宮崎信行の国会傍聴記

元日本経済新聞記者の政治ジャーナリスト宮崎信行が衆参両院と提出予定法案を網羅して書いています。

自民党が「9月施行」の派遣法改悪法案成立を急ぐのは、民自公24年改正法の「10月施行」を阻むため

2015年06月17日 06時00分17秒 | 第189回通常国会2015年安保国会


 極めて技術的なエントリー記事になります。

 政府自民党が「労働者派遣法改悪法案(労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律等の一部 を改正する法律案 )」(189閣法43号)の成立を急いでいる理由が、「平成24年2012年改正法(衆参ねじれによる3党協議により、民自公が賛成)」の第2条(注・改正法の第2条)に盛り込まれた、違反行為があった派遣労働者を保護するために、無期雇用転換を義務付けた規定(法律第40条の6、第40条の7、第40条の8)の施行が、同改正法の附則第1条第2項により、「平成27年10月1日」に迫っているからだったことが明らかになりました。

 これは日経新聞の2015年6月27日付5面の報道をもとに、筆者(宮崎信行)が、平成24年改正法と、今次改正法案の条文を精査して明らかになったものです。

 今次改正法案は3度目の提出ですが、審議未了廃案になるたびに、「平成26年10月1日施行」「平成27年4月1日施行」と条文を変えてきましたが、今国会提出法案では「平成27年9月1日施行」と、法律として極めて不自然な施行日となっていました。

 これは、改正されないと、10月1日に、平成24年改正の次の条文が施行されることを、派遣元会社が警戒しているからです。

 以下、極めて技術的ですが、とにかく、情報を盛り込みます。

 まず、平成24年改正法では、法律の第40条の6、第40条の7、第40条の8を新設し、違反があった場合の無期雇用転換を「義務付けています」。このプログラム規定が10月1日に施行されます。

[平成24年改正法から引用はじめ]

(前略)

