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私の札幌生活も17年目を迎えました。これまでのスタイルを維持しつつ原点回帰も試み、さらなるバージョンアップを目ざします。

課税の不公平による社会の分断

2017-08-28 22:52:25 | 大学公開講座
 課税は本来国民に対して公平に課せられるはずであるが、実際にはさまざまな課税を免除される制度によって不公平な現実が浮かび上がってくるという。制度を巧みに利用した徴税逃れによって巨万の富を築き、社会の分断に繋がる実態について話を聴いた。

 8月24日(木)夜、北大公開講座「社会の分断をいかに乗り越えるか?」の最終講義である第4講が開講された。
 第4講は、法学研究科の田中啓之准教授「公平な課税の実現に向けた法の現在と課題」と題しての講義だった。

               

 講義は私にとって非常に難解だった。税の専門的な話など、私には何の興味もない話である。
 その話を聴きながら、今回の社会の分断は、これまで3回にわたって聴いてきた分断とは質の異なる分断の話のように私には聴こえてきた。つまりこれまでは、国と国の間の分断とか、国内においても明らかに社会的な分断を呈している問題だった。
 それに対して、今回の税の話は、納税を巡って、富める者は弁護士などの力を借りて、なんとか制度の隙をうかがって徴税を逃れて富を蓄えるのに対して、貧する者はそうした術もなく納税するしかないという事実である。そのため両者の間ではますます貧富の差が広がり、それが分断を生んでいるという話である。

 田中准教授の話は、国は租税負担の公平性に立ちながらも(それを「水平的公平」、「垂直的公平」という言葉で説明された)、租税特別措置、公益税制など課税においてさまざまな特別措置を講じている。
 特別措置は本来、その公平性のため、あるいは産業振興のため、また特別に保護しなければならない国民のため、などのためにとられた措置である。しかし、その措置を本来目的とは違った形で課税を逃れようとするものが必ず出てくるという話である。

 講義では、具体的な案件として、①りそな銀行事件、②日本ガイタント事件、③武富士事件、④ヤフー・IDCF事件が紹介された。
 その中で最も理解しやすかった③の武富士事件について触れてみると、サラリーマン金融で一世を風靡し、創業者は巨万の富を築いた。その財産の贈与を受けるべく長男は香港に居住し、一定の業務に従事していた。そこで生前に財産を香港に移し、贈与税を逃れようとした事件のようである。
 この事案は、最高裁において長男の住所が香港にあり、居住し業務も行っているという実績が考慮され、贈与税は発生しないという判決だったということだ。
 実際には、もっと制度の網をくぐるさまざまな工夫がなされたのではないかと想像されるのだが、こうした案件は表面に出ないだけでかなりの数に上るのではと思わされた。

 もちろん徴税を回避する行為を防ぐための措置(法律)を整備してはいるということだが、講義を聴いていると私たちの知らない世界で、法律を適用(課税)する側とそれから逃れようする側が暗闘(知恵比べ)をしているようにも聞こえてきた。
 こうしたことによって、貧富の差がますます広がり、ひいては社会の分断に繋がっているとしたら由々しき問題である。
 法律を立案する側も、法律を執行する側(国税庁?)も、社会的不公平がおこらないようにおおいに知恵を絞ってほしいものである。