じます。

 アメリカ海空軍と海兵隊が将来戦闘機として多くの予算を投入し、同盟国の多くが関与したF-35、これを開発するロッキード社は、相次ぎ変更される技術仕様や要求仕様、更に費用縮減として開発中止に追い込まれた様々な予備技術により結果的に開発計画が延伸しています、ここまでコストが高騰したのは開発中の方針変更と開発費用削減の小手先の工夫が全部裏目に出た部分が大きく、一番損失が少ない事は計画通りに予算と開発や量産を変更せず継続する、遠回りに見えて唯一の近道なのかもしれません。

北大路機関:はるな くらま
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【日曜特集】第2師団創設63周年旭川駐屯地祭【3】特科・戦車部隊の観閲行進(2013-06-09)

2017-01-15 20:32:59 | 陸上自衛隊 駐屯地祭
■精鋭機甲部隊観閲行進
 第2師団創設63周年旭川駐屯地祭、日曜特集写真集第三回は特科部隊と機甲部隊の観閲行進と、飛行隊祝賀飛行、そしていよいよ開始される訓練展示模擬戦の模様を。

 大隊長乗車の82式指揮通信車率いる最新の99式自走榴弾砲。//第2師団は陸上自衛隊発足前の警察予備隊時代1950年に創設された第2管区隊まで起源を遡る事は出来ます、警察予備隊、朝鮮戦争を契機として日本進駐軍の国連軍転用を前に日本国土の防衛に充てる独自の警備部隊として、占領軍総司令部GHQが創設した組織です。

 第2特科連隊第3大隊、99式自走榴弾砲は40km以遠の目標を砲撃可能とされる。//第2管区隊はアメリカ陸軍の歩兵師団を参考とした編成です。管区隊は師団に当たる区分で、師団司令部に当たる管区隊の司令部は管区総監部、という呼称で呼ばれていました、師団とは一方面の独自作戦能力を付与する編制区分で、管区総監部という呼称は相応しい。

 52口径155mmの長砲身が勇ましい、特科大隊は10門、特科中隊は5門を装備する。//警察予備隊が保安隊に拡大改編された1952年、管区総監部は北日本全域を守る広大な警備管区を有していましたが、朝鮮戦争の拡大と共に東西冷戦構造が急速に形成され、第2管区隊は、警備隊発足と同時に創設された北部方面隊北部方面総監部の隷下に置かれました。

 第2特科連隊第5大隊第14中隊、全般支援委当たる第5大隊は隷下に4個中隊を持つ。//陸上自衛隊が発足した1954年、第2管区隊は隷下に第3普通科連隊、第9普通科連隊、第10普通科連隊、第2特科連隊、第2特車大隊、と徐々にその編成を強化してゆきます、旧陸軍との区別から歩兵は普通科、砲兵は特科、機甲兵は特車科、と改めての部隊編制です。

 第4大隊の75式自走榴弾砲、当時世界でも稀有な自動装填装置を持つ30口径155mm榴弾砲を装備している。//草創期の第2管区隊は隷下に第3普通科連隊と第9普通科連隊と第10普通科連隊、を有していましたが、お気づきでしょうか第3普通科連隊は現在も第2師団隷下ですが、第9普通科連隊は既になく、第10普通科連隊は札幌真駒内の第11旅団の隷下部隊となっている。

 75式自走榴弾砲は200門が生産され北部方面隊に広く配備されたが99式自走榴弾砲へ置き換えられ、この行事が自衛隊最後の参加となった。//普通科連隊も当時は単に連隊と呼称されていましたが、自衛隊草創期の普通科連隊は三個大隊編成で、戦車中隊等も隷下に置く混成団に近い重厚な編成を採用していました。アメリカ陸軍の歩兵連隊に相当する、草創期の連隊は現在の旅団並の規模を有していた訳です。

 第2戦車連隊の観閲行進、併せて第2飛行隊の祝賀飛行編隊が上空に見える。//第一次防衛力整備計画時代、自衛隊発足間もないころの普通科連隊は、第一普通科大隊、第二普通科大隊、第三普通科大隊、第四普通科大隊、重迫撃砲中隊、特車中隊、衛生中隊、以上実に15個中隊を隷下に有しまして、定数上は戦車22両と重迫撃砲12門を有していた。