第四十条の六 労働者派遣の役務の提供を受ける者(国(特定独立行政法人(独立行政

法人通則法(平成十一年法律第百三号)第二条第二項に規定する特定独立行政法人を
いう。)を含む。次条において同じ。)及び地方公共団体(特定地方独立行政法人
(地方独立行政法人法(平成十五年法律第百十八号)第二条第二項に規定する特定地
方独立行政法人をいう。)を含む。次条において同じ。)の機関を除く。以下この条
において同じ。)が次の各号のいずれかに該当する行為を行つた場合には、その時点
において、当該労働者派遣の役務の提供を受ける者から当該労働者派遣に係る派遣労
働者に対し、その時点における当該派遣労働者に係る労働条件と同一の労働条件を内
容とする労働契約の申込みをしたものとみなす。ただし、労働者派遣の役務の提供を
受ける者が、その行つた行為が次の各号のいずれかの行為に該当することを知らず、
かつ、知らなかつたことにつき過失がなかつたときは、この限りでない。
一 第四条第三項の規定に違反して派遣労働者を同条第一項各号のいずれかに該当す
る業務に従事させること。
二 第二十四条の二の規定に違反して労働者派遣の役務の提供を受けること。
三 第四十条の二第一項の規定に違反して労働者派遣の役務の提供を受けること。
四 この法律又は次節の規定により適用される法律の規定の適用を免れる目的で、請
負その他労働者派遣以外の名目で契約を締結し、第二十六条第一項各号に掲げる事
項を定めずに労働者派遣の役務の提供を受けること。
2 前項の規定により労働契約の申込みをしたものとみなされた労働者派遣の役務の提
供を受ける者は、当該労働契約の申込みに係る同項に規定する行為が終了した日から
一年を経過する日までの間は、当該申込みを撤回することができない。
3 第一項の規定により労働契約の申込みをしたものとみなされた労働者派遣の役務の
提供を受ける者が、当該申込みに対して前項に規定する期間内に承諾する旨又は承諾
しない旨の意思表示を受けなかつたときは、当該申込みは、その効力を失う。
4 第一項の規定により申し込まれたものとみなされた労働契約に係る派遣労働者に係
る労働者派遣をする事業主は、当該労働者派遣の役務の提供を受ける者から求めがあ
つた場合においては、当該労働者派遣の役務の提供を受ける者に対し、速やかに、同
項の規定により労働契約の申込みをしたものとみなされた時点における当該派遣労働
者に係る労働条件の内容を通知しなければならない。
第四十条の七 労働者派遣の役務の提供を受ける者が国又は地方公共団体の機関である
場合であつて、前条第一項各号のいずれかに該当する行為を行つた場合(同項ただし
書に規定する場合を除く。)においては、当該行為が終了した日から一年を経過する
日までの間に、当該労働者派遣に係る派遣労働者が、当該国又は地方公共団体の機関
において当該労働者派遣に係る業務と同一の業務に従事することを求めるときは、当
該国又は地方公共団体の機関は、同項の規定の趣旨を踏まえ、当該派遣労働者の雇用
の安定を図る観点から、国家公務員法(昭和二十二年法律第百二十号。裁判所職員臨
時措置法(昭和二十六年法律第二百九十九号)において準用する場合を含む。)、国
会職員法(昭和二十二年法律第八十五号)、自衛隊法(昭和二十九年法律第百六十五
号)又は地方公務員法(昭和二十五年法律第二百六十一号)その他関係法令の規定に
基づく採用その他の適切な措置を講じなければならない。
2 前項に規定する求めを行つた派遣労働者に係る労働者派遣をする事業主は、当該労
働者派遣に係る国又は地方公共団体の機関から求めがあつた場合においては、当該国
又は地方公共団体の機関に対し、速やかに、当該国又は地方公共団体の機関が前条第
一項各号のいずれかに該当する行為を行つた時点における当該派遣労働者に係る労働
条件の内容を通知しなければならない。
第四十条の八 厚生労働大臣は、労働者派遣の役務の提供を受ける者又は派遣労働者か
らの求めに応じて、労働者派遣の役務の提供を受ける者の行為が、第四十条の六第一
項各号のいずれかに該当するかどうかについて必要な助言をすることができる。
2 厚生労働大臣は、第四十条の六第一項の規定により申し込まれたものとみなされた
労働契約に係る派遣労働者が当該申込みを承諾した場合において、同項の規定により
当該労働契約の申込みをしたものとみなされた労働者派遣の役務の提供を受ける者が
当該派遣労働者を就労させない場合には、当該労働者派遣の役務の提供を受ける者に
対し、当該派遣労働者の就労に関し必要な助言、指導又は勧告をすることができる。
3 厚生労働大臣は、前項の規定により、当該派遣労働者を就労させるべき旨の勧告を
した場合において、その勧告を受けた第四十条の六第一項の規定により労働契約の申
込みをしたものとみなされた労働者派遣の役務の提供を受ける者がこれに従わなかつ
たときは、その旨を公表することができる

(後略) 

[引用おわり] 

 この現行法(平成24年改正法反映分)に対して、今国会提出法案は次のように書いています。

[今国会提出法案から引用はじめ]

(平成24年改正法の)

(前略)

第二条のうち、労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する

法律第二十八条の改正規定中「第四十条の六第一項第四号」を「第四十条の六第一項第
五号」に改め、同法第三十五条の四の改正規定中「第三十五条の四」を「第三十五条の
五」に改め、同法第四十条の六を同法第四十条の九とし、同法第四十条の五の次に三条
を加える改正規定のうち第四十条の六第一項第三号中「こと」の下に「(同条第四項に
規定する意見の聴取の手続のうち厚生労働省令で定めるものが行われないことにより同
条第一項の規定に違反することとなつたときを除く。)」を加え、

(後略) 

[引用おわり]

 「無期転換の義務付け」のプログラム規定が、10月1日に施行される前に、今次改正法案が(仮に成立し、)9月1日に施行されると、「聴取の手続き」をすれば、無期転換の「義務付け」がなくなるようです。

 この背景には、平成24年改正当時の、民自公3党協議にあたった、与党民主党担当者や政務三役が、同年末に落選してしまい、2014年末に国政復帰。現在は衆議院厚生労働委員に復帰しているものの、その間の2度目にわたる今次改正法案の提出に野党現職議員としてかかわっていないこともあり、経緯が不明確となったことがあるのかもしれまsねん。

 政権交代時の極端な振り子がこのような事態を招いたかもしれず、今後歴史的な検証に資する事例かもしれません。

 まあ、何言ってんだかサッパリ訳が分からないエントリー記事を書かせていただきましたが、短期的な思惑は、こういうことだったようです。

以上 


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