[写真]第25回参院選公示日に演説する、枝野幸男・立憲代表(左、東京都新宿区)、安倍晋三・自民党総裁(右、宮城県仙台市)、ともに宮崎信行撮影。
枝野幸男・立憲民主党代表と、安倍晋三・自民党総裁(首相)は、きょう令和元年2019年7月4日(木)の第25回参議院議員通常選挙公示にあたり、街頭演説をしました。投開票は21日。
枝野さんは、JR・京成・小田急などの「新宿駅」東南口、安倍さんはJR・新幹線・地下鉄などの宮城県仙台市の「仙台駅東口」。
枝野さんは多様性に言及し、「(比例代表で現職の)川田龍平さんのもとで、みんながそれぞれの当事者の声を、現場の声を、あげたら日本の政治は変わります。ぜひみなさんの力を貸してください」と語りました。
[写真]演説する枝野さん(壇上)や、左から川田龍平さん、山岸一生さん、石川大我さん、佐藤かおりさん、斉藤りえさん、奥村まさよしさん、市井紗耶香さんら各候補、2019年7月4日、東京・新宿駅で宮崎信行撮影。
安倍さんは来年の五輪の聖火は、宮城県内の航空自衛隊松島基地に到着することをあかし、「平和安全法制を実現させて日米は助け合う同盟関係となった」とし「憲法9条を改正して、憲法に自衛隊をしっかり明記して、こういう憲法論争を終わらせる。自衛隊のみなさんがしっかりと誇りを持って仕事ができるようにしていきたい」と話しました。それ以外は、6年半のアベノミクスの実績を数字をあげて強調。演説では、実質賃金や原発にはふれませんでしたが、おおむね実績の9割以上をオーソドックスにあげた主張でした。
[写真]演説する安倍首相(中央)、2019年7月4日、宮城県仙台市「仙台駅東口前」、宮崎信行撮影。
●立憲、自民とも動員。
立憲民主党が「結党の原点」という扱いをしている、2017年10月14日(土)の「#東京大作戦1014」で私が撮影した、同じ、新宿駅東南口での画像を見ても、平日で雨だったにもかかわらず当時よりも3分の1以上の動員ができていると分析できます。
[写真]2年前の衆院選で新宿駅東南口で演説する枝野代表、宮崎信行撮影の動画からスクリーンショット。
安倍自民党も、宮城県内3か所そのうち仙台駅前2カ所にもかかわらず、多くの聴衆が集まっていました。秋葉賢也・衆議院議員の後援会の人も多かったようです。首相が演説でふれたように、若い聴衆もみられました。
●おそろしい「野党殲滅思想」。
首相は宮城県内で3回以上の演説を実施。与党として迎えた2013年は宮城選挙区でみんなの党の和田政宗さんが「民主党の岡崎トミ子・元国家公安委員長は韓国との関係が深い」とSNSなどで宣伝。一定の効果があり、1位が自民党の愛知治郎さん、2位が和田政宗さん。岡崎さんは3位で落選しました。2016年から1人区になり現職対決で野党候補が勝利。そして、2019年は愛知さんが選挙区、和田さんが比例代表とともに自民党公認で出馬します。これに、野党候補の石垣のりこさんとNHKから国民を守る党の候補者の合計3人が出馬しました。
いわば、32ある1人区で、安倍首相が、福島県、宮城県などの接戦区に入ることは、過半数をとりたいわけではなく、野党を殲滅するために県連を締め付けるというおそろしい思想がみてとれます。
あくまでも、演説会の一部の切り取り。
テレビ局カメラの延長線上に、テレ朝、TBS、NHKを名指しして、偏向報道により、自民党の議席が減っているという趣旨の主張をするグループがいました。
安倍首相は到着後、各所に手を振りましたが、このグループには、両腕をあげて複数回手を振りました。
仮に「ネトウヨ」ということにしてしまうと、安倍さんはネトウヨが自分の味方であり、その主張に関係なく、手を振ってとりこもうという考え方をもっていると考えられます。
自分を支持するものはすべて取り込み、敵である野党は党本部・県連の手で殲滅してしまう。こういう考え方のもとでの国政選挙5連勝をなしとげたとおもわれます。
与党期の民主党や、現在の共産党批判は、自民党コアメンバーとみられる街頭演説参加者でもあまり反応はありませんでした。私は安倍さんの思想には、アングロサクソン型の二大政党激突思想ではなく、あり得ない二項対立、例えば、関ヶ原の合戦の「徳川家康対石田三成」、戊辰・西南戦争の「官軍対賊軍」という、そういう、ありえない二項対立を受け入れてしまう国民性への洞察があると感じとりました。
安倍さんにしろ、すべての有権者にしろ、野党の芽を残すようにしてほしいところです。
●論戦深まらない見通し。