 戦車連隊は5個中隊編成、最盛期は100両の戦車を装備した。//草創期の連隊は大きな編成であったのですが、警察予備隊が保安隊を経て陸上自衛隊に改編されると共に部隊数の増勢による全国への警備管区の配置、所謂、基盤的防衛力整備が求められ、草創期の連隊を構成する四個大隊が各々普通科連隊へ改編されていった訳です。

 90式戦車と74式戦車を装備する。//日本国土防衛を担う自衛隊は、草創期に管区隊と機械化混成団を基幹部隊としていました、元々は管区隊だけであったのですが機械化混成団は、アメリカ陸軍歩兵師団を原型として編成されていたのに対し、機械化混成団は機械化歩兵部隊を基幹とした小型旅団を目指す。

 荒井正芳連隊長乗車の90式戦車。//大型の普通科連隊は第3普通科連隊と第9普通科連隊と第10普通科連隊がありましたが、陸上自衛隊は第2管区隊から第10普通科連隊を独立させ、第7混成団を編成します。一方、第2管区隊は順次第25普通科連隊と第26普通科連隊を遠軽と留萌へ、隷下に置きました。

 120mm滑腔砲と複合装甲に1500馬力エンジンを備える90式戦車は、目標自動追尾装置や自走装填装置等様々な新機軸を備え現代でも世界第一級の戦車だ。//第7混成団は、第10普通科連隊が隷下に四個普通科大隊を置き、特科連隊は全般支援大隊と直接支援大隊に高射大隊を置く、その上で施設大隊と偵察中隊や通信中隊、後方支援部隊に当たる武器中隊と補給中隊に衛生中隊を置く編成で、後に第7師団と第11師団になる。

 基幹連隊指揮統制システムを採用する第2師団において、90式戦車は高いデータリンク能力を持ち、この搭載により2010年代でも世界第一線級を超える戦車として返り咲いた。//第2師団は、第2管区隊からの改編により誕生しました、師団という編成が自衛隊に導入されたのは1962年です。第25普通科連隊と第26普通科連隊の創設は、第3普通科連隊と第9普通科連隊の普通科大隊を基幹として創設、老舗の暖簾分けと表現できる方式です。

 戦車は通常単一目標しか対応できませんが90式戦車は車長用照準器と砲手用自動追尾装置の併用で二目標連続撃破という器用な戦闘が可能です。//普通科連隊は管区隊から師団への改編により小型化しました。これは、四個普通科大隊と重迫撃砲中隊に戦車大隊まで有していた部隊を大隊ごとに独立させ、四個大隊を三個連隊に暖簾分けしたのですから、ある意味規模の縮小は当然と云えたわけですが、もう一つ。

 第2飛行隊の編隊飛行、祝賀飛行が戦車に続く。//新しい普通科連隊は連隊の下に大隊を置かない編成を採った背景には、1950年代にアメリカ陸軍が導入したペントミック師団編成の影響があります、ペントミック師団編成、言い換えれば五単位編成師団となりますが、この編成は五個連隊戦闘団を基幹部隊としました。

 祝賀飛行編隊の広報には北部方面航空隊の対戦車ヘリコプター隊と方面ヘリコプター隊が帯広駐屯地と丘珠駐屯地から参加。//ペントミック師団は、編成部隊を小型化する事を主眼に部隊を事細かに細分化したのですが、これは当時、米軍師団が大規模な戦闘を展開する場合に核戦争が必至であると考えられ、その為には大型部隊を行動させる事は核攻撃の標的となり易く、分散させる目的から。

 観閲行進は祝賀飛行と共に堂々の終了、旭川飛行場へ着陸する祝賀飛行参加編隊。//五単位編成部隊は師団の規模がそのままに基幹部隊数を増加させるので、連隊の下に大隊を置かず、連隊の下に中隊を配置し、連隊長が多数の中隊を直接指揮する、という視点から導入されました、自衛隊はこの連隊の下に中隊を置く、との編成方式のみ導入しました。

