最近は人工知能(AI)のことがメディアを賑わす機会が増えてきた。そこでいう人工知能とはどのようなことを指しているのか?あるいは、現在人工知能の研究はどこまで進んでいるのか?第一線の研究者から聴いた。
7月12日(木)夜、北大の全学企画公開講座「去る時代、来たる時代を考える」の第8回(最終回)の公開講座があった。
この回は、「人口知能がもたらす未来」と題して、北大情報科学研究科の川村秀憲教授が講義した。
「人工知能」についてはさまざまな定義があるそうだが、川村氏は「コンピュータを用いて人間のような知能を実現することを目ざした技術の総称」として、ここでは話を進めるとした。
そう定義した上で、専門家の間では人工知能について大きく二つの考え方があるという。
それは「弱い人工知能」と「強い人工知能」という考え方だという。
「弱い人工知能」とは、メディアなどでAI搭載のサービスを開始したなどという、人間がやっているいろいろな仕事の内、その一部を機械が代行するというようなソフトウェアのことを指すそうだ。
一方、「強い人工知能」とは、ほんとうに人間のように、コンピュータ自身が考えて何か行動を起こしたりするという、人間と同じようなレベルの知能を持つものを指すそうだ。
そしてそういう強い人工知能が実際に実現可能なのかどうかということについては、今のところ分かっていないとした。
ただ、現実の人工知能の技術は長足の進歩を遂げていることも事実だという。
人工知能とはいっても、基本的にはコンピュータに組み込まれたソフトウェアにデータを入れることによって、それが出力して何かの働きをするという原理である。
その組み入れるデータが、最近では膨大なビッグデータとなっている現実がある。その膨大なデータをコンピュータの中で処理して、付加価値のあるものを出すということが可能となってきた。そのデータ処理によって新しいことを発見したりとか、何か意思決定したりとか、することが可能となったというところがこれまでのコンピュータソフトとは違うところだそうだ。
その典型が、人間の名人たちから次々と勝利を収めたチェスや囲碁の人口知能である。
川村氏は、強い人工知能の実現は今のところ分かっていないとしたが、強い人工知能の実現に向かっての研究は着々と前進しているようにも聞こえてきた。
このような技術の急速な進歩の要因は、①ビッグデータ、②GPU(Graphics Processing Unit)の発展・普及、③ディープ・ランニング技術の出現、にあるという。
はたして強い人工知能は実現するのか、実現するとしたらその倫理性なども課題になってくると思われる。
講義の後半は、川村教授たちが企業などとともに取り組んでいる様々なプロジェクトについての紹介があった。それは非常に多岐にわたるものであったが、あまりにも多くてメモすることもできなかったが、例えば、自動運転システムの構築、ファッション画像の分解、定置網議場と魚群探知機の音響データの自動制御、等々…。さらには最近話題となった「AIによる俳句の自動生成」装置を開発し、人間と俳句の出来を競ったという。
最後に川村氏は、人工知能の進歩によって、人類がこれまで解決できなかった問題を、AIによって解決が可能となる場合も有り得るとした。
しかし、どのよう場合でも「人の能力・判断はAIに任すことにはならない」と釘を打つことは忘れなかった。
ということで、今年度の北大の全学企画公開講座「去る時代、来たる時代を考える」の全8回の講座が終了した。講義の理解度はさておいて、全ての講座を受講し、誤解・曲解はあったとしても、曲がりなりにも講義の内容をレポできたことで、私自身としては了としたい。