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私の札幌生活も17年目を迎えました。これまでのスタイルを維持しつつ原点回帰も試み、さらなるバージョンアップを目ざします。

失速したロシア経済の回復はあるのか?

2016-06-25 22:25:55 | 大学公開講座
 好調だったロシア経済は油価の下落、西側諸国の経済制裁によって、2013年以来急速に失速したという。その現状を学びながら、はたして回復はあるのか?スラブ・ユーラシア経済の専門家から話を聞いた。

           

 6月24日(金)夜、北大スラブ・ユーラシア研究センターの公開講演会があり、参加し受講した。講演はスラブ・ユーラシア経済を専門とする同研究センターの田畑伸一郎教授「縮小するロシア経済:回復はあるのか?」と題しての講演だった。

 田畑氏はまず2000年以降のロシアのGDPと一人当たりGDPを表すグラフを提示した。するとそこには2000年以降のロシア経済の急激な伸びと、一時リーマンショックによる落ち込みはあったものの、それ以降も伸び続けていたものが2013年を境にして急激に落ち込んでいることが如実に表されていた。(グラフを写した写真を参照ください)

          
   ※ 出来の悪い写真ですがお許しを!青線が国のGDT、赤線が一人当たりGDPです。見事にリンクしています。

 こうした経過を辿ったのは、ロシア経済が偏に石油頼みだったことを表している、と田畑氏は指摘する。2000年代初頭は石油需要が順当で、石油資源国であるロシアは急激に経済成長し、2013年には2000年当初と比較し、GDPも一人当たりGDPも実に8倍もの成長を示している。
 それが2013年以降わずか3年で1/2にまで縮小してしまっているのである。

 その原因は世界の石油需要がだぶつき気味のため油価が低迷したこと、さらにはウクライナ問題で西側諸国が経済制裁に踏み切ったことが影響しているという。
 特に油価の低迷はロシア経済を直撃したようである。というのも、ロシアが経済成長を続けていたとき、国の経済を牽引する製造業が伸びなかったことが今の事態を招いているとした。これは「オランダ病」とも言われる現象とのことだった。
 「オランダ病」について説明すると多くの紙幅を必要とするため、興味のある方はウィキペディアあたりで調べていただきたい。

 しかし、ロシアも油価が落ち込み、「オランダ病」に罹っている現状に甘んじているわけではなく、そこからの脱却を図り「輸入代替」により製造業の発展に舵を切ってもいるようだ。その成果も徐々には現れているが、油価の落ち込みをカバーするには遠く及ばない現状だということだった。

                 

 さて、そうしたロシア経済の現状からの回復の見込みはあるのか、という問いについてだが、田畑教授は次のような見立てをした。
 油価の低迷は今後3~5年は続くだろう。そうすると、好むと好まざるにかかわらず、輸入代替の道を歩まざるを得ないのではないか、とした。その輸入代替が好ましい方向に進むには、ロシア国内の経済環境の改革が不可欠であるとした。
 その改革とは、市場メカニズムの強化と外国からの投資環境を改善することだとした。
 市場メカニズムの強化とは、国有企業の占める割合を縮小すること、独占構造を改革すること、中小企業の競争力を付けることなどだという。つまり、先進諸国のような市場メカニズムが実現することが鍵だとした。

 こうして聞くと、ロシア国民も大変だなあ、という感想を抱いたのだが、講演後の質疑応答において、意外とも思えることを聞いた。
 それは、今後さらにロシア経済が落ち込んだとしても、国債発行などで国の経済が破たんすることはないだろう、という。それはロシアが国としてどこかの国のような負債を抱えていないからと説明された。どこかの国って、どこ?
 遥か遠い他国のこととして聞いていた私は「はっ」と現実に戻された思いだった…。