 訓練展示状況開始、第2偵察隊の斥候小隊が駐屯地の一角へ敵部隊が浸透したとの情報を受け情報収集へ出動。//アメリカ陸軍ではペントミック師団編成は1960年代にはROAD師団編成に置き換えられます、三個旅団司令部を師団隷下に置き各種大隊を組み合わせるもので、改編の背景には師団を五単位に細分化すると一戦闘単位あたりに充分な部隊を配置させられなかった、と。

 87式偵察警戒車が25mm機関砲を油断なく前方へ構えオートバイ斥候を超越、威力偵察へ進む。//自衛隊がこの連隊の下に中隊を置く編成を維持させた背景ですが、アメリカ陸軍が問題視したペントミック師団の打撃力と攻撃衝力持続性の限界が、自衛隊では地形と戦闘における正面緊迫や火力投射範囲の面で問題とならず、日本の狭隘地形に合致していたためです。

 仮設敵部隊のBTR装甲車役の96式装輪装甲車が偵察部隊の威力偵察に射撃で応戦し、接触が始まった。//自衛隊は混成団の師団への改編を行い、北海道は第2師団と第5師団に加えて第7師団と第11師団が混成団から改編、第6混成団は第6師団へ、第8混成団は第8師団、第9混成団も第9師団、第10混成団を第10師団へ改編、13個師団体制が1962年に完結します。

 偵察隊の任務は小規模な先頭戦闘により相手の戦闘力を図り、抵抗が小さければ撃破し前進する、敵の有無を図る任務は斥候という。//第2師団は東西冷戦の第一線へ重責を担いました。防衛正面には宗谷海峡を睨み、ソ連軍は第二次大戦の日本降伏後に占領した樺太から北海道へ照明弾等軍事行動を示威し、盛んに艦艇を往来、情報収集艦等の動向も多く、自衛隊は沿岸監視隊等を置き抑止力を強めた。

 仮設敵のT-72戦車役の74式戦車が威力偵察を撃破するべく125mm砲役の105mm戦車砲で攻撃を仕掛け、刹那、空包のひっぱたくような衝撃波が会場観衆に叩きつけられた。//61式戦車に60式装甲車と60式無反動砲や64式対戦車誘導弾、74式戦車に73式装甲車と75式自走榴弾砲と75式装甲ドーザや79式対舟艇対戦車誘導弾、最新装備を順次揃え90式戦車の配備が開始され始めた頃に漸くソ連が崩壊、自衛隊は日本を守り抜きました。

 偵察隊の25mm戦車では敵戦車に全く歯が立たないが、敵の戦闘力は把握した瞬間に任務は完了し俊足で離脱する、更なる状況解明へOH-6D観測ヘリコプターが発進する。//日本の防衛力整備は構想に五年と画定に五年、整備に五年を要します。1995年、第2戦車大隊が第2戦車連隊へ拡大改編を受けます、これは戦車北転事業として本土戦車大隊から各1個中隊を抽出し北海道の戦車部隊増強に充て、冷戦時代の施策が遅れて完結したもの。

 第2対舟艇対戦車隊が敵戦車発見の報に接し96式多目的誘導弾システムを展開、敵戦車の動きを留める拘束部隊として進出した。//冷戦後、自衛隊縮小の機運が細川内閣時代に強まり、第2師団も縮小改編を受ける事となります、1995年防衛大綱改訂を受けてのもので師団は第9普通科連隊と第2対戦車隊を廃止しました、第5師団と第11師団に第12師団と第13師団の旅団化が同時期実施されます。

 こうして第2高射特科大隊の展開など、訓練展示が本格化しました。//新世紀を迎えた第2師団ですが、防衛大綱の中期防衛力整備計画単位での改訂と共に重装備縮小の暴風が吹く中、90式戦車、96式装備車輪装甲車、96式多目的誘導弾、99式自走榴弾砲、87式自走高射機関砲、10式戦車等優秀装備を揃えた精鋭部隊として今に至ります。

北大路機関:はるな くらま
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護衛艦FRAM近代化改修と艦隊維持【08】はるな型護衛艦の対潜中枢艦から群直轄艦への近代化

