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私の札幌生活も17年目を迎えました。これまでのスタイルを維持しつつ原点回帰も試み、さらなるバージョンアップを目ざします。

市民カレッジ 「北の大地の羅針盤になった先達」③ 岡崎文吉

2009-12-04 19:22:07 | 札幌学 & ほっかいどう学
  北海道の開発初期に、人間と自然の共生を唱える岡崎文吉という技術者がいたことを初めて知りました。先見の明に優れた彼の理論は時代が早すぎたためか日本においては片隅に追いやられてしまいましたが、環境問題が声高に語られる現代になって脚光を浴びつつあるようです。

 ※写真もない地味レポです。どうぞお付き合いください。
 
 何年か前に、「直線化された標津川を元のように蛇行した川に復元する工事が始まった」というニュースを耳にしたことがあります。それを耳にした私は「川の直線化工事に税金を投入し、今度はそれを元に戻すためにまたまた税金を投入するとは・・・」と思ったものでした。

 市民カレッジの今シリーズ最後の講座は、流水の科学者と讃えられる「岡崎文吉」が取り上げられました。(「流氷」ではありません。「流水」ですよ!)
 講師は長らく北海タイムスの記者や論説委員を務められ、現在は北海道総合研究所所長をしている浅田英祺氏でした。氏は「流水の科学者 岡崎文吉」という岡崎の人間像を深く掘り下げた大作(価格 13,650円)を書き上げた方です。
 その本の惹句には次のように書かれています。
 「『自然に反する技術は到底自然の事業及法則を超越して成功すること能わざるべし』(岡崎の言葉)自然としての河川との共生のあり方、生涯を通じて実践的に追求した先駆的思想家=技術者岡崎の没後50年、歴史の奥底に忘れ去られていた人物が現代に甦る。」

 浅田氏によると、岡崎は札幌農学校(現在の北大の前身)工学科に学び、その優秀な頭脳は若干22才にして札幌農学校助教授に任ぜられるほどでした。その後北海道庁技師として北海道の公共土木事業の総括責任者となり、特に大水害を起こした石狩川治水計画に携わることになります。
 そこで治水理論として当時主流となりつつあった河道の直線化を推進する捷水路派には立たず、蛇行する河道の現状を維持することを前提とする自然主義治水理論を提唱したのでした。彼はその際、弾力性のある鉄筋コンクリート・マットレス(岡崎式護岸工)を考案しています。石狩川にはわずかですが、それを施したところも現存しているそうです。

 ところが国内の治水理論は捷水路派が主導することとなってしまい、岡崎は治水現場から遠ざけられてしまうのです。それは、その後の石狩川治水工事の推移をみれば明らかなことです。
 しかし、岡崎理論はアメリカの大河ミシシッピー川の護岸工事の中に脈々と生き続けていることを浅田氏が知ることとなりました。

 浅田氏の発見はSTVのディレクター(津島氏)を動かすこととなり、STVはミシシッピー川まで赴き一つのドキュメンタリー番組が誕生しました。私たちはそのVTRを見ることができました。
 そこには岡崎が提唱した「鉄筋コンクリート・マットレス」を今もなお敷設しつづけるミシシッピー川の工事の様子が描かれていました。現在それが敷設された距離は総計1,600Kmにいたっているそうです。

 「自然であることは美しい。自然と共にあれ」と唱えた岡崎文吉の思いに、時代がようやく追いついたという感じがします。公の機関をはじめ多くの分野で岡崎文吉の考えや思想が再評価されるようになりました。

 岡山生まれの岡崎が北海道の地に学び、北海道の地から提唱した「自然主義治水理論」が脚光を浴びるようになったことを今回の講座を通じて知ることとなり「またひとつ私の中に財産が増えた」と喜んでいます。
とは言え、最近は同時に私の中から消えゆく知識も増加傾向にありますが・・・。(苦笑)