近くて遠い国、隣国韓国と日本に横たわる問題はきわめてセンシティブな問題であること思い知らされたシンポジウムだった。私にとってけっして得意ではないこの分野の問題について、2回に分けて考えてみることにした。

※ 第一部において、両国を代表してスピーチした細谷慶大教授(左)とチェ北東アジア財団研究員(右)と、遠藤北大教授(中)です。
8月24日(木)午後、京王プラザホテル札幌において、世宗研究所と韓国国際交流財団が主催する「2017年札幌韓日関係シンポジウム」が開催され、参加した。
シンポジウム告知の新聞記事では分からなかったが、会場に着いて初めて主催が「世宗研究所」だということが分かり、世宗研究所についてちょっと調べてみた。すると、ネット上で次のような記事が目に入った。
ハンギョレ(新聞)の2010年の記事の抜粋である。
『コン理事長はこの会議で(中略)「(親北韓・左傾研究所という)世宗に対する批判世論を解消し、改革を成し遂げるために統合という方式が良いということ」と強調した。彼は最近、財団解体に反対意志を明らかにした世宗研究所労働組合委員長に「外側で世宗研究所を何と言っているか知っているか? 左派の巣窟と言われている」と話したと伝えられた。
この記事から、私は次のように想像する。
世宗研究所は、韓国随一の民間シンクタンクとして、グローバルスタンダードな論調を展開していたものと思われる。しかし、それは韓国国内世論(特に保守派)にとっては、左寄りの研究所と見られていたようだ。そのことに対して、研究所を運営する財団としてはそうした世論を排除するために政権寄り(保守派)に舵を切る改革に踏み切ったということなのだろう。(あまりにも私の推測が多いものではあるが…)
こうしたことから、今では世宗研究所はどちらかといえば韓国保守派を代表する言論機関(民間研究所)という位置づけではないかと私は理解した。

※ 開会式で挨拶に立った主催者の陳昌珠世宗研究所長です。
さて、シンポジウムの方であるが、第一部は「新しい東アジアの秩序構築と韓日関係」と題して、遠藤乾北大大学院教授がコーディネーターを務め、日韓両国の二人の研究者がテーマに沿ったスピーチを展開した。そのスピーカーとは、日本側が細谷雄一慶大教授、韓国側はチェ・ウンド北東アジア財団研究院が務めた。
細谷氏の発言要旨は次のとおりである。
氏は日本の視点と断りながら、日本には二つの不安があるとした。
その一つは、北東アジアの未来について、北朝鮮の動向に不安があるとした。もう一点が日韓関係における不安であるという。
そして細谷氏は、北東アジアの未来については悲観的であるとし。その理由としてアメリカ・トランプ、北朝鮮・金正恩両首脳の不安定さに危機感を抱くとした。
一方、日韓関係については比較的楽観的であるとした。
その理由として、この問題のほとんどは国内問題であるということだ。その日韓関係についてそれぞれの国において問題解決を困難にさせているのは、日本においては保守派であり、韓国においては進歩派と目されているという。
そのような状況の中、日本の安倍首相は保守派、韓国の文在寅新大統領は進歩派のリーダーと目されていることから、それぞれの派を抑える(コントロール)ことができのではないか、というのが細谷氏の見立てである。
両国にとって、北朝鮮の脅威、米国が頼りにならない現実の中、両国の協力関係が何より必要との考えから、両国関係が好転するのではないか、と細谷氏は語った。

※ 開会式で祝辞を述べた韓惠進駐札幌大韓民国総領事館総領事です。
続いて、スピーチしたのは韓国のチェ氏である。
チェ氏は、日韓関係における細谷氏の楽観的見通しを冒頭に否定し、「これまでの5年間、日韓関係は非常に悪化した。これまでより悪くはならないが、けっして良い展望は開けない」とした。
その理由として、日韓の歴史認識に対する、日本のそのときどきの首脳の発言の違いを指摘する。特に安倍首相の河野談話、村山談話との違いを指摘した。さらには、昨今徴用工問題も新たに浮上したことをチェ氏は指摘する。
慰安婦問題について、日本側は解決済みとするが、韓国国内においてはまったく問題外と受け止められ、両国の合意は不可能ではないかと指摘した。
非常に粗いまとめであるが、細谷氏、チェ氏のスピーチはそのまま両国の雰囲気を代表しているようにも思われる。
この後、両国の知識人多数が登壇してシンポジウムが行われたのだが、そこでも両国に横たわる溝の深さと、簡単には埋まらない深刻さを私は思い知らされたのだった。その点については、明日触れてみることにする。

