いったいどうしてこのように特異なキャラクターを思いついたのだろう?と思わせられる男と女の物語にぐいぐいと惹きつけられる。名匠ジュゼッペ・トルナトーレ監督が、刺激的な謎をちりばめて紡ぐミステリーに魅せられてしまった。
美術品の著名な鑑定士であり、オークションでハンマーをふるうオークショニアである初老の男。彼は女性との接触を嫌い生涯独身であるが、その職業柄から収集した古今東西の女性の肖像画を秘密の部屋一面に飾り、それを一人眺めることが至福の時であるという奇癖の持ち主である。さらに彼は無類の潔癖症で手袋を付けたまま食事をしたり、電話を扱ったりするという一般人には理解できない性癖の持ち主です。
一方、女性は広い場所に出ていくことができず、狭い部屋の中で何年も住み続けているという心的障害をもった若い女性であるという。
この二人が出会い、ミステリーは深まっていく…。
8日〈水〉朝、知人のK氏から突然のFAXが届いた。私が敬愛してやまない沢木耕太郎が「昨年の映画の中で最高!」と言っている映画「鑑定士と顔のない依頼人」がディノスシネマ札幌で上映されている、という情報がもたらされました。K氏もその映画に魅せられて2回も観たということでした。
「沢木が!」と思ったところで、私はその日の予定をキャンセルして、昼過ぎにはディノスシネマ札幌のチケット売り場に立っていました。
※ 名匠ジュゼッペ・トルナトーレ監督です。
映画は鑑定士(ジェフリー・ラッシュ)の特異なキャラクターの描写から始まります。そんな彼が、資産家の両親が亡くなり、屋敷に遺された絵画や家具を査定してほしいと依頼してきた広場恐怖症の女性(シルヴィア・ホークス)との出会いからストーリーは複雑な展開をしていきます。
それからのストーリーは深読みができない私のような者には全くついていけないほどの展開を見せます。あるレビューの言葉を借りると「脚本がとても『よくできた』作品なのですが、その巧妙さに観客は若干疲労するんじゃないだろうかと言う形で伏線が進みます」という具合です。
脚本を書いた監督のジュゼッペ・トルナトーレの巧みさもあって、観た者はそれぞれがさまざまな解釈を可能にする映画ですが、私の見立てでは潔癖症でそれまで女を知らず、美術品や絵画に対しては絶大な審美眼を誇る初老の男が心的障害を装った若い女にいとも簡単に騙されたという映画と映るのだが、終末の描写はそうとも言い切れない終わり方をしているのがこの映画を魅力的にしているところかもしれません。
私の知人K氏は2回観たといいます。沢木耕太郎もまた2回観たという。それくらい謎の多い映画であることは間違いありません。
私ももう一度観てみたい思いに駆られるが、これからのスケジュールが許してくれそうににもありません。興味を持たれた方はぜひ映画館に足を運んでみてほしいと思います。
※ 本日は所用で網走に移動するため早い時間での投稿となりました。