テレビ討論も少ないでしょうし、党首らが街頭で演説をすることが中心となり、各党の政策論争は深まらないとみられます。安倍首相は与党としての経済の実績を強調。子ども子育てに関連して消費税にも言及しており、影響が開票まで見えないかもしれません。枝野代表は多様性と当事者に言及することで、政策論争をさけ、参議院全国比例の積み増しを優先しているようです。
[写真]参議院第一委員会室、パノラマ撮影、宮崎信行がおととし2017年5月撮影。
第25回参議院議員通常選挙は、きょう、憲法第7条にもとづき、公示され、令和元年2019年7月21日(日)の午前7時から午後8時まで投票。開票されます。
改選定数124に370名以上が立候補。「自公の総定数過半数」はかたいとみられます。第4次安倍晋三内閣は続投の公算。調査では、3年前の第24回参院選と比べて11ポイント程度、関心が薄れているとの分析もあります。
●東京選挙区は、公明党代表を、れいわ新選組の創価学会員が切り崩し。
連立与党党首の山口那津男・公明党代表が参議院議員任期切れをむかえ東京選挙区に立候補。6年前に初当選し「集団的自衛権国会」で気を吐き多くの指示を集める山本太郎さんが自ら設立した「れいわ新選組」で全国比例代表転出をきのう発表。東京選挙区の後継者として創価学会員の野原善正さん。事前の調査では、改選定数6のうち、山口さんが3位、山本さんが5位で当選するのではないか、とみられていました。仮に現職の山本さんの8掛けの得票を新人・野原さんがした場合は当選ラインに浮上。今回選挙の最大の台風の目となりそうです。かつて公明党を除籍された候補者が無所属で兵庫、広島などの選挙区で強行出馬した場合「8000票」など他政党の現職ではあり得ない数字で惨敗。今回の切り崩しはききそうです。この政治劇は、リベラル界最大の選挙上手として半世紀の実績をつみあげてきた「斎藤まさし氏」がシナリオを書いてきました。それ以外の東京選挙区の立候補者はホームページで確認できます。
●立憲「多様性」全国比例候補者は代表演説に5名ないし6名が大名行列。
立憲民主党は選挙区の公認・推薦候補と比例代表で躍進する見通し。このうち、比例代表では、聴覚障害者・LGBT当事者・子育て女性タレントなど多様性を象徴する候補者を擁立。全国的な組織をもたないため、枝野幸男代表の演説に、5名ないし6名の比例代表候補者が「大名行列」する格好で選挙戦をたたかいます。一方の議席微減が予想される自民党の比例代表は過去最多の立候補者となります。日本列島はどんどん暑くなりますが、全国の「ハコ」の集会を「顔を真っ白にして」回る組織内候補者と、街頭演説で顔を真っ黒にして名を売る候補者の両方から一定の当選者・落選者がでそうです。参議院では2007年に一度女性議員の割合が2割を超えましたが、一世代前の、平成元年の「おたかさん・マドンナブーム」同様に女性が多く当選することもありそうです。
●6年前は海江田民主党が17議席と袋叩きにされ日本人の陰湿さ示す。
改選となる議員、6年前。2013年の第23回参院選では、すでに下野直後の民主党が17議席と二番底の袋叩きにあいました。日本人の陰湿な国民性を歴史として公文書に刻みました。その後、2013年秋にさっそく特定秘密保護法が制定され、2014年4月異次元の金融緩和、2014年7月解釈改憲、2015年労働者派遣法改悪・平和安全法制強行採決。この6年間で日本の民主主義、法治主義、資本主義の底が抜けました。その一方、父母の片方のルーツを日本(及び先の大戦中の外地)以外に持つ多くのスポーツ選手が世界トップに。社会のグローバル化、多様化は進みました。
●いわゆるビッグマック指数は3・6ドル。
公示時点での円ドルは107円前後、日経平均株価は21638円前後、長期金利はマイナス0・15%前後となっています。マクドナルドホームページによると、「ビッグマック」は単品で390円。小さい字で消費税(現行税率8%3か月後に10%引き上げ見通し)込みだと明記されています。ドル換算で「3・6ドル」となります。アメリカでは「5・58ドル」のようです。私ももう10年海外に行っていないので実感はありませんが、日本の物価は国際的にとても安い水準、非常に物価が安く給料が安い国となります。国力の衰退と金融緩和の影響とみられます。
●当ブログでは「比例代表」と表記。
政党や地方議員らは「選挙区」「比例区」と表記することが多くなります。筆者・宮崎信行は法律で使われている用語である「選挙区」「比例代表」をつかい、分かりやすくするため「選挙区」「全国比例」などと表記します。
●原稿執筆、出演依頼なし。
なお、公示時点で私に原稿執筆依頼、番組出演依頼がありません。レガシーメディアの部数減の影響とみられます。
(C)2019年、宮崎信行。