列車は、北へ向かって疾走する。
列車は、白い雪原を疾走する。
列車は、懐かしの彼の地へ向かって疾走する。
Mはいま札幌から列車に乗り、北の地を目ざしていた。
そこはMがこれまでの人生のほとんどを過ごした懐かしの地だった。
走る列車の窓から北国の冬の景色が次々と飛び去ってゆく。
どこまでも続く白い雪原。
雪原の中にすくっと立つ木々は白い雪の中では黒く映る。
そして時おり顔を見せる川の流れもまた暗い色を映している。
それはまるで墨絵の世界を見るようだった。
札幌から網走へ向かう1番列車、特急オホーツク1号。
一人誰とも話すこともなく、窓から外を眺め続けていると柄にもなく詩心がうずいたようだ。
Mは昔お世話になった先輩に、共に語らい共に励んだ同輩に、そして叱咤激励した後輩との再会のため網走に向かっていた。
雪煙りを巻きあげつつ列車は疾走する。
列車の窓に映る墨絵の世界は次々と新しい絵を見せてくれる。
北海道独特のこの風景をMはとても貴重なものだと思いつつ窓外を眺め入るのだった…。
※ Mはこの後、網走にて懐かしい人たちとの再会を楽しんだ。そして今日もまた別の人たちとの出会い、今夜もこれから懐かしい出会いを楽しむことになっている。その様子については帰札した後、ゆっくりと報告したいと思っています。