2017-01-14 23:07:01 | 先端軍事テクノロジー
■システム艦と護衛隊群旗艦へ
 はるな型護衛艦の対潜中枢艦から群直轄艦への近代化という運用の転換という事例から近代化改修を考えてみましょう。

 護衛艦のFRAM改修には多くの時間と費用を代償に就役期間の数年程度の延伸が達成されます、はるな型ヘリコプター搭載護衛艦は、FRAM改修が成功した一例ですが、このように多くの期間を経て改修し、教育訓練も刷新する注力の背景には何があったのでしょうか、みてゆきますと、新鋭しらね型ヘリコプター搭載護衛艦との能力格差の大きさがあります。

 海上自衛隊初のシステム艦として建造されたヘリコプター搭載護衛艦しらね型は、護衛隊群基幹としての情報処理能力やデータリンク能力を重視し設計、一番艦しらね、は第1護衛隊群第51護衛隊に所属し、はるな型ヘリコプター搭載護衛艦ひえい、と。二番艦くらま、は第2護衛隊群第52護衛隊に所属し、ヘリコプター搭載護衛艦はるな、と組みました。

 当時海上自衛隊には哨戒ヘリコプターを運用できる護衛艦はヘリコプター搭載護衛艦のみであった為、2隻のヘリコプター搭載護衛艦へ合計6機のヘリコプターを運用し対潜掃討を行う方針であった訳です、しかしその後汎用護衛艦へも哨戒ヘリコプターを搭載する方針が定まり、この指針は護衛艦はつゆき型、護衛艦あさぎり型大量建造へ収斂してゆきます。

 ここで、ヘリコプター搭載護衛艦を護衛隊群直轄艦として実質的な旗艦運用を行う指針へ転換する事となりましたが、新鋭の護衛艦しらね、護衛艦くらま、に関しては充分な示威統制能力と通信能力を備えていたものの、護衛艦はるな、護衛艦ひえい、については、護衛隊群旗艦として、システム艦の能力を設計当時求められていなかった点が露出します。

 護衛隊群旗艦として運用するには、艦隊ミサイル戦や電子戦能力が、指揮するという視点から重要になります、艦隊防空ミサイルを搭載していなくとも、隷下のミサイル護衛艦を指揮しなければなりませんし、当時の、はるな型ヘリコプター搭載護衛艦には、短SAMやCIWSが無く、電子戦装備も非常に貧弱で、ミサイル戦へ生存性が充分ではなかったのです。

 特別修理と共に延命修理を行う事で24年程度とされた現役期間を32年以上に延伸するとともに、しらね型ヘリコプター搭載護衛艦に準じたシステム艦としての能力を増強配備し、CIWSの追加や短SAMの搭載、ECM等電子戦システムと装置の一新など、対ミサイル戦能力も整備、これにより将来にわたる護衛隊群旗艦に対応する能力を付与したものでした。

 しらね型護衛艦、三番艦きりしま、四番艦こんごう、と仮に建造が継続されているならば、はるな型護衛艦へのFRAM改修は検討されなかった可能性があります、故に新造しシステム艦を護衛艦隊隷下の4個護衛隊群へ配備するか、既存のヘリコプター搭載護衛艦をシステム艦へ改修するか、海上防衛力整備への選択肢はこの二つしか存在しなかった構図です。

 即ち、航空中枢艦という設計の艦艇に対しシステム艦としての護衛隊群旗艦という任務を追加する、任務の変更を受けての必要な改造が、はるな型へのFRAM工事であったといえるでしょう。言い換えれば、時間と費用を必要とするものの、行わなければ護衛隊群における必要な任務を遂行できない、第一線に留まれるか、一隻代替艦を新造し第二線へ置き換えるか、という選択の結果ともいえるでしょう。

北大路機関:はるな くらま
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平成二十八年度一月期 陸海空自衛隊主要行事実施詳報(2017.01.14/01.15)

2017-01-13 20:23:20 | 北大路機関 広報
■自衛隊関連行事
 今季最大の寒波が列島を覆いつつあり、毎年恒例のセンター試験が週末に寒波と遭遇する中、皆様いかがお過ごしでしょうか、今週末の行事紹介ですが、今週末、駐屯地祭や展示訓練に航空祭等の自衛隊行事は行われません。