※ 第一部において、両国を代表してスピーチした細谷慶大教授(左)とチェ北東アジア財団研究員(右)と、遠藤北大教授(中)です。
8月24日(木)午後、京王プラザホテル札幌において、世宗研究所と韓国国際交流財団が主催する「2017年札幌韓日関係シンポジウム」が開催され、参加した。
シンポジウム告知の新聞記事では分からなかったが、会場に着いて初めて主催が「世宗研究所」だということが分かり、世宗研究所についてちょっと調べてみた。すると、ネット上で次のような記事が目に入った。
ハンギョレ(新聞)の2010年の記事の抜粋である。
『コン理事長はこの会議で(中略)「(親北韓・左傾研究所という)世宗に対する批判世論を解消し、改革を成し遂げるために統合という方式が良いということ」と強調した。彼は最近、財団解体に反対意志を明らかにした世宗研究所労働組合委員長に「外側で世宗研究所を何と言っているか知っているか? 左派の巣窟と言われている」と話したと伝えられた。
この記事から、私は次のように想像する。
世宗研究所は、韓国随一の民間シンクタンクとして、グローバルスタンダードな論調を展開していたものと思われる。しかし、それは韓国国内世論(特に保守派)にとっては、左寄りの研究所と見られていたようだ。そのことに対して、研究所を運営する財団としてはそうした世論を排除するために政権寄り(保守派)に舵を切る改革に踏み切ったということなのだろう。(あまりにも私の推測が多いものではあるが…)
こうしたことから、今では世宗研究所はどちらかといえば韓国保守派を代表する言論機関(民間研究所)という位置づけではないかと私は理解した。

※ 開会式で挨拶に立った主催者の陳昌珠世宗研究所長です。
さて、シンポジウムの方であるが、第一部は「新しい東アジアの秩序構築と韓日関係」と題して、遠藤乾北大大学院教授がコーディネーターを務め、日韓両国の二人の研究者がテーマに沿ったスピーチを展開した。そのスピーカーとは、日本側が細谷雄一慶大教授、韓国側はチェ・ウンド北東アジア財団研究院が務めた。
細谷氏の発言要旨は次のとおりである。
氏は日本の視点と断りながら、日本には二つの不安があるとした。
その一つは、北東アジアの未来について、北朝鮮の動向に不安があるとした。もう一点が日韓関係における不安であるという。
そして細谷氏は、北東アジアの未来については悲観的であるとし。その理由としてアメリカ・トランプ、北朝鮮・金正恩両首脳の不安定さに危機感を抱くとした。
一方、日韓関係については比較的楽観的であるとした。
その理由として、この問題のほとんどは国内問題であるということだ。その日韓関係についてそれぞれの国において問題解決を困難にさせているのは、日本においては保守派であり、韓国においては進歩派と目されているという。
そのような状況の中、日本の安倍首相は保守派、韓国の文在寅新大統領は進歩派のリーダーと目されていることから、それぞれの派を抑える(コントロール)ことができのではないか、というのが細谷氏の見立てである。
両国にとって、北朝鮮の脅威、米国が頼りにならない現実の中、両国の協力関係が何より必要との考えから、両国関係が好転するのではないか、と細谷氏は語った。

※ 開会式で祝辞を述べた韓惠進駐札幌大韓民国総領事館総領事です。
続いて、スピーチしたのは韓国のチェ氏である。
チェ氏は、日韓関係における細谷氏の楽観的見通しを冒頭に否定し、「これまでの5年間、日韓関係は非常に悪化した。これまでより悪くはならないが、けっして良い展望は開けない」とした。
その理由として、日韓の歴史認識に対する、日本のそのときどきの首脳の発言の違いを指摘する。特に安倍首相の河野談話、村山談話との違いを指摘した。さらには、昨今徴用工問題も新たに浮上したことをチェ氏は指摘する。
慰安婦問題について、日本側は解決済みとするが、韓国国内においてはまったく問題外と受け止められ、両国の合意は不可能ではないかと指摘した。
非常に粗いまとめであるが、細谷氏、チェ氏のスピーチはそのまま両国の雰囲気を代表しているようにも思われる。
この後、両国の知識人多数が登壇してシンポジウムが行われたのだが、そこでも両国に横たわる溝の深さと、簡単には埋まらない深刻さを私は思い知らされたのだった。その点については、明日触れてみることにする。