静岡3区は日本政府の金融政策の今後を占う象徴となる選挙区です。
元金融担当相で自民党税制調査会長の柳澤伯夫さんに対して、民主党はJAバンク農林中央金庫職員だった小山展弘(小山のぶひろ)候補が挑みます。
小沢一郎代表代行が、JA農協について、「相手にする必要はない」と発言したようです。これまでの農協の民主党に対する姿勢からすれば当然の見解です。
各種団体の中でももっとも民主党に冷たいJA。そのJAバンク出身の小山さん。多士済々の第45回衆院選の布陣の中でも農林中金出身者は小山さんだけです。 民主党は昨秋の第170臨時国会以降、改正金融機能強化法、農協法改正案(廃案)などで、JAバンク・農林中金と対決してきました。すでに民主党静岡3区総支部長として活動していた小山展弘さんは肩身が狭かったことでしょう。が、謙虚で誠実な人柄で十分にカバーできているように思えます。
きのう、在ワシントンの日本人ロビイスト(来日中)と電話で意見交換した際も、政権交代によって、かんぽ生命などが“再国営化的な改革”がなされ、“民業圧迫”になるのではないかとの懸念が外資系金融関係者で話題になっていると教えてもらいました。
ゆうべ選挙事務所内で開いた小山展弘個人演説会には100人以上の人が集まりました。年齢層からして、今までは自民党支持者だったことが多いと推察しました。
演説の最後で、小山さんは郵便局のユニバーサル・サービス、都市と地方で一律のサービス水準の確保の重要性を力を込めて訴えました。そして、仮定の話として、日本郵政のマネーが外資系ハゲタカファンドにのっとられ、米国債購入などに使われる危険性があると指摘しました。仮に昨秋のリーマンショックの際に、金融派生商品の購入に使われていたら、国益が大きく損なわれた可能性があるとして、速やかな郵政見直しが必要だと主張しました。
小山さんは、「再国営化はしないが、四分社体制の見直しと株式売却(2011年秋予定)阻止は速やかに実現したい」と話しました。
2007年10月の郵政民営化のあと、JAバンクの預金量は5兆円ほど増えていると思います。郵便局がユニバーサルサービスをやめ、経営効率を最優先にするなかで地方での営業が滞り、個人マネーがJAバンクに大きく流れています。しかし、JAバンクの新規取引者には農業者は少なく、JAバンクの本業とはかけ離れた状態になっているのが実態だと推測しています。
JAバンクにとっては郵政民営化はビッグ・チャンスだったわけで、JAバンクと郵便局は現場では商売敵(がたき)になっていると思います。JAバンクの本音は、「もっと郵政民営化を進めてほしい」ということではないでしょうか。
そのJAバンク出身の小山候補が、郵政見直しを強く訴えていることは、個人の利益を超えて、国家国民の利益を考えているからだ、と私は信じます。
大蔵省出身のベテラン・柳澤伯夫元金融相は、小泉首相の下、郵政民営化を推進し、後継者の安倍首相の選対本部長も務めた人物です。
静岡3区の金融対決。目に見えない金融の話ですが、小山さんの本気度は高い。私は4月にも当地に来て、小山さんの日常活動を手伝いました。プレス民主号外を配っていると、「JA共済代理店」の看板を出しているお宅を見かけたので、「小山は農林中金の出身ですのでよろしくお願いします」と言ったら、嫌な顔をされてしまいました。どうやら何らかの締め付けの言葉と誤解されたのかもしれません。
小山君は私の早大のゼミの後輩です。私も日経新聞記者として働く中で、さまざまな苦悩を感じましたが、小山君も農林中金で働く中で苦悩があったのだと思います。
静岡3区のみなさんは、若く有能な小山君を「歌舞伎十八番のうち勧進帳」の富樫のように「関所」を通らせてやってほしいのです。見た目は華奢でも、心根は強い“義経”に「関所」を渡らせてやってほしいのです。私も見た目だけなら弁慶、ずいぶんと弱弱しい見かけだけの武蔵坊弁慶。目に見えないマネーの世界の勧進帳を読み上げているわけですが、どうか信じてほしいのです。
自らの主張をハッキリと言う。勝つとか負けるとかそういうことより、小山君が人間として成長している様を確認できたのが、とてもうれしくてうれしくてならないのです。