 今週末の自衛隊行事無し、という際にはゆるりと毛布の洗濯やカメラの手入れやレンズの調整等に時間を費やしたいところですが、こんな日だからこそ足を運びたいのは海上自衛隊基地の散策、軍港めぐり遊覧船です。横須賀基地はクルーズ船会社トライアングルが毎日遊覧船運行、佐世保では瀬川汽船が不定期の季節運航として湾内クルーズを運行します。

 舞鶴基地軍港めぐり遊覧船、こちらは冬期運休となっているのですけれども、春先になりますと舞鶴市役所前から運行されています。市役所隣には掃海艇桟橋がありまして、此処から出港、舞鶴基地北吸桟橋とユニバーサル造船舞鶴工場前の定位整備護衛艦などの前を航行し、その後に舞鶴航空基地沖を航行、海上保安学校の巡視船や航空基地側の桟橋等も見る事が出来ます。

 舞鶴水交会から海上自衛隊OBの方が案内の放送を行ってくれまして、停泊している護衛艦や補給艦などの略歴を意外に深い所まで紹介してくれますし、OBという事で、かなり、良いのかな、と思うほど護衛艦に接近してくれます。上船手続きは桟橋で料金支払いも含めて行えまして、時刻表なども桟橋、赤レンガ博物館と市役所駐車場に示されています。

 さて撮影の話題、航空祭、とは離発着の迫力ある描写を撮影するための最前列の攻防が繰り広げられる場所だったりもするようですが、実際のところ、一歩下がった方が撮影できるものが多かったりもします。確かに滑走路を背景に離着陸する様子を流し撮りで、また着陸後誘導路をタキシングする航空機等は、最前列から三列か四列のところでなければ撮影は出来ません。

 しかし、編隊飛行は一歩引いた方が撮影できるのですよね、航空自衛隊や海上自衛隊の航空祭では、基本的に万一の危険を回避する観点から飛行展示や編隊飛行は滑走路などの上空で実施され、来場者の上空では行われません、すると、真下から見上げるよりは少し離れた方が編隊が固まって、圧縮効果の条件で眺める事が出来るのです、少しだけでも違う。

 展示航空機の前で、最前列よりも前にしか展示航空機が無い場合もありますが、会場の中央部に展示航空機がある場合は、むしろ最前列よりも広角レンズで地上展示航空機を手前に収めつつ、その上で編隊飛行の編隊を画角に入れるとよい、広角レンズでもいい写真が仕上がります。スマートフォンなどでも、この条件ならば良い写真が仕上がるでしょう。

■駐屯地祭・基地祭・航空祭
・今週末の自衛隊関連行事はなし

■注意:本情報は私的に情報収集したものであり、北大路機関が実施を保証するものではなく、同時に全行事を網羅したものではない、更に実施や雨天中止情報などについては付記した各基地・駐屯地広報の方に自己責任において確認願いたい。情報には正確を期するが、以上に掲載された情報は天候、及び災害等各種情勢変化により変更される可能性がある。北大路機関
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航空防衛作戦部隊論(第四六回):航空防衛力、戦略航空拠点成田国際空港と長期航空戦継続

2017-01-12 21:59:27 | 防衛・安全保障
■国際空港の航空兵站拠点化
 航空防衛作戦部隊論も第四六回を迎えましたが、南西諸島への中国による軍事圧力の増大は、実のところ当方が想定したよりも遥かに緊迫度を増してきまして、沖縄鹿児島上空での限定的な衝突という可能性も現実味を帯びてきました。

 第一回の掲載は2015年7月23日、比較しましても中国軍機による南西諸島での異常な行動は増加傾向にあり、つい先日も爆撃機編隊を南西諸島へ展開との状況、作戦基盤を分散させ第一撃に耐え、防空体制の再構築と航空優勢維持を両立する、という方式でも限界が見えてきました。実際のところ、当方もここまでの状況緊迫化、戦後一貫して良好化の努力を続けてきました日中関係が、中国の周辺国へ継続した拡大路線の前に一蹴される懸念、予見できなかった点は反省の一つ。

