講義の準備のために以前に購入していた山本義隆氏の『新物理入門』の電磁気のところを一部読んだ。
なかなかよくできている。どういう風によくできているかというと帰納的ではなくできるだけ演繹的に議論が進むところだ。
よくアマゾンの書評で彼のこの本がすぐれているという人と、もう一方の評価はそれなら大学のテキストとして書かれたものを読んだほうがいいという評の両方があったと思う。
予備校での講義だから、微分積分をフルに使っているとはいっても制約がある。だから後者の批評はある程度あたっているかもしれないが、そういう制約のある中でよく書いてあると思う。
彼が真剣に書いているということは十分にわかる。物理はもともと実験科学だから、それを理論化するときにどこが一番基本かを言い難いところがあるが、彼はその点を最小限にしているとの印象である。
しかし、基本となるところでも理解を十分にすれば、丸暗記はいらないのかもしれないが、それでもある程度記憶しておかなければならないこともあると思うので、その点が十分に簡単化されているかは彼の努力にもかかわらず疑問である。
批判的にとられるかもしれないが、批判するのが本意ではない。誰が電磁気を書いても難しいのだと思う。
Feynman Lecture(訳書:ファインマン物理学(岩波書店))みたいにはじめにバンとMaxwell方程式を書くわけにも行かないだろうし、それができたら気持ちの上ではすっきりするが、一般の電磁気学ではそれはやはり難しかろう。
でもよく整理をされていると思う。もっとも電磁気学のことをあまり知らない私がいうのだから、信用度はとても低いだろうが。