今日は1月1日で新しい年2008年の始まりだ。
年末にインターネットでオイラーの公式を検索したら、いくつかの新しい発見があり、いくつかの私の採用していない証明が見つかった。
オイラーの導出(ド・モワーブルの公式を使う、この方法は志賀浩二さんの本(岩波新書)の記述と本質的に同じと思う)を除いてどれも発見的とは言い兼ねるが,それでもなんらかの新しい視点を与えている。
一つはe^{ix}, sin x, cos xが一次独立でないことをロンスキーの行列式を用いて証明すること、もう一つはe^{ix}=a sin x+bcos xとおいて、未定係数a, bを決めるという方法であった。
この係数を決めるという手法は私のオイラーの方法の推論的導出でも使っているが、私は例えば,cos xのマクローリン展開をe^{ix}のマクローリン展開とe^{-ix}のマクローリン展開と の1次結合にもって行き、そこで二つの係数を決める。
それとはちがってe^{ix}=a sin x+bcos xでx=0とおいてaを求め、またこの式をxで微分した式でx=0とおいて、bを求めるところが違う。一次結合で書けるとしたところはいささか事後発見的だがまあそれでも新しい考えだ。そしてちゃんとa=1, b=iと決まる。
この著者の「べき乗の意味を考える」ところはやはり数学者らしい。これは私の友人の数学者Nさんと同様である。
女性の先生が書いた方法では、3つの関数の一次従属をロンスキアンを用いて証明した後は同じような考えで定数を決めていた。そこのところはちょっと記憶がはっきりしない。
これらの新しい視点をどう取り入れて原稿を修正するかがまた問題である。
こうしてみてくると導出法もいろいろあるが、それだけではなく数学的な問題点も見えて来た。
それらはすべて教育上の問題ではあるが、
(1) 実数のベキ乗の意味の追求
(2) e^{ix}, sin x, cos xが互いに一次従属であることの証明
(3) マクローリン展開で無限級数の項の順序の入れ替えをどう合理化するか(一様収束性?)
(4) 指数関数における解析接続の問題、すなわちe^{x} をe^{ix}に置き換えることをどう正当化するか
等が問題となってくる。
ともかく、一つの問題が片付くと次の問題が出て来たことになる。こうして認識も少しづつだが、進んでくる。
(2014.8.13付記) オイラーの公式の導出法のレビューは愛媛県数学教育協議会(愛数協)の機関誌『研究と実践』102号(2009.10) 21-36 に発表している。近々それを『数学・物理通信』に転載したいと考えているが、なかなか掲載するチャンスがない。もっとも上の4つの問題は自分自身の問題としてはまだ解決していない。