またまたLevi-Civita記号にとりつかれている。
これは『ゲージ理論』II(講談社)という訳本の中にかなり詳しい説明があるので、それをエッセイに書き留めておきたいと思ったからである。
弱い相互作用のニュトリノと電子衝突でニュトリノとミュオンが発生するという素過程のツリーの行列要素の計算から出てくる4次元のLevi-Civita記号を説明する演習問題がこの本に出ており、その解答は元の英語の本には載っていないのだが、訳者の藤井昭彦(上智大学名誉教授)さんが解答を詳しくつけてある。藤井さん、ありがとう、です。
この人はなかなか英語の達者な人であるというのが、私の印象だが、それだけではなく、私の研究との小さな接点もあった。
いつだったか、国内であった国際会議で出会って、藤井さんとしばらく話をしたことがあったのは同じプロセスを計算したことがあったからである。もちろん、私の計算の方が後からの計算である。
ところが、数値計算の結果が彼の出した結果と合わないので、困った。これは最終的には計算をする準拠系の問題であることが分かり、そこを修正したら、藤井さんの計算と特別な場合に一致することが分かって研究論文を書くことができた。
そのことをお話したら、「尋ねてくれたらよかったのに」とそのときに言われた。研究論文の著者に計算の詳細を尋ねるなどという発想が私には持てなかったのが悔しい。
これは別の、私の学位論文の研究をしていたとき、ある論文の計算をチェックしたが、一部の式が私の計算結果と一致しないので、自分の計算はこうだが、あなた方の計算はどうなっているのかと尋ねたことがあった。
それは、すべて論文のプレプリントに書いたときのミスプリントであるとの返事をもらって、こちらが脱力してしまった。
こちらは一人で計算しているのに、相手は数人のグループ研究であったのに。