 戦略航空拠点、日本本土防空と防空作戦が長期化し、地域的な着上陸の蓋然性が高まった場合には、従来の航空自衛隊飛行場だけでは物資運用拠点を十分確保出来なくなる可能性があります。こうした状況に際し、敵攻撃の圏外に置いて物資集約拠点となり得る飛行場を確保し、戦略輸送と戦術輸送のハブ機能を付与する必要があります、具体的には国際空港の機能を戦略拠点として運用するという方法が考えられるでしょう。

 成田の拠点化、踏み込み過ぎたように思われるかもしれませんが、C-2輸送機により日本本土からアメリカ西海岸を結ぶ航空輸送体制、後方連絡線構築の可能性を示しましたが、航空自衛隊の空輸能力にはどうしても限界があります。専守防衛とする事は外征、周辺地域の安定へ日本からの関与を省くことで軍事費を最小限と出来るのですが、これは税金を節約する分、国民が有事の際に後払いを求められる構図を執る、これが専守防衛の実態です、そこで国内の施設を最大限活用する事となる。

 こうした上で必要となるのが武力攻撃事態法に基づく指定公共企業による空輸支援体制です、民間航空には太平洋を渡る事が可能な機種が相当数蓄積されていまして、旅客機には貨物区画が配置されています、もちろん弾薬などの空輸支援を望むことには制約がありますが、予備部品などの空輸には支援の有無が防空作戦全般を大きく左右する事でしょう。ここで民間航空の輸送能力に協力を仰ぐほか、大陸からの全面攻撃が現実化した場合の現状での航空優勢維持手段は、ない。

 日本貨物航空は貨物輸送型のボーイング747-400Fとボーイング747-8Fを13機運用しています。ボーイング777は777-200ERや777-300等各種機材を合わせ日本航空が41機と全日空が56機、ボーイング767は767-300ERや767-300等を日本航空は42機と全日空が52機、ボーイング787を発注分など含め日本航空は27機と全日空は50機、エアバスA350を日本航空が31機発注しています。

 こうして太平洋を越える事が可能な旅客機と貨物航空機は日本貨物航空と日本航空に全日空の三社を合わせた場合、実に231機に達します。日米安全保障条約に基づく物品相互供与協定を最大限活用するには、国際空港の貨物区画が有する能力と民間航空が有する旅客機及び貨物機の協力が不可欠となるでしょう。

 一方、国際空港の能力を敢えて我が国防衛力へ応用する意味ですが、航空自衛隊補給処の補給物資分配能力には限界があります。物資集積の用語としまして、アイアンマウンテン、というものがありまして、これは有事の際に必要な物資を大量に前方手蓄積するものの輸送能力に処理が追いつかず、積み上げられた物資の山積状況を揶揄したもの。

 現在は電子タグや物流管理システムの導入によりかなり解決されたようですが、それでも急激に物資の必要総量が増大した際には十分とは言切れないものがあります、ただ、これは自衛隊が平時からの大量物資流通、湯時と平時の必要な物資管理能力が異なるために生じたもので、こればかりは経験が無ければ必要な管理体制を構築する事は出来ません。

 平時から兵站と物流管理へ要員を充分配分できれば問題は無いのですが、正面装備に大きな近代化という課題と人員を集約しなければならない状況、やはり、大規模な有事の管理よりも平時の対領空侵犯措置と事態の早期集束への即応能力が重視される事は否めません。そこで、我が国は専守防衛として国土を戦場とし戦い抜く、やむを得ない武力攻撃には他国ではなく自国に戦場を求めるという平和憲法に基づく一国平和主義を標榜しているわけです。

 一方で国土を戦場とするまで具体的措置を禁じた専守防衛と両立して国民の平和的生存権を維持しなければならない、この為にはどうするか。国土に存在する施設は最大限駆使し、国内での損害を最小限にとどめる必要があるでしょう。そこで、貨物流通量が大きく、更に航空攻撃などから脆弱性を最小限とした空港設備ですが、脅威正面の位置にもよりますが、成田国際空港、関西国際空港、中部国際空港、羽田空港、福岡空港、千歳空港等が挙げられるでしょう。

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