ご存じ焼跡闇派を標榜して作家活動を続けた野坂昭如原作の実写映画である。幼い妹・節子が栄養失調で悲劇的な死を看取る兄・清太の無念さに、改めて戦争の悲惨さ、残酷さをあぶり出した映画だった…。
8月29日(火)午後、清田老人福祉センターで映画「火垂るの墓」の上映会があると知って遠路40数分をかけて駆け付けた。
さすがに老人福祉センターである。地域のお年寄りたちがたくさん詰めかけていた。
映画のあらすじは次のように紹介されている。
「1945年、神戸の街を大空襲が襲う。清太(14歳)と節子(4歳)は空襲で母親を亡くし、父親は戦地にあり生死不明の中、二人は西宮に住むおばの元に身を寄せる。しかしおばは兄妹に対して冷たい仕打ちをし、それは次第に度を越していく。そのため、2人はおばの家を出て防空壕でひっそりと暮らすことにした。悲惨な飢えに耐える2人を楽しませるのは、ほたるの明かりだけだった…」
このストーリーは原作者・野坂昭如の原体験がベースとなっているという。
野坂は妹を世話をしながらも、結局は死なせてしまったことに強い悔いが残り、その贖罪の思いからこの「火垂るの墓」を書いたという。
映画は観るものに改めて、戦争の悲惨さ、残酷さを思い出させてくれる。
空襲に遭いうめき声を上げながら死んでいく人、生きるために他の人のことなど関心が無くなってしまう人、ついには人の道を外れることにさえ抵抗を感じなくなる人、などなど…。
今回視聴した実写版映画は、子役の二人の稚拙な演技が最初は若干気になったが、それも映画に没入する中で気にはならなくなり、むしろ二人の健気さが効果を高めたようにさえ感じられた。
※ 実写版に出演した俳優の皆さんです。
野坂は、この「火垂るの墓」と「アメリカひじき」の2編によって、1967年直木賞を受賞し、世の中に出た。
映画に感動した私は、その帰路BOOK OFFに立ち寄って原作を購入したのだった。恥ずかしながら私は野坂の出世作をまだ読んではいなかったのだ。
原作によると、映画とは違い主人公もまた妹の死後、栄養失調に倒れ死に至っている。(映画ではそこまで描かれていない)
評判によると、実写版も好評だったが、アニメ版(スタジオジブリ制作、監督・脚本高畑勲)はさらに評価が高いようだ。機会があればアニメ版もぜひ観たいと思った。